病因
病態生理
顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)のシグナル伝達異常により,肺胞マクロファージがサーファクタントを処理できないことが発症に寄与すると考えられており,これはおそらく,単核球上のGM-CSF/IL-13/IL-5受容体共通β鎖の機能低下または欠如によると考えられる(この疾患を有する一部の小児ではみられるが,成人ではみられない)。また抗GM-CSF抗体もほとんどの患者にみられる。毒素による肺損傷が疑われるが,吸入による二次性の症例では証明されていない。
肺胞は無細胞性のリポタンパクサーファクタントで満たされており,これはPAS(過ヨウ素酸シッフ染色)染色で陽性となる。肺胞および間質の細胞は正常のままである。後肺底区が主に侵される。胸膜および縦隔は侵されない。
症状と徴候
診断
肺胞タンパク症が最初に疑われるのは通常,非特異的な呼吸器症状評価のために胸部X線撮影を行った時である。X線では,両側の中下肺野にバタフライ陰影がみられ,肺門部は正常である。
気管支肺胞洗浄を行う。洗浄液は乳白色または混濁し,PAS染色陽性であり,サーファクタントを貪食したマクロファージの散在,T細胞の増加,およびサーファクタントアポタンパク-Aの高値を特徴とする。
気管支鏡検査の禁忌がある場合または,洗浄液から得た検体で診断がつかない場合は,胸腔鏡または開胸による肺生検を行う。治療の前に行われる典型的な検査としては以下のものがある:
HRCTはすりガラス陰影,小葉内構造物の肥厚,および典型的な多角形の(crazy-paving)小葉間隔壁による陰影を示す。しかしながら,この所見は特異的ではなく,リポイド肺炎,細気管支肺胞上皮癌,およびPneumocystis jirovecii肺炎患者でも同様にみられる。
肺機能検査は,肺活量,残気量,機能的残気量,および全肺気量の減少量とは不釣り合いなDLcoの低下を示す。
臨床検査の異常所見には,赤血球増多,高ガンマグロブリン血症,血清LDH値の上昇,および血清サーファクタントタンパクAおよびDの増加などがある。これらの所見は示唆的であるが,診断に有用ではない。
動脈血ガス分析では,軽度から中等度の運動に伴う低酸素血症がみられ,また疾患がより重症であれば,安静時でもみられる場合がある。