MRI MRI 脳のT1強調矢状断像で,正常な正中線の構造を示す。 右膝関節の3テスラMRIプロトン密度強調矢状断像で,内側半月後角にmeniscocapsular separation(矢印)を認める。 MRIは,磁場およびラジオ波を用いて組織の薄層画像(断層画像)を作成する。正常では,組織内のプロトンは回転し,ランダムに配列した小さな磁場を生み出している。MRI装置の強力な磁場に囲まれると,磁気軸は磁場に沿って整列する。そこでRFパルスが印加され,... さらに読む では,CTより高い分解能で神経系の構造を描出できる。この差は以下を描出する上で臨床的に最も重要となる:
脳神経
脳幹病変
後頭蓋窩の異常
脊髄
これらの部位のCT画像は,しばしば骨によるストリークアーチファクトによって損なわれる。MRIは,脊髄を圧迫して緊急の介入を必要とする脊髄病変(例,腫瘍,膿瘍)を同定するのに特に有用である。MRIはまた,脱髄斑,初期の梗塞,無症状の脳浮腫,脳挫傷,初期のテント切痕ヘルニア,頭蓋頸椎移行部異常,および脊髄空洞症の検出にも優れている。
以下の患者では,MRIは禁忌である:
ペースメーカーが植え込まれた患者,過去6週間以内に心臓または頸動脈ステントが留置された患者
強磁性体の動脈瘤クリップまたは強い磁場により加熱または移動する恐れがある金属が体内に存在する患者
炎症性病変,脱髄病変,および腫瘍性病変を描出するには,常磁性造影剤(例,ガドリニウム)の静脈内投与が必要になる場合がある。ガドリニウムはCTで使用される造影剤に比べると,はるかに安全ではあるものの,腎機能障害およびアシドーシスを有する患者において腎性全身性線維症(腎性線維化性皮膚症)が報告されている。腎疾患患者にガドリニウムを使用する場合は,事前に放射線科医および腎臓専門医へのコンサルテーションを行うべきである。
MRIにはいくつかの撮影法 MRIのバリエーション 脳のT1強調矢状断像で,正常な正中線の構造を示す。 右膝関節の3テスラMRIプロトン密度強調矢状断像で,内側半月後角にmeniscocapsular separation(矢印)を認める。 MRIは,磁場およびラジオ波を用いて組織の薄層画像(断層画像)を作成する。正常では,組織内のプロトンは回転し,ランダムに配列した小さな磁場を生み出している。MRI装置の強力な磁場に囲まれると,磁気軸は磁場に沿って整列する。そこでRFパルスが印加され,... さらに読む があり,どの撮影法を選択するかは,組織,局在,および疑われる疾患によって決まる:
拡散強調画像(DWI)法は,虚血性脳卒中 虚血性脳卒中 虚血性脳卒中とは,局所的な脳虚血に起因して突然生じる神経脱落症状のうち,永続的な脳梗塞(例,MRIの拡散強調画像で陽性となるもの)を伴うものである。一般的な原因は(頻度の高い順に)太い動脈のアテローム血栓性閉塞;脳塞栓症(塞栓性脳梗塞);深部の細い脳動脈の非血栓性閉塞(ラクナ梗塞);および近位部の動脈狭窄に加えて動脈分水嶺領域の脳血流量を減少させる血圧低下を伴うもの(血行力学性の脳卒中)である。診断は臨床的に行うが,出血を除外して脳卒中... さらに読む
を迅速かつ早期に検出することができ,脳膿瘍 脳膿瘍 脳膿瘍は脳内に膿が蓄積した状態である。症状としては,頭痛,嗜眠,発熱,局所神経脱落症状などがある。診断は造影MRIまたはCTによる。治療は抗菌薬に加えて,通常はCTガイド下穿刺吸引術または外科的ドレナージによる。 (脳感染症に関する序論も参照のこと。) 脳膿瘍は,脳の炎症領域が壊死に陥り,その周囲を神経膠細胞と線維芽細胞が被膜で覆うことによって形成される。膿瘍周囲の浮腫は,膿瘍そのものと同様に,頭蓋内圧を亢進させることがある。... さらに読む
を脳腫瘍 頭蓋内腫瘍の概要 頭蓋内腫瘍は脳またはその他の構造物(例,脳神経,髄膜)を侵しうる。腫瘍は通常,成人期初期または中期に発生するが,どの年齢層でも発生しうる;現在は高齢者における頻度が増加している。脳腫瘍はルーチンの剖検の約2%で発見される。 腫瘍は良性の場合もあるが,頭蓋内には腫瘍が増大する余地がないため,たとえ良性の腫瘍でも重篤な神経機能障害や死を招く可... さらに読む
