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全身性エリテマトーデス (SLE)

(播種性紅斑性狼瘡)

執筆者:

Rula A. Hajj-ali

, MD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2013年 6月
本ページのリソース

全身性エリテマトーデス(SLE)は,自己免疫を原因とする慢性,多臓器性,炎症性の疾患であり,主に若年女性に起こる。一般的な症状としては,関節痛および関節炎,頬部などの発疹,胸膜炎または心膜炎,腎障害,中枢神経系障害,血球減少などがある。診断には,臨床的および血清学的な基準が必要である。重症で進行中の活動性疾患の治療には,コルチコステロイド,しばしばヒドロキシクロロキン,およびときに免疫抑制薬を必要とする。

全症例のうち,70~90%が女性(通常妊娠可能年齢)に起こる。SLEは白人よりも黒人およびアジア人に多くみられる。SLEは,新生児を含むあらゆる年齢で発生しうる。軽症型のSLEについての認識が高まったことで,報告される症例が世界的に増加している。一部の国では,SLEの有病率はRAに匹敵する。SLEは,遺伝的素因がある場合に自己免疫反応を生じさせる未知の環境誘因によって引き起こされる可能性がある。一部の薬物(例,ヒドララジン,プロカインアミド,イソニアジド)は,可逆的なループス様の症候群を引き起こす。

症状と徴候

臨床所見は極めて多様である。SLEは,熱を伴って突然発生することもあれば,関節痛および倦怠感のエピソードを伴い数カ月もしくは数年かけて潜行性に発生することもある。血管性頭痛,てんかん,または精神病症状が初期所見である場合がある。あらゆる器官系に関係しうる症状が出現する可能性がある。周期的な増悪(再燃)が起こることがある。

関節の症状

間欠性の関節痛から急性の多関節炎に及ぶ関節症状が約90%の患者に起こり,他の症状出現の何年も前に現れることがある。ループスによるほとんどの多関節炎は非破壊的および非変形性である。しかし,長期にわたる例では,骨びらんを伴わない変形が発生することがある(例,中手指節関節および指節間関節で,まれに骨びらんまたは軟骨のびらんを伴わずに尺側偏位もしくはスワンネック変形[Jaccoud関節炎]が発生する)。

皮膚および粘膜の症状( ループスの亜型

皮膚病変には,頬部の蝶形紅斑(平坦または隆起で,一般的に鼻唇溝は侵されない)などがある。丘疹および膿疱がないことは,SLEと酒さとの鑑別に役立つ。他にも様々な紅斑性かつ硬い斑状丘疹状病変が,顔面および頸部の露出部,上胸部,ならびに肘など,あらゆる部位に生じる。皮膚の水疱形成および潰瘍化はまれであるが,粘膜の再発性の潰瘍(特に,硬口蓋および軟口蓋の移行部近くの硬口蓋中央部,頬および歯肉の粘膜,ならびに鼻中隔前部)がよくみられる(ときに粘膜のループスと呼ばれる);所見はときに中毒性表皮壊死融解症に類似することがある。全身脱毛または局所的な脱毛がSLEの活動期によくみられる。脂肪織炎が皮下の結節性病変を生じることがある(ときにループス脂肪織炎または深在性ループスと呼ばれる)。血管炎による皮膚病変には,手掌および手指の斑点状紅斑,爪周囲の紅斑,爪郭部の梗塞,蕁麻疹,および触知可能な紫斑などがありうる。点状出血が血小板減少に続いて発生することがある。光線過敏症が一部の患者にみられる。Lupus erythematosus tumidusは,露光部における一部環状のピンク色から紫色をした蕁麻疹様で瘢痕のない局面および/または結節を特徴とする。凍瘡状ループスは,寒冷期に足趾,手指,鼻,または耳に生じる,鮮紅色から赤みがかった青色の圧痛を伴う結節を特徴とする。一部のSLE患者では扁平苔癬の特徴がみられる。

