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喀血

執筆者:

Noah Lechtzin

, MD, MHS, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2016年 7月
本ページのリソース

喀血とは咳をして気道から血液を喀出することである。大量喀血とは,24時間のうちに600mL(およそ膿盆1杯分)以上の血液を喀出することである。

病態生理

肺血流の大部分(95%)は圧の低い肺動脈を流れ肺毛細血管床に達し,そこでガス交換が行われる。約5%の血液は圧の高い気管支動脈(大動脈から起始し主要気道および支持構造へ血液を供給する)を流れる。喀血の血液は一般にこの気管支循環から生じるが,その例外として外傷,肉芽腫または石灰化が生じたリンパ節または腫瘍による侵食のほか,まれに肺動脈カテーテルによって肺動脈が損傷した場合や,肺毛細血管が炎症により損傷された場合などがある。

病因

血液が混在した痰は,URIおよびウイルス性気管支炎など多くの軽症呼吸器疾患でよくみられる。

鑑別疾患の範囲は広い( 喀血の原因)。

成人では,症例の70~90%は以下によって引き起こされる:

原発性肺癌は40歳以上の喫煙者において重要な原因であるが,転移性肺癌が喀血を引き起こすことはまれである。空洞性のAspergillus感染が原因として認められる頻度は増えているが,癌ほど一般的ではない。

小児でよくみられる原因は以下のものである:

  • 下気道感染症

  • 異物誤嚥

大量喀血

最も頻度の高い原因は時とともに変化し地域によっても異なるが,以下を含む:

  • 気管支原性癌

  • 気管支拡張症

  • 結核および他の肺炎

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喀血の原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ*

気管気管支由来

腫瘍(気管支原性,気管支転移,カポジ肉腫)

盗汗

体重減少

大量喫煙歴

カポジ肉腫の危険因子(例,HIV)

胸部X線

CT

気管支鏡検査

気管支炎(急性または慢性

急性:湿性または乾性咳嗽

慢性:COPDの診断歴または喫煙歴のある患者において,咳嗽が1カ月の大半の日,または1年の内3カ月間咳嗽が続く状態が2年連続する

急性:臨床的評価

慢性:胸部X線

繰り返す感染の病歴を有する患者における慢性咳嗽および粘液産生

胸部高分解能CT

気管支鏡検査

気管支結石症

肉芽腫性疾患の既往がある患者における石灰化リンパ節

胸部CT

気管支鏡検査

異物(典型的には慢性で未診断)

URI症状を伴わない慢性咳嗽(典型的には乳児または幼児)

ときに発熱

胸部X線

ときに気管支鏡検査

肺実質由来

亜急性の発熱

咳嗽

盗汗

食欲不振

体重減少

胸部X線またはCTにて鏡面像を伴う不規則な形の空洞がみられる

発熱,湿性咳嗽,呼吸困難,胸膜性胸痛

呼吸音の減弱またはやぎ声

白血球数の上昇

胸部X線

入院患者では血液および喀痰培養

活動性の肉芽腫性疾患(結核性,真菌性,寄生虫性,梅毒性)または菌腫(菌球)

曝露歴のある患者における発熱,咳嗽,盗汗,および体重減少

しばしば免疫抑制の病歴

胸部X線

胸部CT

喀痰検体または気管支鏡下洗浄液の微生物学的検査

疲労

体重減少

しばしば血尿

ときに浮腫

尿検査

クレアチニン値

腎生検

抗糸球体基底膜抗体の検査

cANCA検査

しばしば慢性の,血性鼻漏および鼻粘膜潰瘍

しばしば関節痛および皮膚病変(結節,紫斑)

歯肉肥厚およびmulberry gingivitis(桑実状の歯肉炎)

鞍鼻および鼻中隔穿孔

ときに腎機能不全

侵された領域(例,腎,皮膚)の生検ならびにcANCA検査および小~中サイズの動脈における血管炎の証明

気管支鏡検査

ループス肺炎

SLEの病歴がある患者における発熱,咳嗽,呼吸困難,および胸膜性胸痛

胸部CT (肺胞炎の証明)

ときに気管支鏡下洗浄 (リンパ球増多または顆粒球増多を証明)

主に血管由来

動静脈奇形

粘膜皮膚の毛細血管拡張または末梢性チアノーゼの存在

胸部CT血管造影

肺血管造影

突然発症する鋭い胸痛,呼吸数および心拍数の増加 (特に肺塞栓症の危険因子を有する患者にみられる場合)