と鑑別するのに役立つ。また,クロイツフェルト-ヤコブ病 クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD) クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)は,最も頻度の高いヒトプリオン病である。世界中で発生しており,いくつかの発症様式と病型がある。CJDの症状としては認知症,ミオクローヌス,その他の中枢神経系障害などがあり,CJDの発症様式と病型にもよるが,通常は発症後4カ月から2年で死に至る。治療は支持療法による。 (プリオン病の概要も参照のこと。) CJDには3つの発症様式がある(1):... さらに読む の診断にも役立つ。
灌流強調画像(PWI)法では,初期の虚血性脳卒中における血流低下領域を検出することができるが,良性の血流減少を梗塞による有害な血流低下と鑑別するにはまだ信頼性に欠ける。
拡散テンソル画像(DTI)法は,DWIを拡張した方法であり,白質線維を3次元的に描出し(トラクトグラフィー),加齢および疾患の影響を受けた中枢神経系の経路に異常がないかモニタリングするのに用いられる。
Double inversion recovery(DIR)法は,研究施設で用いられ,他の撮影法と比べて脱髄した灰白質の検出に優れている;灰白質の脱髄は多発性硬化症 重症筋無力症 重症筋無力症は,自己抗体および細胞性の機序を介したアセチルコリン受容体の破壊に起因する,反復発作性の筋力低下および易疲労性である。若年女性と高齢男性で多くみられるが,あらゆる年齢の男女に起こりうる。症状は筋の活動により悪化し,安静により軽減する。診断は,血清抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体値,筋電図検査,およびときにエドロホニウム静注試験により行い,エドロホニウム静注試験は筋力低下を一時的に緩和する。治療法としては,抗コリンエステ... さらに読む で一般的にみられると考えられている。
機能的MRI(fMRI)は,特定の認知または運動課題によって脳のどの部位が活性化されるかを(酸素化された血流の増加によって)示す方法であるが,臨床使用については依然として検討段階にある。
MRアンギオグラフィー(MRA)は,造影または単純MRIを用いて,脳血管と頭頸部の主な動脈およびその分枝を描出する方法である。MRAは脳血管造影 脳カテーテル血管造影 経動脈カテーテルを介して造影剤を注入した後にX線撮影を施行することで,個別の脳動脈および脳の静脈構造が描出される。データのデジタル処理(デジタルサブトラクション血管造影)により,少量の造影剤でも分解能の高い画像が得られる。 脳血管造影は,頭蓋内病変の部位および血管分布の描出においてCTおよびMRIを補足する検査法であり,動脈狭窄または動脈閉塞,先天性血管欠損,動脈瘤,および動静脈奇形の診断ではゴールドスタンダードになっている。直径0... さらに読む に取って代わったわけではないが,脳血管造影が不可能な状況(例,患者が拒否した場合,リスクが高い場合)で用いられる。脳卒中に対する検査として,MRAは動脈の狭小化をより重度に誇張する傾向があるため,通常は大きな動脈の閉塞性疾患を見逃すことはない。
Susceptibility-weighted angiography(SWAN)は出血の評価に役立つ可能性がある。この方法では,大径血管と小径血管の両方,微小出血,ならびに脳内のカルシウムや鉄の沈着をより良好に視覚化できる。
磁気共鳴静脈造影(MRV)は,MRIにより頭蓋の主な静脈および硬膜静脈洞を描出する。MRVを行うことで,脳静脈血栓症の診断で脳血管造影を省略することができ,また血栓溶解のモニタリングや抗凝固療法の持続期間の決定に有用である。
磁気共鳴スペクトロスコピーは,脳内の代謝物を領域別に測定でき,腫瘍を膿瘍または脳卒中と鑑別するのに用いられる。