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多発性筋炎および皮膚筋炎

執筆者:

Rula A. Hajj-ali

, MD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2013年 6月
本ページのリソース

多発性筋炎および皮膚筋炎は,筋肉(多発性筋炎)または皮膚および筋肉(皮膚筋炎)における炎症性変化および変性変化を特徴とする,まれな全身性のリウマチ性疾患である。最も特異的な皮膚徴候は手指関節上のゴットロン丘疹および眼窩周囲のヘリオトロープ疹である。症状としては,対称性の筋力低下,いくらかの圧痛,その後の萎縮などがあり,主として肢帯の近位筋にみられる。合併症としては,内臓障害および癌などがありうる。診断は臨床所見,および筋肉の検査(筋酵素,MRI,筋電図検査,および筋生検などを行うことがある)における異常による。治療はコルチコステロイドにより行い,通常は免疫抑制薬または免疫グロブリン静注を併用する。

男女比は1対2である。多発性筋炎および皮膚筋炎はどの年齢層にも発生しうるが,40~60歳または小児では5~15歳でみられることが最も多い。

病因

原因は,遺伝的感受性を有する個人における筋組織に対する自己免疫反応と考えられる。家族内集積がみられ,HLAサブタイプのDR3,DR52,およびDR6が遺伝的素因のようである。誘因となる事象としては,ウイルス性筋炎や基礎にある癌などが考えられる。ピコルナウイルス様の構造が筋細胞に発見されているが,その意義は不明であり,また動物においてウイルスが類似の疾患を誘発することがある。癌と皮膚筋炎との合併(多発性筋炎との合併は少ない)は,筋肉および腫瘍の共通抗原に対する自己免疫反応の結果として,腫瘍が筋炎を誘発する可能性を示唆する。

病態生理

両疾患の病理学的変化としては,様々な程度の炎症を伴う細胞損傷および萎縮などある。手,足,および顔面の筋肉は,他の骨格筋より影響が少ない。咽頭および上部食道の筋肉,ならびにときに心臓の筋肉の病変は,それらの器官の機能を障害することがある。関節および肺に炎症が生じることがあり,特に抗シンテターゼ抗体を有する患者で可能性が高い。

皮膚筋炎は,血管での免疫複合体の沈着を特徴とし,補体介在性の血管障害と考えられる。それに対し,多発性筋炎の主な病態生理学的異常は,T細胞による直接の筋損傷である。

分類

筋炎はいくつかの亜型に分類されている:

  • 原発性特発性多発性筋炎(primary idiopathic polymyositis)はあらゆる年齢で生じることがあり,皮膚を侵さない。

  • 原発性特発性皮膚筋炎(primary idiopathic dermatomyositis)は原発性特発性多発性筋炎に類似するが,皮膚も侵す。

  • 癌を伴う多発性筋炎または皮膚筋炎はあらゆる年齢で生じうるが,高齢者に最も多く,癌は筋炎発生の前後最大2年以内に発生しうる。

  • 小児期の皮膚筋炎は,全身性血管炎を伴うことがある。

  • 多発性筋炎または皮膚筋炎は,全身性強皮症,混合性結合組織病,RA,SLE,もしくはサルコイドーシスなどの関連疾患とともに生じることがある。

封入体筋炎は,慢性の特発性多発性筋炎と類似した臨床像を示す別の疾患である;ただしこれは高齢者に発生し,遠位筋(例,手足の筋肉)を侵すことが多く,持続期間がより長期化し,治療への反応不良がみられ,組織学的な外観が異なる。

症状と徴候

多発性筋炎の発症は急性(特に小児)のこともあれば潜行性(特に成人)のこともある。多発性関節痛,レイノー現象,嚥下困難,肺症状,および全身の愁訴(特に発熱,疲労,体重減少)も生じることがある。

筋力低下が,数週間から数カ月間にわたって進行することがある。しかし,症状が生じるレベルの筋力低下を引き起こすには筋線維の50%が破壊される必要がある(すなわち,筋力低下は進行した筋炎を示唆する)。腕を肩より上に挙げること,階段を上ること,または座った姿勢から立ち上がることが困難な場合がある。骨盤帯および肩甲帯の筋肉群の筋力低下のために,車イス生活または寝たきりになることがある。首の屈筋が重度に侵され,頭を枕からもち上げられなくなることがある。咽頭および食道上部の筋肉の病変は,嚥下を障害し誤嚥の素因となることがある。手,足,および顔面の筋肉は,障害を免れる。四肢拘縮が結果的に発生することがある。