心肺の症状

心肺症状としては,再発を繰り返す胸膜炎がよくみられ,胸水を伴う場合もある。肺炎はまれであるが,肺機能の軽度の障害がよくみられる。ときに重度の肺胞出血が起こる。予後は従来から不良であるが,おそらくより早期かつ積極的な集中治療のために,改善しつつあるように思われる。その他の合併症には,肺塞栓,肺高血圧症,shrinking lung syndrome(縮小肺)などがある。心合併症には,心膜炎(最も一般的)および心筋炎などがある。重篤でまれな合併症は,冠動脈炎,弁膜障害,およびLibman-Sacks心内膜炎である。accelerated atherosclerosisが罹病および死亡の原因として増加している。先天性心ブロックが新生児に生じることがある。

リンパ組織

全身性リンパ節腫脹がよくみられ,特に小児,若年成人,および黒人に多いが,縦隔リンパ節腫脹は一般的ではない。脾腫が患者の10%に生じる。

神経症状

神経症状が,いずれかの部位の中枢もしくは末梢の神経系または髄膜が侵されることにより起こることがある。軽度認知障害がよくみられる。頭痛,人格変化,虚血性脳卒中,くも膜下出血,痙攣発作,精神病症状,器質性脳症候群,無菌性髄膜炎,末梢神経障害および脳神経障害,横断性脊髄炎,または小脳機能障害などもみられることがある。

腎症状

腎障害が常に発生する可能性があり,SLEの唯一の症状であることがある。腎障害は,無症状で良性のこともあれば,進行性で致死的である場合もある。腎病変は,限局性で通常は良性の糸球体炎から,びまん性で死に至ることがある膜性増殖性糸球体腎炎まで,重症度に幅がある。一般的な症状としては,タンパク尿(最も多い),赤血球円柱および白血球による尿沈渣異常,高血圧,浮腫などがある。

産科の症状

産科の症状として,妊娠の早期および後期の胎児死亡などがある。抗リン脂質抗体を有する患者では,流産を繰り返すリスクが高い。妊娠は成功することがあるが( 妊娠中の全身性エリテマトーデス(SLE))(特に寛解の6カ月から12カ月後),SLEの再燃が妊娠中によくみられる。妊娠は,寛解する時期とタイミングを合わせるべきである。妊娠中は,リウマチ専門医,ハイリスク妊娠を専門とする産科医,および血液専門医からなる集学的チームによる,再燃または血栓イベントに関する綿密なモニタリングを受けるべきである。

血液学的な症状

血液症状としては,貧血(自己免疫溶血性),白血球減少(通常は細胞数1500/μL未満のリンパ球減少),血小板減少(ときに生命を脅かす自己免疫性血小板減少症)などがある。抗リン脂質抗体を有する患者では,再発性の動脈または静脈の血栓,血小板減少,および高確率で産科合併症が起こる。SLEの合併症の多くは,産科合併症を含め,おそらく血栓症が原因である。

消化管の症状

消化管症状が,腸管の血管炎または腸管運動の減少によって生じることがある。さらに,膵炎がSLEにより,またはおそらく高用量コルチコステロイドもしくはアザチオプリンによるSLE治療により生じることがある。症状としては,漿膜炎に起因する腹痛,悪心,嘔吐,腸穿孔症状,偽閉塞などがありうる。SLEが肝実質疾患を引き起こすことはまれである。

診断

  • 臨床基準

  • 血球減少

  • 自己抗体

何らかのSLEの症状および徴候がある患者,特に若年女性ではSLEを疑うべきである。しかし,関節炎の症状が優勢である場合,早期のSLEはRAを含む他の結合組織(または結合組織以外の)疾患に類似していることがある。混合性結合組織病がSLEに類似する可能性があるが,全身性強皮症,リウマチ様の多関節炎,および多発性筋炎の特徴をも伴うことがある。感染症(例,細菌性心内膜炎,ヒストプラズマ症)もSLEに類似する可能性があり,治療に起因する免疫抑制の結果として発生することがある。サルコイドーシスおよび腫瘍随伴症候群などの疾患もSLEに類似する場合がある。

