医師が脳死を宣告するには,脳損傷の器質的または代謝的な原因が判明し,かつ麻酔または筋弛緩作用を有する可能性がある薬剤の使用(特に自己投与の場合)が除外されなければならない。
35℃未満の低体温の場合,徐々に36℃以上まで体温を上げる必要があり,またてんかん重積状態が疑われる場合は脳波検査を行うべきである。典型的には6~24時間かけて一連の検査が行われる( 脳死判定のガイドライン(1歳以上の患者の場合))。
ときに脳活動または脳血流がないことを確認するために脳波および脳灌流の検査が用いられることがあり,家族に追加的な証拠を示すのに役立つが,これらの検査は通常は必要ない。これらの検査が適応となるのは,血行動態的に無呼吸テストに耐えられない場合と,施行する神経学的診察を1つに限るのが望ましい場合(例,移植のための臓器採取を可能にする)である。
脳死判定のガイドライン(1歳以上の患者の場合)
脳死を宣告するには,9項目全てが確認されなければならない:
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1.患者の近親者または他の親しい人々に対する告知に相応の努力がなされている。
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2.全ての脳機能の不可逆的な喪失を十分に説明できるだけの昏睡の原因が判明している。
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3.中枢抑制薬,低体温(< 35℃),および低血圧(MAP < 55mmHg)が除外されている。神経筋遮断薬の作用が神経学的所見に影響を及ぼしていない。
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4.運動が観察される場合は,その全ての原因を完全に脊髄機能に帰することができる。
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5.咳嗽反射,咽頭反射,またはその両方について検査を行い,その消失が示されている。
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7.鼓膜に冷水を吸引させる冷温刺激に対して反応が認められない。
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8.8分間以上の無呼吸テストで,呼吸運動が認められず,Paco2が検査前値から20mmHgを超える上昇を記録する。
手順:無呼吸テストは気管内チューブを人工呼吸器から外すことによって実施する。酸素(6L/min)は気管内チューブを介して留置したカニューレから拡散によって供給できる。Paco2が自然上昇することによる換気刺激にもかかわらず,自発呼吸が8~12分間にわたってみられない。
注:無呼吸テストを実施する際は,低酸素症および低血圧のリスクを最小限にするよう最大限の注意を払うべきであり,これは患者が臓器提供者となる可能性がある場合は特に重要である。検査中に動脈血圧が有意に低下する場合は,検査を中止すべきであり,動脈血を採取して,Paco2が55mmHgを超えたかどうか,または20mmHgを超える上昇を認めたどうかを判定すべきである。この所見により脳死の臨床診断が確認される。
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9.以下の4つの基準のうち1つ以上が確定している:
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a. 6時間以上間隔を空けた2回の検査によって項目2~8が確認されている。
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1回目の検査から少なくとも2時間後の2回目の検査で項目2~8が確認される。
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通常の血管造影,経頭蓋ドプラ超音波,または99mTc-HMPAO(テクネチウム99mヘキサメチルプロピレンアミンオキシム)脳血流シンチグラフィーにより,頭蓋内血流がないことが証明される。
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1回目の検査から少なくとも2時間後の2回目の検査で項目2~8が確認される。
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d. 損傷または疾患が評価の妨げとなって項目2~8のいずれかが判定できない場合(例,広範な顔面損傷では温度刺激検査が不可能である)は,以下の基準を適用する:
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通常の血管造影,経頭蓋ドプラ超音波,または99mTc-HMPAO脳血流シンチグラフィーで頭蓋内脳血流を認めない。
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1回目の検査から6時間後の2回目の検査で全ての評価可能項目が確認される。
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Adapted from American Academy of Neurology Guidelines (1995).
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