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骨粗鬆症

執筆者:

Marcy B. Bolster

, MD, Harvard Medical School

レビュー/改訂 2020年 2月
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骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよびビタミンDの補給,骨および筋肉の力を最大化し,バランスを改善し,転倒のリスクを最小限にするための運動,ならびに骨量を温存するまたは骨新生を促進する薬物療法がある。

骨粗鬆症の病態生理

骨は絶えず形成および吸収されている。正常では,骨形成と骨吸収は非常によく均衡している。骨芽細胞(骨の有機基質を形成して骨を無機化する細胞)および破骨細胞(骨を吸収する細胞)は,副甲状腺ホルモン(PTH),カルシトニンエストロゲン,ビタミンD,様々なサイトカイン,およびプロスタグランジンなどのその他の局所因子によって調節されている。

骨量は男女において30歳頃にピークに達する。黒人は白人およびアジア人より骨量のピークが高く,ヒスパニックは中間の値である。男性は女性よりも骨量が多い。骨量がピークに達した後,プラトーが約10年間続き,その間骨形成量は骨吸収量とほぼ等しい。その後,1年に0.3~0.5%のペースで骨量の減少が発生する。女性の骨量減少は閉経とともに開始し,5~7年の間約3~5%/年まで加速して,その後減少率が鈍る。

骨粗鬆症の骨量減少は,皮質骨および骨梁骨(海綿骨)に影響を及ぼす。皮質骨の厚さと海綿骨の骨梁の数とサイズが減少し,結果として多孔性が増す。海綿骨骨梁が途切れたり,または完全に欠如することがある。海綿骨骨梁の減少は,骨梁がより多孔性で骨の代謝回転率がより高いため,皮質骨の減少よりも急速に起こる。しかし,両方のタイプの減少が骨格の脆弱性の一因となる。

脆弱性骨折

脆弱性骨折は,正常な骨が折れると予想されうる外傷よりも軽い外傷の後に起こる。立った状態以下の高さからの転倒(ベッドからの転落を含む)による骨折は一般的に脆弱性骨折と考えられる。脆弱性骨折の頻度が最も高いのは以下の部位である:

鼻, 肋骨 肋骨骨折 胸部の鈍的損傷により1本以上の肋骨が骨折する可能性がある。 ( 胸部外傷の概要も参照のこと。) この胸部X線写真では,右肋骨に複数の骨折がみられる(写真では左側)。 一般的には,肋骨骨折は胸壁への鈍的損傷の結果生じ,通常は強い力(例,急激な減速,野球のバット,重大な転倒による)が関与するが,ときに高齢者の場合,軽度または中等度の力(例,軽... さらに読む 肋骨骨折 鎖骨 鎖骨骨折 鎖骨骨折は最も多い骨折の1つであり,特に小児で多い。診断は単純X線による。ほとんどの型は三角巾により治療する。 ( 骨折の概要も参照のこと。) 鎖骨骨折は通常,肩関節の側方から落ちる転倒,または頻度は低いが直接打撃により起こる。 従来から,治療は以下の分類に基づいて行われている。... さらに読む 鎖骨骨折 ,および 中足骨 疲労骨折 疲労骨折は小さい不完全骨折であり,中足骨骨幹部に起こることが多い。原因は反復性の荷重負荷である。 疲労骨折は通常,個別の損傷(例,転倒,打撃)から発生するのではなく,反復的な負荷やオーバーユースによって骨を支持する筋肉が負荷を吸収しきれなくなり生じる。疲労骨折が起こる部位には,近位大腿骨,骨盤,または下肢がある。50%以上が下腿で起こり,... さらに読む などの部位の骨折は,骨粗鬆症関連骨折とはみなされない。

骨粗鬆症の分類

骨粗鬆症は原発性疾患として,または何らかの他の因子により二次的に発生することがある。骨折の部位は,原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症で同様である。

原発性骨粗鬆症

女性の骨粗鬆症の95%以上および男性の骨粗鬆症の約80%は,原発性であるため基礎となる原因が同定できない。ほとんどの症例は,閉経後女性および高齢男性で発生する。しかしながら,特定の病態により,原発性骨粗鬆症患者の骨量減少が加速することもある。男女いずれにおいても性腺機能不全が重要な因子であり,その他の因子としては,カルシウム摂取量の減少,ビタミンDの低値,特定の薬剤, 副甲状腺機能亢進症 原発性副甲状腺機能亢進症 高カルシウム血症とは,血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を上回るか,または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回った状態である。主な原因には副甲状腺機能亢進症,ビタミンD中毒,がんなどがある。臨床的特徴としては多尿,便秘,筋力低下,錯乱,昏睡などがある。診断は,イオン化カル... さらに読む などがある。一部の患者は,青年期の骨成長の時期にカルシウム摂取が不十分であり,そのため骨量がピークに達しない。

骨量減少の主な機序は,骨量の低下および微細構造の劣化に至る骨吸収の亢進であるが,ときに骨形成が障害される。骨量減少の機序には以下のものが挙げられる:

  • サイトカイン産生の局所的な変化,特に破骨細胞の分化および成熟を促進することにより骨吸収を亢進させるRANKL(receptor activator of nuclear factor κβ ligand)などのサイトカインが関与するもの

  • 骨リモデリング時の骨形成反応の障害(おそらく加齢に伴う骨芽細胞の減少および活動性低下に起因し,タンパク質であるスクレロチンのサイトカインを介した増加と部分的に関連する)

