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強直性脊椎炎

執筆者:

Apostolos Kontzias

, MD, Stony Brook University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 2月
本ページのリソース

強直性脊椎炎(AS)は,脊椎関節症の原型であり,体幹骨,末梢の大関節,および指の炎症;夜間の背部痛;背部のこわばり;脊柱後弯症の増強;全身症状;大動脈炎;心伝導異常;前部ぶどう膜炎を特徴とする全身性疾患である。診断には,X線上で仙腸関節炎を示す必要がある。治療は,NSAIDおよび/または腫瘍壊死因子拮抗薬もしくはIL-17阻害薬ならびに関節の柔軟性を維持する理学療法による。

強直性脊椎炎(AS)は女性に比べて男性で3倍頻度が高く,20~40歳で始まることが最も多い。AS患者の第1度近親者では,一般集団より10~20倍頻度が高い。HLA-B27アレルがAS患者の90%でみられるが,人種に応じて最大で一般集団の10%でもみられる。HLA-B27アレルを有する第1度近親者におけるASのリスクは約20%である。白人におけるHLA-B27保有率の高さまたは黒人におけるHLA-B7保有率の高さにより,遺伝的素因があることが裏付けられる。しかし,一卵性双生児における一致率はわずか約50%であり,環境因子が寄与することが示唆される。病態生理には,おそらく免疫を介した炎症が関与する。

分類

AS患者の大半は,主に脊椎病変を有する(axial ASと呼ばれる)。末梢の病変が主な患者もいる。脊椎病変を有する患者のうち,一部は単純X線上で仙腸関節炎の所見がみられない。そのため,一部の専門医はASを以下のように分類している:

  • Axial AS:主に脊椎病変があり,仙腸関節炎の典型的なX線所見がある

  • Nonradiographic AS:臨床的にはaxial ASと同様であるが,仙腸関節炎の典型的なX線所見がない

  • Peripheral AS:主に末梢病変を侵すAS

症状と徴候

強直性脊椎炎の最もよくみられる症状は背部痛であるが,末梢関節障害から始まることがあり(特に小児および女性の場合),まれに急性の虹彩毛様体炎(虹彩炎または前部ぶどう膜炎)を伴う。その他の初期の症状および徴候は,びまん性の肋椎関節病変による胸郭拡張の減弱,微熱,疲労,食欲不振,体重減少,および貧血である。

背部痛(しばしば夜間に起こり,強度は様々)が最終的には反復性となる。朝のこわばり(典型的には活動により軽減する)および傍脊柱筋の攣縮が発生する。背中を曲げた姿勢または前かがみの姿勢によって背部痛および傍脊柱筋の攣縮が緩和されるため,未治療の患者では脊柱後弯症がよくみられる。重度の股関節炎が最終的に発生することがある。後期には,患者には脊柱後弯の増強,腰椎前弯の減少,および前かがみ姿勢の固定がみられ,肺機能障害を伴い,まっすぐに横たわることができない。変形することもある末梢関節の病変がみられることがあり,ときに指が侵される(指炎)。アキレス腱炎および膝蓋腱炎が起こることがある。

ASの全身症状が全患者の3分の1に生じる。繰り返す急性の前部ぶどう膜炎がよくみられ,通常は局所療法に反応する;まれに長引いて視覚を障害するほどに重症になる。神経学的徴候が,ときに圧迫による神経根炎もしくは坐骨神経痛,脊椎骨折もしくは亜脱臼,または馬尾症候群により生じる。心血管系の臨床像としては,大動脈弁閉鎖不全症,大動脈炎,狭心症,心膜炎,心伝導異常(無症状の場合もある)などがある。呼吸困難,咳嗽,または喀血が,まれに肺上葉の非結核性の線維化または空洞形成の結果生じることがあり,空洞性病変はアスペルギルス(Aspergillus)による二次感染を起こすことがある。まれに,ASは続発性アミロイドーシスを引き起こす。皮下結節は発生しない。

診断

  • 腰仙椎および仙腸関節のX線検査

  • 血液検査(赤沈,C反応性タンパク,HLA-B27,および血算)または明確な臨床基準(改訂New York基準またはAssessment of SpondyloArthritis international Societyの基準)

  • 選択された患者で骨盤MRI

夜間の背部痛および脊柱後弯症,胸郭拡張の減弱,アキレス腱炎もしくは膝蓋腱炎,または説明のつかない前部ぶどう膜炎がみられる患者(特に青年男子)では,ASを疑うべきである。AS患者の第1度近親者では疑いを強めるべきである。

