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多発血管炎性肉芽腫症(GPA)

(ウェゲナー肉芽腫症)

執筆者:

Carmen E. Gota

, MD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2016年 2月
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多発血管炎性肉芽腫症(以前はウェゲナー肉芽腫症として知られていた)は,壊死性肉芽腫性炎,小型および中型血管の血管炎,およびしばしば半月体形成を伴う巣状壊死性糸球体腎炎を特徴とする。典型的には,上気道と下気道および腎臓が侵されるが,どの臓器も侵される可能性がある。症状は,侵された臓器や器官系によって異なる。患者は上下気道症状(例,繰り返す鼻漏または鼻出血,咳嗽)とそれに続いて高血圧および浮腫,または多臓器障害を反映した症状を呈することがある。診断には通常,生検を必要とする。治療はコルチコステロイドに加え1剤の免疫抑制薬の投与による。寛解は通常可能であるが,再燃がよくみられる。

多発血管炎性肉芽腫症(GPA)は25,000人当たり約1例に生じ,白人に最も多くみられるが,あらゆる人種のどの年齢層にも生じうる。発症時の平均年齢は40歳である。

原因は不明であるが,免疫学的機序が関与している。活動性の全身疾患を有する患者のほとんどに抗好中球細胞質抗体(ANCA)がみられる。

病態生理

特徴として,組織球である類上皮細胞およびしばしば巨細胞を伴う肉芽腫を形成する。形質細胞,リンパ球,好中球,および好酸球がみられる。炎症は血管に加えて組織にも及ぶ;血管炎は疾患を構成する要素として小さい場合も大きい場合もある。微小壊死(micronecrosis)が通常は好中球(微小膿瘍)を伴って生じる。微小壊死は大きい壊死(macronecrosis)に進展する。壊死の中心部(地図状壊死[geographic necrosis]と呼ばれる)は,リンパ球,形質細胞,マクロファージ,および巨細胞に周りを囲まれている。組織球の柵状配列を伴う線維芽細胞の増殖域が壊死部を取り囲むことがある。

鼻に非特異的な慢性炎症および組織壊死が生じる。肺はあらゆる組織学的異常を示す可能性が最も高いが,経気管支生検で採取した小さい組織検体では診断上の特徴は典型的には同定されない。腎臓における最も一般的な所見は,糸球体の個々の係蹄またはより大きい分節の壊死および血栓を伴う,半月体形成性の巣状増殖性糸球体腎炎である。血管炎病変および播種性肉芽腫がごくまれに生じる。

症状と徴候

発症は潜行性または急性である;疾患の全貌が明らかとなるまで何年もかかることがある。一部の患者では上気道と下気道の症状が最初にみられ,その後のある時点で腎臓が侵される。他の患者では,全身症状が比較的急性に発現し,上気道,末梢神経系(多発性単神経障害[多発性単神経炎]が起こる),腎臓(糸球体腎炎が起こる),および下気道(出血,肺小結節,空洞,またはそれらの組合せが起こる)などの複数の臓器や器官系が同時に侵される。

  • 上気道:副鼻腔の疼痛,漿液血性または膿性の分泌物,および鼻出血が生じることがある。粘膜は顆粒状(敷石状)でもろくなり,潰瘍,厚い暗色の痂皮,および鼻中隔穿孔がよくみられる。鼻軟骨炎が,鼻梁の腫脹,疼痛,および陥没を伴って生じることがある。複数の抗菌薬投与レジメンに対して十分に反応しない副鼻腔炎の再発をみることがあり,診断の前に1回以上の副鼻腔手術を要していることがある。二次感染(例,黄色ブドウ球菌[Staphylococcus aureus]による)が起こることがある。咽頭痛,嗄声,呼吸困難,呼気性喘鳴(wheezing)および吸気性喘鳴(stridor)などの症状を起こす声門下狭窄が生じることがある。

  • 耳:耳炎,感音難聴,回転性めまい,および軟骨炎が生じることがある。中耳,内耳,および乳様突起がしばしば侵される。

  • 眼:眼が赤く腫れて見えることがある。また,鼻涙管の炎症および閉塞,結膜炎,強膜炎,ぶどう膜炎,または網膜血管炎が生じることもある。眼窩後部スペースの炎症性浸潤(眼窩偽腫瘍)により,眼球突出,視神経圧迫,および失明が起こることもある。外眼筋への進展は,複視を招く。眼に重篤な症状が出現した場合,永久的な視力障害を防ぐために,評価と治療が直ちに必要である。

  • 下気道:呼吸器症状がよくみられる。主気管支とその分枝の炎症により,限局性の喘鳴,閉塞後の肺炎,および無気肺が生じることがある。空洞化を伴うまたは伴わない単一または複数の肺結節,および実質性の肺浸潤は,ときに胸痛,息切れ,および湿性咳嗽などの症状を起こすことがある。両側性の浸潤を伴う呼吸困難は,喀血の有無にかかわらず,肺胞出血を示唆することがあるため,直ちに評価する必要がある。

