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くも膜下出血 (SAH)

執筆者:

Elias A. Giraldo

, MD, MS, California University of Science and Medicine School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 2月
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くも膜下出血は,くも膜下腔への突然の出血である。自然出血の最も一般的な原因は動脈瘤破裂である。症状としては突然の重度の頭痛などがあり,通常は意識消失または意識障害を伴う。二次性の血管攣縮(局所的な脳虚血を引き起こす),髄膜症,および水頭症(持続性の頭痛および意識障害を引き起こす)がよくみられる。診断はCTまたはMRIによる;脳画像検査が正常であれば,診断は髄液検査による。治療は支持療法と脳神経外科手術または血管内治療によるが,包括的脳卒中センターで行うのが望ましい。

病因

くも膜下出血は,くも膜と軟膜との間の空間への出血である。一般に,頭部外傷 外傷性脳損傷(TBI) 外傷性脳損傷(TBI)は,脳機能を一時的または恒久的に障害する脳組織の物理的損傷である。診断は臨床的に疑い,画像検査(主にCT)により確定する。初期治療は確実な気道確保,十分な換気,酸素化,および血圧の維持で構成される。損傷が重度の患者では,しばしば外科手術が必要となり,頭蓋内圧亢進の追跡および治療のためにモニターを設置し,頭蓋内圧亢進に... さらに読む 外傷性脳損傷(TBI) が最も一般的な原因であるが,外傷性くも膜下出血は通常,別の疾患とみなされる。自発性(一次性)くも膜下出血は通常,動脈瘤 脳内の血管病変 脳内出血とは,脳実質内の血管からの局所的な出血である。原因は通常,高血圧である。典型的な症状は局所神経脱落症状などであるが,しばしば突然の頭痛,悪心,および意識障害を伴う。診断はMRIまたはCTによる。治療法としては,血圧コントロールと支持療法のほか,一部の患者に対する外科的血腫除去術などがある。 ほとんどの脳内出血は,基底核,大脳皮質,小脳,または橋に発生する。脳内出血は脳幹の他の部位または中脳でも起こりうる。... さらに読む 脳内の血管病変 破裂に起因する。約85%の患者では,先天性の頭蓋内嚢状動脈瘤またはberry aneurysmが原因である。出血は自然に止まることがある。動脈瘤性出血はあらゆる年齢で起こりうるが,好発年齢は40~65歳である。

比較的まれな原因は,感染性動脈瘤,動静脈奇形,および出血性疾患である。

脳内の血管病変

一般的な脳血管病変としては,動静脈奇形や動脈瘤などがある。

動静脈奇形(AVM):AVMとは,拡張した血管の塊によって動脈と静脈が直接連結された状態である。AVMは脳動脈の分岐部に最も生じやすく,通常は前頭頭頂部,前頭葉,小脳外側,またはその上に位置する後頭葉の実質内に存在する。AVMは硬膜内にも生じうる。AVMは出血を起こす場合もあれば,脳組織を直接圧迫する場合もあり,その結果として痙攣発作や虚血が生じうる。

脳画像検査によって偶然発見されることがあり,造影または単純CTでは通常1cmを超えるAVMを検出できるが,確定診断はMRIによる。ときに,頭蓋内の血管雑音からAVMが示唆される。確定診断と病変が手術可能かどうかの判断には,従来の血管造影が必要である。

表在性で直径が3cmを超えるAVMは通常,顕微鏡下手術,放射線手術,および血管内手術を併用して閉塞させる。深在性または直径3cm未満のAVMは,定位放射線手術,血管内治療(例,動脈内カテーテルによる切除前の塞栓術あるいは血栓形成),または陽子線の集中照射による凝固術によって治療する。(Stroke Council, American Stroke AssociationのRecommendations for the management of intracranial arteriovenous malformationsも参照のこと。)

動脈瘤:動脈瘤とは,動脈が限局的に拡張した状態である。一般集団の約5%に発生する。

一般的な寄与因子としては,動脈硬化,高血圧,遺伝性結合組織疾患(例,エーラス-ダンロス症候群,弾性線維性仮性黄色腫,常染色体優性多嚢胞腎)などが考えられる。ときに,敗血症性塞栓から感染性動脈瘤が生じる。

脳動脈瘤の大半はしばしば直径2.5cm未満で嚢状(非円周性)となり,ときに壁の薄い小さな突出部が1つまたは複数存在する(berry aneurysm)。

ほとんどの動脈瘤は中大脳動脈,前大脳動脈,またはウィリス動脈輪の交通枝に沿って生じ,特に動脈分岐部に多くみられる。感染性動脈瘤は通常,ウィリス動脈輪を構成する動脈の最初の分岐部より遠位に生じる。

多くの動脈瘤は無症状であるが,少数のものは隣接構造を圧迫することによって症状を引き起こす。眼筋麻痺,複視,斜視,または眼窩痛は,第3,第4,第5,または第6脳神経の圧迫を示唆する。視力障害および両耳側視野欠損は,視交叉の圧迫を示唆する。

