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頸部痛および背部痛の評価

執筆者:

Alfred J. Cianflocco

, MD, FAAFP, Cleveland Clinic

最終査読/改訂年月 2017年 2月
本ページのリソース

頸部痛および背部痛は最も一般的な受診理由の1つである。本章では,後頸部を含む頸部痛を扱い(前頸部に限った痛みは扱わない),ほとんどの重度の外傷性損傷(例,骨折,脱臼,亜脱臼)は扱わない。

病態生理

原因によっては,頸部痛または背部痛は神経症状を伴うことがある。

神経根が侵されている場合,痛みがその神経根の分布に沿って遠位に放散することがある(根性痛)。その神経根によって支配される領域の筋力,感覚,および反射が障害を受ける可能性がある。

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脊節レベルで分類した一般的な神経根障害の症状

レベル

症状

C4

頸部下部および肩甲帯上部に及ぶ錯感覚を伴う,頸部下部および僧帽筋領域の痛み

C5

上肢背側に及ぶ錯感覚を伴う,頸部,肩関節,および上肢背側の痛み

三角筋の筋力低下

C6

僧帽筋陵および肩関節先端の痛み,しばしば母指に放散し,同じ領域に錯感覚および感覚障害を伴う

上腕二頭筋の筋力低下

上腕二頭筋反射および腕橈骨筋反射の低下

C7

肩甲骨および腋窩の痛み,中指に放散

上腕三頭筋の筋力低下

上腕三頭筋反射の低下

T(いずれも)

胸郭周囲の帯状の異常感覚

L3

大腿四頭筋の筋力低下および膝蓋腱反射の減弱を伴う,大腿および膝関節の前外側における痛みおよび錯感覚

L4

大腿四頭筋の筋力低下および膝蓋腱反射の減弱を伴う,大腿後外側および下肢前部における痛みおよび錯感覚

L5

殿部,大腿後外側,腓腹部,および足の痛み

前脛骨筋,後脛骨筋,および腓骨筋の筋力低下を伴う下垂足

脛および足背の感覚消失

S1

下肢後面および殿部に沿った痛み

足関節の底屈の障害を伴う内側腓腹筋の筋力低下

アキレス腱反射の消失

腓腹部および足の外側の感覚消失

脊髄が侵されると,侵された脊髄レベル以下の全てのレベルで,筋力,感覚,および反射が障害されることがある(segmental neurologic deficitsと呼ばれる)。

馬尾が侵されると,腰仙部に髄節性の障害が発生し,典型的には腸の機能障害(便秘または便失禁),膀胱の機能障害(尿閉または尿失禁),肛門周囲の感覚消失,勃起障害,ならびに直腸の緊張低下および括約筋反射(例,球海綿体筋反射,肛門収縮反射)の消失を伴う。

脊椎の有痛性疾患はいずれも傍脊柱筋の反射による収縮(攣縮)をも引き起こすことがあり,これは耐え難い場合がある。

病因

ほとんどの頸部痛および背部痛は脊椎の疾患により引き起こされる。線維筋痛症も一般的な原因であり,原疾患である慢性の脊椎の疾患に併発する可能性がある。ときに,痛みは脊椎外の疾患(特に血管,消化管,または泌尿生殖器の疾患)からの関連痛であることがある。一部のまれな(脊椎および脊椎外の)原因は重篤である。

ほとんどの脊椎の疾患は機械的なものである。感染症,炎症,癌,または骨粗鬆症もしくは癌に起因する脆弱性骨折に関連するものはごく少数であり,非機械的とみなされる。

一般的な原因

頸部痛または背部痛を引き起こす機械的な脊椎の疾患のほとんどは,非特異的な機械的障害を含む:

  • 筋挫傷,靱帯捻挫,攣縮,またはその組合せ

  • 姿勢の悪さ,筋肉を安定させる力の低下,または柔軟性の低下

明らかな症状を引き起こす特異的な脊椎の構造病変を伴うものはわずか約15%であり,主に以下のものがある:

他の機械的障害では,特異的な病変がないか,または所見(例,椎間板の隆起または変性,骨棘,脊椎分離,先天性の椎間関節異常)が頸部痛または背部痛のない人々の間で一般的にみられるものであり,したがって痛みの病因としては疑わしい。しかし,背部痛の病因は(特に機械的なものの場合)多因子性であることが多く,疲労,身体的デコンディショニング,およびときに心理社会的ストレスまたは精神医学的異常により増悪する基礎疾患を伴う。したがって,単一の原因を同定するのは困難または不可能なことが多い。

