(肺炎の概要および易感染性患者における肺炎も参照のこと。)
P. jiroveciiは遍在する微生物であり,エアロゾルによって伝播されるが,免疫能の正常な患者では疾患を引き起こすことはない。しかしながら,次のような患者はP. jirovecii肺炎を発症するリスクがある:
ほとんどの患者には,発熱,呼吸困難,および乾性咳嗽があり,乾性咳嗽は数週間(HIV感染症),または数日間(細胞性免疫不全のその他の原因)にわたり進行する。呼吸困難がよくみられる。
診断
胸部X線およびパルスオキシメトリーによる酸素化の評価を行うべきである。
胸部X線は両側性びまん性の肺門周囲の浸潤影を示すのが特徴的であるが,20~30%の患者ではX線所見は正常である。
胸部X線で浸潤影を認めない場合でも,低酸素血症が存在する可能性がある;この所見は診断に重要な手がかりとなりうる。パルスオキシメトリーで異常があれば,低酸素血症の重症度を確認するため,しばしば動脈血ガス(ABG)分析(肺胞気-動脈血酸素分圧較差の開大を含む)が行われる。
肺機能検査を行った場合(診断検査として行われるのはまれであるが),拡散能異常を示す。
診断の確定には,起因菌の病理組織学的証明が必要である。メテナミン銀染色,ギムザ染色,ライト-ギムザ染色,グロコット染色(modified Grocott),ワイゲルト-グラム染色,またはモノクローナル抗体染色が用いられる。喀痰検体は通常,誘発または気管支鏡によって採取する。感度は,誘発喀痰では30~80%,気管支鏡による気管支肺胞洗浄では95%を超える。
予後
治療
治療は,トリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX)4~5mg/kg,1日3回の静注または経口投与を14~21日間継続することにより行う。P. jiroveciiのシストは肺内に何週間も残存するため,治療は診断が確定する前に開始してよい。治療の有害作用は後天性免疫不全症候群(AIDS)患者でより頻度が高く,発疹,好中球減少,肝炎,および発熱などがみられる。
同様に21日間投与できる代替レジメンとして,以下のものがある:
ペンタミジンの主な制約は,急性腎障害,低血圧,低血糖などの有害作用の発生頻度が高いことである。
Pao2< 70mmHgの患者には,コルチコステロイドによる補助療法が推奨されている。最初の5日間はプレドニゾン40mgを1日2回(あるいはそれと同等量)経口投与,続く5日間は40mgを1日1回(または20mgを1日2回)経口投与し,その後は20mgの1日1回経口投与を治療期間中継続するというレジメンが提唱されている。