動脈瘤はくも膜下腔に穿破して,くも膜下出血を引き起こすことがある。ときに動脈瘤の破裂前には,疼痛を伴う動脈瘤の拡張またはくも膜下腔への血液の漏出に起因する警告頭痛を生じることがある。急性の破裂は雷鳴頭痛と呼ばれる突然の重度の頭痛を引き起こす。

動脈瘤は脳画像検査で偶然発見されることがある。

動脈瘤の診断には血管造影,CT血管造影,またはMRアンギオグラフィーが必要である。

直径7mm未満の場合,前方循環系の無症候性の動脈瘤が破裂することはまれであり,緊急治療に伴うリスクは正当化されない。継続的な画像検査によりモニタリングが可能である。動脈瘤がそれより大きい場合,後方循環系にある場合,および出血または神経構造物の圧迫により症状を引き起こしている場合は,可能であれば血管内治療を試みることができる。

病態生理

くも膜下腔に漏出した血液によって化学性髄膜炎が引き起こされ,それにより一般的には頭蓋内圧が数日間ないし数週間にわたって上昇する。二次性に生じた血管攣縮によって局所的な脳虚血が生じることがあり,約25%では一過性脳虚血発作 一過性脳虚血発作(TIA) 一過性脳虚血発作は,一過性の神経脱落症状を突然引き起こす局所的な脳虚血で,永続的な脳梗塞を伴わない(例,MRIの拡散強調画像で陰性)ものである。診断は臨床的に行う。頸動脈内膜剥離術またはステント留置術,抗血小板薬,および抗凝固薬は,特定の病型のTIA後に生じうる脳卒中のリスクを低下させる。 TIAは,症状の持続時間が通常は1時間未満(ほとんどのTIAは5分未満)である点を除けば,虚血性脳卒中と同様である。障害が1時間以内に消失する場合,... さらに読む (TIA)または虚血性脳卒中 虚血性脳卒中 虚血性脳卒中とは,局所的な脳虚血に起因して突然生じる神経脱落症状のうち,永続的な脳梗塞(例,MRIの拡散強調画像で陽性となるもの)を伴うものである。一般的な原因は(頻度の高い順に)太い動脈のアテローム血栓性閉塞;脳塞栓症(塞栓性脳梗塞);深部の細い脳動脈の非血栓性閉塞(ラクナ梗塞);および近位部の動脈狭窄に加えて動脈分水嶺領域の脳血流量を減少させる血圧低下を伴うもの(血行力学性の脳卒中)である。診断は臨床的に行うが,出血を除外して脳卒中... さらに読む 虚血性脳卒中 の徴候がみられる。72時間後から10日後までの期間には,脳浮腫が最も強くなり,血管攣縮とそれに続く梗塞(angry brainと称される)のリスクが最も高くなる。続発性の急性水頭症もよくみられる。ときに2度目の破裂(再出血)が起こることがあり,約7日以内が最も多い。

症状と徴候

頭痛は通常重度で,数秒以内にピークとなる。その後に意識消失が続くことがあり,通常は直ちに起こるが,ときに数時間経過してから起こることもある。重度の神経脱落症状が生じ,数分から数時間以内に不可逆性となることがある。意識は障害され,不穏を呈することもある。痙攣発作も起こりうる。通常,小脳扁桃ヘルニアが起こらない限り,初期には項部硬直がみられない。しかしながら,24時間以内には化学性髄膜炎によって中等度から著明な髄膜症と嘔吐のほか,ときに両側性の伸展性足底反応が生じることがある。心拍数または呼吸数が異常であることが多い。

最初の5~10日間は,発熱,持続性頭痛,および錯乱がよくみられる。二次性水頭症によって,何週間も持続する頭痛,意識障害,および運動障害が引き起こされることがある。再出血が起きれば,症状の再発や新たな症状の出現を招く。

診断

  • 通常は単純CT,陰性であれば腰椎穿刺

くも膜下出血の診断は特徴的な症状から示唆される。損傷が不可逆的になる前に,可能な限り迅速に検査を行うべきである。

発症から6時間以内に単純CTを行う。MRIも同等の感度があるが,すぐに施行できる可能性が比較的低い。血液の量が少ない場合や,著しい貧血のために血液が脳組織と等吸収になっている場合には,偽陰性となりうる。

くも膜下出血が臨床的に疑われるが脳画像検査で確認できない場合,またはCTを直ちに施行できない場合は,腰椎穿刺 腰椎穿刺 腰椎穿刺は以下を目的として行われる: 頭蓋内圧と髄液組成を評価する(様々な疾患における髄液異常の表を参照)。 治療として頭蓋内圧を低下させる(例,特発性頭蓋内圧亢進症) 髄腔内に薬剤または脊髄造影用の造影剤を投与する 相対的禁忌として以下のものがある: さらに読む を行う。頭蓋内圧亢進が疑われる場合は,髄液圧が突然低下すると,凝血塊による破裂動脈瘤の圧迫が軽減されることで,さらなる出血が惹起される可能性があるため,腰椎穿刺は禁忌である。