頸部痛および背部痛の原因はときに,原疾患である脊椎の疾患ではなく線維筋痛症など全身性の筋筋膜痛症候群に帰せられることがある。

重篤でまれな原因

重篤な原因は,障害および死亡を防ぐために時機を逸さない治療を要することがある。

重篤な脊椎外疾患としては以下のものがある:

重篤な脊椎疾患としては以下のものがある:

  • 感染症(例,椎間板炎,硬膜外膿瘍,骨髄炎

  • 原発性腫瘍(脊髄または脊椎の)

  • 転移性脊椎腫瘍(乳房,肺,または前立腺由来が最も多い)

機械的な脊椎疾患は,脊髄神経根(または特に脊髄)を圧迫する場合は重篤であることがある。脊髄圧迫は,腫瘍および脊髄硬膜外膿瘍または脊髄硬膜外血腫などの疾患によって生じることがある。

その他のまれな原因

頸部痛および背部痛は,以下のような他の多くの疾患の結果として生じうる:

評価

概要

原因が多因子性であることが多いため,多くの患者で確定診断ができない。しかし,可能であれば以下の点を判定すべきである:

  • 痛みが脊椎に起因するか脊椎外に起因するか

  • 原因は重篤な疾患か

重篤な原因が除外されれば,背部痛はときに以下のように分類される:

  • 非特異的腰痛

  • 根性症状または脊柱管狭窄症による腰痛

  • その他の脊椎の原因に関連した腰痛

病歴

現病歴には,痛みの性質,発症,期間,重症度,部位,放散,および経時変化に加え,休息,活動,体位の変化,荷重負荷,および時間帯(例,夜,起床時)などの修飾因子を含めるべきである。注意すべき随伴症状として,こわばり,しびれ,錯感覚,筋力低下,尿閉便秘便失禁などがある。

系統的症状把握(review of systems)では,発熱,発汗,および悪寒(感染症);体重減少および食欲不振(感染症または癌);疲労,抑うつ症状,および頭痛(多因子性の機械的な背部痛);嚥下時の頸部痛の悪化(食道疾患);食欲不振,悪心,嘔吐,黒色便,血便,および腸管機能または便の変化(消化管疾患);泌尿器症状および側腹部痛(尿路疾患),特に間欠性,仙痛性,および反復性の場合(腎結石症);咳嗽,呼吸困難,および吸気時の悪化(肺疾患);性器出血または腟分泌物および月経周期に関連する痛み(骨盤内疾患)など,原因を示唆する症状に注意すべきである。

既往歴には,既知の頸部もしくは背部の疾患(骨粗鬆症変形性関節症,椎間板疾患,および最近のまたは離れた部位の損傷など)および手術,背部の疾患に対する危険因子(例,癌,骨粗鬆症),動脈瘤に対する危険因子(例,喫煙,高血圧),感染症に対する危険因子(例,免疫抑制;静注薬物の使用;最近の手術,血液透析,穿通性外傷,または細菌感染);ならびに基礎にある全身性疾患の関節外の特徴(例,下痢,腹痛,ぶどう膜炎,乾癬)などを含める。

身体診察

体温および全般的な外観に注意する。可能であれば,患者が診察室に入り,服を脱ぎ,診察台に上る様子をさりげなく観察すべきである。症状が心理的問題で増悪している場合,患者が評価されていることに気づいていない時の方が真の機能レベルをより正確に評価できる。

診察は脊椎および神経学的診察に焦点を合わせる。痛みの機械的な発生源が脊椎にみられない場合,局所痛または関連痛の発生源がないかを調べる。

脊椎の診察では,背部および頸部を視診し,視認可能な何らかの変形,紅斑部位,または小水疱性の発疹がないか確認する。脊椎および傍脊柱筋を触診し,圧痛,筋攣縮,および筋筋膜痛症候群の特徴(索状硬結,トリガーポイント,および全身性の圧痛)がないか確認する。全体の可動域を調べる。頸部痛の患者では,肩関節を診察する。腰痛の患者では,股関節を診察する。

神経学的診察では,少なくとも脊髄全体の機能を評価すべきである。筋力および深部腱反射を検査する。神経症状のある患者では,感覚および仙骨神経の機能(例,直腸の緊張,肛門括約筋反射,球海綿体反射)を検査する。反射検査は,正常な脊髄機能を確認するための最も信頼できる理学的検査の1つである。皮質脊髄路の機能障害は,伸展性足底反応およびHoffman徴候によって示唆される。

