Msd マニュアル

Please confirm that you are a health care professional

読み込んでいます

疼痛の概要

執筆者:

John Markman

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry;


Sri Kamesh Narasimhan

, PhD, University of Rochester

最終査読/改訂年月 2014年 4月

疼痛は受診理由となる頻度が最も高い症状である。疼痛には感覚的要素と感情的要素があり,しばしば急性と慢性に分類される。急性疼痛には,しばしば不安や交感神経活動の亢進(例,頻脈,呼吸数増加,血圧上昇,発汗,散瞳)が関連する。慢性疼痛では,交感神経活動の亢進は生じないが,自律神経徴候(例,疲労,性欲減退,食欲喪失)や抑うつ気分を伴うことがある。痛みにどの程度耐えられるかは,個人間で大きな差がみられる。

病態生理

急性疼痛は,通常は組織損傷に対する反応として生じ,末梢の痛覚受容器とそれに対応するAδおよびC線維で構成される感覚神経線維(侵害受容器)が活性化することによって発生する。

既存の組織損傷に関連する慢性疼痛慢性疼痛)は,これらの神経線維が持続的に活性化されることによって生じると考えられる。しかしながら,組織損傷の重症度から必ずしも慢性および急性疼痛の重症度を予測できるわけではない。慢性疼痛はまた,末梢または中枢神経系の既存の損傷や機能障害によって発生することもある(これらにより神経障害性疼痛が引き起こされる― 神経障害性疼痛)。

侵害受容性疼痛には体性痛と内臓痛がある。体性神経の痛覚受容器は,皮膚,皮下組織,筋膜,その他の結合組織,骨膜,骨内膜,および関節包に存在する。これらの受容器が刺激されると,通常は限局的な鋭痛または鈍痛が生じるが,皮膚または皮下組織が障害された場合は灼熱感が生じることもまれではない。内臓神経の痛覚受容器は,ほとんどの内臓とその周囲の結合組織に存在する。管腔臓器の閉塞による内臓痛は,局在が不明瞭で痙攣痛様の深部痛であり,遠隔部位の皮膚に関連痛を伴うことがある。内臓の被膜またはその他の深部結合組織の損傷による内臓痛は,より局在のはっきりした鋭痛となることがある。

心理的因子は疼痛の強度を高度に修飾する。思考および感情は,疼痛の知覚において重要な役割を果たしている。多くの慢性疼痛患者は,特に抑うつや不安など,心理的苦痛も抱えている。精神障害としての特徴をもつ一部の症候群(例,一部の身体症状症― 身体症状症)は患者の自己報告による疼痛によって定義されていることから,疼痛の原因が不明確な患者は,精神障害があると誤って解釈され,そのために適切な診療を受けられずにいる場合も多い。

疼痛は,おそらくは認知処理に大きな負荷をかけることにより,注意,記憶,集中,思考内容など複数の認知領域を障害する。

多くの疼痛症候群は多因子性である。例えば,慢性腰痛やほとんどの癌性疼痛症候群は,侵害受容の要素が著明である一方,神経損傷による神経障害性疼痛も伴っていることがある。

疼痛の伝達および修飾

痛覚線維は後根神経節から脊髄に入り,後角でシナプスを形成する。そこから神経線維は対側へ交差し,側索を上行して視床に到達した後,続いて大脳皮質に向かう。

反復刺激(例,疼痛が長期間続く状態)によって脊髄後角のニューロンが感作されると,比較的小さな末梢刺激でも疼痛が生じるようになる(ワインドアップ現象)。末梢神経と中枢神経系の他のレベルの神経も感作される結果,皮質受容野において疼痛知覚亢進の維持につながる長期的なシナプス変化(リモデリング)が生じることがある。

組織損傷時に放出される物質(炎症カスケードに関与する物質も含む)によって,末梢の侵害受容器が感作される可能性もある。そのような物質としては,血管作動性ペプチド(例, カルシトニン遺伝子関連タンパク,サブスタンスP,ニューロキニンA)やその他のメディエータ(例,プロスタグランジンE2,セロトニン,ブラジキニン,アドレナリン)などがある。