  • 心臓:冠動脈疾患を生じることがあるが,まれである。

  • 筋骨格系:筋肉痛,関節痛,または非びらん性の炎症性関節炎を呈することがある。

  • 皮膚:白血球破砕性血管炎,圧痛のある皮下小結節,丘疹,網状皮斑,または壊疽性膿皮症が発生することがある。

  • 神経系:血管炎により,虚血性末梢神経障害,脳病変,または隣接部位からの病変の進展が生じることがある。副鼻腔または中耳に由来する病変は咽頭後部および頭蓋底に直接拡大することがあり,脳神経障害,眼球突出,尿崩症,または髄膜炎を招く。

  • 腎臓:糸球体腎炎の症状と徴候が出現する。尿沈渣所見に異常を認めることがあり,血清クレアチニンが急速に増加することがある。浮腫および高血圧が結果として生じることがある。生命を脅かす疾患である急速進行性糸球体腎炎が発生することがある。

  • 静脈系主にGPAが活動性の場合,深部静脈血栓が下肢を侵すことがある。

  • その他の臓器:ときに,乳房,腎臓,前立腺,またはその他の臓器に炎症性腫瘤が生じる。

診断

  • ルーチンの臨床検査(尿検査を含む)

  • ANCA検査

  • 確定診断のための生検

慢性で説明のつかない呼吸器の症状と徴候(成人の中耳炎を含む)がみられる患者においては,その他の器官系,特に腎臓の症状もその疾患を示唆する場合はなおさら,GPAを疑うべきである。ルーチンの臨床検査を行うが,ANCA検査および生検が最も特異的な所見をもたらす。

ルーチンの臨床検査には,赤沈,CRP,白血球分画を含む血算,血清アルブミンおよび総タンパク,血清クレアチニン,尿検査,24時間尿タンパク,胸部X線などがある。活動性疾患のある患者のほとんどで,赤沈亢進およびCRP上昇がみられ,血清アルブミンおよび総タンパクが減少する;貧血,血小板増多,および軽度から中等度の好酸球増多が認められる。変形赤血球と赤血球円柱(尿検査で認められる)は糸球体の障害を示唆する。タンパク尿が検出されることがある。血清クレアチニンが増加することがある。

ANCA検出のための血清学的検査に引き続き,酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて特異抗体を調べる。活動性疾患がある患者の大部分で,プロテイナーゼ-3(PR3)に対する抗体に関連する細胞質型ANCA(c-ANCA)がみられる;これらの所見に特徴的な臨床所見が加わることで,GPAが示唆される。

他の疾患(例,細菌性心内膜炎,コカイン乱用,SLE,アメーバ症,結核)がある一部の患者にANCA陽性の検査結果が出る。まれな疾患に対する検査は一般集団に対して検査をオーダーした場合に偽陽性となる可能性が高く,ANCA検査陽性の陽性適中率は50%前後であるため,ANCA検査は,GPAまたは他のANCA関連血管炎に対する検査前確率が少なくとも中程度に高い患者(例,肺胞出血,糸球体腎炎,または多発性単神経障害に加えて顕微鏡的多発血管炎またはGPAに関する他の特徴がみられる患者)に対してのみ行うべきである。

ANCA検査陽性は抗酸菌感染や真菌感染を除外しない;したがって,ANCA陽性および空洞性肺病変がみられる患者には依然として気管支鏡検査および十分な培養ならびに結核および真菌感染に関する他の検査が必要である。ANCA検査(抗体価)をその後の治療指針策定のために用いるべきではない。見かけ上の寛解の間に,ANCAが上昇またはANCA検査の結果が陰性から陽性に変わることがある。このような患者は,症状が再発しない場合もあれば,検査実施直後または検査後数週間,数カ月,もしくはときに数年の間に症状が再発または悪化することもある。

診断を確定するために,可能であれば生検を行うべきである。臨床的に異常な部位の生検を最初に行う。罹患肺組織の生検で特徴的な所見が明らかになる可能性が最も高い;開胸が最良の到達方法である。感染を除外するため,肺または副鼻腔組織の生検検体を培養する。腎生検において,pauci-immune(微量免疫)型で半月体形成性または非半月体形成性の巣状壊死性糸球体腎炎を認める場合は,診断が強く裏付けられる。様々な組織の生検結果はさらに,治療方針(例,腎線維症)の決定に役立つ組織学的情報をもたらすことがある。

鑑別診断には,小型および中型の血管を侵す他の血管炎疾患がある。感染症,特に増殖速度の遅い真菌または抗酸菌による感染症は,採取した組織の染色および培養によって除外されるべきである。