臨床検査によりSLEは他の結合組織疾患と鑑別される。ルーチンの検査には以下を含めるべきである:

  • 抗核抗体(ANA)および抗二本鎖(ds)DNA抗体

  • 血算

  • 尿検査

  • 肝酵素および腎酵素を含む生化学検査

大半の臨床医は,American Rheumatism Associationによって作成されたSLEの診断基準に頼っていた。しかし,現在はSLEの専門家から成るコンセンサスグループのSystemic Lupus International Collaborating Clinics(SLICC)が提唱した改定基準が支持されている。SLICC基準によってSLEと分類するには以下のどちらかが必要である:

  • 17項目の基準のうち少なくとも4項目(少なくとも臨床基準11項目のうち1項目および免疫学的基準6項目のうち1項目を含む)

  • SLEと一致する,生検で確定した腎炎に加えてANAまたは抗dsDNA抗体

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SLEの分類のためのSLICC基準*

基準

定義

臨床基準

急性皮膚エリテマトーデス

ループス頬部紅斑(lupus malar rash)(頬部の円板状発疹は該当しない),水疱性エリテマトーデス(bullous lupus),SLEの中毒性表皮壊死融解症を伴うタイプ,斑状丘疹状ループス皮疹(maculopapular lupus rash),光線過敏性ループス皮疹(photosensitive lupus rash)(皮膚筋炎がない場合)

または

亜急性皮膚エリテマトーデス(硬結のない乾癬状および/または環状多環状の病変[瘢痕化せずに消失する],ときに炎症後の色素沈着異常または毛細血管拡張を伴う)

慢性皮膚エリテマトーデス

古典的な円板状皮疹,局所性(頸部より上)の円板状皮疹,全身性(頸部の上下)の円板状皮疹,肥厚性(疣贅状)ループス(hypertrophic[verrucous] lupus),ループス脂肪織炎(深在性ループス),粘膜ループス(mucosal lupus),lupus erythematosus tumidus,凍瘡状エリテマトーデス

または

円板状ループス/扁平苔癬のオーバーラップ

非瘢痕性の脱毛症

広範な薄毛または視認可能な傷んだ毛髪を伴う毛髪の脆弱化(円形脱毛症,薬物,鉄欠乏症,およびアンドロゲン性脱毛症など,他の原因がない場合)

口腔または鼻の潰瘍

口蓋,頬部,および舌の潰瘍

または

鼻潰瘍(血管炎,ベーチェット病,感染症[ヘルペスウイルス],炎症性腸疾患,反応性関節炎,および酸性食品など,他の原因がない場合)

関節疾患

2以上の関節に及ぶ滑膜炎,腫脹または液貯留を特徴とする

または

2以上の関節における圧痛および少なくとも30分間の朝のこわばり

漿膜炎

1日を超えて続く典型的な胸膜炎,胸水,または胸膜摩擦音

または

1日以上続く典型的な心膜性の疼痛(前かがみに座ると改善する横臥時の痛み),心嚢液貯留,心膜摩擦音,または他の原因(例,感染症,尿毒症,ドレスラー症候群)がない場合の心膜炎(心電図検査による)

腎症状

尿タンパク:24時間当たりタンパク500mgに相当するクレアチニン比(または24時間尿タンパク量)

または

赤血球円柱

神経症状

痙攣,精神病症状,多発性単神経障害(原発性の血管炎など,他に判明している原因がない場合),脊髄炎,末梢神経障害または脳神経障害(原発性の血管炎,感染症,および糖尿病など,他に判明している原因がない場合)

または

急性の錯乱状態(中毒性および代謝性の原因,尿毒症,または薬物など,他の原因がない場合)

溶血性貧血

溶血性貧血

白血球減少またはリンパ球減少

白血球減少:少なくとも一度は白血球が4000/mm3未満(フェルティ症候群,薬物,門脈圧亢進症など,他に判明している原因がない場合)