疼痛シグナルは,エンドルフィン類(例,エンケファリン)やモノアミン類(例,セロトニン, ノルアドレナリン)などの多くの神経化学メディエータにより,分節内と下行路上の複数の地点で修飾を受ける。詳細な機序は解明されていないが,これらのメディエータが相互作用を起こすことで,疼痛の知覚と疼痛に対する反応が増幅,維持,または減弱する。これらは,特定の受容体や神経化学物質と相互作用する中枢神経系作用薬(例,オピオイド,抗うつ薬,抗てんかん薬,膜安定化薬)の慢性疼痛治療における潜在的な有益性に関係している。

心理的因子は重要な修飾因子である。これらの因子は,患者が疼痛についてどう語るか(例,平静を保つ,イライラする,苦痛を訴える)や疼痛にどう反応するか(例,顔を歪めるかどうか)に影響を与えるのみならず,痛覚経路上の神経伝達を修飾する神経出力をも引き起こす。遷延性疼痛に対する心理的反応は,中枢神経系の他の因子と相互作用を起こして,長期的な疼痛知覚の変化を誘導する。

老年医学的重要事項

高齢者における疼痛の最も一般的な原因は筋骨格系疾患である。しかしながら,疼痛は慢性かつ多因子性のことが多く,原因が明確でない場合もある。

NSAID

NSAIDによる潰瘍および消化管出血のリスクは,65歳以上では中年期よりも3~4倍高くなる。リスクは用量と治療の継続期間に依存する。消化管の有害作用が生じるリスクの高い高齢患者には,細胞保護効果のある薬剤(通常はプロトンポンプ阻害薬,ときにプロスタグランジン製剤のミソプロストール)の併用が有益となりうる。

新たに知られるようになった心血管毒性のリスクは,おそらく非選択的COX-1およびCOX-2阻害薬や選択的COX-2阻害薬(コキシブ系薬剤)の使用時に発生すると考えられ,心血管系危険因子を有する可能性が高い高齢者(例,心筋梗塞,脳血管疾患,または末梢血管疾患の既往)では特に重要である。

NSAIDは非選択的か選択的かを問わず腎機能を障害して,ナトリウム・水貯留を引き起こす可能性があり,高齢者(特に腎疾患,肝疾患,心不全,または循環血液量減少がある場合)には慎重に使用するべきである。まれに,NSAIDは高齢者に認知障害や人格変化を引き起こす。インドメタシンは他のNSAIDよりも高齢者に錯乱を引き起こしやすく,使用を避けるべきである。

高齢者では重篤な毒性のリスクが全体的に高いことを考慮すると,NSAIDは可能であれば低用量で使用すべきであり,短期間の治療法の採用や有効性を確認するための治療の中断を考慮すべきである。NSAIDの鎮痛効果は炎症による疼痛に最も発揮されやすい。一般的に処方される他のNSAIDより心血管系の有害作用を起こすリスクが低いとみられることから,ナプロキセンの使用が望まれる場合がある。

オピオイド

高齢者では,オピオイドは半減期が延長し,若年患者の場合より強い鎮痛効果を示す可能性がある。慢性疼痛のある高齢患者では,短期間のオピオイド使用により疼痛の軽減と身体機能の改善が得られるが,精神機能は障害されるようである。また高齢者では,オピオイドに関連した便秘および尿閉が問題になりやすい傾向がある。高齢者における治療開始後2週間の骨折リスクは,NSAID使用時よりオピオイド使用時の方が高い。

他のオピオイドと比較して,オピオイド作動薬/拮抗薬であるブプレノルフィンの経皮吸収剤は,腎機能不全を有する高齢患者におけるリスク・ベネフィットプロファイルがより良好である。

ここをクリックすると家庭版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP