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市中肺炎

執筆者:

Sanjay Sethi

, MD, University at Buffalo SUNY

最終査読/改訂年月 2019年 3月
本ページのリソース

市中肺炎(Community-acquired pneumonia)は,病院の外で獲得した肺炎と定義されている。同定される頻度が最も高い病原体は,肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae),インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae),非定型細菌(すなわち,肺炎クラミジア[Chlamydia pneumoniae],肺炎マイコプラズマ[Mycoplasma pneumoniae],Legionella属),およびウイルスである。症候は,発熱,咳嗽,喀痰産生,胸膜性胸痛,呼吸困難,頻呼吸,および頻脈である。診断は臨床像および胸部X線に基づく。治療は,経験的に選択した抗菌薬による。予後は比較的若いまたは健康な患者では極めて良好であるが,より高齢でより状態の悪い患者において,特に肺炎球菌(S. pneumoniae),レジオネラ(Legionella),黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus),またはインフルエンザウイルスによって引き起こされる肺炎の多くは重篤または致死的である。

肺炎の概要も参照のこと。)

病因

細菌,ウイルス,および真菌などの多くの微生物が,市中肺炎を引き起こす。病原体は患者の年齢およびその他の因子によって様々であるが(成人における市中肺炎の表を参照),ほとんどの患者が徹底的な検査を受けないため,また受けたとしても特定の病原体が同定されるのは症例の50%未満であるため,市中肺炎の原因としての各病原体の相対的重要性は不明である。

最も一般的な細菌性の原因は以下のものである:

クラミジアおよびマイコプラズマによって引き起こされる肺炎は,しばしば臨床上他の肺炎と区別できない。

一般的なウイルス性の原因には以下のものがある:

  • RSウイルス(RSV)

  • アデノウイルス

  • インフルエンザウイルス

  • メタニューモウイルス

  • パラインフルエンザウイルス

細菌の重複感染が起こると,ウイルス性感染と細菌性感染の鑑別が困難になる可能性がある。

肺炎クラミジア(C. pneumoniae)は市中肺炎の2~5%を占め,5~35歳の健常者における肺感染症の2番目に多い原因である。肺炎クラミジア(C. pneumoniae)は,家庭,大学寮,および軍隊訓練キャンプにおける呼吸器感染症のアウトブレイクの一般的な原因である。比較的良性の肺炎を引き起こし,入院を必要とすることはほとんどない。Chlamydia psittaci肺炎(オウム病)はまれであり,オウム目の鳥(例,オウム,パラキート,コンゴウインコ)を飼育している患者,またはそのような鳥としばしば接触がある患者に発生する。

2000年以降,市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(CA-MRSA)による皮膚感染の発生率が顕著に増加している。この病原体はまれに空洞を伴う重症肺炎を引き起こすことがあり,若年成人を侵す傾向にある。

緑膿菌(P. aeruginosa)は,嚢胞性線維症,好中球減少症,進行した後天性免疫不全症候群(AIDS),および/または気管支拡張症の患者における,特に頻度の高い肺炎の原因である。

その他多くの微生物が,免疫能正常の患者における肺感染症の原因となる。肺炎患者では,旅行,ペット,趣味,およびその他の要素を含む徹底的な曝露歴の聴取が,より頻度の低い微生物を疑うためには必須である。

Q熱,野兎病,炭疽,およびペストは,まれな細菌症候群であるが,肺炎が著明な症状となりうる。野兎病炭疽,およびペストでは,バイオテロを疑うべきである。

アデノウイルス,エプスタイン-バーウイルス,およびコクサッキーウイルスは,よくみられるウイルスであり,まれに肺炎を引き起こす。季節性インフルエンザが直接ウイルス性肺炎を引き起こすことはまれであるが,しばしば重篤な二次性細菌性肺炎を生じる素因となる。水痘ウイルスおよびハンタウイルスは,成人の水痘およびハンタウイルス肺症候群の一部として肺感染症を引き起こす。コロナウイルスは重症急性呼吸器症候群(SARS)および中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こす。

よくみられる病原真菌には,Histoplasma capsulatumヒストプラズマ症)およびCoccidioides immitisコクシジオイデス症)などがある。比較的まれな病原真菌には,Blastomyces dermatitidisブラストミセス症)およびParacoccidioides braziliensisパラコクシジオイデス症)などがある。Pneumocystis jiroveciiは一般に,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症患者または免疫抑制患者における肺炎の原因となる(易感染性患者における肺炎を参照)。

先進国で肺感染症を引き起こす寄生虫には,イヌ回虫(Toxocara canis)またはネコ回虫(T. catis)(トキソカラ症),イヌ糸状虫(Dirofilaria immitis)(イヌ糸状虫症),およびウェステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani)(肺吸虫症)などがある。

肺結核および非結核性抗酸菌感染症については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

肺炎球菌(S. pneumoniae)およびMRSAは壊死性肺炎を引き起こしうる。

小児における肺炎

小児では,最も頻度の高い肺炎の原因は年齢によって異なる:

  • < 5歳:ウイルス性が最も多く,細菌の中では,肺炎球菌(S. pneumoniae),黄色ブドウ球菌(S. aureus),および化膿レンサ球菌(S. pyogenes)の頻度が高い

  • ≥ 5歳:細菌である肺炎球菌(S. pneumoniae),肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae),または肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)が最も多い

新生児における肺炎については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

症状と徴候

症状としては,倦怠感,悪寒,振戦,発熱,咳嗽,呼吸困難,胸痛などがある。咳嗽は典型的には,年長の小児と成人では湿性であり,乳児,幼児,および高齢者では乾性である。呼吸困難は通常,軽度かつ労作時に認められ,安静時に認められることはまれである。胸痛は胸膜性で,感染領域に隣接している。肺炎は,下葉の感染巣が横隔膜を刺激すると,上腹部痛として症状が現れることがある。消化管症状(悪心,嘔吐,下痢)もよくみられる。極端に低いまたは極端に高い年齢では,症状は多様化する。乳児における感染では,一般的な易刺激性および不穏として現れることがあり,高齢者では錯乱および意識障害として現れることがある。

徴候には,発熱,頻呼吸,頻脈,断続性ラ音,気管支呼吸音,やぎ声(E to A change―「いー」から「えー」への音の変化―聴診の際,患者が「いー」と発音すると医師には「えー」と聞こえるとされる),および打診時の濁音などがある。胸水の徴候が認められることもある。乳児では鼻翼呼吸,呼吸補助筋の使用,およびチアノーゼがよくみられる。高齢者では,しばしば発熱を欠く。

以前は病原体の種類によって症候が異なると考えられていた。例えば,緩徐な発症,上気道感染症状の先行,びまん性の聴診所見,重症感(toxic appearance)がないことなどは,ウイルス性肺炎を示唆すると考えられていた。発症がより緩徐な場合,非定型病原体の可能性がより高いと考えられていたが,現在では市中アウトブレイクの際に非定型病原体の可能性がより高いとされている。しかしながら,典型的な肺炎と非定型肺炎でみられる症状は,かなり重複する。加えて,単独で特定の病原体を推定できるほど感度または特異度が高い症状または徴候は存在しない。症状および徴候は,過敏性肺炎および特発性器質化肺炎などの非感染性の炎症性肺疾患にも類似している。

診断

  • 胸部X線

  • 他の診断の検討(例,心不全,肺塞栓症)

  • ときに病原体の同定

臨床像および胸部X線上の浸潤影に基づき本症を疑う。肺炎の臨床的疑いが強いが,胸部X線で浸潤影がみられない場合は,CTまたは24~48時間毎の胸部X線再施行が推奨される。

肺炎様症状を呈する患者の鑑別診断としては,急性気管支炎慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪などがあるが,これらは胸部X線で浸潤影を認めないことで肺炎と鑑別できる。心不全,器質化肺炎,過敏性肺炎などの他の疾患も考慮すべきであり,所見に一貫性がないか非典型的である場合は特に注意が必要である。よく誤診される最も重篤な病態は肺塞栓症であり,呼吸困難の発症が急性で,喀痰産生がごくわずかで,上気道感染症状も全身症状もなく,血栓塞栓症の危険因子(深部静脈血栓症のリスクの表を参照)を有する患者でより可能性が高い;そのため,そのような症状および危険因子のある患者では肺塞栓症の検査を考慮すべきである。

