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シェーグレン症候群 (SS)

執筆者:

Rula A. Hajj-ali

, MD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2013年 6月
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シェーグレン症候群(SS)は,比較的よくみられる原因不明の慢性,自己免疫性,全身性,炎症性の疾患である。外分泌腺のリンパ球浸潤およびそれに続く二次的な腺機能障害による,口腔,眼,およびその他の粘膜の乾燥を特徴とする。SSは様々な外分泌腺または他の器官に影響を及ぼすことがある。診断は,眼,口腔,および唾液腺の障害に関連する特異的な基準,自己抗体,ならびに(ときに)病理組織学的検査による。治療は通常,対症療法である。

SSは中年女性に最もよく起こる。SSは,他に合併症がなければ原発性に分類される。RA,SLE,全身性強皮症,混合性結合組織病,橋本甲状腺炎,原発性胆汁性肝硬変,または慢性の自己免疫性肝炎などの自己免疫疾患患者の約30%がSSを発症し,そのような例では,SSは二次性に分類される。遺伝的関連性が判明している(例,白人の原発性SS患者のHLA-DR3抗原)。

病態生理

唾液腺,涙腺,その他の外分泌腺にCD4陽性T細胞と一部のB細胞が浸潤する。T細胞から炎症性サイトカイン(例,IL-2,インターフェロンγ)が産生される。唾液腺管の細胞もサイトカインを産生し,最終的には分泌管の損傷を引き起こす。涙腺の腺上皮の萎縮により,角膜および結膜の乾燥が生じる(乾性角結膜炎— 乾性角結膜炎)。耳下腺におけるリンパ球浸潤および分泌管内の細胞増殖は,内腔の狭小化の原因となり,場合によっては筋上皮島と称される緻密な細胞構造を形成し,結果として腺の萎縮を生じることがある。乾燥に加えて,消化管の粘膜または粘膜下の萎縮ならびに形質細胞およびリンパ球によるびまん性浸潤により,症状(例,嚥下困難)が引き起こされることがある。

症状と徴候

腺の症状

SSは最初に眼または口を侵すことが多く,ときにそれらのみを侵す。ドライアイは砂っぽいザラザラした感覚を引き起こすことがある。進行例では,角膜が激しく損傷し,上皮の糸状物が角膜の表面からつり下がり(糸状角膜炎),視覚が障害されることがある。唾液の減少(口腔乾燥症)の結果,咀嚼および嚥下の困難が生じ,二次的にカンジダ(Candida)感染症,齲蝕,および唾液腺管の結石が発生する。味覚および嗅覚が低下することがある。乾燥は,皮膚,ならびに鼻,咽喉,喉頭,気管支,外陰,および腟の粘膜にも生じることがある。気道の乾燥は,咳嗽を引き起こすことがある。脱毛が起こることがある。33%の患者で耳下腺が腫大し,通常は硬くて平滑であり,軽度の圧痛がある。腫大は非対称性のこともあるが,1つの腺の非常に不均衡な腫大は腫瘍を示唆する場合がある。慢性的な唾液腺の腫大は,閉塞または感染がない限り,痛みを伴うことはまれである。

腺外の症状

SSにおける関節疾患は,通常は非びらん性および非変形性である。関節痛が約50%の患者に生じる。関節炎が約33%の患者に生じ,分布はRAと似るがびらん性ではない。

他によくみられる腺外の症状としては,全身性リンパ節腫脹,レイノー現象,肺実質の病変(よくみられるが,重篤になることはまれ),血管炎などがある。血管炎はときに末梢神経(末梢性多発神経障害または多発性単神経炎)もしくは中枢神経系に影響を及ぼす場合や,または発疹(紫斑を含む)および糸球体腎炎を引き起こす場合がある。腎臓が侵されると,尿細管性アシドーシス,濃縮力の低下,腎結石,または間質性腎炎が引き起こされることがある。偽リンパ腫,悪性リンパ腫,またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症が発生することがある;患者は非ホジキンリンパ腫を通常の40倍の率で発症する。慢性の肝胆道疾患,および膵炎(膵臓の外分泌組織は唾液腺のそれと類似する)が起こる可能性がある。

診断

  • 眼症状,口腔症状,ならびに眼および唾液腺の検査

  • 自己抗体

  • ときに唾液腺の生検

眼のザラザラ感,ドライアイ,もしくは口腔乾燥,唾液腺の腫大,末梢神経障害,紫斑,または説明のつかない尿細管性アシドーシスがある患者では,SSを疑うべきである。そのような患者には,眼および唾液腺の評価と血清学的検査などの診断検査を行うべきである。SSの分類には種々の基準が提唱されている。SSの米国および欧州の分類基準に対する最新の改訂は2002年に提唱された。この基準はルーチンの診療活動で用いるために開発されたものではなく,またSSと臨床的に診断される患者全てが,提唱されている基準(通常,6つの臨床像のうち4つ以上)を満たすわけではない。6つの臨床像とは,眼症状,口腔症状,眼科検査陽性所見,唾液腺障害,自己抗体,および病理組織像である。患者に顎下腺の腫大がある場合,特に膵炎の既往があれば,IgG4関連疾患(様々な器官のリンパ形質細胞の浸潤を特徴とする新たに認識された疾患)の可能性を考慮すべきである。