一般に,赤沈, HLA-B27,C反応性タンパク,および血算により検査すべきである。末梢関節炎により他の診断が示唆される場合にのみ,リウマトイド因子(RF)および抗核抗体の検査が必要となる。HLA-B27アレルがAS患者の90%でみられるが,人種に応じて最大で一般集団の10%でもみられる。診断に有用な臨床検査はないが,検査結果によってASの疑いが強まることや,ASに類似しうる他の疾患が除外されることがある。これらの検査を行った後でもASが依然として疑われる場合,腰仙椎および仙腸関節のX線検査を行うべきである;X線上で仙腸関節炎が明示されれば診断が強く裏付けられる。

一部の患者には,X線で確認できない仙腸関節炎を確認するために骨盤MRIを行う。そのような患者では,MRIで骨炎または早期のびらんが示される。

ASは従来から改訂New York基準によって診断されている。この基準を用いれば,患者は仙腸関節炎の画像検査所見および以下のうちの1つを有する必要がある:

  • 矢状面(側方から見る)および前額面(後方から見る)の両方で腰椎の運動制限

  • 胸郭拡張の制限,年齢に応じて調整

  • 炎症性の背部痛の既往

本症を早期に,特に画像検査で脊椎関節炎が示されない患者を診断するため,新しくAssessment of SpondyloArthritis international Society(ASAS)基準(1)が確立されている。体軸性脊椎関節炎のASAS基準は,3カ月を超えて背部痛がある,発症年齢が45歳未満の患者に適用される。

診断は,ASASの画像検査基準または臨床基準を用いて行える。画像検査基準を満たすためには,X線またはMRIで仙腸関節炎の所見があることに加え,少なくとも脊椎関節炎の特徴を1つ有する必要がある。臨床基準を満たすためには,HLA-B27に加え,少なくとも脊椎関節炎の特徴を2つ有する必要がある。ASASの脊椎関節炎の特徴としては以下のものがある:

炎症性の背部痛を炎症性以外の背部痛から区別する病歴の特徴には,40歳以下での発症,緩やかな発症,朝のこわばり,活動による改善,および受診まで3カ月以上経過していることなどがある。

活動性のASの患者では,赤沈およびその他の急性期反応物質(例,C反応性タンパク)が一貫性を欠いて亢進する。RFおよび抗核抗体の検査は陰性である。HLA-B27遺伝子マーカーは,陽性および陰性適中率が低いため,通常は有用とならない。

X線上の最初の異常は,軟骨下のびらんによって生じる仙腸関節の偽の開大であり,硬化または後の狭小化および最終的な癒合が続く。変化は対称性である。脊椎の初期変化は,上位腰椎の角部分の硬化に伴う方形化;斑状の靱帯石灰化;および1カ所または2カ所の進行性の靱帯骨棘形成である。後期の変化の結果「竹様脊柱(bamboo spine)」の外観が生じるが,これは顕著な靱帯骨棘形成,広範な脊椎周囲の靱帯石灰化,および骨粗鬆症に起因する;これらの変化は,一部の患者で平均で10年間かけて発生する。

ASに典型的な変化は,単純X線では何年も描出されないことがある。MRIではより早期に変化が示されるが,その診断上の有用性に関して検証された前向きのデータがないため,ルーチンの診断における役割については意見の一致は得られていない。脊椎関節炎の疑いが強い場合,または患者の症状の他の原因を除外する必要がある場合は,骨盤MRIを行うべきである。

椎間板ヘルニアにより強直性脊椎炎に類似した背部痛および神経根障害が起こることがあるが,痛みは脊椎および神経根に限局し,通常はより突然に症状が起こり,全身症状または臨床検査値の異常は生じない。必要であれば,CTまたはMRIで椎間板ヘルニアをASと鑑別できる。単一の仙腸関節の障害は別の脊椎関節症(場合によっては感染症)を示唆する。結核性脊椎炎がASに類似することがある(骨および関節の結核を参照のこと)。

びまん性特発性骨増殖症(DISH)は,主として50歳以上の男性に発生し,臨床的におよびX線上でASと類似することがある。患者には,まれに脊椎の痛み,こわばり,および潜行性の可動域減少がみられる。DISHのX線所見には,脊椎の靱帯前方の広範な骨化(石灰化が,まるで誰かが脊椎の前方および側方にろうそくのろうを注いだかのように見える)があるが,これは数個の椎骨を架橋し,通常は下位胸椎に始まり,やがて頸椎および腰椎を侵す。骨盤上口沿いおよび腱付着部(アキレス腱付着部など)に骨膜下の骨増殖がみられることが多い。しかし,脊椎前方の靱帯は正常でしばしば隆起し,仙腸関節および椎間関節にびらんはない。鑑別に有用となる付加的な特徴は,通常は朝に顕著にならないこわばり,および赤沈正常値である。

診断に関する参考文献

  • 1.Sepriano A, Landewé R, van der Heijde D, et al: Predictive validity of the ASAS classification criteria for axial and peripheral spondyloarthritis after follow-up in the ASAS cohort: A final analysis. Ann Rheum Dis 75(6):1034–1042, 2016. doi: 10.1136/annrheumdis-2015-208730.

