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いびき

執筆者:

Karl Doghramji

, MD, Jefferson Sleep Disorders Center, Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2014年 10月
本ページのリソース

いびきは,睡眠中に上咽頭から発生する荒い雑音である。非常に一般的であり,男性の約57%,女性の40%でみられる;年齢とともに有病率が上昇する。しかしながら,ベッドパートナーが相手のいびきをどのように捉え,どのように反応するかはかなり主観的であり,いびきは夜毎に変化するため,有病率の推定値には大きな幅がある。

音量はわずかに聞き取れる程度のものから,隣室にまで聞こえうる極めてうるさいものまで,様々である。いびきは通常,いびきをかいている本人よりも他者(典型的には眠ろうとしているベッドパートナーまたは同室者)にとって苦痛であるが,まれに自らのいびきで目を覚ます患者もいる。

いびきは重大な社会的問題につながる可能性がある。ベッドパートナーまたは同室者との間でいさかいの原因となる可能性があり,まれではあるが,いびきを発端として暴行や殺害に発展することもある。

いびきの重症度,原因,および影響に応じて,その他の症状,例えば頻回の覚醒,睡眠中の喘ぎまたは息詰まり,日中の過度の眠気,早朝の頭痛などを認めることもある。

病態生理

いびきは,上咽頭の軟部組織,特に軟口蓋が気流によって振動することによって生じる。振動するあらゆる物体(例,旗)と同様に,上咽頭における振動の発生は,相互作用因子(振動する物体の大きさ,硬度,および付属物,ならびに気流の速度および向きなど)に依存する。人間は覚醒時にいびきをかかないという事実から,睡眠による筋弛緩が少なくとも病因の一部を構成している可能性が示唆されるが,これは筋緊張が睡眠中に変化しうる唯一の要素であり,組織の大きさや付属物は変化しないためである。さらに,吸気により気道内腔が陰圧になり,そのため咽頭拡張筋が気道の開放を保てなくなれば,上気道は狭小化し,局所的な気流速度が(一定の吸気量に対して)高くなる。気流速度の上昇は,直接振動を促し,気道内腔の圧を下げ,さらに気道閉塞を進めるため,振動およびいびきが増大する。

以下のような構造的要因によって気道がすでに狭くなっている場合,いびきが生じる可能性がより高い:

  • 小顎症または顎後退症

  • 鼻中隔偏位

  • 組織腫脹を生じる鼻炎

  • 肥満

病因

原発性いびき

原発性いびきとは,いびきのうち,覚醒または過度の微小覚醒(arousal),気流制限,酸素飽和度低下,睡眠中の不整脈をいずれも伴わず,かつ日中の過度の眠気(excessive daytime sleepiness:EDS)がみられない人々に起こるものである。微小覚醒(arousal)とは,持続時間の短い(15秒未満)浅い眠りまたは覚醒への移行であり,通常は気づかれない。

睡眠呼吸障害

ときに,いびきは睡眠呼吸障害による現象であり,これは上気道抵抗症候群から閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA—{blank} 閉塞性睡眠時無呼吸症候群)まで幅広いスペクトラムをカバーする。いずれも上気道が閉塞する類似の病態生理を有するが,気道閉塞の程度および臨床的影響が異なる。主な臨床的影響としては,睡眠および/または気流の乱れがある。

OSA患者は,睡眠1時間当たりの無呼吸または低呼吸エピソードの回数(無呼吸/低呼吸指数[AHI])が5以上であることに加え,以下のうち1つ以上を有する:

  • 日中の眠気,意図しない睡眠エピソード,休息感の得られない睡眠,疲労,または不眠

  • 息こらえ,喘ぎ,または息詰まりによる覚醒

  • 患者の睡眠中の大きないびき,呼吸の中断,またはその両方をベッドパートナーが報告

OSAは重症度によって分類できる:軽症(5~15エピソード/時),中等症(16~30エピソード/時),または重症(> 30エピソード/時)。

上気道抵抗症候群は,EDSまたはその他のOSAの症候を引き起こすが,OSAの診断基準を完全には満たさない。

合併症

いびき自体による有害な生理学的影響は知られていないが,OSAは結果(例,高血圧,脳卒中,心疾患,糖尿病)を伴いうる。

危険因子

いびきの危険因子としては以下のものがある:

  • 高齢

  • 肥満

  • アルコールまたはその他の鎮静薬の使用

  • 慢性の鼻閉

  • 小さい顎または後退した顎

  • 男性

  • 閉経後

  • 妊娠

  • 気流を閉塞しうる構造異常(例,大きな扁桃,鼻中隔偏位,鼻茸)

家族性のリスクもある可能性がある。

評価

主な目標は,いびきをかく人の中でOSAの高リスク患者を同定することである。いびきをかく人の多くはOSAではないが,OSAの患者のほとんどはいびきをかく(正確な割合は不明)。