  • 骨吸収に影響を及ぼす他の因子(副甲状腺ホルモン[PTH]やビタミンDなど)

続発性骨粗鬆症

続発性骨粗鬆症は女性における骨粗鬆症の5%未満を占め,男性では約20%を占める。原因( Professional.see table 続発性骨粗鬆症の原因 続発性骨粗鬆症の原因 続発性骨粗鬆症の原因 )がさらに骨量減少を加速させ,原発性骨粗鬆症患者の骨折リスクを増大させる可能性がある。

骨粗鬆症の危険因子

骨成長には荷重負荷などのストレスが必要なため,不動状態または長時間の座位は骨量減少を招く。BMIが低いと骨量が減少しやすい。白人およびアジア人など,特定の民族では骨粗鬆症のリスクがより高い。食事によるカルシウム,リン,マグネシウム,およびビタミンDの摂取が不十分であることは,内因性のアシドーシスと同様に,骨量減少の素因となる。喫煙および飲酒も骨量に悪影響を及ぼす。骨粗鬆症の家族歴,特に親の股関節骨折の既往も危険因子である。一度脆弱性骨折を起こしたことがある患者では,別の臨床的な(症候性の)骨折および臨床的に無症状の脊椎圧迫骨折のリスクが高い。

骨粗鬆症の症状と徴候

骨粗鬆症患者は,骨折が起こらない限り無症状である。脊椎以外の骨折は典型的には症状を伴うが,脊椎圧迫骨折の約3分の2は無症状である(ただし,患者は変形性関節症など他の原因のために基礎にある慢性の背部痛を有することがある)。症状を伴う脊椎圧迫骨折は,痛み(通常は放散しない)が急性に発症することで始まり,荷重負荷で悪化し,脊椎に圧痛点を伴うことがあり,典型的には1週間で軽快し始める。残存する痛みは数カ月続くことや絶えず続くこともあり,その場合はさらなる骨折または脊椎の基礎疾患を疑うべきである。

多発性の胸椎圧迫骨折は,最終的に頸椎前弯の増強を伴う背部の脊柱後弯症(dowager's hump)を引き起こす。脊柱の筋肉および靱帯にかかる異常なストレスが,慢性のうずくような鈍痛を引き起こすことがある(特に腰部で)。胸郭内の容積減少による息切れ,および/または胸郭が骨盤に近づくにつれて腹腔が圧迫されることによる早期満腹感を来すことがある。

骨粗鬆症の診断

  • 二重エネルギーX線吸収法

  • 単純X線(一般的に施行されるが,診断には至らない)

二重エネルギーX線吸収法(DXA)

DXAは以下の患者に推奨される:

  • 65歳以上の全ての女性

  • 危険因子(骨粗鬆症の家族歴,BMI低値[例,以前は体重57.6kg未満と定義されていた],ならびに喫煙および/または骨量減少のリスクが高い薬剤[例,グルココルチコイド]の使用など)を有する閉経後から65歳までの女性

  • 脆弱性骨折を経験したあらゆる年齢の患者(男女とも)

  • 画像検査で骨密度低下の所見があるか,または無症状の脊椎圧迫骨折が偶然見つかった患者

  • 続発性骨粗鬆症のリスクがある患者

骨密度の低下(およびそれに伴う骨折のリスク増加)が単純X線により示唆されることがあるが,骨密度測定によって確定すべきである。骨密度の低下は,スクリーニングとしての踵または指のDXA(例,健康フェアで実施される)でも示唆されることがある。スクリーニングとしての踵または指のDXAで異常が認められた場合は,診断を確定するために通常のDXAが必要となる。

骨密度(g/cm2)の測定にはDXAが用いられ,これにより骨減少症または骨粗鬆症(骨軟化症がない場合)が定義され,骨折のリスクが予測され,また,DXAは治療に対する反応の経過観察にも使用可能である。腰椎,股関節,橈骨遠位端,または全身の骨密度を測定できる。(定量的CTでは,脊椎または股関節の同様の測定値が得られるが,現在のところ広く普及してはいない。)骨密度は理想的には2部位(腰椎および片側の股関節など)で測定するが,一部の施設では脊椎および両股関節で測定する。

脊椎または股関節が検査に使用できない場合(例,先行する人工股関節全置換術による金属類のため),橈骨遠位端を測定することがある(DXAの結果で「橈骨遠位端1/3」と呼ばれる)。橈骨遠位端は,副甲状腺機能亢進症で骨量減少が最もよくみられる部位であるため,副甲状腺機能亢進症患者でも測定すべきである。

DXAの結果はTスコアおよびZスコアとして報告される。Tスコアは,患者の骨密度が同性かつ同じ民族の健康な若年者の骨量ピークから異なっている標準偏差の値に相当する。世界保健機関(World Health Organization:WHO)は骨減少症および骨粗鬆症を定義するTスコアのカットオフ値を規定している。-1.0未満で-2.5を超えるTスコアは骨減少症と定義される。-2.5以下のTスコアは骨粗鬆症と定義される。

Zスコアは,患者の骨密度が同年齢で同性の人の骨密度から異なる標準偏差の値に相当し,小児,閉経前女性,または50歳未満の男性に用いるべきである。Zスコアが-2.0以下であれば,骨密度は患者の年齢にしては低く,骨量減少の二次的な原因を考慮すべきである。

