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高安動脈炎

(脈なし病;閉塞性血栓性大動脈症;大動脈弓症候群)

執筆者:

Carmen E. Gota

, MD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2016年 2月
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高安動脈炎は,大動脈,その分枝,および肺動脈を侵す炎症性疾患である。主に若年女性に発症する。病因は不明である。血管の炎症によって動脈の狭窄,閉塞,拡張,または動脈瘤を生じることがある。患者には,四肢の間(両側の肢の間または同じ側の腕と下肢の間)に非対称性の脈もしくは血圧測定値の不一致,四肢の跛行,脳灌流量の減少による症状(例,一過性視覚障害,一過性脳虚血発作,脳卒中),および高血圧もしくはその合併症がみられることがある。診断は,大動脈造影またはMRアンギオグラフィーによる。治療はコルチコステロイドとその他の免疫抑制薬のほか,臓器機能を脅かす虚血にはバイパス手術などの血管治療を行う。

高安動脈炎はまれな疾患である。アジア人により多くみられるが,世界中で発生する。女性:男性の比率は8:1であり,発症年齢は一般的に15~30歳である。北米では,年間発生率が100万人当たり2.6例と推定される。

病因

原因は不明である。細胞性免疫機序が関与している可能性がある。

病態生理

高安動脈炎は主に大型の弾性動脈を侵す。侵される頻度が最も高い血管は以下の通りである:

  • 腕頭動脈および鎖骨下動脈

  • 大動脈(主に上行大動脈と大動脈弓)

  • 総頸動脈

  • 腎動脈

ほとんどの患者に狭窄または閉塞がみられる。動脈瘤が3分の1の患者に生じる。通常,大動脈またはその分枝の壁は,内膜の皺とともに不規則に肥厚する。大動脈弓が侵されると,内膜の肥厚により大動脈から分枝する主要な動脈の開口部が著しく狭小化するか,ときに閉塞する。患者の半数では,肺動脈も侵される。ときに肺動脈の中型の分枝が侵される。

組織学的に,早期の変化は栄養血管周囲への細胞浸潤を伴う外膜の単核球浸潤から成る。その後,中膜に強い単核球性炎症が,ときに中膜の肉芽腫性変化,巨細胞,および斑状壊死を伴って起こることがある。形態学的変化は,巨細胞性動脈炎におけるものと区別がつかないことがある。汎動脈炎性の炎症性浸潤は罹患動脈の著しい肥厚と,それに続く血管内腔の狭小化および閉塞を引き起こす。

症状と徴候

大半の患者は,障害臓器または四肢の低灌流を反映する局所症状のみを呈する。

約3分の1の患者は,発熱,倦怠感,盗汗,体重減少,疲労,および/または関節痛などの全身症状を訴える。

反復した腕の動きや腕を上げ続ける行為により痛みと疲労が生じることがある。腕や下肢の動脈の脈に減弱および不一致が生じることがある。四肢に虚血(例,冷感,下肢の跛行)の所見がみられることがある。血管雑音が,鎖骨下動脈,上腕動脈,頸動脈,腹部大動脈,または大腿動脈で,しばしば聴取される。片腕または両腕の血圧低下がよくみられる。

頸動脈と椎骨動脈の障害は,めまい,失神,起立性低血圧,頭痛,一過性視覚障害,一過性脳虚血発作,または脳卒中として発現する脳血流量の減少を招く。

開存している椎骨動脈起始部近くの鎖骨下動脈の狭窄病変は,腕を使った場合に後方循環の虚血性神経症状または失神を起こすことがある(鎖骨下動脈盗血症候群と呼ばれる)。その機序は,狭窄部位より遠位の鎖骨下動脈に血液を供給するための椎骨動脈内の血液の逆流,および運動時の上肢の動脈血管床の拡張である。

大動脈炎または冠動脈炎によって冠動脈の開口部が狭小化すると,狭心症もしくは心筋梗塞を招くことがある。上行大動脈が著しく拡張した場合,大動脈弁逆流が起こることがある。心不全が発生することがある。

胸部下行大動脈の閉塞は,ときに大動脈縮窄症の徴候(例,高血圧,頭痛,下肢の跛行)を引き起こす。腹部大動脈または腎動脈の狭小化により,腎血管性高血圧が発生することがある。腕あるいは下肢の間欠的な跛行が発生することがある。