パール&ピットフォール

  • 頭痛の強さが発症後数秒以内にピークに達した場合,または頭痛により意識消失を来した場合は,くも膜下出血を疑う。

  • くも膜下出血が臨床的に疑われるにもかかわらず,CTで出血がみられないか,CTを施行できない場合は,腰椎穿刺を行う;ただし,頭蓋内圧亢進が疑われる場合には腰椎穿刺は禁忌である。

くも膜下出血を示唆する髄液所見としては以下のものがある:

  • 多数の赤血球

  • キサントクロミー

  • 髄液圧高値

髄液中の赤血球は腰椎穿刺時の損傷が原因のこともある。1回の腰椎穿刺中に髄液を連続採取した試験管毎に赤血球数が減少する場合は,腰椎穿刺時の損傷が疑われる。また,くも膜下出血の発生から約6時間以上が経過すると,赤血球は鋸歯状になり溶血して,髄液上清が黄色調を呈し,鋸歯状赤血球(髄液の鏡検で検出できる)がみられるようになるため,この所見はくも膜下出血が腰椎穿刺より先に発生したことを示唆する。それでもなお疑わしい場合は,出血であると仮定するか,8~12時間後に腰椎穿刺を再度行うべきである。

くも膜下出血の患者では,最初の出血エピソード後可及的速やかに従来の脳血管造影を施行する;代替検査としてはMRアンギオグラフィーやCT血管造影などがある。最大20%の患者(ほとんどが女性)では複数の動脈瘤が存在するため,4本の動脈(2本の頸動脈および2本の椎骨動脈)全てに造影剤を注入すべきである。

心電図上では,くも膜下出血によってST上昇または低下を呈することがある。失神を起こして,心筋梗塞に類似することもある。可能性があるその他の心電図異常としては,QRSまたはQT間隔の延長,鋭いまたは深い左右対称性の逆転T波などがある。

予後

動脈瘤破裂による初回のくも膜下出血の後には,約35%の患者が死亡し,数週間以内にはさらに15%が再破裂により死亡する。6カ月後以降は,年に約3%のペースで2回目の破裂が起こる。一般に,動脈瘤がある場合の予後は非常に不良である一方,動静脈奇形での予後は比較的良好で,4血管の血管造影で病巣が検出されない場合(おそらく,出血源が小さく自然にふさがれることによる)に最も良好である。生存者には,たとえ至適な治療を行っても,神経学的後遺症がよくみられる。

治療

  • 包括的脳卒中センターでの治療

  • 平均動脈圧が130mmHgを超えている場合はニカルジピン

  • 血管攣縮を予防するためのニモジピン

  • 原因動脈瘤の閉塞

くも膜下出血患者の治療は,可能であれば常に包括的脳卒中センターで行うべきである。

床上安静が必須である。不穏および頭痛には対症療法を行う。便秘はいきみにつながりうるため,予防のために便軟化剤を投与する。

抗凝固薬と抗血小板薬は禁忌である。

血管攣縮は,ニモジピン60mg,経口,4時間毎,21日間の投与により予防するが,血圧を望ましい範囲内(通常は平均動脈圧70~130mmHgかつ収縮期血圧120~185mmHgと考えられる)に維持する必要がある。

急性水頭症の臨床徴候が生じた場合は,脳室ドレナージを考慮すべきである。

動脈瘤は,再出血のリスクを減らすために閉塞する。動脈瘤を閉塞するには,血管造影中に離脱型の血管内コイルを挿入する方法が可能である。あるいは,動脈瘤が到達可能な位置にあるのであれば,特に除去可能な血腫または急性水頭症を有する患者に対しては,動脈瘤クリッピング術または血流バイパス術を施行することが可能である。患者が覚醒可能な場合は,ほとんどの血管脳神経外科医は再出血のリスクとangry brainによるリスクを最小限に留めるべく,発症後24時間以内に手術を行う。24時間以上が経過している場合については,10日間経過するまで手術を遅らせる脳神経外科医もおり,このアプローチによりangry brainによるリスクは減少するが,再出血のリスクと全死亡率は増加する。

要点

  • くも膜下出血後に起こりうる合併症として,化学性髄膜炎,血管攣縮,水頭症,再出血,脳浮腫などがある。

  • 頭痛が発症時から重度で痛みが数秒でピークに達する場合,または頭痛により意識消失を来した場合は,くも膜下出血を疑う。

  • 多くの患者は複数の動脈瘤を有するため,くも膜下出血の確定診断が得られたならば,従来の脳血管造影,MRアンギオグラフィー,またはCT血管造影にて両側の頸動脈と両側の椎骨動脈を撮影する。

  • 可能であれば,治療のために患者を包括的脳卒中センターに搬送する。

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