現在の中心的なDXAシステムでは下位胸椎および腰椎における脊椎変形も評価でき,この方法をvertebral fracture assessment(VFA)と称する。脊椎変形は,外傷がない場合,臨床的に無症状のものでも,骨粗鬆症の診断に役立ち,将来の骨折リスク増加が予測される。VFAは3cm以上身長が低下した患者で有用である可能性がより高い。VFAの結果,異常が疑われる場合は,診断を確定するために単純X線を施行すべきである。

薬物療法 骨量の温存 骨量の温存 の必要性は骨折の確率(DXAの結果および他の因子に依存する)に基づく。骨折リスク評価(FRAX)スコアFracture Risk Assessment Toolを参照)は,未治療の患者における主要な骨粗鬆症性骨折(股関節,脊椎,前腕,または上腕骨)および股関節骨折の10年間の発生確率を予測する。スコアは骨量減少および骨折の重要な危険因子を表している。FRAXスコアが特定の閾値(米国では,主要な骨粗鬆症性骨折の確率20%以上または股関節骨折の確率3%)を超える場合,薬物療法を推奨すべきである。FRAXスコアは,転倒の既往,腰椎の骨密度,脊椎骨折の家族歴など,いくつかの因子を考慮しないため,その使用には限界がある。

一連のDXAによる,進行中の骨量減少または治療に対する反応のモニタリングは,同じDXA装置を用いて行うべきであり,比較にはTスコアではなく実際の骨密度(g/cm2)を用いるべきである。骨減少症の患者では,DXAを定期的に繰り返し,骨量減少が進行しているか,または治療を必要とする明らかな骨粗鬆症が発生しているかを判断すべきである。フォローアップDXAの頻度は患者毎に異なる。DXAは2~3年毎に行われることが多いが,例えば,骨密度が正常で骨折リスクが低い場合,ときにより低い頻度で行うことができる。骨粗鬆症の治療を受けている患者では,DXAを通常2~3年毎に繰り返すべきであるが,ときにグルココルチコイドの投与を受けている患者ではより頻回に行うべきである。骨密度が安定または改善すれば骨折リスクの低下が予測され,治療に対する反応性が示される。DXAの再施行による骨密度モニタリングは,骨粗鬆症治療に対する反応が十分ではないために骨折リスクが高い患者を同定する上で有用となりうる(1 診断に関する参考文献 骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよび... さらに読む 診断に関する参考文献 )。骨粗鬆症の治療を受けており,連続的なDXAで骨密度が有意に低下(同じ装置を用いて測定した場合に低下)している患者では,アドヒアランスと骨量減少の二次的な原因を評価すべきである。

単純X線

骨は放射線透過性の亢進および骨梁構造の消失を示すが,骨の約30%が失われるまでは示されない。しかしながら,単純X線は骨量減少に起因する骨折の記録に重要である。椎体高の減少および椎体上下の陥凹の増大が脊椎圧迫骨折の特徴である。胸椎骨折により,椎体前方の骨の楔状化が生じることがある。長管骨では,皮質が薄い場合もあるが,骨膜の表面は滑らかなままである。T4またはそれより上位の脊椎骨折では,原発性骨粗鬆症よりもむしろ悪性腫瘍が懸念される。重度の背部痛および限局的な棘突起圧痛がある高齢患者では,脊椎の単純X線を考慮すべきである。

コルチコステロイド誘発性骨粗鬆症は脊椎圧迫骨折を引き起こす可能性が最も高いが,骨粗鬆症性骨折が好発する他の部位で骨折を引き起こすこともある。副甲状腺機能亢進症は,それにより骨膜下吸収または嚢胞性骨病変(まれ)が生じる場合に鑑別できる。骨軟化症により,骨粗鬆症におけるものと類似した画像検査上の異常が生じることがある( Professional.see sidebar 骨減少症:骨粗鬆症と骨軟化症の鑑別 骨減少症:骨粗鬆症と骨軟化症の鑑別 骨減少症:骨粗鬆症と骨軟化症の鑑別 )。

骨減少症:骨粗鬆症と骨軟化症の鑑別

骨減少症は骨量の減少である。2つの代謝性骨疾患(骨粗鬆症および骨軟化症)が骨量を減少させる。

骨粗鬆症では,骨量は減少するが,骨基質量に対する骨塩量の比率は正常である。

骨軟化症では,骨基質量に対する骨塩量の比率が低い。

骨粗鬆症は,低い骨量のピーク,骨吸収の増加,および骨形成の障害の組合せに起因する。骨軟化症は,通常は重度のビタミンD欠乏症または異常なビタミンD代謝のために石灰化が障害されることに起因する(ビタミンD ビタミンD欠乏症および依存症 日光への曝露が不十分であると,ビタミンD欠乏症が起こりやすくなる。欠乏症により,骨石灰化が障害され,小児ではくる病,成人では骨軟化症が引き起こされ,また骨粗鬆症の一因となる可能性がある。診断では,血清25(OH)D(D2およびD3)の測定を行う。治療としては通常,ビタミンDを経口投与し,必要に応じてカルシウムおよびリンを補給する。しばしば... さらに読む を参照)。骨軟化症は,ビタミンDの吸収を阻害する疾患(例, セリアック病 セリアック病 セリアック病は,遺伝的感受性を有する者に免疫を介して発生する疾患で,グルテン不耐症によって引き起こされ,粘膜炎症および絨毛萎縮が生じ,その結果,吸収不良を来す。症状としては通常,下痢や腹部不快感などがみられる。診断は小腸生検により行い,生検では特徴的であるが非特異的な病理的変化である絨毛萎縮が示され,この変化は厳格なグルテン除去食で消失す... さらに読む セリアック病 )および特定の薬物(例, 抗てんかん薬 てんかんの薬物治療 単剤で全ての発作型をコントロールできる薬剤はなく,必要になる薬剤は患者毎に異なる。複数の薬剤が必要になる患者もいる。(American Academy of Neurology and the American Epilepsy Societyの難治性てんかんの治療[treatment... さらに読む )によって引き起こされることがある。米国では骨軟化症よりも骨粗鬆症がはるかに多くみられる。2つの疾患は併存することがあり,それらの臨床的発現は類似している;さらに,骨粗鬆症で軽度から中等度のビタミンD欠乏症が起こりうる。