OSAのいくつかの重要な症候は主に他者によって気づかれるため,可能であればベッドパートナーまたは同室者にも問診を行うべきである。

病歴

現病歴の聴取では,いびきの重症度(頻度,持続時間,および大きさを含む)を対象に含めるべきである。また,いびきがベッドパートナーに与える影響の程度にも注意すべきである。いびきの重症度スケールを用いることがある。

系統的症状把握(review of systems)では,以下の指標に基づく睡眠障害など,OSAを示唆する症状がないか検討すべきである:

  • 覚醒回数

  • 無呼吸または喘ぎ/息詰まりエピソードの目撃

  • 休息感の得られない睡眠または朝の頭痛

  • EDS

エプワース眠気スケール(Epworth Sleepiness Scale―{blank} エプワース眠気スケール(Epworth Sleepiness Scale))は,日中の眠気を定量化するのに使用できる。STOP-BANGスコア({blank} 閉塞性睡眠時無呼吸症候群に関するSTOP-BANGリスクスコア)は,いびき患者におけるOSAのリスク予測に有用なツールである。

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閉塞性睡眠時無呼吸症候群に関するSTOP-BANGリスクスコア

評価項目

所見

いびき(Snoring)

大きないびき(話し声より大きい,またはドアを閉じていても隣室まで聞こえるほど大きい)

疲労感(Tired)

日中のしばしばの疲労感または眠気

観察(Observed)

睡眠中の呼吸停止が観察されている

血圧(BP

血圧高値または高血圧治療を受けている

BMI

> 35kg/m2

年齢(Age)

50歳以上

頸部周囲径(Neck circumference)

> 40cm

性別(Gender)

男性

所見が3つ以上 = OSAのリスクが高い。

所見が3つ未満 = OSAのリスクが低い。

BMI:body mass index;OSA = 閉塞性睡眠時無呼吸症候群。

既往歴の聴取では,OSAと関連しうる病態,特に高血圧,冠動脈虚血,心不全,脳卒中,胃食道逆流症(GERD),心房細動,うつ病,肥満(特に病的肥満),および糖尿病の有無に注意すべきである。アルコールの摂取量および飲酒の時刻と就寝時刻の関係を尋ねるべきである。薬歴聴取により,鎮静薬または筋弛緩薬の使用を同定できる可能性がある。

身体診察

診察開始時に,身長および体重を測定し,BMI(body mass index)を算出すべきである。

その他の診察項目は有用性が低いため,鼻および口の視診により閉塞の所見がないかを確認することに焦点を当てるべきである。徴候としては以下のものがある:

  • 鼻茸および鼻甲介の充血

  • 高口蓋

  • 舌,扁桃,または口蓋垂の腫大

  • 小さい下顎または後退した下顎

Mallampati分類3度または4度(口腔の視診で口蓋垂が基部しか見えない,または全く見えない—{blank} Mallampati分類)はOSAのリスク増大を示唆する。

Mallampati分類

改変Mallampati分類は以下の通りである:

  • 1度:扁桃,口蓋垂,および軟口蓋が完全に見える。

  • 2度:硬口蓋および軟口蓋,扁桃の上部,ならびに口蓋垂が見える。

  • 3度:軟口蓋および硬口蓋,ならびに口蓋垂の基部が見える。

  • 4度:硬口蓋のみが見える。

Mallampati分類

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 睡眠中の無呼吸または息詰まりを目撃されている

  • 朝の頭痛

  • エプワース眠気スケール ≥ 10

  • BMI ≥ 35

  • 非常に大きく,恒常的ないびき

所見の解釈

臨床的評価だけではOSAの診断に十分な信頼性はないが,診断の手がかりとなりうる。レッドフラグサインは明らかにOSAと相関する。しかしながら,これら全ての所見は連続体として起こり,カットオフ値および相対的な比重について広範な同意は得られていない。それでも,レッドフラグサインが多ければ多いほど,また所見がより重度であるほど,OSAの可能性は高まる。

検査

OSAの診断が疑われる場合は検査を行う;検査法は睡眠ポリグラフ(PSG—{blank} 検査)である。しかしながら,いびきは非常に一般的であるため,PSGの施行はOSAの臨床的疑いが相応に高い場合に限るべきである。レッドフラグサイン(特に無呼吸の目撃)がある患者,およびリストのスコアは満たさないがレッドフラグサインが複数ある患者に対して検査を行うのが妥当なアプローチである。

いびき以外に睡眠障害の症候がみられない患者には検査を行う必要はないが,そのような症候を検出するために臨床的なモニタリングを続けるべきである。

治療

その他の疾患,例えば慢性鼻閉やOSA({blank} 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 : 治療)などに伴ういびきの治療については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