または

リンパ球減少:少なくとも一度はリンパ球が1000/mm3未満(コルチコステロイド,薬物,および感染症など,他に判明している原因がない場合)

血小板減少

薬物,門脈圧亢進症,および血栓性血小板減少性紫斑病など,他に判明している原因がない場合に,少なくとも一度の血小板減少(血小板数が100,000/mm3未満)

免疫学的基準

ANA

臨床検査値の基準範囲を超えるANAの値

抗dsDNA抗体

検査範囲を超える抗dsDNA抗体の値(またはELISAで検査した際,基準範囲の2倍を超える)

抗Sm抗体

Sm核抗原に対する抗体の存在

抗リン脂質抗体

以下のいずれかにより判定される抗リン脂質抗体陽性:

  • ループスアンチコアグラントの検査結果が陽性

  • 迅速血漿レアギン試験の検査結果が偽陽性

  • 抗カルジオリピン抗体の抗体価が中等度または高度に上昇(IgA,IgG,またはIgM)

  • 抗β2-糖タンパクI抗体(IgA,IgG,またはIgM)の検査結果が陽性

低補体価

C3低値,C4低値

または

CH50低値

直接クームス試験

溶血性貧血がない場合の直接クームス試験

*分類には,17項目のうち少なくとも4項目(少なくとも1項目の臨床基準および1項目の免疫学的基準を含む)または生検で確定したループス腎炎が必要である。

ANA = 抗核抗体;抗dsDNA抗体 = 抗二本鎖DNA抗体;ELISA = 酵素結合免疫吸着測定法;Sm = Smith;SLICC = Systemic Lupus International Collaborating Clinics。

蛍光抗体法によるANA検査

蛍光抗体法によるANA検査はSLEに対する最適のスクリーニングであり,98%超でANA検査陽性(通常,1:80を超える高抗体価)となる。しかし,RA,その他の結合組織疾患,癌,さらには一般集団において,ANA検査で陽性になることがある。偽陽性率は,健常対照群において,ANA抗体価1:320で約3%からANA抗体価1:40で約30%まで様々である。ループス様症候群だけでなく,ヒドララジン,プロカインアミド,およびTNF-α拮抗薬などの薬物によってもANA検査の結果が陽性になる可能性がある; 薬物を中止するとANAはいずれ陰性になる。ANAが陽性である場合,抗dsDNA抗体などのより特異的な検査を行うべきである;高抗体価はSLEに極めて特異的であるが,わずか25~30%のSLE患者に認められるのみである。

その他のANAおよび抗細胞質抗体

ANA検査は非常に感度が高いが,SLEに特異的ではなく,そのため診断の確定には他の自己抗体の所見が必要である。例えばRo(SSA),La(SSB),Smith(Sm),リボ核タンパク(RNP),およびdsDNAなどに対する抗体などである。Roは主に細胞質にあり,抗Ro抗体は,ときに慢性皮膚ループスを呈するANA陰性のSLE患者にみられる。抗Ro抗体は新生児ループスおよび先天性心ブロックの原因抗体である。抗Sm抗体はSLEに極めて特異的であるが,抗dsDNA抗体と同様に,感度は高くない。抗RNP抗体はSLE,混合性結合組織病,ならびにときに他の全身性自己免疫疾患および全身性強皮症の患者に生じる。

その他の血液検査

白血球減少(通常はリンパ球減少)がよくみられる。溶血性貧血が起こることがある。SLEにおける血小板減少と特発性血小板減少性紫斑病との鑑別は,患者がSLEの他の特徴を有していなければ,困難または不可能な場合がある。SLE患者の5~10%において梅毒の血清学的検査で偽陽性が生じる。これらの検査結果はループスアンチコアグラントおよびPTTの延長と関連している可能性がある。これらの検査の1つ以上で異常値がみられる場合,抗リン脂質抗体(例,抗カルジオリピン抗体)の存在が示唆されるため,次に酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で抗リン脂質抗体を直接測定すべきである。抗リン脂質抗体は,動脈もしくは静脈の血栓,血小板減少,および妊娠中では自然流産または後期の胎児死亡と関連するが,無症状の患者でみられることもある。溶血性貧血がない場合の直接クームス試験陽性は,ループスの診断基準の1つである。