骨痛がある,繰り返す肋骨骨折またはまれな骨折がある,およびビタミンD濃度が継続して非常に低い状態にあるときには,骨軟化症を疑うべきである。2つの疾患を決定的に鑑別するために,テトラサイクリンで標識する骨生検を行うことができるが,必要になることはまれである。

その他の検査

Zスコアが-2.0以下の患者の場合または二次的な骨量減少の原因が臨床的に疑われる場合は,骨量減少の二次的な原因の評価を考慮すべきである。臨床検査には通常は以下を含めるべきである:

体重減少がある患者については,悪性腫瘍だけでなく消化管疾患(例, 吸収不良 診断 吸収不良とは,食物中の物質が十分に同化されない状態であり,消化,吸収,または輸送の障害に起因する。 吸収不良は,多量栄養素(例,タンパク質,炭水化物,脂肪),微量栄養素(例,ビタミン,ミネラル),またはその両方に影響を及ぼすことがあり,結果として便中への過剰排泄,栄養欠乏,および消化管症状が起こる。吸収不良は,ほぼ全ての栄養素の吸収障害を... さらに読む セリアック病 診断 セリアック病は,遺伝的感受性を有する者に免疫を介して発生する疾患で,グルテン不耐症によって引き起こされ,粘膜炎症および絨毛萎縮が生じ,その結果,吸収不良を来す。症状としては通常,下痢や腹部不快感などがみられる。診断は小腸生検により行い,生検では特徴的であるが非特異的な病理的変化である絨毛萎縮が示され,この変化は厳格なグルテン除去食で消失す... さらに読む 診断 炎症性腸疾患 炎症性腸疾患の概要 炎症性腸疾患(IBD)は,消化管の様々な部位で再燃と寛解を繰り返す慢性炎症を特徴とする病態であり,下痢および腹痛を引き起こし, クローン病と 潰瘍性大腸炎が含まれる。 消化管粘膜における細胞性免疫応答により炎症が生じる。炎症性腸疾患の正確な病因は不明であるが,多因子性の遺伝的素因を有する患者において,腸内常在菌叢が異常な免疫反応を引き起こ... さらに読む )のスクリーニングを行うべきである。骨生検は,まれな症例に限り行う(例,明らかな原因のない若年の脆弱性骨折患者,他の骨疾患に罹患している可能性がある慢性腎臓病患者,持続的にビタミンD濃度が非常に低く骨軟化症の罹患が疑われる患者)。

空腹時における血清中の架橋C-テロペプチド(CTX)または尿中の架橋N-テロペプチド(NTX)の値は骨吸収の亢進を反映する。ルーチンに臨床的に使用するには信頼度は様々であるが,CTXおよびNTXは,骨折リスクの予測,治療に対する反応のモニタリング,または休薬日の時期設定に役立つことがある(2 診断に関する参考文献 骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよび... さらに読む 診断に関する参考文献 )。

診断に関する参考文献

  • 1.Leslie WD, Majumdar SR, Morin SN, Lix LM: Change in bone mineral density is an indicator of treatment-related antifracture effect in routine clinical practice: A registry-based cohort study.Ann Intern Med 165(7):465–472, 2016.doi: 10.7326/M15-2937.

  • 2.Lorentzon M, Branco J, Brandi ML et al: Algorithm for the use of biochemical markers of bone turnover in the diagnosis, assessment, and follow-up or treatment of osteoporosis.Adv Ther 36(10): 2811–2824, 2019.doi: 10.1007/s12325-019-01063-9.

骨粗鬆症の治療

  • 危険因子の是正

  • カルシウムおよびビタミンDの補給

  • 骨吸収抑制薬(例,ビスホスホネート,ホルモン補充療法,選択的エストロゲン受容体モジュレーター,RANKL[receptor activator of nuclear factor κβ ligand]阻害薬[デノスマブ])

  • タンパク同化薬(例,テリパラチドやアバロパラチドなどの副甲状腺ホルモン[PTH]アナログ)

  • ロモソズマブ(骨吸収抑制作用と同化作用の両方を有する抗スクレロスチンモノクローナル抗体)

骨粗鬆症の治療の目標は,骨量の温存,骨折の予防,痛みの軽減,および機能の維持である。

骨量の温存

骨量減少の速度は薬剤により遅らせることができるが,最適な骨密度を維持するためには,十分なカルシウムおよびビタミンDの摂取ならびに身体活動が極めて重要である。是正可能な危険因子にも対処すべきである。