Hoffman徴候を調べるには,中指の爪または手掌面を軽く弾く;母指の末節骨が屈曲すれば検査は陽性であり,通常は頸髄の狭窄または脳病変により引き起こされる皮質脊髄路の機能障害が示唆される。感覚の所見は主観的であり,信頼できないことがある。

下肢伸展挙上テストが坐骨神経痛の確定に役立つ。患者を仰向けに寝かせて両膝を伸ばし,足関節を背屈させる。患側の下肢を,膝は伸ばしたままで臨床医がゆっくり持ち上げる。坐骨神経痛がある場合,典型的には10~60°の角度に持ち上げると症状が生じる。

交叉性下肢伸展挙上(crossed straight leg raise)テストでは,健側の下肢を持ち上げる;患側の下肢に坐骨神経痛が起これば,検査は陽性である。下肢伸展挙上テストが陽性であることは椎間板ヘルニアに対し感度が高いが特異度が低い;交叉性下肢伸展挙上テストは感度は低いが特異度は90%である。

座位での下肢伸展挙上テストは,患者に股関節を90°に屈曲させた座位をとらせて行い,膝が完全に伸展するまで下腿をゆっくり持ち上げる。坐骨神経痛がある場合,下肢を伸展するにつれて脊椎の痛み(およびしばしば根性症状)が起こる。

全身状態の観察では,肺を聴診する。腹部について,圧痛,腫瘤,および,特に55歳以上の患者で,拍動性腫瘤(腹部大動脈瘤を示唆する)がないか確認する。拳で肋骨脊柱角を打診して,腎盂腎炎を示唆する叩打痛がないか確認する。

便潜血検査を含む直腸診および男性では前立腺検査を行う。骨盤内疾患を示唆する症状または原因不明の発熱がある女性では内診を行う。

下肢の脈を確認する。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 5cmを超す腹部大動脈(特に圧痛がある場合)または下肢の脈拍欠損

  • 急性の引き裂かれるような中背部痛

  • 癌,診断されたものまたは疑われるもの

  • 6週間を超える痛みの期間

  • 神経脱落症状

  • 発熱

  • 限局性の腹部圧痛,腹膜刺激徴候,黒色便,または血便などの消化管所見

  • 感染症の危険因子(例,免疫抑制;静注薬物の使用;最近の手術,穿通性外傷,または細菌感染)

  • 髄膜症

  • 重度の夜間痛または生活に支障を来す痛み

  • 55歳以降に新たに発症した原因不明の痛み

  • 原因不明の体重減少

所見の解釈

重篤な脊椎外の疾患(例,癌,大動脈瘤,硬膜外膿瘍,骨髄炎)は背部痛のまれな原因であるが,それ自体はまれではない(特に高リスク集団において)。

以下の場合は脊椎外の原因による関連痛よりも脊椎の原因の可能性が高い(ただし決定的ではない):

  • 痛みが動作または荷重負荷によって悪化し,安静または横臥によって緩和する

  • 脊椎または傍脊椎の圧痛がある

レッドフラグサインがあれば重篤な原因の疑いを強めるべきである( 背部痛がある患者におけるレッドフラグサインの解釈)。

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背部痛がある患者におけるレッドフラグサインの解釈

所見

考慮すべき原因

5cmを超す腹部大動脈(特に圧痛がある場合)または下肢の脈拍欠損

急性の引き裂かれるような中背部痛

癌,診断されたものまたは疑われるもの

転移

6週間を超える痛みの期間

亜急性の感染症

発熱

感染症

限局性の腹部圧痛,腹膜刺激徴候(反跳痛もしくは腹部硬直),黒色便,または血便などの消化管所見

消化管の緊急事態の可能性(例,腹膜炎,膿瘍,消化管出血)

感染症の危険因子

感染症

髄膜症

神経脱落症状

脊髄または神経根の圧迫

重度の夜間痛または生活に支障を来す痛み

感染症

55歳以降の原因不明の痛み

腹部大動脈瘤

原因不明の体重減少

亜急性の感染症

他の所見も有用である。脊椎上の紅斑および圧痛は感染症を示唆する(特に危険因子を有する患者で)。屈曲に伴う痛みの悪化は椎間板疾患と一致する;伸展に伴う悪化は,脊柱管狭窄症,椎間関節を侵している関節炎,または後腹膜の炎症もしくは浸潤(例,膵臓もしくは腎臓の炎症または腫瘍)を示唆する。特定のトリガーポイントにおける圧痛は線維筋痛症を示唆する。手指の近位指節間(PIP)関節または遠位指節間(DIP)関節の変形,および起床後30分以内に軽減するこわばりは,変形性関節症を示唆する。嚥下に関連しない労作性の頸部痛は狭心症を示唆している場合がある。