肺動脈が侵され,ときに肺高血圧を起こす。肺動脈の中型の分枝の障害は肺梗塞を起こすことがある。高安動脈炎は慢性であるため,側副血行路が生じることがある。したがって,四肢に向かう動脈の閉塞による虚血性の潰瘍または壊疽はまれである。

診断

  • 大動脈造影,MRアンギオグラフィー,またはCT血管造影

  • 疾患活動性のモニタリング

動脈硬化および他の大動脈障害のリスクが低い患者,特に若年女性において,大動脈もしくはその分枝により栄養される臓器の虚血を示唆する症状を認めるか,または末梢血管の脈拍の減弱もしくは消失を認める場合に高安動脈炎の診断を疑う。これらの患者では,動脈血管雑音および脈拍の強さまたは血圧の左右または上肢下肢の不一致もまた診断を示唆する。

診断の確定には大動脈造影が必要とされてきたが,現在では代わりにMRアンギオグラフィーまたはCT血管造影で大動脈の全ての分枝を評価できる。特徴的所見には,狭窄,閉塞,動脈内腔の不整,狭窄後の拡張,閉塞した血管付近の側副動脈,および動脈瘤などがある。

四肢全ての血圧を測定する。しかし,血圧の正確な測定は困難なことがある。両側の鎖骨下動脈が重度に侵されている場合,全身血圧は下肢でのみ正確に測定できる。疾患が両側の鎖骨下動脈を侵し,下行大動脈および/または両側の腸骨動脈もしくは大腿動脈に縮窄がある場合は,四肢のいずれにおいても血圧を正確に測定できない。その場合は,合併症を引き起こすことがある潜在性高血圧を検出するために,血管造影を介して中心動脈圧を測定する必要がある。

潜在性高血圧に対する他の手がかりとしては,眼底検査でみられる高血圧網膜症の徴候および/または心エコー検査でみられる求心性左室肥大の徴候がある。重度の高血圧を認めない場合は,合併症を,臓器虚血を起こす血管炎の徴候と混同していることがある。

臨床検査は非特異的であり,診断には役立たない。一般的な所見には,慢性疾患に伴う貧血,血小板数の増加,ときに白血球数の増加,ならびに赤沈亢進およびCRPの上昇などがある。

以下が高安動脈炎の疾患活動性の指標である:

  • 症状と徴候:新たな全身症状(例,発熱,疲労,体重減少,食欲不振,盗汗),新たな動脈領域を障害する血管炎を示唆する症状(例,跛行),新たな血管雑音,および/または血圧測定値の新たな変化。

  • 臨床検査:血液検査で検出される炎症の所見(しかし炎症マーカーは活動性動脈炎を見逃すことがある)

  • 画像検査:これまで侵されていない動脈に狭窄または動脈瘤が発生(定期的な画像検査[通常はMRアンギオグラフィー]で評価)

しかし,高安動脈炎は,臨床診断や臨床検査が完全寛解を示唆する場合でさえ,静かに進行することがある。このため,大動脈および大型の動脈の定期的な画像検査を行う必要がある。侵されていない肢の血圧を定期的に測定すべきである。

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高安動脈炎で用いられる画像検査

検査

用途

備考

従来の血管造影検査(大動脈造影)

外科的介入が考慮されている場合,および他のいかなる方法でも大動脈近位部の血圧を測定できない場合に望ましい

血管内腔に関する解剖学的情報の描写が得られる

大動脈および大型の動脈のMRアンギオグラフィー

動脈穿刺およびヨード造影剤または放射線曝露によるリスクを回避する

若年女性で通常選択すべき検査である(若年女性は広範な動脈硬化を有する可能性が低く,また放射線誘発癌が発生しやすい)

動脈壁の解剖学的構造に関する何らかの情報が得られる

解像度が低すぎるため,遠位の大動脈分枝に関する十分な情報は得られない

動脈プラークの内容に関する情報は得られないため,血管炎疾患と動脈硬化性疾患の鑑別が困難である。

CT血管造影

MRアンギオグラフィーが禁忌の場合または利用できない場合に,大動脈とその近位の分枝を広く検査するために用いられる

大動脈の石灰化を描写できる

動脈壁の厚さに関する情報が得られる場合がある

疾患活動性のモニタリングに有用かどうかは明確ではない

フッ素18(18F)標識デオキシグルコースを用いるPET(陽電子放出断層撮影)

