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狂犬病

執筆者:

John E. Greenlee

, MD, University of Utah Health

最終査読/改訂年月 2019年 1月
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本ページのリソース

狂犬病は,感染したコウモリやその他特定の哺乳類の唾液を介して伝播するウイルス性脳炎である。症状としては抑うつや発熱などがあり,続いて興奮,唾液の過剰分泌,および恐水病がみられる。診断は皮膚生検検体を用いた直接蛍光抗体法またはPCR検査による。曝露のリスクが高い個人には,ワクチン接種が適応となる。曝露後予防は創傷ケアと受動的および能動的な免疫学的予防から成り,迅速かつ入念に行えば,ヒトの狂犬病はほぼ常に予防できる。それができなければ,本症はほぼ例外なく死に至る。治療は支持療法による。

狂犬病は世界で年間55,000件を超えるヒト死亡例の原因となっており,その大半がイヌの狂犬病流行地域であるラテンアメリカ,アフリカ,およびアジアで発生している。米国では,家畜のワクチンによりヒトの狂犬病症例数は年間3件未満にまで減少しており,その大半は感染コウモリによるものである。感染したアライグマ,スカンク,およびキツネからも伝播する可能性がある。

通常は狂犬病動物の咬傷により,その唾液を介して伝播する。まれに,皮膚の擦過傷や眼,鼻腔,または口腔の粘膜からウイルスが侵入することがある。ウイルスは侵入部位から末梢神経を通って脊髄(または顔面を咬まれた場合は脳幹)に至り,続いて脳まで到達する。その後も末梢神経を通じて中枢神経系から他の部位に波及する。唾液腺および口腔粘膜が侵されることが伝播の原因である。

症状と徴候

咬傷部位に疼痛または錯感覚が生じることがある。進行速度は接種されたウイルスの量および咬傷部位と脳の近さに依存する。潜伏期間は平均で1~2カ月であるが,1年を超えることもある。

狂犬病の初期症状は非特異的で,発熱,頭痛,および倦怠感がみられる。数日以内に脳炎(80%でみられる狂躁型狂犬病)または麻痺(20%でみられる麻痺型狂犬病)を発症する。脳炎は不穏,錯乱,興奮,奇異な行動,幻覚,および不眠症を引き起こす。唾液が過剰に分泌され,水を飲もうとすると喉頭筋および咽頭筋に痛みを伴う痙攣が生じる(恐水病)。麻痺型狂犬病では,上行性の麻痺および四肢麻痺が生じ,せん妄および恐水病は認められない。

診断

  • 皮膚生検

  • ときに体液または組織検体のPCR検査

脳炎または上行性麻痺がみられ,動物咬傷またはコウモリとの接触が確認された患者では狂犬病を疑う;コウモリの咬傷は浅く,見過ごされることがある。

項部皮膚の生検検体での直接蛍光抗体法による検査が,第1選択の診断検査である。髄液,唾液,または組織検体のPCR検査によっても診断可能である。狂犬病抗体を検出するための検体には血清や髄液などがある。

CT,MRI,および脳波検査では,正常であるか,非特異的な変化がみられる。

治療

  • 支持療法

狂犬病を一旦発症すると,治療は支持療法のみとなり,深い鎮静(例,ケタミンおよびミダゾラムによる)や不快感の除去などが行われる。通常は症状の出現から3~10日で死亡する。生存例は数例しかなく,多くは発症前に免疫学的予防を受けていた。狂犬病が臨床的に発現した後に狂犬病ワクチンおよび免疫グロブリンを投与すると,より急速な悪化を招くというエビデンスがある。

予防

狂犬病動物はその異常行動からしばしば識別できる;感染動物は興奮して暴れる,弱る,または麻痺を来すほか,人間を恐れない態度を示すこともある。夜行性動物(例,コウモリ,スカンク,アライグマ)の日中行動がみられることもある。狂犬病のコウモリは不自然な鳴き声を発し,飛行困難がみられる。狂犬病が疑われる動物には近づいてはならない。地域の保健当局に連絡して捕獲を依頼すべきである。

米国ではコウモリは狂犬病ウイルスの重要な病原体保有生物となっており,またコウモリ咬傷は検出が難しいことから,コウモリとの接触は曝露後予防の絶対的適応である。

狂犬病の曝露前予防

狂犬病のヒト二倍体細胞ワクチン(HDCV)は安全であり,獣医,動物飼育者,洞窟探検家,狂犬病ウイルスを扱う作業者,および流行地域への旅行者など,感染リスクのある個人に対する曝露前予防的として推奨される。