関節の症状には多発性関節痛または多関節炎などがあり,しばしば腫脹,液貯留,および非変形性の関節炎のその他の特徴を伴い,約30%の患者に生じる。しかし,関節の症状は軽度である傾向がある。Jo-1またはその他の抗シンテターゼ抗体を有する亜集団により多く生じる。

内臓障害(咽頭や上部食道の障害を除く)は,多発性筋炎では一部の他のリウマチ性疾患(例,SLE,全身性強皮症)でみられるよりも少ない。ときに,特に抗シンテターゼ抗体を有する患者においては,間質性肺炎(呼吸困難および咳嗽により発現)が最も顕著な症状である。不整脈(特に伝導障害または心室機能障害など)が起こることがある。消化管症状(小児でより頻度が高い)は,随伴する血管炎に起因し,吐血,黒色便,および虚血性の腸穿孔などがある。

皮膚変化が皮膚筋炎で生じ,黒ずんだ紅斑性となる傾向がある。紫がかった外観の眼窩周囲の浮腫(ヘリオトロープ疹)が,皮膚筋炎に比較的特異的である。他の部位では,発疹はわずかに膨隆し,滑らかであるかまたは鱗屑を伴う;額,頸部および肩のV字型の部位,胸部および背部,前腕および下腿,肘および膝,内果,ならびに近位指節間関節および中手指節関節の橈背側(ゴットロン丘疹—これもまた比較的特異的な所見である)にみられることがある。爪の基部および側部に充血または肥厚がみられる場合がある。皮膚が割れる剥離性皮膚炎が手指の橈側面に生じることがある。一次的な皮膚病変は完全に消えることが多いが,二次的変化(例,褐色の色素沈着,萎縮,瘢痕,白斑)が後に続くことがある。頭皮の発疹が乾癬状にみえ,強いかゆみを伴うことがある。皮下のカルシウム沈着が生じる場合がある(特に小児)。

診断

  • 臨床基準

  • 筋生検(確定的)

筋肉の圧痛の有無を問わず近位筋の筋力低下がみられる患者では,多発性筋炎を疑うべきである。ヘリオトロープ疹またはゴットロン丘疹がみられる患者(筋炎がない場合でも)ならびに多発性筋炎の症状および皮膚筋炎と一致する何らかの皮膚所見がみられる患者では,皮膚筋炎を疑うべきである。多発性筋炎および皮膚筋炎は,全身性強皮症または頻度は低いがSLEもしくは血管炎と,特定の臨床所見が共通する。診断の確定には,以下の5つの基準の内,可能な限り多くの基準を満たす必要がある:

  • 近位筋の筋力低下

  • 特徴的な発疹

  • 血清中の筋酵素の上昇(CKの上昇がなければ,アミノトランスフェラーゼまたはアルドラーゼ[特異度はCKより低い])

  • 筋電図上またはMRI上の特徴的な筋肉の異常

  • 筋生検の変化(確定的な検査)

筋生検により,封入体筋炎およびウイルス感染後の横紋筋融解症などの,一部の似た病態が除外される。生検所見は多様となりうるが,慢性炎症ならびに筋変性および筋再生が典型的である。他の筋障害を除外するため,多発性筋炎の治療前に筋生検により確定診断を下すことが推奨される。生検結果の感度を上げるために,生検検体は以下の特徴のうち1つ以上を有する筋肉から採取すべきである:

  • 診察での筋力低下

  • MRIで同定された炎症

  • 筋電図検査で異常が示された対側性の一対の筋肉

臨床検査では,本疾患の疑いが高まることもあれば弱まることもあり,重症度の評価とオーバラップの同定が可能なほか,合併症の検出にも役立つ。自己抗体を検査すべきである。抗核抗体(ANA)は最大80%の患者で陽性となる。ANAが存在する場合,他のオーバーラップ症候群(ほとんどの場合他の自己免疫疾患)の同定にはANAの精密な検査が重要である。約30%の患者に筋炎特異的自己抗体(抗Jo-1を含むアミノアシルtRNA合成酵素に対する抗体[抗合成酵素抗体],シグナル認識粒子[SRP]に対する抗体[抗SRP抗体],および核のヘリカーゼであるMi-2に対する抗体)が認められる。これらの自己抗体と疾患発生機序との関係は依然として不明であるが,Jo-1に対する抗体は線維化肺胞炎,肺線維症,関節炎,およびレイノー現象の重要なマーカーである。

CKの定期的な測定は,治療のモニタリングに有用である。しかし,広範囲の筋萎縮症の患者では,慢性で活動性の筋炎にもかかわらず検査値がときに正常である。筋生検,MRI,またはCK高値により,多発性筋炎の再発がコルチコステロイド誘発性ミオパチーと鑑別されることが多い。アルドラーゼは,CKより特異度が低い筋損傷のマーカーである。