糖代謝における部位による相違を評価するために用いられ,炎症部位を示すのに役立つことがある(炎症細胞はより多くのブドウ糖を取り込むため)

内腔の大きさの変化に関する情報は得られない

高安動脈炎に類似する疾患を除外する必要がある。具体的には以下のものがある:

これらは全て大型の血管を侵す。

予後

20%の患者で,経過は一相性である。残りの患者に関しては,経過は再燃と寛解または慢性化と進行を繰り返す。たとえ症状および臨床検査値の異常が無活動状態を示唆する場合でも,新たな血管病変が生じ,それらの病変は画像検査で明白である。進行性の経過および合併症(例,高血圧症,大動脈弁逆流症,心不全,動脈瘤)の存在は,あまり好ましくない予後を示唆する。

治療

  • コルチコステロイド

  • ときに他の免疫抑制薬

  • 必要に応じて降圧薬および/または血管治療

薬物

コルチコステロイドが高安動脈炎の治療の要である。至適用量,漸減スケジュール,および治療期間は確立されていない。コルチコステロイド単独による治療が,ほとんどの患者で寛解を導入する。通常はプレドニゾンを用いる。開始量は1mg/kgを1日1回,1~3カ月の経口投与であり,用量をその後数カ月かけてゆっくり漸減する。これよりも低い開始量でも寛解を導入することがある。最初の反応にかかわらず,薬剤を漸減または中止した場合,約半数の患者に再燃がみられる。

メトトレキサート,シクロホスファミド,アザチオプリン,ミコフェノール酸モフェチル,およびTNF阻害薬(例,エタネルセプト,インフリキシマブ)が,一部の患者で効果的に使用されている。コルチコステロイドの効果が不十分であるか,または漸減できない場合には,これらの薬剤を試すことができる。メトトレキサートは,0.3mg/kg週1回の用量から開始し,最大25mg/週まで増量する。ミコフェノール酸モフェチルの投与も試すことができる。シクロホスファミドは,冠動脈炎または活動性動脈炎によると思われる他の重篤な合併症がある患者で考慮すべきである。

血小板介在性の閉塞を除外できないため,抗血小板薬(例,アスピリン325mgの1日1回経口投与)が頻繁に用いられる。高血圧を積極的に治療すべきである;ACE阻害薬が効果的となることがある。

手技

薬物療法が無効であれば,虚血組織への血流を再開するために,通常はバイパス術による血管治療が必要となりうる。適応としては以下のものがある:

  • 大動脈弁閉鎖不全症

  • 症候性の冠動脈疾患または虚血性心筋症を起こす冠動脈狭窄

  • 拡大した大動脈瘤の解離

  • 内科的管理に反応しない腎動脈狭窄に続発する重度の高血圧

  • 日常生活を妨げる肢の虚血

  • 脳虚血

  • 大動脈縮窄

  • 正確な血圧測定不能(どの肢でも)

望ましくは自家移植片を用いたバイパス移植術により,最良の開存率が得られる。動脈瘤形成と閉塞を防ぐために,罹患動脈の病変のない部位に吻合を作るべきである。

経皮的冠動脈形成術(PTCA)はほとんどリスクがなく,短い病変に効果的となることがある。しかし長期の再狭窄率はバイパス移植術よりもはるかに高いように思われる。血管へのステント留置は,再狭窄率が高いため通常は推奨されない。

大動脈弁逆流に対しては,大動脈基部置換術を伴う弁膜手術が必要なことがある。

要点

  • 高安動脈炎は,主に15~30歳の女性が罹患するまれな動脈炎である。

  • 大動脈,肺動脈,およびそれらの分枝の障害により,非対称性の脈拍または血圧測定値,跛行,脳灌流量減少による症状(例,一過性視覚障害,一過性脳虚血発作,脳卒中),および高血圧(全身性および肺性)またはその合併症などの症状が生じることがある。

  • 診断はMRアンギオグラフィー,またはときにCTもしくは従来の血管造影検査による。

  • 治療はコルチコステロイド,他の免疫抑制薬,アスピリン,および適応となる場合は降圧薬により行う。

  • 薬物療法にもかかわらず,重度の血管合併症(例,末梢臓器の虚血,大動脈解離,大動脈縮窄,大動脈弁閉鎖不全)がみられる場合は,血管治療が可能な施設に紹介する。

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