1mLを合計3回,それぞれ0,7,および21~28日目に1回ずつ筋注する。ワクチンを接種すれば,ある程度の終生免疫が得られる。しかしながら,予防効果は時間とともに低下する;曝露が続いている可能性が高ければ,6カ月毎(持続的曝露に対して)または2年毎(頻回の曝露に対して)の血清学的検査が推奨され,抗体価が特定の水準を下回った場合はワクチンの追加接種を行う。

狂犬病の曝露後予防

皮膚の破綻を生じた咬傷や粘膜または破綻した皮膚への動物の唾液との接触がある場合には,曝露を考慮する。曝露があっても,予防処置を迅速かつ入念に行えば,ヒトの狂犬病はほぼ常に予防できる。創傷を迅速かつ徹底的に石鹸と水または塩化ベンザルコニウムで清浄化する。深い刺傷には石鹸水を適度な圧で灌流する。通常は開放創として管理する。

パール&ピットフォール

  • 人間を咬んだアライグマ,スカンク,キツネは狂犬病であるとみなす。

  • コウモリの咬傷は小さく検出が難しいため,コウモリと接触のあった全ての人に狂犬病ワクチンを接種し,狂犬病免疫グロブリンを投与する。

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PEPとして,受動免疫のための狂犬病免疫グロブリン(RIG)20IU/kgを創部周囲に浸潤させるが,末端部位(例,指,鼻)で注入量が多すぎる場合には,RIGの一部を筋注で投与してもよい(2 予防に関する参考文献 狂犬病は,感染したコウモリやその他特定の哺乳類の唾液を介して伝播するウイルス性脳炎である。症状としては抑うつや発熱などがあり,続いて興奮,唾液の過剰分泌,および恐水病がみられる。診断は皮膚生検検体を用いた直接蛍光抗体法またはPCR検査による。曝露のリスクが高い個人には,ワクチン接種が適応となる。曝露後予防は創傷ケアと受動的および能動的な免疫学的予防から成り,迅速かつ入念に行えば,ヒトの狂犬病はほぼ常に予防できる。それができなければ,本症... さらに読む )。この治療と並行して,能動免疫のための狂犬病ワクチン(HDCV)を接種する。HDCVは,1mLを曝露当日(0日目)から開始して計4回,RIGの投与とは異なる四肢に筋注する(三角筋が望ましい)。以降の注射は3,7,14日目に行い,免疫抑制患者では5回目の注射を28日目に行う。まれに,全身性または神経麻痺性の重篤な反応が発生するが,その場合はワクチン接種の完了に伴うリスクと患者が狂犬病を発症するリスクを比較検討する。ワクチン中断のリスクを評価するため,狂犬病抗体価を測定する。

以前に狂犬病ワクチンの接種を受けていた個人に対するPEPとしては,HDCV 1mLの筋注を0日目と3日目に行うが,RIGは投与しない。

予防に関する参考文献

  • 1. ACIP: Human Rabies Prevention --- United States, 2008 Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices.Morbidity and Mortality Weekly Report 57 (RR03):1–26,28, 2008.

  • 2. ACIP: (Advisory Committee on Immunization Practices) recommendations: Use of a reduced (4-dose) vaccine schedule for postexposure prophylaxis to prevent human rabies. Morbidity and Mortality Weekly Report 59 (RR02):1–9, 2010.

要点

  • 狂犬病は世界中で毎年数万人の死亡原因となっており,そのほとんどが,イヌ狂犬病の流行地域であるラテンアメリカ,アフリカ,およびアジアで発生している。

  • 米国では,狂犬病による死亡例は年間数例のみであり,通常はコウモリによって伝播されるが,アライグマ,スカンク,またはキツネによる可能性もある。

  • 咬傷部位に疼痛や錯感覚が生じた後,続いて脳炎(不穏および興奮を来す)または上行性麻痺が生じる。

  • 原因不明の脳炎または上行性麻痺がみられる患者では,頸部皮膚の生検検体で蛍光抗体検査を行うか,唾液,髄液,または組織検体でPCR検査を行う。

  • 支持療法を行う。

  • 曝露前予防としては,感染リスクの高い個人(例,獣医,動物飼育者,洞窟探検家,狂犬病ウイルスを扱う作業者,流行地域への旅行者)に狂犬病ワクチンを接種する。

  • 曝露後予防としては,創部の徹底的な洗浄およびデブリドマンを行い,狂犬病ワクチンおよび狂犬病免疫グロブリンを投与する。

  • ヒトを咬んだアライグマ,スカンク,またはキツネは狂犬病とみなすべきであり,コウモリの咬傷は検出が難しいことから,コウモリとの接触は狂犬病免疫グロブリンおよび狂犬病ワクチンの絶対的適応である。

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