その他の試験は,重症度のモニタリングおよび治療の必要性の判定に有用である。血清補体価(C3,C4)は疾患の活動期にしばしば低下し,通常は活動性腎炎患者で最も低い。赤沈は疾患の活動期に亢進することが多い。C反応性タンパクの値は必ずしも上昇しない。

腎障害

腎障害のスクリーニングは,尿検査から始める。赤血球円柱および/または白血球円柱は活動性腎炎を示唆する。腎疾患は無症状である場合があるため,見かけ上寛解している患者についても,尿検査を一定の間隔で行うべきである。タンパク排泄量が500mg/日を超える場合またはactive urinary sedimentの所見がある場合は,腎生検が適応となる。腎生検は,腎疾患の状態の評価(すなわち,活動性の炎症か,炎症後の瘢痕か),および治療の指針に有用である。大部分の糸球体が硬化した慢性腎機能不全の患者では,積極的な免疫抑制療法が有益となる可能性は低い。

予後

経過は通常,慢性,再発性であり,予測不能である。何年も寛解が続くことがある。最初の急性期をコントロールすれば,非常に重症(例,脳血栓症または重度の腎炎)の場合でも,長期予後は通常良好である。大半の先進諸国における10年生存率は95%を超える。診断の早期化およびより効果的な治療法が,予後改善の一因である。より重度の疾患にはより毒性の強い治療法が必要であるが,それにより死亡のリスクが増大する。そのような合併症の例には,免疫抑制による感染症または長期間のコルチコステロイド使用による骨粗鬆症などがある。冠動脈疾患のリスクの増大は若年死亡の一因となる可能性がある。

治療

  • 軽症例にはNSAIDとしばしば抗マラリア薬

  • 重症例にはコルチコステロイドとしばしば免疫抑制薬

治療を単純化するために,SLEを軽度(例,発熱,関節炎,胸膜炎,心膜炎,頭痛,発疹)または重度(例,溶血性貧血,血小板減少性紫斑,広範囲の胸膜および心膜の障害,著明な腎障害,四肢または消化管の急性血管炎,病勢盛んな中枢神経系障害)に分類すべきである。

軽症例または一進一退する場合

ほとんどまたは全く治療が必要ないことがある。関節痛は通常,NSAIDによりコントロールする。抗マラリア薬が有用である(特に関節および皮膚の症状が著明である場合)。ヒドロキシクロロキン200mgの1日1回または1日2回の経口投与によりSLEの再燃頻度が低下する。その他には,クロロキン250mgの1日1回経口投与およびキナクリン50~100mgの1日1回経口投与などがある。ヒドロキシクロロキンはまれに網膜毒性および骨格筋または心筋への毒性を生じることがある。眼を12カ月毎に診察すべきである。

重症例

急性で重度の症状をコントロールする導入療法後に維持療法を行うなどの治療がある。コルチコステロイドが第1選択の治療法である。プレドニゾンと免疫抑制薬の併用が,活動性で重篤な中枢神経系ループス,血管炎(特に内臓または神経を侵すもの),または活動性ループス腎炎に推奨される。3日連続で行うメチルプレドニゾロン1gの緩徐な(1時間~)静注を初期治療とすることが多い。その後,プレドニゾン40~60mgの1日1回経口投与を継続することがあるが,用量はSLEの症状によって異なる場合がある。シクロホスファミドまたはミコフェノール酸モフェチル(特にアフリカ系アメリカ人で)も通常は導入療法に用いる。重度の腎障害では,シクロホスファミドを連日の経口投与の代わりに通常は間欠的なパルス静注で投与する;例えば,約500mg~1g/m2静注 (膀胱を保護するためにメスナおよび補液とともに)の月1回を6カ月間,その後3カ月に1回を18カ月間(腎毒性または血液学的毒性— シクロホスファミドおよび静注メスナによる化学療法プロトコルがある場合はより低頻度)などである。