検査

通常,痛みの期間が短ければ(4~6週間未満)検査は不要であるが,レッドフラグサインがある場合,重篤な外傷(例,自動車事故,高所からの転落,穿通性外傷)を受けた場合,または評価により特異的な非機械的な原因(例,腎盂腎炎)が示唆される場合は除く。

単純X線でほとんどの骨粗鬆症性骨折および変形性関節症を同定できる。しかし,軟部組織の異常(背部痛および頸部痛の最も一般的な原因)または神経組織の異常(多数の重篤な疾患で生じる)は同定されない。このため,X線は通常不要であり,X線により管理が変わることはない。ときにX線は明らかな骨の異常(例,感染症または腫瘍によるもの)を同定するため,ならびにMRIおよびCTを避けるために行う(これらはX線よりも行うことが難しいがはるかに正確であり,通常は必要となる)。

検査は,所見および疑われる原因に基づいて行う。検査はまた,初期治療が不成功に終わった患者または症状が変化した患者でも適応となる。疑われる特異的な原因に対する検査には,以下のものなどがある:

  • 神経脱落症状,特に脊髄圧迫と一致するもの:MRIまたはCTによる脊髄造影を可能な限り早く行う

  • 感染の可能性:白血球数,赤沈,画像検査(通常はMRIまたはCT),および感染組織の培養

  • 癌の可能性:CTまたはMRIおよび場合によっては生検

  • 動脈瘤の可能性:CT,血管造影,またはときに超音波検査

  • 大動脈解離の可能性:血管造影,CT,またはMRI

  • 生活に支障を来す症状または6週間を超えて続く症状:画像検査(通常はMRIまたはCT)および感染が疑われる場合は白血球数および赤沈(一部の臨床医は,異常の部位特定およびときに診断に役立てるために脊椎の前後および側面のX線から始める)

  • 他の脊椎外の疾患:状況に応じた検査(例,肺疾患に対する胸部X線,尿路疾患または明らかな機械的原因がない背部痛に対する尿検査)

治療

基礎疾患を治療する。

急性の筋骨格痛(神経根障害を伴うまたは伴わないもの)を以下によって治療する:

  • 鎮痛薬

  • 腰椎の安定化および運動

  • 加温および冷却

  • 安心させること

急性の非特異的な(非根性の)背部痛がある患者では,特異的な病因を同定するための詳細な評価を行わずに治療を開始することがある。

パール&ピットフォール

  • 非特異的で非根性の背部痛があり,レッドフラグサインがない患者は対症的に治療し,詳細な評価を最初に必要としない。

鎮痛薬

アセトアミノフェンまたはNSAIDが鎮痛薬の第1選択であるが,重度の急性の痛みに対しては,オピオイド(適切な注意事項を守る)が必要になることがある。痛みと攣縮のサイクルを抑えるために,急性外傷後直ちに行う十分な鎮痛が重要である。長期使用の便益を示すエビデンスは弱いかまたは存在しないため,オピオイドの使用期間は限定すべきである。

腰椎の安定化および運動

運動ができるほどに急性痛が軽減したら,腰椎の安定化プログラムを理学療法士の監督下で開始する。このプログラムは可能になればただちに開始すべきであり,腹部および腰部の筋肉を強化する運動に加えて作業姿勢の指導などが含まれ,その目的は背部の支持構造を強化して慢性化または再発の可能性を減らすことである。

加温および冷却

急性の筋攣縮はまた,冷却または加温によって緩和することもある。外傷後最初の2日間は,通常は加温よりも冷却が好ましい。氷および冷却パックは皮膚に直接当てるべきでない。それらは(例,プラスチックに)包み込んで,タオルまたは布の上から当てるべきである。20分後に氷を外し,後に再び20分間当てる(60~90分間かけて行う)。このプロセスを24時間の間に数回繰り返してよい。加温には温熱パッドを用い,同じ時間行ってよい。背部の皮膚は熱に対する感度が低いことがあるため,熱傷を予防するために温熱パッドは注意深く用いなければならない。パッドを背部に当てたまま眠り込むことによる長時間の曝露を避けるために,患者には就寝時に温熱パッドを使わないよう指導する。ジアテルミー(深部温熱療法)は,急性期後の筋攣縮および痛みを軽減するのに役立つことがある。