危険因子の是正法としては,荷重運動の増加,カフェインおよびアルコール摂取の制限,禁煙などが考えられる。至適な荷重運動の量は確立されていないが,1日平均30分間が推奨される。理学療法士は,安全な運動プログラムを作成し,日常活動を安全に行う方法を実地に説明して転倒および脊椎骨折のリスクを最小化できる。

全ての男女が少なくとも1000mgのカルシウム元素を毎日摂取すべきである。閉経後女性および高齢男性,ならびに思春期の成長期,妊娠期,および授乳期などカルシウムの必要量が増加する時期には,1200~1500mg/日(食事からの摂取量を含む)の摂取が推奨される。カルシウムは理想的には食事から摂取すべきであり,食事からの摂取が不十分な場合にサプリメントを用いる。カルシウムのサプリメントは,炭酸カルシウムまたはクエン酸カルシウムの形で摂取されることが最も多い。無酸症患者ではクエン酸カルシウムの方がよく吸収されるが,どちらも食事とともに摂取すればよく吸収される。プロトンポンプ阻害薬の投与を受けている患者または 胃バイパス術 肥満外科手術 肥満外科手術は,減量を目的として胃,腸管,またはその両方に外科的に改変を加える治療である。 米国では,毎年約160,000例の肥満外科手術が行われる。より安全な腹腔鏡的アプローチが開発されたことで,この手術はより広く普及した。 ( 肥満も参照のこと。) 肥満外科手術の適応と判断するには,患者が以下を満たしている必要がある:... さらに読む を受けたことのある患者は,クエン酸カルシウムを摂取して最大の吸収量を確保すべきである。カルシウムは500~600mgに分割した量で1日2回または1日3回服用すべきである。

ビタミンDの補給は600~800単位/日が推奨される。ビタミンD欠乏症の患者には,さらに高い用量が必要になることがある。ビタミンDの補給は,植物由来の合成型であるエルゴカルシフェロールもおそらく容認されるが,通常は天然型ビタミンDのコレカルシフェロールとして投与される。25-ヒドロキシビタミンDの濃度は30ng/mL以上であるべきである。

ビスホスホネートが薬物療法の第1選択薬である。骨吸収を阻害することにより,ビスホスホネートは骨量を温存し,脊椎骨折および股関節骨折を最大で50%減少しうる。ビスホスホネート療法を3カ月行うと骨の代謝回転が低下し,治療開始から早ければ1年後には明らかに骨折リスクが低下する。DXAは,治療への反応をモニタリングするために連続的に行う場合,2年またはそれ以上の間隔で行うべきである。ビスホスホネートは経口投与または静脈内投与が可能である。ビスホスホネートとしては以下のものがある:

  • アレンドロン酸(10mgの1日1回または70mgの週1回経口投与)

  • リセドロン酸(5mgの1日1回経口投与,35mgの週1回経口投与,または150mgの月1回経口投与)

  • ゾレドロン酸(5mgの年1回静脈内投与)。

  • イバンドロン酸の経口投与(1カ月毎に150mg)または静脈内投与(3カ月毎に3mg)

経口投与のビスホスホネートは,空腹時にコップ1杯(8オンス[250mL])の水とともに服用する必要があり,服用後少なくとも30分間(イバンドロン酸では60分間)は体を起こした状態を保たなければならず,その間は何も口から摂取してはならない。これらの薬剤は,クレアチニンクリアランスが35mL/minを超える患者で安全に使用できる。経口投与のビスホスホネートは食道への刺激を引き起こすことがある。通過時間を遅らせる食道疾患,および上部消化管疾患の症状は,経口投与のビスホスホネートに対する相対的禁忌である。患者が経口のビスホスホネートに耐えられないまたは遵守しない場合はビスホスホネートの静注が適応となる。

ビスホスホネートまたは デノスマブ 骨量の温存 骨量の温存 による骨吸収抑制療法を受けている患者において, 顎骨壊死 顎骨壊死(ONJ) 顎骨壊死は,下顎骨または上顎骨の露出を伴う口腔病変である。疼痛が生じることもあれば,無症状のこともある。診断は,骨の露出が8週間以上みられることによる。治療は,限局的掻爬,抗菌薬,および含嗽液による。 顎骨壊死(ONJ)には一致して受け入れられている定義または病因はないが,一般的には下顎骨または上顎骨の露出を伴う口腔病変であると考えられて... さらに読む および非定型大腿骨骨折がまれに報告されている。危険因子としては,侵襲的歯科処置,静注のビスホスホネートの使用,がんなどがある。骨粗鬆症関連骨折を減らすベネフィットは,この小さなリスクをはるかに上回る。侵襲的歯科処置の数週間または数カ月前から患者にビスホスホネートを中止させる歯科医師もいるが,中止により顎骨壊死のリスクが低下するかどうかは不明である。

長期にわたるビスホスホネートの使用は,非定型大腿骨骨折のリスクを増加させることがある。非定型大腿骨骨折は,軽微な外傷により,または外傷なしに,大腿骨骨幹部中1/3に生じ,数週間または数カ月間の大腿部痛が先行することがある。骨折は両側性の場合がある。

骨折の発生を最小限に抑えるために,次の場合にビスホスホネートの中止(ビスホスホネートの休薬期間)を考慮すべきである:

  • 骨粗鬆症(DXAによる)であるが骨量減少に対する他の危険因子がほとんどまたは全くない患者での約3~5年間の使用後(ゾレドロン酸の静脈内投与で3年,ビスホスホネートの経口投与で5年)