CT血管造影またはV/Qシンチグラフィー

四肢のドプラまたは複式検査によりDVT所見を示す

肺静脈圧の上昇(特に僧帽弁狭窄,左心不全)

断続性ラ音

中枢または末梢の容量負荷を示唆する徴候(例,頸静脈怒張,末梢浮腫)

臥位での呼吸困難(起座呼吸)または入眠から1~2時間後に起こる呼吸困難(発作性夜間呼吸困難)

心電図

BNP測定

心エコー検査

肺実質への漏出を伴う大動脈瘤

背部痛

胸部X線で縦隔の拡大

胸部CT血管造影

肺動脈破裂

最近の肺動脈カテーテルの留置または操作

緊急胸部CT血管造影または緊急肺血管造影

気管腕頭動脈瘻

過去3日から6週間以内の気管カニューレの留置

臨床的評価(例,臨床状況に一致して気管内チューブからの出血を認める)

その他

肺子宮内膜症(月経随伴性喀血)

月経中の繰り返す喀血

臨床的評価

ときに経口避妊薬による試験的治療

全身性の凝固障害または抗凝固薬もしくは血栓溶解薬の使用

肺塞栓症,DVT,または心房細動に対し,抗凝固薬による治療を受けている患者

脳卒中または心筋梗塞に対し,血栓溶解薬投与による治療を受けている患者

ときに家族歴

PT/PTTまたは抗第Xa因子活性の測定

凝固異常の是正に伴い喀血が消失

*喀血を認める全ての患者は胸部X線およびパルスオキシメトリーを実施すべきである。

BNP = 脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド;cANCA = 抗好中球細胞質抗体;DVT = 深部静脈血栓症;V/Q = 換気血流比。

評価

病歴

現病歴の聴取では,喀血の持続時間,時間的パターン(例,突然の発症,周期的に繰り返す),誘発因子(例,アレルゲンへの曝露,寒冷,労作,仰臥位),およびおおよその喀血量(例,縞状,小さじ程度,コップ1杯程度)を対象に含めるべきである。患者に対して,喀血,偽喀血(すなわち,上咽頭を出血源とする血液が咳により喀出される),および吐血を鑑別するための具体的な説明が必要になる場合がある。後鼻漏の感覚や咳嗽を伴わない外鼻孔からの出血は偽喀血を示唆する。悪心と同時にみられる黒,褐色,またはコーヒー残渣様の血液の吐出は,吐血の特徴である。泡沫状の喀痰,鮮紅色の血液,および窒息感(大量の場合)は真の喀血の特徴である。

系統的症状把握(review of systems)では,発熱,および喀痰産生(肺炎);盗汗,体重減少,および疲労(癌,結核);胸痛および呼吸困難(肺炎,肺塞栓症);下肢の痛みおよび腫脹(肺塞栓症);血尿(グッドパスチャー症候群);ならびに血性鼻漏(多発血管炎性肉芽腫症)などの,可能性のある原因を示唆する症状がないか検討すべきである。

また原因に対する危険因子について聴取すべきである。危険因子には,HIV感染症,免疫抑制薬の使用(結核,真菌感染症);結核への曝露;長期の喫煙歴(癌);および最近の不動状態または手術,既知の癌,血栓の病歴または家族歴,妊娠, エストロゲンを含む薬剤の使用,および最近の長距離旅行(肺塞栓症)などがある。

既往歴の聴取では,慢性肺疾患(例,COPD,気管支拡張症,結核,嚢胞性線維症),癌,出血性疾患,心不全,胸部大動脈瘤,および肺腎症候群(例,グッドパスチャー症候群,多発血管炎性肉芽腫症)など喀血を起こしうる既知の疾患を対象に含めるべきである。結核への曝露歴は,特にHIV感染症または他の理由で易感染状態にある患者で重要である。

頻回の鼻出血,紫斑ができやすい,肝疾患などの病歴は,凝固障害の可能性を示唆する。使用薬剤の聴取では抗凝固薬および抗血小板薬の使用を確認すべきである。

身体診察

バイタルサインを評価して,発熱,頻脈,頻呼吸,および酸素飽和度の低下がないか確認する。全身徴候(例,悪液質)および患者の窮迫レベル(例,呼吸補助筋の使用,口すぼめ呼吸,興奮,意識レベルの低下)に注意すべきである。

肺の完全な診察を行い,特に空気の出入りは十分か,呼吸音は左右対称か,ならびに断続性ラ音,類鼾音,吸気性喘鳴,および呼気性喘鳴がないかを調べる。硬化の徴候(例,やぎ声,打診時の濁音)がないか検討すべきである。頸部および鎖骨上部の視診および触診を行い,リンパ節腫脹(癌または結核を示唆)の有無を確認すべきである。

視診で頸静脈怒張がないか,触診で下肢および仙骨前部に圧痕性浮腫がないか確認すべきである(心不全を示唆する)。心不全または肺動脈圧上昇の診断を支持しうる過剰心音または心雑音に注意しながら心音を聴取すべきである。

腹部診察では,肝うっ血または肝腫瘤の徴候がないかに焦点を置くべきであり,これらの所見は癌または食道静脈瘤出血のどちらかを示唆している可能性がある。

皮膚および粘膜を診察し,斑状出血,点状出血,毛細血管拡張,歯肉炎,または口腔もしくは鼻粘膜からの出血の所見がないか調べるべきである。

患者が診察中に再度喀血することがあれば,血液の色および量に注意すべきである。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 大量喀血

  • 背部痛

  • 肺動脈カテーテルまたは気管切開の存在

  • 倦怠感,体重減少,または疲労

  • 大量の喫煙歴

  • 診察中の安静時呼吸困難または呼吸音の消失もしくは減弱

所見の解釈

病歴聴取および身体診察によって,しばしば診断が示唆され,さらなる検査の指針が得られる( 喀血の原因)。

多くの可能性が考えられるが,ある程度の一般化が可能である。それまでは健康で,診察所見が正常かつ危険因子(例,結核,肺塞栓症に対するもの)のない患者で,咳嗽および発熱が急性に生じた場合は,急性の呼吸器疾患による喀血である可能性が最も高く,逆に慢性疾患の可能性ははるかに低くなる。しかしながら,危険因子が存在する場合は,それら特定の疾患が強く疑われるべきである。臨床予測ルール(clinical prediction ruleー 肺塞栓症の診断のための臨床予測ルール(Clinical Prediction Rule))が肺塞栓症のリスク評価に役立つ可能性がある。酸素飽和度が正常だからといって,肺塞栓症が除外されるものではない。

喀血の原因が肺疾患(例,COPD,嚢胞性線維症,気管支拡張症)または心疾患(例,心不全)である患者は,典型的にはそれらの疾患の明らかな病歴を有している。喀血は最初に現れる徴候ではない。

易感染状態であることが判明している患者では,結核または真菌感染症がないかを疑うべきである。

慢性疾患の症状または徴候がみられるが,そうした疾患が判明していない患者では,癌または結核を疑うべきであるが,他の症候を認めない患者で喀血が肺癌の最初の症状として出現する場合もありうる。

重要な所見がいくつか存在する。腎不全あるいは血尿の存在は肺腎症候群を示唆する(例,グッドパスチャー症候群,多発血管炎性肉芽腫症)。多発血管炎性肉芽腫症の患者は鼻粘膜病変を有することがある。目に見える毛細血管拡張がある場合,動静脈奇形が示唆される。出血性疾患による喀血の患者は通常,皮膚所見(点状出血,紫斑,または両方)または抗凝固薬もしくは抗血小板薬の使用歴がある。月経に随伴し繰り返す喀血は肺子宮内膜症を強く示唆する。

検査

大量喀血のある患者は,検査の前に,通常ICUにおける治療および安定化が必要である。喀血が軽度である患者は,外来での検査が可能である。

画像検査を常に施行する。胸部X線は必須である。結果が正常で,病歴と一致し,かつ喀血が大量でなければ,気管支炎に対する経験的治療を行ってもよい。結果が異常の場合や病歴と一致しない場合は,CTおよび気管支鏡検査を施行すべきである。CTにより,胸部X線では明らかではない肺病変が発見される場合があり,気管支鏡検査および生検を見越した病変の位置の特定に役立つ可能性がある。CT血管造影または(より頻度は低いが)換気・血流比シンチグラフィーおよび場合により肺動脈造影を追加で行うことで,肺塞栓症の診断を確定できる。CTおよび肺血管造影によって肺動静脈瘻も検出しうる。

咽頭,喉頭,および気道のファイバースコープ検査は,病因が不明瞭である場合に,食道胃内視鏡検査と併せて適応となることがあり,これにより喀血を吐血や上咽頭または中咽頭からの出血と鑑別できる。

臨床検査も実施する。通常血算,血小板数,ならびにPTおよびPTTの測定を行うべきである。抗第Xa因子活性の検査は,低分子ヘパリンを投与されている患者における治療域を超えた抗凝固状態の検出に利用できる。糸球体腎炎の徴候(血尿,タンパク尿,円柱)を確認するため尿検査を行うべきである。活動性結核の初期検査としてツベルクリン検査と喀痰培養を行うべきであるが,その結果が陰性であっても,他の診断が見つからない場合にさらなる抗酸菌検査を行うための喀痰誘発や気管支ファイバースコープによる検体採取が不要になるわけではない。

特発性喀血

喀血の原因は30~40%の患者で不明のままであるが,特発性喀血の患者の予後は一般に良好で,通常,評価から6カ月以内に出血は消失する。

治療

大量喀血

大量喀血の初期治療には2つの目的がある:

  • 血液を健側肺に吸入するのを防ぐ(窒息を引き起こしうるため)

  • 持続する出血による失血を防ぐ

最初はどちら側の出血かが不明であることが多いため,健側肺を保護するのは困難なことがある。一旦出血側が同定されれば,患者に患側肺が下になるような体位をとらせ,健側肺への選択的挿管および/または患側肺に向かう気管支を閉塞するなどの対策を講じる。

失血を防ぐため,あらゆる出血性素因の改善および止血のための直接的な処置を行う。凝固障害は,新鮮凍結血漿および特定の凝固因子の補充または血小板輸血により改善できる。気管支鏡下にレーザー治療,焼灼,またはアドレナリンもしくはバソプレシンの直接注射を行いうる。

大量喀血は軟性ではなく硬性気管支鏡検査の数少ない適応の1つであるが,硬性気管支鏡は気道の制御を可能にし,気管支ファイバースコープよりも視野が広く,吸引力に優れ,またレーザーなどによる治療的介入にもより適している。

気管支動脈造影による塞栓術は,大量喀血を止めるための望ましい方法となりつつあり,その成功率は最大90%と報告されている(1)。硬性気管支鏡や塞栓術で制御できない大量喀血の場合,緊急手術の適応となるが,一般にそれは最終手段と考えられている。

一旦診断が確定すれば,その原因に向けたさらなる治療を開始する(2,3)。

少量喀血

少量喀血の治療はその原因に照準を当てて行う。

早期切除は,気管支の腺腫または癌に対して適応となる場合がある。気管支結石症(石灰化リンパ節の隣接した気管支への侵食)では,硬性気管支鏡下に結石の除去が行えない場合,肺切除が必要となりうる。心不全または僧帽弁狭窄に続発する出血は通常,心不全に対する特異的治療に反応する。まれに,僧帽弁狭窄による生命を脅かすレベルの喀血のため,緊急の僧帽弁弁膜切開術が必要となる。

肺塞栓症による出血はめったに大量ではなく,ほとんどの場合,出血は自然に止まる。塞栓が再発し出血が続く場合,抗凝固療法は禁忌である場合があり,下大静脈フィルターの留置が第1選択の治療である。

気管支拡張領域からの出血は,通常感染症により生じるため,適切な抗菌薬および体位ドレナージによる感染症の治療が必須である。

治療に関する参考文献

  • 1.Mal H, Rullon I, Mellot F, et al: Immediate and long-term results of bronchial artery embolization for life-threatening hemoptysis.Chest 150 (4): 996–1001,1999.

  • 2.Lordan JL, Gascoigne A, Corris PA.The pulmonary physician in critical care.Illustrative case 7: Assessment and management of massive haemoptysis.Thorax 58: 814–819, 2003.

  • 3.Jean-Baptiste E.Clinical assessment and management of massive hemoptysis.Critical Care Medicine 28(5): 1642–1647, 2000.

要点

  • 喀血を,吐血および上咽頭または中咽頭からの出血と鑑別する必要がある。

  • 気管支炎,気管支拡張症,結核,および壊死性肺炎または肺膿瘍は,成人で最も頻度の高い原因である。

  • 下気道感染症および異物誤嚥は小児で最も頻度の高い原因である。

  • 大量喀血のある患者は,検査の前に治療および安定化が必要である。

  • 大量喀血の場合,出血側がわかれば,患側肺が下になる体位を患者にとらせるべきである。

  • 気管支動脈塞栓術は大量喀血の望ましい治療法である。

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