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シクロホスファミドおよび静注メスナによる化学療法プロトコル

治療全体を通じ耐容性について絶えず監視すること。

1. 生理食塩水50mLにオンダンセトロン10mgおよびデキサメタゾン10mgを混合し,10~30分間かけて注入する。

2. 生理食塩水250mLにメスナ250~500mg(シクロホスファミドの代謝物で膀胱に刺激性があるアクロレインに結合させるために使用)を混合し,シクロホスファミドを注入する前に,生理食塩水500~1000mLとともに注入する。

3. 生理食塩水250mLにシクロホスファミド500~1000mg/m2を混合し,1時間かけて注入する。

4. 生理食塩水250mLにメスナ250~500mgを混合し,2回目のメスナ注入を行う。メスナの総量は使用したシクロホスファミドの総量と等しくすべきである。多量の水分を摂取し,2時間毎に膀胱を空にするよう患者に奨励すべきである。翌朝,患者はオンダンセトロン8mgを服用しなければならない。

中枢神経系ループスまたは他の重大な急性発作において,IgG 400mg/kgの1日1回5日間連続静注が不応性血小板減少症に対して有用なことがある。末期腎臓病の患者には,透析の代わりに良好な治療成績が得られる腎移植を行うことがあり,特に寛解に入っている患者において行う。

重度のSLEの改善には4~12週間を要することが多い。抗リン脂質抗体症候群の診断が確定した場合,脳,肺,または胎盤の血管の血栓形成または塞栓には,ヘパリンによる短期的な治療およびワルファリンによる長期的な治療が必要である。目標とするINR(国際標準比)は通常3である。

維持療法

ほとんどの患者で,長期の高用量コルチコステロイドを用いなくとも再燃のリスクが減る可能性がある。慢性例は,寛解を維持するために最低用量のコルチコステロイドおよび炎症をコントロールする他の薬物(例,抗マラリア薬,低用量の免疫抑制薬)で治療すべきである。治療は第一に臨床的特徴に基づくべきであるが,その次に抗dsDNA抗体価または血清補体価を指針とすることもある。特定の臓器病変を評価するために,他の適切な血液検査および尿検査を用いることがある。抗dsDNA抗体価も血清補体価も,腎以外の疾患の再燃とは相関しないことがある。患者に長期の高用量コルチコステロイドが必要である場合は,アザチオプリンなど代替の経口免疫抑制薬を考慮すべきである。コルチコステロイド療法を長期間受けている患者には,カルシウム,ビタミンD,およびビスホスホネート系薬剤による治療を考慮すべきである。

局所的な合併症および併存する病態

全ての患者を動脈硬化について入念にモニタリングすべきである。抗リン脂質抗体および再発性の血栓症がある患者には,長期的な抗凝固療法が極めて重要である( 深部静脈血栓症(DVT) : 抗凝固薬)。

妊娠中の患者に抗リン脂質抗体がある場合,コルチコステロイド(プレドニゾン30mg以下を1日1回経口投与),低用量アスピリン,またはヘパリンによる抗凝固療法で血栓性合併症を抑えることができる。妊娠の第2および第3トリメスターを通して,ヘパリンの連日皮下投与単独または小児用アスピリン1錠との併用が最も効果的な予防策である可能性がある。

要点

  • SLEでは関節および皮膚の症状が古典的であるが,本疾患は,皮膚,心臓および肺,リンパ組織,腎臓,ならびに消化器系,造血系,生殖系,および神経系など,様々な器官系を侵しうる。