  • 骨粗鬆症(DXAによる)でさらに脊椎骨折の所見などの有意な危険因子がある患者での約5~10年間の使用後

ビスホスホネートによる治療の断続的な休止(休薬),および治療の開始と期間は,年齢,併存症,骨折の既往,DXAの結果,および転倒リスクなどの患者の危険因子によって決まる。休薬期間は1年以上である。ビスホスホネートの休薬期間中の患者については,新たな骨折またはDXAでの明らかな骨量減少の加速がないか,注意深くモニタリングすべきである。ビスホスホネートなどの骨吸収抑制薬による治療中は,骨代謝回転が抑制される(空腹時の架橋N-テロペプチド[< 40nmol/L]または架橋C-テロペプチドの低値で証明される)。これらのマーカーは薬物療法を中止してから2年以上低値のままである場合がある。

未治療の患者では,骨代謝回転マーカーの値が上昇すれば,高値の場合は特に,骨折のリスク増加が示唆される。しかし,いつ休薬を開始または終了すべきかの基準として,骨代謝回転マーカーの値を用いるべきかどうかは明らかでない。

骨粗鬆症の治療にサケカルシトニンの鼻腔内投与を定期的に用いてはならない。サケカルシトニンにより,痛みを伴う脊椎骨折などの急性の骨折の後に,エンドルフィンの効果による短期的な鎮痛が得られることがある。骨折を減らすことは証明されていない。

エストロゲンは骨密度を維持し骨折を予防しうる。エストロゲンは経口で投与され,閉経して4~6年以内に開始すると最も効果的であるが,それよりもはるかに後に開始した場合でさえ,骨量減少を遅らせ,骨折を減らす可能性がある。エストロゲンの使用は血栓塞栓症および子宮内膜癌のリスクを増大させ,さらに乳癌のリスクを増大させる可能性がある。子宮が正常な女性ではエストロゲンと一緒にプロゲスチンを服用することにより子宮内膜癌のリスクが低下する可能性がある(ホルモン療法 ホルモン療法 閉経は,卵巣機能の低下による生理的または医原性の月経停止(無月経)である。症状としては,ホットフラッシュ,盗汗,睡眠障害,閉経関連泌尿生殖器症候群(genitourinary syndrome of menopause)(外陰・腟の萎縮などのエストロゲン欠乏による症状および徴候)などがある。診断は1年間の無月経を基準として臨床的に行う。症... さらに読む を参照)。しかし,プロゲスチンとエストロゲンを組み合わせて服用すると,乳癌,冠動脈疾患,脳卒中,および胆管疾患のリスクが増大する。これらの懸念があること,および骨粗鬆症には他の治療法があることから,骨粗鬆症の治療にエストロゲンを使用する場合には,大半の女性においてリスクが便益を上回るが,治療を開始する場合は,綿密なモニタリングを行いつつ治療期間を短くすることを考慮すべきである。

ラロキシフェンは,ビスホスホネートを服用できない女性の骨粗鬆症の治療に適切な場合がある選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM) 閉経は,卵巣機能の低下による生理的または医原性の月経停止(無月経)である。症状としては,ホットフラッシュ,盗汗,睡眠障害,閉経関連泌尿生殖器症候群(genitourinary syndrome of menopause)(外陰・腟の萎縮などのエストロゲン欠乏による症状および徴候)などがある。診断は1年間の無月経を基準として臨床的に行う。症... さらに読む )である。1日1回経口投与され,脊椎骨折を約50%減少させるが,股関節骨折を減少させることは証明されていない。ラロキシフェンは子宮を刺激せず,乳房におけるエストロゲンの効果と拮抗する。浸潤性乳癌のリスクを減少させることが示されている。ラロキシフェンは血栓塞栓症のリスク上昇と関連している。

デノスマブはRANKL(receptor activator of nuclear factor κβ ligand)に対するモノクローナル抗体であり,破骨細胞による骨吸収を抑制する。デノスマブは,他の治療法に耐えられないもしくは反応しない患者,または腎機能障害のある患者で役に立つ可能性がある。この薬剤は,10年間の治療で良好な安全性プロファイルを有していることが判明している。デノスマブはカルシウムの移動により著明な低カルシウム血症やテタニーなどの有害作用を引き起こす可能性があるため,低カルシウム血症患者では禁忌である。デノスマブの投与を受けている患者において 顎骨壊死 顎骨壊死(ONJ) 顎骨壊死は,下顎骨または上顎骨の露出を伴う口腔病変である。疼痛が生じることもあれば,無症状のこともある。診断は,骨の露出が8週間以上みられることによる。治療は,限局的掻爬,抗菌薬,および含嗽液による。 顎骨壊死(ONJ)には一致して受け入れられている定義または病因はないが,一般的には下顎骨または上顎骨の露出を伴う口腔病変であると考えられて... さらに読む および非定型大腿骨骨折がまれに報告されている。

デノスマブを中止すると骨密度が急速に低下する可能性があり,重要なこととして,骨折(特に脊椎骨折,ときに複数)のリスクが高まる可能性があるため,デノスマブの投与を受けている患者は休薬すべきではない。デノスマブを中止する場合は,その時点でゾレドロン酸の静脈内投与などのビスホスホネートへの移行を考慮すべきである。