40歳以上の皮膚筋炎患者または60歳以上の多発性筋炎患者は予期しない癌に罹患していることが多いため,これらの患者に対する癌のスクリーニングが一部の専門家によって推奨されている。スクリーニングには,乳腺,骨盤,および直腸(便潜血検査を伴う)を含む身体診察;血算;生化学検査;マンモグラフィー;癌胎児性抗原;尿検査;胸部X線;および患者の年齢に基づく適切なその他の検査を含めるべきである。追加の検査は,病歴および身体所見に基づいて行うべきである。一部の専門家は,胸部,腹部,および骨盤CTを推奨している。癌の症状がみられない若年患者は,スクリーニングを受ける必要はない。

予後

治療を受けた患者の最大50%で5年以内に長期寛解(明らかな回復すらある)がみられ,小児ではさらに多い。しかし,依然としていつでも再発が起こる可能性がある。全般的な5年生存率は75%であり,小児ではさらに高い。成人における死亡は,重度かつ進行性の筋力低下,嚥下困難,低栄養,誤嚥性肺炎,または肺の混合感染を伴う呼吸不全の後にみられる。多発性筋炎は,心臓や肺が侵された患者では,重症かつ治療抵抗性となる傾向がある。小児の場合,腸管の血管炎の結果として死に至ることがある。癌がある場合,通常はそれによって全般的な予後が決まる。

治療

  • コルチコステロイド

  • ときに免疫抑制薬(例,メトトレキサート,アザチオプリン,ミコフェノール酸モフェチル,リツキシマブ,シクロスポリン,免疫グロブリン静注)

炎症が鎮静化するまで患者の身体活動を適度に制限すべきである。コルチコステロイドは,最初に選択すべき薬剤である。急性例では,成人の場合プレドニゾンを1日1回40~60mg以上経口投与する。CKの定期的な測定で治療の有効性について最良の早期の指針が得られ,ほとんどの患者では6~12週間で正常値に向かって下がるかまたは正常値に到達し,その後筋力が改善される。酵素値が正常値に戻れば,プレドニゾンを漸減してもよい。筋酵素の値が上昇した場合,用量を増やす。回復していると思われる患者では,綿密なモニタリングを行いながら治療を徐々に中止できるが,ほとんどの成人ではプレドニゾン(最大で10~15mg/日)による長期の維持療法が必要である。小児では,1日1回30~60mg/m2のプレドニゾンの初期投与が必要である。小児では,1年以上の寛解の後にプレドニゾンを中止できる場合がある。

ときに,高用量のコルチコステロイドによる治療を長期間受けた患者は,ステロイドミオパチーが重なるために筋力低下がますます悪化する。

患者がコルチコステロイドに反応しない場合,高用量から中等量のコルチコステロイドに依存する場合,またはステロイドミオパチーもしくは他の合併症(プレドニゾンの中止または減量を余儀なくさせるもの)を発症する場合は,免疫抑制薬(例,メトトレキサート,アザチオプリン,ミコフェノール酸モフェチル,リツキシマブ,シクロスポリン,免疫グロブリン静注)の投与を試すべきである。治療開始時にプレドニゾンと免疫抑制薬を併用する医師もいる。メトトレキサートのみの投与(一般にRAに使用するよりも高用量)を5年以上受けている患者もいる。免疫グロブリン静注療法は薬物療法に反応しない患者に効果的となることがあるが,極端に高い費用が比較試験実施の障害となっている。

癌または封入体筋炎を伴う筋炎は通常,コルチコステロイドに対してより強い治療抵抗性を示す。癌を伴う筋炎は,腫瘍を除去すると寛解することがある。

自己免疫疾患患者は動脈硬化のリスクがさらに高く,注意深くモニタリングすべきである。長期のコルチコステロイド療法を受けている患者には骨粗鬆症の予防を行うべきである。免疫抑制療法を併用する場合は,Pneumocystis jiroveciiなどの日和見感染に対する予防を追加すべきである。

要点

  • 筋力低下は進行した筋炎を示唆する。

  • ヘリオトロープ疹およびゴットロン丘疹は皮膚筋炎に比較的特異的である。

  • 診断を確定するために,特徴的な筋力低下および発疹,CK高値,ならびに筋電図検査またはMRIでの筋肉の変化がないかを調べる。

  • 必要に応じて筋生検を行い,診断を確定する。

  • 40歳以上の皮膚筋炎患者および60歳以上の多発性筋炎患者には癌のスクリーニングを行う。

  • ほとんどの患者をコルチコステロイド,およびときに他の免疫抑制薬により治療する。

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