  • 診断の確定には,SLICCの臨床基準および免疫学的基準を用いるか(可能な場合),または腎生検を行う。

  • 検査のうち,スクリーニングには極めて感度の高いANAを用いるが,確定にはより特異度の高い自己抗体(例,抗dsDNA抗体,抗Sm抗体)を用いる。

  • 全ての患者について腎障害がないか評価する。

  • 軽症例はNSAIDまたはクロロキンもしくはヒドロキシクロロキンなどの抗マラリア薬により治療する。

  • 中等度または重度のSLEにはコルチコステロイドを使用し,腎炎,中枢神経系病変,および血管炎に対して,またはコルチコステロイドが無効な場合には,多くの場合免疫抑制薬を使用する。

  • 寛解を維持するために,可能な限り低用量のコルチコステロイドを使用する。

ループスの亜型

円板状エリテマトーデス(DLE)

ときに慢性皮膚エリテマトーデス(chronic cutaneous lupus erythematosus)とも呼ばれるDLEは,ループスの一部として生じることがある一連の皮膚変化であり,全身性病変を伴うことも伴わないこともある。皮膚病変は紅色局面として始まり,萎縮性瘢痕へと進行する。顔面,頭皮,および耳など,皮膚の露光部に集合的に生じる。無治療では,病変が拡大して中央部分の萎縮および瘢痕が生じる。広範な瘢痕性脱毛症がみられることがある。粘膜病変が顕著であることがある(特に口腔内)。ときに病変が肥厚し,扁平苔癬に類似することがある(肥厚性ループス[hypertrophic lupus]または疣贅状ループス[verrucous lupus]と呼ばれる)。

典型的な円板状の病変を示す患者は,SLEであるかどうかを評価すべきである。DLEでは,ほぼ例外なくdsDNAに対する抗体が認められない。生検ではDLEとSLEは鑑別されないが,その他の疾患(例,リンパ腫またはサルコイドーシス)を除外できる。生検は皮膚病変の活動性の辺縁で行うべきである。

早期の治療により永続的な萎縮を予防できる。日光または紫外線への曝露を最小限にすべきである(例,屋外では強力なサンスクリーン剤を使用)。外用コルチコステロイドの軟膏(特に乾燥皮膚に対し)またはクリーム(軟膏より油分が少ない)の1日3~4回塗布により(例,トリアムシノロンアセトニド0.1%または0.5%,フルオシノロン0.025%または0.2%,フルランドレノリド0.05%,吉草酸ベタメタゾン0.1%,および,特にジプロピオン酸ベタメタゾン0.05%)通常は小さな病変が退行する;これらは過度にまたは顔面(皮膚萎縮が引き起こされる部位)に使用すべきではない。難治性の病変は,フルランドレノリドを塗布したビニールテープで覆ってもよい。あるいは,トリアムシノロンアセトニドの0.1%懸濁液の皮内注射(1部位につき0.1mL未満)により病変が消失することがあるが,二次性の萎縮が続発することが多い。抗マラリア薬(例,ヒドロキシクロロキン200mgの1日1回または1日2回経口投与)が有用な場合がある(顔面病変に対しても)。難治例では,併用療法(例,ヒドロキシクロロキン200mg/日に加えてキナクリン50~100mgの1日1回経口投与)が数カ月から数年間必要になることがある。

亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)

SCLEは,皮膚病変が顕著なSLEの亜型である。SCLEの患者では,繰り返す発疹が広範囲にみられる。環状または丘疹落屑性の病変が,顔面,腕,および体幹に発生することがある。病変は通常,光線過敏性であり,色素減少を生じることがあるが,瘢痕化はまれである。SCLEでは関節炎および疲労がよくみられるが,神経症状および腎症状はみられない。ANA陽性の場合もANA陰性の場合もある。ほとんどの場合Ro(SSA)に対する抗体を認める。母親にRo抗体がある乳児は,先天性のSCLEまたは先天性心ブロックを有する可能性がある。SCLEはSLEと同様に治療すべきである。

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