予後

ASは,活動性炎症の軽度または中等度の再燃が,炎症のほとんどまたは全くない時期と交互に起こることを特徴とする。大部分の患者では適切な治療によって障害がごく軽度となるか全く障害が残らず,背部のこわばりにもかかわらず全く不自由のない生産的な生活を送る結果となる。ときに経過は重症かつ進行性であり,その結果,生活に支障を来す顕著な変形が生じる。

治療

  • NSAID

  • サラゾスルファピリジン,メトトレキサート,TNF-α阻害薬,またはIL-17阻害薬(例,セクキヌマブ)

  • 運動および支持療法

ASの治療の目標は,痛みの緩和,関節可動域の維持,および末梢器官の損傷の予防である。本症は肺線維症を引き起こすことがあるため,喫煙を控えさせる。American College of Rheumatology/Spondylitis Association of America/Spondyloarthritis Research and Treatment Network's 2015 recommendations for the treatment of ankylosing spondylitis and nonradiographic axial spondyloarthritisを参照のこと。

NSAIDは,痛みを軽減し,関節の炎症および筋攣縮を抑え,それによって関節可動域が増大し,その結果運動が容易になり拘縮が予防される。ほとんどのNSAIDはASに効果があり,忍容性および毒性により薬剤選択が決定される。NSAIDの1日量はできるだけ少なくするべきであるが,活動期には最大用量が必要になることがある。薬剤の中止は,活動期の全身および関節の徴候が数カ月間抑制されてから,必ず徐々に試みるべきである。

サラゾスルファピリジンが,一部の患者で末梢関節の症状を軽減し検査における炎症マーカーの値を下げるのに役立つことがある。用量は500mg/日で開始し,1週間おきに500mg/日ずつ,1~1.5gを1日2回の維持量まで増量すべきである;急性の好中球減少が起こることがあるため,治療開始時または薬剤の増量時には細胞数をモニタリングする必要がある。末梢関節の症状は,メトトレキサートでも軽減することがあるが,脊椎の症状は通常軽減しない。

TNF-α阻害薬(例,エタネルセプト,インフリキシマブ,アダリムマブ,セルトリズマブ,ゴリムマブ)は,しばしば炎症性の背部痛に対して際立って効果的な治療法となる。

IL-17阻害薬であるセクキヌマブも炎症および関節症状の軽減に効果的である。セクキヌマブは,第0,1,2,3,および4週目ならびにその後4週間に1回,150mgを皮下投与できる。(週1回の)負荷投与なしの場合,セクキヌマブは4週間に1回150mgを皮下投与する。有害作用には,蕁麻疹,上気道感染症(URI),Candidaによる真菌感染症,下痢,帯状疱疹,および炎症性腸疾患などがある。

コルチコステロイドの全身投与,免疫抑制薬,およびほとんどの疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)は,有益性が証明されておらず一般に使用すべきではない。

適切な姿勢および関節可動域のためには,可能性のある変形の方向に拮抗する筋肉群(すなわち,屈筋よりむしろ伸筋)を強化するために毎日の運動およびその他の支持療法(例,姿勢訓練,運動療法)が極めて重要である。腹臥位に横たわり,肘か枕で上体を支えて読書することにより背中を反らすと,背部の柔軟性の維持に役立つことがある。胸壁の動きが制限される(これにより肺機能が損なわれる)ことがあるため,喫煙(これも肺機能が損なわれる)は強く控えさせる。

デポ型コルチコステロイドの関節内投与が有益である場合があり,特に1つまたは2つの末梢関節が他の関節より重度の炎症を起こし,それにより運動およびリハビリテーションが妨げられる場合に有益である。また,薬剤の全身投与で効果がない場合にも役立つことがある。画像ガイド下のコルチコステロイドの仙腸関節内への注射がときに重度の仙腸関節炎に有用なことがある。

急性のぶどう膜炎に対しては,通常は外用コルチコステロイドおよび散瞳薬で十分である。

重度の股関節炎が発生した場合,人工股関節全置換術により痛みが軽減し柔軟性が劇的に改善することがある。

要点

  • 強直性脊椎炎は,関節を侵し,全身症状,心症状,および前部ぶどう膜炎を起こすことがある全身性疾患である。

  • 最初の症状は通常,背部痛および背部のこわばりであり,ときに末梢関節の症状および/または前部ぶどう膜炎を伴う。

  • 腰仙椎の画像検査,仙腸関節の画像検査,骨盤MRI,血液検査(赤沈,C反応性タンパク,HLA-B27,および血算)の結果,ならびに/または明確な臨床基準に基づき診断する。

  • 症状の重症度を減らし機能の改善を助けるためにNSAIDを用いる。

  • 関節症状を軽減するために,サラゾスルファピリジン,メトトレキサート,TNF-α阻害薬,またはIL-17阻害薬を用いる。

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