予後

予後は,疾患の範囲(いかに限局または拡散しているか)およびいかに速く治療を行うかにも少なくとも同程度依存する。

重度の疾患に対する免疫抑制薬の使用により,劇的に予後が改善されている。治療すると,約70%の患者で完全寛解の可能性があるが,内約半数にはいずれ再燃がみられる;再燃は寛解維持療法中または治療を止めた後に起こることがある(ときに何年も経てから)。治療を再開するまたは増やすことによって,通常は疾患を管理できる。ただし,90%の患者に疾患および/または治療による重大な病態が生じる。

治療

  • 生命または臓器機能を脅かすGPAにおける寛解導入には,高用量コルチコステロイドに加えてシクロホスファミドもしくはリツキシマブのいずれか

  • 重症度の低いGPAにおける寛解導入には,コルチコステロイド,およびメトトレキサートまたはリツキシマブのいずれか

  • 寛解維持には,リツキシマブ単独,他の薬剤(例,メトトレキサート,アザチオプリン,ミコフェノール酸モフェチル),またはリツキシマブに加えてこれら他の薬剤,ときに低用量のコルチコステロイドを併用

  • 必要であれば腎移植

GPAの治療は疾患の重症度によって異なる。多臓器疾患に対しては,しばしばリウマチ専門医,耳鼻咽喉科医,呼吸器科医,腎臓専門医を含む集学的アプローチが必要である。

生命または臓器機能を脅かす重度の症状(例,肺胞出血,急速進行性糸球体腎炎,運動障害を伴う多発性単神経障害)を有する患者は,寛解を導入する治療を行うために直ちに入院が必要である。このような患者には,高用量コルチコステロイドおよびシクロホスファミドまたはリツキシマブの投与が必要である(寛解の導入を参照のこと)。リツキシマブおよびシクロホスファミドの効力は,寛解の導入および維持において同様と考えられる。血漿交換を支持するエビデンスは他の介入を支持するエビデンスよりも弱いが,重度の急性腎機能不全(特に抗糸球体基底膜抗体検査が陰性であることが判明しておらず,急速進行性糸球体腎炎が除外されていない場合)または肺胞出血がみられる患者では,血漿交換を標準治療に加えてもよい。

リツキシマブは,再発患者で特に有用であると思われる。ある研究では,大きな再燃はリツキシマブによる治療を受けた患者では5%にしか発生しなかったが,アザチオプリンによる治療を受けた患者では29%に発生した。リツキシマブを単独投与すべきか他の薬剤と併用すべきか,ならびにリツキシマブの用量および投与頻度は完全には明らかではない。しかし,ある後ろ向き研究では,再燃率はリツキシマブをメトトレキサート,アザチオプリン,またはミコフェノール酸モフェチルと併用した方がリツキシマブを単独で使用した場合よりも低かった。寛解の維持を補助するために,低用量のコルチコステロイドを使用することが多い。

重症度の低い疾患に対しては,寛解を導入するためにコルチコステロイドおよびメトトレキサートを用いる。リツキシマブをメトトレキサートの代わりに用いることがある。上気道の症状に対し,リツキシマブはシクロホスファミド,メトトレキサート,またはアザチオプリンよりも良好に寛解を維持すると思われる。

コルチコステロイドは,できるだけ低用量まで漸減するか中止する。

生理食塩水による副鼻腔の洗浄(ムピロシン2%鼻軟膏を使用する場合としない場合がある)は,痂皮形成および二次性のブドウ球菌感染を最小限にとどめるのに役立つ。

声門下狭窄の治療は困難である。免疫抑制薬の全身投与は効果的ではないことがある。長時間作用型コルチコステロイドの病変内注射は,穏やかに拡張を進行させつつ,著しく治療成績を改善し気管切開の必要性を抑える。

再発を早期に検出できるよう,患者にこの疾患についての説明を行うべきである。患者は,自分の尿中の血液およびタンパクの検査方法を学び,血尿の徴候を医師に通知する方法について指導を受けるべきである。

腎移植は好成績を収めている;移植後の再燃リスクは維持透析に比べて減少する(拒絶反応を防ぐために免疫抑制薬を使用することがおそらく理由の1つである)。

要点

  • GPAでは,あらゆる臓器,典型的には腎臓(糸球体腎炎を伴う),上気道,および下気道において,小型および中型血管に血管炎が発生する。

  • 臨床像としては,様々な器官系が侵される可能性があり,具体的には上気道および下気道の症状(例,繰り返す鼻漏または鼻出血,咳嗽)とそれに続く高血圧および浮腫などがみられる。

  • ANCA検査と生検で診断を確定する。

  • 再燃がよくみられ,治療が病的状態の一因になることがある。

  • コルチコステロイドに加えて1剤の免疫抑制薬で寛解を導入する。

  • メトトレキサート,アザチオプリン,またはリツキシマブ,およびコルチコステロイドの用量漸減により寛解を維持する。

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