コルチコステロイド

重度の根性症状および腰痛がある患者では,一部の医師は1コースの経口コルチコステロイドを行うか,または硬膜外注射を行う専門医へ早期紹介することを推奨している。しかし,コルチコステロイドの全身投与および硬膜外投与の使用を支持するエビデンスには議論の余地がある。注射を予定している場合,病変の同定,局在診断,および最適な治療ができるよう,注射前にMRIを考慮すべきである。

筋弛緩薬

経口筋弛緩薬(例,cyclobenzaprine,メトカルバモール,metaxalone)に関しては議論がある。これらの薬剤の便益は,中枢神経系作用およびその他の有害作用と比較検討すべきである(特により重度の有害作用がありうる高齢患者で)。筋弛緩薬は,目に見える触知可能な筋攣縮がある患者に限定すべきであり,72時間を超えて用いてはならない。

安静および固定

ときに苦痛を緩和するために初期の短い期間(例,1~2日間)身体活動を減らす必要があるが,長期の床上安静,脊椎の牽引,およびコルセットは有益ではない。斜頸およびときに頸椎捻挫(cervical strains)がある患者では,痛みが緩和し安定化プログラムに参加できるようになるまで,頸部カラーおよび頸部補正枕(contour pillow)が有益なことがある。

脊椎マニピュレーション

脊椎マニピュレーションは,筋攣縮または急性の背部もしくは頸部の損傷によって引き起こされる痛みの軽減に役立つことがあるが,一部の整復操作は椎間板疾患または骨粗鬆症の患者にはリスクがある可能性がある。

安心させること

非特異的な筋骨格の急性背部痛がある患者には,予後は良好であり,運動および訓練は多少の苦痛を引き起こしても安全であると伝えて安心させるべきである。臨床医は,几帳面,親切,堅実,および中立的であるべきである。抑うつが数カ月間持続するかまたは二次的疾病利得が疑われる場合は,心理学的評価を考慮すべきである。

老年医学的重要事項

腰痛は60歳以上の成人の50%に発生する。

非外傷性の腰痛がある高齢患者では,たとえその診断を示唆する身体所見がなくとも腹部大動脈瘤(およびそれを検出するためのCTまたは超音波検査)を考慮すべきである(特に喫煙者または高血圧患者)。

原因が合併症のない筋骨格の背部痛であると思われる場合でも,高齢患者に対しては脊椎の画像検査が適切であることがある(例,癌を除外するため)。

経口筋弛緩薬(例,cyclobenzaprine,メトカルバモール,metaxalone)およびオピオイドの使用に関しては議論がある;高齢患者においては抗コリン作用,中枢神経系作用,およびその他の有害作用が潜在的な有益性を上回ることがある。

要点

  • 腰痛は60歳以上の成人の50%に発生する。

  • 頸部痛および背部痛のほとんどは機械的な脊椎疾患により引き起こされ,通常は非特異的な自然に軽快する筋骨格障害である。

  • 機械的な疾患の大半は鎮痛薬,早期の身体活動,および運動で治療し,長期の床上安静や不動状態は避ける。

  • 背部痛は多因子性であることが多く,診断を困難にしている。

  • 重篤な脊椎または脊椎外の疾患がまれな原因である。

  • レッドフラグサインはしばしば重篤な疾患および検査の必要性を示唆する。

  • 脊髄圧迫を示唆する髄節性の神経脱落症状がある患者では,可能な限り早くMRIまたはCTによる脊髄造影が必要である。

  • 身体診察時の正常な脊髄機能は,仙骨神経の機能(例,直腸の緊張,肛門括約筋反射,球海綿体反射),膝蓋腱反射およびアキレス腱反射,ならびに運動の強さの検査により確かめるのが最も確実である。

  • 動作により悪化しない痛みは脊椎外のものであることが多い(特に脊椎または傍脊椎の圧痛が検出されない場合)。

  • 明らかに機械的とは言えない腰痛のある高齢患者では,たとえその診断を示唆する身体所見がなくとも腹部大動脈瘤を考慮すべきである。

  • 急性の非根性の背部痛がある患者では,特異的な病因を同定するための詳細な評価を行わずに治療を開始することがある。

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