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骨パジェット病

(変形性骨炎)

執筆者:

Roy D. Altman

, MD, David Geffen School of Medicine at UCLA

最終査読/改訂年月 2014年 7月
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骨パジェット病は,限局した部位で骨代謝回転が亢進する成人の骨格の慢性疾患である。正常な基質が,軟化し腫大した骨に置き換わる。本疾患は無症候性のこともあれば,骨痛または変形が徐々に発症することもある。診断はX線による。治療には対症的な処置としばしば薬物(通常はビスホスホネート系薬剤)が含まれる。

米国では40歳以上の成人の約1%にパジェット病がみられ,3:2の比で男性患者が多い。有病率は年齢とともに増加する。しかし,全体の有病率は減少しつつあるように思われる。本疾患は,欧州(スカンジナビアを除く),オーストラリア,およびニュージーランドで最もよくみられる。

病因

いくつかの遺伝子異常が同定されており,多くが破骨細胞の発生および活性をもたらすRANK(receptor activator of nuclear factor κβ)のシグナル伝達に影響を及ぼす。6番染色体由来のユビキチン結合に関連するSequestrum 1遺伝子の変異がパジェット病患者の約10%でみられる。罹患骨の電子顕微鏡像はウイルス感染症を示唆する。ウイルス性の原因は証明されていないが,遺伝的素因を有する患者ではまだ同定されていないウイルスが破骨細胞の異常な活性を引き起こすという仮説が立てられている。

病態生理

あらゆる骨が罹患しうる。最も罹患することが多い骨は,頻度の高い順に,骨盤,大腿骨,頭蓋骨,脛骨,脊椎,鎖骨,および上腕骨である。

罹患部位では骨代謝回転が亢進する。パジェット病の病変は代謝が活発であり,非常に血管に富む。過度に活性が高い破骨細胞は大型であることが多く,多数の核を含む。骨芽細胞による修復も過度に活性化し,粗い網状の厚くなった層板および骨梁を生じる。骨の腫大および高度の石灰化にもかかわらず,このような異常な構造は骨を脆弱にする。

合併症

過成長した骨が,小さな孔を通る神経およびその他の構造物を圧迫することがある。脊柱管狭窄症または脊髄圧迫が発生することがある。罹患骨に隣接する関節に変形性関節症が発生することがある。

約10~15%の患者では,骨形成の亢進およびカルシウムの必要量増加により二次性副甲状腺機能亢進症が生じる;この必要量がカルシウムの摂取量増加によって満たされなければ,低カルシウム血症が起こりうる。高カルシウム血症( 高カルシウム血症)が,ときに動くことのできない患者に発生する。二次性副甲状腺機能亢進症を発症しているパジェット病患者にも起こる。

大きな病変または多数の病変は高拍出性心不全につながる可能性がある。血管に富む骨が整形外科手術の最中に過剰に出血することがある。

症状と徴候

通常は長期間にわたり無症状である。症状が発生する場合,痛み,こわばり,疲労,および骨変形を伴って潜行性に発生する。骨痛はうずくような深部の痛みで,ときに重度であり,夜間に増悪することがある。痛みはまた,圧迫性神経障害または変形性関節症から生じることもある。頭蓋骨が侵されている場合,頭痛および聴覚障害がみられることがある。

徴候には,両側頭部および前頭部の頭蓋骨腫大(前頭隆起);頭皮静脈拡張;片耳もしくは両耳の神経性難聴または回転性めまい;頭痛;眼底の網膜色素線条症;猿様の外見を伴う脊柱後弯の短い体幹;跛行;ならびにしばしば熱感および圧痛を伴う大腿,下肢,または上腕の前外側方向の弯曲(内反)などがある。長管骨の内反または変形性関節症により変形が生じることがある。病的骨折が最初の臨床像であることもある。骨肉腫が1%未満で発生し,増大する重度の疼痛によってしばしば示唆される。

診断

  • 単純X線

  • 血清中のアルカリホスファターゼ,カルシウム,およびリン酸(PO4

  • 診断確定後に骨シンチグラフィー

以下がみられる患者でパジェット病を疑うべきである:

  • 説明のつかない骨痛または変形

  • X線上の示唆する所見

  • 他の理由で行った臨床検査での説明のつかない血清アルカリホスファターゼの高値,特にγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT/γ-GTP)が正常の場合

  • 臥床中に発生する高カルシウム血症,特に高齢の患者

  • 高齢の患者における骨肉腫

パジェット病が疑われる場合,単純X線ならびに血清アルカリホスファターゼ,カルシウム,およびPO4の値の測定を行うべきである。診断を確定するにはX線での確認が必要である。特徴的なX線所見としては以下のものがある:

  • 骨硬化の増加

  • 皮質の粗い骨梁形成または皮質の肥厚を伴う異常構造

  • 内反

  • 骨の腫大

脛骨または大腿骨の外側の微小な疲労骨折がみられることがある。

特徴的な臨床検査所見には,血清アルカリホスファターゼの高値(骨のタンパク同化作用の活性が増大)があるが,通常はGGTおよび血清PO4の値は正常である。血清カルシウムは通常は正常であるが,不動状態もしくは副甲状腺機能亢進症のために増加することもあれば,骨形成の亢進のために減少(しばしば一過性)することもある。アルカリホスファターゼが高値でない場合,または血清アルカリホスファターゼの高値が骨由来かどうか不明である場合(すなわち,アルカリホスファターゼに比例してGGTが増加している場合),骨に特異的な分画を測定することがある。

パール&ピットフォール

  • アルカリホスファターゼは高値であるがGGT値は正常である高齢者では,骨パジェット病を考慮すること。

ときに,骨のコラーゲン代謝回転の尿マーカー(例,ピリジノリン架橋断片)の上昇で示される骨の異化作用活性の増大が所見を補う。

骨病変の程度を判定するため,テクネチウムで標識したホスホネートを用いた骨シンチグラフィーをベースライン時に行うべきである。

治療

  • 症状および合併症に対する支持療法

  • ビスホスホネート系薬剤

限局性かつ無症状の場合は治療を必要としない。対症療法には,痛みに対する鎮痛薬またはNSAIDなどがある。内反した下肢により引き起こされた歩行異常の矯正には矯正器具が有用である。一部の患者には整形外科手術が必要である(例,人工股関節置換術または人工膝関節置換術,脊髄の除圧術)。荷重負荷を奨励すべきであり,床上安静は避けるべきである。まれに,静脈内投与の輸液およびフロセミドを用いて,重症の高カルシウム血症の迅速な補正が必要である( 高カルシウム血症 : 治療)。

薬物療法

薬物療法は破骨細胞の活性を抑制する。以下の目的で適応となる:

  • 合併症の進行を予防または遅らせるため(例,難聴,変形,変形性関節症,脊椎のパジェット病に関連する不全対麻痺もしくは対麻痺,または他の神経脱落症状,特に手術の候補として不適切な場合)

  • 別の原因(例,変形性関節症)ではなくパジェット病の経過に明らかに関連する痛みを治療するため

  • 整形外科手術中に起こりうる出血を予防または最小限に抑えるため

  • (骨由来の)血清アルカリホスファターゼ値が正常値の2倍を超えた場合に,症状がなくとも,過剰な破骨細胞の活性を抑えるため

疾患の進行が遅くなることはあるが,既存の障害(例,変形,変形性関節症,難聴,神経の絞扼)は元に戻らない。

いくつかのビスホスホネート系薬剤が使用可能であり,第1選択の薬剤となっている( パジェット病の薬物療法を参照のこと)。合成サケカルシトニンは,ビスホスホネート系薬剤に耐えられないまたは抵抗性の患者に対する代替薬である。新しいビスホスホネート系薬剤であるほど(アミノ基を含有するビスホスホネート系薬剤,例,ゾレドロン酸),疾患活動性のマーカーをより効果的に抑制し,より長期の反応をもたらす。

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パジェット病の薬物療法

薬剤

用量

備考

アレンドロン酸

40mgの1日1回経口投与を6カ月間

朝の起床後,食事の少なくとも30分前に単回投与として服用

エチドロン酸

5~10mg/kgの1日1回経口投与を6カ月間;顕著に活動性の疾患では高用量(20mg/kgの1日1回経口投与を3カ月間)がおそらく必要である

食時の少なくとも2時間前または2時間後の空腹時に単回投与として服用し,必要であれば3~6カ月の間を置いた後に繰り返してもよい

パミドロン酸

30~90mgを1日1回4時間の点滴静注で3日間連続投与または1カ月に1回で3カ月間投与

経口のビスホスホネート系薬剤に耐えられない患者に対して;治療抵抗例の患者ではおそらくより頻回に投与

リセドロン酸

30mgの1日1回経口投与を2カ月間

アレンドロン酸と同じ方法で服用

tiludronate

400mgの1日1回経口投与を3カ月間

アレンドロン酸と同じ方法で服用

ゾレドロン酸

5mgを単回の15分間点滴静注として投与

経口のビスホスホネート系薬剤に耐えられない患者に対して

合成サケカルシトニン

50~100IU(0.25~0.5mL)を1日1回皮下投与または筋肉内投与

ときに用量を50IUの隔日投与まで徐々に減らし,場合によっては最初の良好な反応の後(しばしば1カ月後)に1週間に2回または1回まで減らす

骨代謝回転が亢進しているため,患者は十分なカルシウムおよびビタミンDの摂取量を確保すべきであり,しばしば補給が必要である。

要点

  • 骨パジェット病はよくみられるしばしば無症状の異常であり,特に高齢者でよくみられる。

  • 合併症には,神経圧迫,変形性関節症,骨折,二次性副甲状腺機能亢進症,および低カルシウム血症または高カルシウム血症などがある。

  • 確定は通常,骨硬化,皮質の粗い骨梁形成または皮質の肥厚,および骨の内反または腫大などの所見を示すX線による。

  • 第1選択薬はゾレドロン酸または他の新しいビスホスホネート系薬剤である。

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