この2つの手技は互いに補完する。縦隔切開により,縦隔鏡検査では到達できない大動脈下リンパ節(aortopulmonary window lymph node)へ直接到達できる。
縦隔鏡検査および縦隔切開の適応
縦隔鏡検査および縦隔切開は共に縦隔のリンパ節腫脹または腫瘤の評価または切除のため,およびがん(例,肺癌,食道癌)の病期診断のために実施するが,がんの病期診断においては PET 陽電子放出断層撮影 胸部画像検査には,単純X線,コンピュータ断層撮影(CT),MRI,核医学検査,および超音波検査などがある。 非侵襲的な画像検査を行う上で,MRI以外には絶対的禁忌はない。患者の眼または脳に金属が入っている場合,MRIは実施できない。 恒久型ペースメーカーまたは植込み型除細動器がある場合は相対的禁忌である(MRI Safetyを参照)。また,MRIの造影剤としてガドリニウムを使用する場合,慢性腎臓病のステージ4もしくは5の患者または透析患... さらに読む および超音波気管支鏡ガイド下針生検によりこれらの手技の必要性が減りつつある。
縦隔鏡検査および縦隔切開の禁忌
禁忌は以下の通りである:
上大静脈症候群
縦隔への放射線照射の既往
胸骨正中切開の既往
気管切開
大動脈弓に位置する大動脈瘤
縦隔鏡検査および縦隔切開は,外科医により手術室で全身麻酔を用いて実施される。
縦隔鏡検査では,胸骨切痕に切開を入れ,頸の軟部組織を鈍的に剥離しながら,気管へ,またさらに遠位に向かい気管分岐部へと進む。縦隔内視鏡をそのスペースに挿入することで,気管傍リンパ節,気管気管支リンパ節,奇静脈リンパ節,および気管分岐部リンパ節への到達,ならびに上後縦隔への到達が可能になる。
前縦隔切開術(Chamberlain法)は,第2肋間胸骨左縁の切開を介した縦隔への外科的侵入法であり,左上葉の肺癌の転移先として頻度の高い前縦隔リンパ節および大動脈下リンパ節(aortopulmonary window lymph node)への到達を可能にする。
縦隔鏡検査および縦隔切開の合併症
患者の1%未満に合併症が発生し,出血,感染,反回神経損傷による声帯麻痺,リンパ管損傷による乳び胸,食道穿孔,および気胸などがみられる。