ロモソズマブは,2019年4月に使用可能になった,スクレロスチン(骨細胞により産生され,骨芽細胞による骨新生を阻害する小さなタンパク質)に対するモノクローナル抗体である。これは骨吸収抑制作用と同化作用の両方を有し,股関節および腰椎の骨密度を増加させ,閉経後女性の骨折リスクを低下させることが示されている(2 治療に関する参考文献 骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよび... さらに読む 治療に関する参考文献 )。ロモソズマブは重度の骨粗鬆症患者に適応となり,月1回の皮下注射で1年間投与する(3 治療に関する参考文献 骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよび... さらに読む 治療に関する参考文献 )。ロモソズマブを1年間投与した後にアレンドロン酸を1年間投与する治療法の方が,アレンドロン酸を2年間投与する治療法より効力がある(3 治療に関する参考文献 骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよび... さらに読む 治療に関する参考文献 )。ロモソズマブは,心筋梗塞,脳卒中,心血管死亡などの心血管イベントのリスクを高めるため,黒枠警告が出されている。患者に心筋梗塞または脳卒中が生じてから12カ月以内は開始すべきではない。デノスマブと同様に,ロモソズマブを中止する場合は,急速な骨量減少を予防するためにビスホスホネート療法を施行すべきである。

タンパク同化薬は生涯で最大2年間の治療に使用できる。テリパラチド(合成PTH[PTH1-34])およびアバロパラチド(PTH1受容体に結合するヒトPTHアナログ)を皮下注射により連日投与し,骨量を増加させ,新たな骨形成を刺激し,骨折リスクを低下させる。タンパク同化薬投与を受ける患者は,クレアチニンクリアランスが35mL/minを超えていなければならない。 ロモソズマブ 骨量の温存 骨量の温存 は,抗スクレロスチンモノクローナル抗体であり,タンパク質同化作用と骨吸収抑制作用を有する。

これら3つのタンパク同化薬(テリパラチド,アバロパラチド,およびROMO)は,一般に以下の特徴を有する患者において適応となる:

  • 骨吸収抑制薬に耐えられないまたはその使用に対する禁忌がある

  • カルシウム,ビタミンD,および運動だけでなく,骨吸収抑制薬にも反応しない(例,新たな骨折を発症するまたは骨密度が減少する)

  • 重症骨粗鬆症(例,Tスコアが-3.5未満)または多発性の脊椎の脆弱性骨折を有する可能性がある

  • コルチコステロイド誘発性骨粗鬆症がある(テリパラチドのみ)

ビスホスホネートの休薬期間中,これら3つのタンパク同化薬のうちいずれかの使用を考慮してもよい。

骨粗鬆症の治療におけるタンパク同化薬の使用は,まれではあるが 骨肉腫 骨肉腫(骨原性肉腫) 原発性骨腫瘍は転移性骨腫瘍よりはるかに頻度が低く,特に成人でその傾向がある。原発性骨腫瘍には, 多発性骨髄腫, 骨肉腫, アダマンチノーマ, 軟骨肉腫, 脊索腫, 骨のユーイング肉腫, 線維肉腫および未分化多形肉腫, 骨のリンパ腫, 悪性巨細胞腫などがある。( 骨と関節の腫瘍の概要および... さらに読む 骨肉腫(骨原性肉腫) の発生リスク増加に関する黒枠警告に基づき,2年間に制限されている。重要なこととして,タンパク同化薬による2年間の治療コースを完了した後に, ビスホスホネート 骨量の温存 骨量の温存 などの骨吸収抑制薬に速やかに移行しなければ,骨密度の増加が急速に失われる。

骨粗鬆症性骨折後の骨吸収抑制薬治療の即時開始については,それらの薬剤が骨の治癒を妨げる可能性があるという理論上の懸念のために議論がある。しかしながら,American Society of Bone and Mineral Research(ASBMR)による骨折の二次予防における最近の治療の推奨には,骨折による入院中にビスホスホネートの経口投与を開始する推奨が含まれている(4 治療に関する参考文献 骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよび... さらに読む 治療に関する参考文献 )。また,股関節または脊椎の脆弱性骨折により骨粗鬆症の存在が確定することから,DXAを実施するために治療を遅らせる理由はない。タンパク同化薬は骨折後いつ開始しても安全である。骨折後早期のタンパク同化薬の使用が骨の治癒を促進するかどうかは明らかでない。

治療に関する参考文献

  • 1.Black DM, Reid IR, Boonen S, et al: The effect of 3 versus 6 years of zoledronic acid treatment of osteoporosis: A randomized extension to the HORIZON-Pivotal Fracture Trial (PFT).J Bone Miner Res 27(2): 243–254, 2012.doi: 10.1002/jbmr.1494.

  • 2.Cosman F, Crittenden DB, Adachi JD, et al: Romosozumab treatment in postmenopausal women with osteoporosis.N Engl J Med 375(16):1532-1543, 2016.doi: 10.1056/NEJMoa1607948.

  • 3.Saag KG, Petersen J, Brandi ML, et al: Romosozumab or alendronate for fracture prevention in women with osteoporosis.N Engl J Med 377(15):1417-1427, 2017.doi: 10.1056/NEJMoa1708322.

  • 4.Conley RB, Gemma Adib G, Adler RA, et al: Secondary fracture prevention: Consensus clinical recommendations from a multistakeholder coalition.J Bone Miner Res, 2019 [Epub ahead of print].doi: 10.1002/jbmr.3877.