眼の症状とは,3カ月以上のドライアイまたは代用涙液の1日3回以上の使用のいずれかである;細隙灯顕微鏡検査によってもドライアイを確認できる。

口腔症状とは,3カ月を超える日常の口腔乾燥感,嚥下補助用の液体の日常的な使用,または唾液腺の腫脹である。

眼の徴候は,各下眼瞼の下につけた濾紙片による刺激の後,5分間で分泌される涙液の量を測定するシルマー試験で評価すべきである。若年者では正常であれば各濾紙片が15mmほど濡れる。SS患者の大半は5mm未満であるが,試験結果の約15%が偽陽性であり,15%が偽陰性である。ローズベンガルまたはリサミングリーンの点眼による眼の染色は,特異度が非常に高い。細隙灯顕微鏡検査においてフルオレセイン染色で涙液層破壊時間が10秒未満である場合もドライアイが示唆される。

唾液腺障害は,唾液流量,唾液腺造影,または唾液腺シンチグラフィーで測定する異常に低い唾液産生(15分間に1.5mL以下)によって確認できるが,これらの試験が行われるのはまれである。唾液産生は,舌下に唾液が正常に溜まる様子を調べることにより定性的に評価できる。代わりに,舌圧子を頬粘膜に10秒間押し付けてもよい。舌圧子を放した後すぐに脱落すれば,唾液流量は正常であると判断する。舌圧子が脱落しにくいほど,口腔乾燥の重症度が高い。女性では,口紅が前歯に付着するlipstick signが口腔乾燥の有用な指標になりうる。目盛り付き容器があれば,唾液を一度吐き出させて口腔を空にし,それから数分間唾液を全て容器に吐き出させるということもできる。正常流量は0.3~0.4mL/minである。著明な口腔乾燥症では0.1mL/minである。

自己抗体(血清学的基準)は,感度および特異度が限られる。自己抗体として,Ro(SS-A自己抗体— 全身性エリテマトーデス (SLE))もしくは核抗原(LaまたはSS-B自己抗体と呼ぶ)に対する抗体,抗核抗体,またはγグロブリンに対する抗体の高値などがある。リウマトイド因子が70%を超える患者にみられる。赤沈が患者の70%で亢進し,33%に貧血がみられ,最大25%で白血球減少がみられる。

病理組織学的検査は,頬粘膜の小唾液腺の生検により評価する。唾液腺の生検は通常,自己抗体検査で診断を確定できない患者,または主要臓器が侵されている患者のみに行う。口唇小唾液腺に腺房組織の萎縮を伴うリンパ球の大きな増殖巣が複数あれば,病理組織学的障害が確定する。

ドライアイもしくは口腔乾燥(乾燥症状)の最も一般的な原因は加齢および薬物であるが,乾燥症状に加えて耳下腺腫脹が発生した場合は,C型肝炎,HIV,過食症,およびサルコイドーシスをSSと鑑別すべきである。

予後

SSは慢性疾患であり,ときに肺感染症により,またはまれに腎不全もしくはリンパ腫により死亡することがある。随伴する全身性自己免疫疾患により予後が決まることがある。

治療

  • 乾燥症状に対する対症療法

  • 増悪因子の回避

  • ときに経口コルチコステロイド,シクロホスファミド,またはリツキシマブ

SSはまず,ドライアイおよび口腔乾燥の外用療法により管理すべきである。SSの他の全身症状は,重症度および侵された臓器に応じて治療すべきである。乾燥の訴えを増悪しうる他の病態に対する治療法を認識することが重要である。本症の進行を止めるため,および関節痛の治療のために,ヒドロキシクロロキン200~400mgの1日1回経口投与を通常行う。

ドライアイは潤滑作用のある点眼薬で治療すべきである(最初はヒプロメロースまたはメチルセルロースなどの点眼薬および就寝時にOTCの軟膏)。他の治療法としては,涙点閉鎖および外用シクロスポリンなどがある。皮膚および腟の乾燥は,潤滑剤で治療できる。

口腔乾燥は,一日中飲み物を少しずつ飲む,シュガーレスのガムを噛む,カルボキシメチルセルロースを含有する人工唾液を洗口液として使用するなどして,回避することができる。唾液分泌を減少させる薬物(例,抗ヒスタミン薬,抗うつ薬,その他の抗コリン薬)を避けるべきである。徹底した口腔衛生および定期的な歯科受診が不可欠である。結石を迅速に除去して,健全な唾液腺組織を保つ必要がある。突然腫大した唾液腺の痛みは,一般的に温罨法および鎮痛薬で治療するのが最良である。ピロカルピン5mgの1日3回~1日4回経口投与,またはセビメリン塩酸塩30mgの1日3回経口投与は,唾液の産生を刺激しうるが,気管支攣縮および閉塞隅角緑内障の患者では避けるべきである。

積極的な全身療法がときに適応となる;通常は関連疾患(例,重度の血管炎または内臓障害)がある患者に限る。コルチコステロイド(例,プレドニゾン1mg/kgの1日1回経口投与),シクロホスファミド,またはリツキシマブが重症例で必要なことがあるが,細胞傷害性薬剤による治療を行っていない場合でもリンパ腫のベースラインリスクの増加が懸念される。

要点

  • 眼のザラザラ感,ドライアイ,もしくは口腔乾燥,唾液腺の腫大,末梢神経障害,紫斑,または説明のつかない尿細管性アシドーシスがあれば,SSを疑う。

  • 通常は特異的な臨床基準によって診断を確定する。

  • 乾燥症状は対症的に(例,外用潤滑剤で)治療し,乾燥の因子を回避する。

  • 患者が重度の疾患(例,重度の血管炎または内臓障害)を有する場合,コルチコステロイド,シクロホスファミド,またはリツキシマブにより治療する。

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