総じて治療には,危険因子を管理するための一般的な対策に加えて,気道の開通や関連構造物の硬化を目的とする物理的処置が含まれる。

一般的な対策

原発性いびきに対していくつかの一般的対策を用いることができる。対策の効力は十分評価されていないが,それは主にいびきの認識は主観性が高いためである;しかしながら,特定の患者には有益となりうる。対策としては以下のものがある:

  • 就寝前数時間はアルコールおよび鎮静薬の摂取を避ける

  • 頭部を挙上して眠る(ウェッジなど,ベッドまたは体位を調整するための器具を使用するのが望ましい)

  • 体重を減らす

  • 耳栓を使用する

  • 睡眠時の人の配置を変更する(例,寝室を分ける)

  • 鼻閉を治療する(例,血管収縮薬および/またはコルチコステロイドスプレー,鼻腔拡張テープ)

口腔内装置

口腔内装置は睡眠中のみ装用させる;下顎前方移動装置や舌前方保持装置などがある。これらの装置は特別な訓練を受けた歯科医がフィッティングを行う必要がある。この領域での研究は少ないものの,これらの装置は軽症から中等症のOSA患者に有用であり,また単純ないびきに対して非常に効果的と一般に認識されている。

有害作用には,顎関節不快感,歯並びの悪化,過剰な流涎などがあるが,患者の多くはこの装置に耐えられる。

下顎前方移動装置(mandibular advancement device)が最も頻用されている。これらの装置は,上顎に対して下顎および舌を前方に押し出し,睡眠中の気道の虚脱を防ぐ。これらの装置には,調整できない固定型のものと調整可能型のものがあり,調整可能な装置では,最適な結果を得るため,最初のフィッティング後に下顎の前進距離を徐々に調整することができる。調整可能な装置は固定型の装置よりも効果的である。

舌前方保持装置(tongue-retaining device―TRD)は,吸引により舌を前方に保持する。TRDは下顎前方移動装置と比べて不快感が強く,おそらく効果もより小さいと考えられる。

持続陽圧呼吸療法(CPAP)

CPAP装置は,鼻または鼻と口に装着した小さなマスクを介して,上気道を持続的に陽圧に維持する({blank} 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 : CPAP)。CPAPにより吸気中に陰圧である必要がなくなるため,吸気時の気道の狭小化または虚脱を予防できる。そのため,OSAを非常に効果的に軽減し,原発性いびきに対しても効果的である。しかしながら,原発性いびきに対して使用する場合は,装置代金の支払いに保険がきかず,患者の動機も弱いため,使用例は限られている。OSAの有意な症状および長期的な合併症を回避するためには,患者は毎晩のCPAP使用に積極的であることが多いが,原発性いびきの管理に対して用いる場合は,問題は主に社会的なものであるため,患者はより消極的である。

手術

鼻腔の開存性低下がいびきを増悪させるため,気道閉塞の特定の原因(例,鼻茸,扁桃肥大,鼻中隔偏位)を外科的に是正することは,妥当ないびきの軽減法であると考えられる。しかしながら,この理論を実証した研究はまだない。

OSAに対して,口蓋やときに口蓋垂の構造を変化させる様々な咽頭外科手技が開発されている。非無呼吸性のいびきに対して有用なものもある。

口蓋垂軟口蓋咽頭形成術は,いびきに対して高い効果が得られうるが,その効果は数年しか持続しない可能性がある。これは全身麻酔を必要とする入院治療である;そのため,いびき単独に対する有用性は限られている。

このため,局所麻酔による外来で行うことのできるいくつかの手技が開発されている:

  • レーザーを用いた口蓋垂形成術は,口蓋垂軟口蓋咽頭形成術に比べ低侵襲である。有益と感じる患者もいるが,いびきの治療における有用性は証明されていない。

  • injection snoreplastyでは,軟口蓋の粘膜下に硬化剤を注入して,軟口蓋および口蓋垂を硬化させる。いびき単独に対する有用性の評価には,さらなる研究が必要である。

  • 高周波治療では,プローブを用いて軟口蓋に熱エネルギーを与える。いびきに対する有用性が示されているが,さらなる研究が必要である。

  • 口蓋インプラントは,ポリエチレン製で,軟口蓋に挿入して軟口蓋を硬化させることができる。3つの小型インプラントが使用される。いびき単独に対する有用性は証明されていない。

要点

  • いびき患者のうちOSAを有する者はごく一部であるが,OSA患者のほとんどがいびきをかく。

  • 夜間の無呼吸または息詰まりエピソード,日中の眠気,BMI高値などの臨床的危険因子は,OSAのリスクが高く,睡眠ポリグラフによる検査が必要な患者を同定するのに役立つ。

  • いびきを軽減させる一般的対策(例,アルコールおよび鎮静薬を避ける,頭部を挙上させて眠る,体重を減らす)を推奨する。

  • OSAによるいびきを治療するため,下顎前方移動装置,口蓋垂軟口蓋咽頭形成術,口蓋矯正,CPAPなどの特定の処置を考慮する。

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