骨折の予防

多くの高齢患者では,協調運動能力の低下,視力低下,筋力低下,錯乱,および 起立性低血圧 起立性低血圧の原因 起立性低血圧の原因 または知覚の変化を引き起こす薬剤の使用により転倒のリスクを有する。体幹を強化する運動により安定性が増す可能性がある。骨折の予防には,転倒および骨折のリスクについての患者教育,安全のための自宅の環境改善,および身体の安定性を増しリスクを減らす個別プログラムの開発が重要である。

痛みの治療および機能の維持

脊椎圧迫骨折に起因する急性の背部痛は,整形外科的な支持,鎮痛薬,ならびに筋攣縮が顕著な場合は, 湿性温熱 温熱 疼痛および炎症の治療の目的は,運動を促進し,筋肉や関節の協調運動能力を向上させることである。薬剤を使用しない治療法としては,運動療法,温熱,冷却,電気刺激,頸椎牽引,マッサージ,鍼治療などがある。これらの治療法は,筋肉,腱,および靱帯の多くの疾患に用いられている( Professional... さらに読む および マッサージ マッサージ 疼痛および炎症の治療の目的は,運動を促進し,筋肉や関節の協調運動能力を向上させることである。薬剤を使用しない治療法としては,運動療法,温熱,冷却,電気刺激,頸椎牽引,マッサージ,鍼治療などがある。これらの治療法は,筋肉,腱,および靱帯の多くの疾患に用いられている( Professional... さらに読む により治療すべきである。体幹を強化する運動は,背部痛があり,以前に脊椎骨折が治癒した患者の助けになる。慢性の背部痛は,整形外科用の衣類および傍脊柱筋を強化する運動によって軽減しうる。重いものを持ち上げるのを避けることが有益である。床上安静は最小限にすべきであり,一貫性のある慎重に設計された荷重運動を奨励すべきである。

症例によっては,脊椎の新たな脆弱性骨折による重度の痛みを緩和するために椎体形成術(vertebroplasty)またはバルーン椎体形成術(kyphoplasty)を用いることができるが,効力に関するエビデンスは決定的ではない。椎体形成術(vertebroplasty)では,メチルメタクリレートを椎体に注入する。バルーン椎体形成術(kyphoplasty)では,まず椎体をバルーンで拡げ,その後メチルメタクリレートを注入する。これらの手技により,注入を行った脊椎の変形が軽減する可能性があるが,隣接する脊椎の骨折リスクは減少せず,増大することさえある。他のリスクとしては,肋骨骨折,セメントの漏出,肺塞栓症,または心筋梗塞などが挙げられる。これらの手技の適応を決定するためのさらなる研究が必要である。

骨粗鬆症の予防

予防の目標には2つの要素(骨量の温存および骨折の予防)がある。予防策は以下に適応となる:

  • 閉経後女性

  • 高齢男性

  • 骨減少症患者

  • 高用量および/または長期間のグルココルチコイドの全身投与を受けている患者

  • 骨粗鬆症患者

  • 骨量減少の二次的な原因を有する患者

これらの患者全てに対する予防策には,適切なカルシウムおよびビタミンDの摂取,荷重運動,転倒予防,ならびにリスクを減じるその他の方法(例,喫煙の回避およびアルコールの制限)がある。さらに骨粗鬆症または骨減少症の患者では,FRAXスコアが高い場合やグルココルチコイドを投与されている場合など,骨折のリスクが高ければ薬物療法が適応となる。薬物療法では,骨粗鬆症の治療で投与されるものと同じ薬剤が含まれる傾向がある。骨の健康の重要性について患者および地域社会を教育していくことが,依然として最も重要である。

骨粗鬆症の要点

  • 骨は40歳以降,毎年0.3~0.5%が失われ,女性では閉経後の約5~7年間は約3~5%まで加速する。

  • 女性の骨粗鬆症の95%以上および男性の骨粗鬆症の約80%が原発性である。

  • 予想外に小さな力によって脊椎,橈骨遠位端,または股関節を骨折(脆弱性骨折)した患者では,骨粗鬆症を疑う。

  • 65歳以上の女性;危険因子(例,骨粗鬆症の家族歴,BMI低値,ならびに喫煙および/または骨量減少のリスクが高い薬剤[例,グルココルチコイド]の使用)を有する閉経後から65歳までの女性;脆弱性骨折を経験したあらゆる年齢の男女;画像検査で骨密度低下の所見があるか,または無症状の脊椎圧迫骨折がある患者;および続発性骨粗鬆症のリスクがある患者で,DXAを用いて骨密度を測定する。

  • Zスコアが-2.0以下の場合または二次的な骨量減少の原因が臨床的に疑われる場合は,二次的な骨量減少の原因について,患者の検査を考慮すべきである。

  • 治療と予防には,必要であればサプリメントを用いて十分な量のカルシウムとビタミンDを摂取し,骨量の温存を助けるために危険因子を是正する(例,荷重運動,カフェイン摂取,飲酒,およびタバコ使用を最小限まで減らすことによる)。

  • 治療法としては,骨吸収抑制薬(例,ビスホスホネート,選択的エストロゲン受容体モジュレーター,RANKL[receptor activator of nuclear factor κβ ligand]阻害薬,ホルモン補充療法に用いられる薬剤)またはテリパラチド,アバロパラチド,ロモソズマブなどのタンパク同化薬などがある。

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