気管支鏡または吸引で得た検体の定量培養(もし抗菌薬投与前に検体が得られていれば)は,細菌の定着(すなわち,症状も免疫応答も引き起こさないレベルの微生物の存在)と感染との鑑別に役立つ可能性がある。しかしながら,気管支鏡検査は通常,機械的人工換気を受けている患者,またはまれな微生物による肺炎や合併症を伴う肺炎に対する他の危険因子(例,易感染状態,経験的治療の失敗)を有する患者にのみ施行される。

細菌性肺炎とウイルス性肺炎との鑑別は困難である。数多くの研究が,臨床検査,画像検査,およびルーチンの血液検査の有用性を調査しているが,どの検査もこの鑑別に十分な信頼性を有していない。

軽症肺炎の外来患者ではそれ以上の診断検査は不要である(市中肺炎のリスク層別化の表を参照)。中等症または重症肺炎の患者では,白血球数および電解質測定,血中尿素窒素(BUN),ならびにクレアチニンの値が,リスクおよび脱水状態の分類に有用である。酸素化の評価のため,パルスオキシメトリーまたは動脈血ガス分析も行うべきである。入院を必要とする中等症または重症肺炎の患者に対しては,菌血症および敗血症を評価するために血液培養を2セット行う。Infectious Diseases Society of America (IDSA)は,患者の人口統計学的因子および危険因子に基づき推奨される検査についての指針を発表している (Infectious Diseases Society of America Clinical Guidelines on Community-Acquired Pneumonia)。

病原体の同定

病原体の同定は,治療方針の決定と細菌の抗菌薬に対する感受性の確認に有用となりうる。しかしながら,現在の診断検査法には限界があり,抗菌薬による経験的治療が成功を収めていることから,患者のリスクが高いか合併症がある状況(例,重症肺炎,易感染状態,無脾,経験的治療に反応しない)でなければ,微生物同定の試み(例,培養,特異的抗原検査)は制限するように専門家は推奨している。一般に,肺炎が軽症であるほど,そのような診断検査の必要性は低くなる。重症(critically ill)の患者は,徹底的な検査を行う必要があり,抗菌薬耐性またはまれな微生物(例,結核菌[Mycobacterium tuberculosis],P. jirovecii)が疑われる患者,および状態が悪化しているまたは72時間以内に治療への反応がみられない患者も同様である。

胸部X線所見による感染の種類の鑑別は通常不可能であるが,以下の所見は示唆的である:

  • 多葉性の浸潤影は肺炎球菌(S. pneumoniae)またはLegionella pneumophila感染を示唆する。

  • 間質性肺炎(胸部X線上,間質陰影の増強,肺尖部から肺底部に向かって増強する胸膜下の網状陰影がみられる)はウイルス性またはマイコプラズマ感染を示唆する。

  • 空洞を伴う肺炎は黄色ブドウ球菌(S. aureus)または真菌性もしくは抗酸菌性を示唆する。

肺炎の胸部X線所見
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肺炎による入院患者ではしばしば血液培養が行われるが,菌血症があれば,これにより起炎病原細菌が同定できる。肺炎による入院患者全体の約12%は菌血症を有し,肺炎球菌(S. pneumoniae)によるものは症例の3分の2を占める。

喀痰検査には,病原体同定のためのグラム染色および培養などがあるが,検体がしばしば口腔細菌叢で汚染されるため,これらの検査の価値は不明であり,全体的な診断率は低い。しかし,喀痰培養によって病原細菌が同定されれば,感受性試験を行うことが可能となる。喀痰検体の採取により,直接蛍光抗体法またはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)による病原ウイルスの検査も可能となるが,健康な成人でも15%が呼吸器系ウイルスや病原性を示しうる細菌を保有しているため,解釈には注意が必要である。状態が悪化し続ける患者および広域抗菌薬に反応しない患者では,喀痰検査にて抗酸菌および真菌に対する染色および培養を行うべきである。

喀痰検体は,単純な喀出によって,または喀痰できない患者では高張食塩水の噴霧により(誘発喀痰),非侵襲的に採取できる。代わりに,気管支鏡または気管内吸引を用いてもよく,どちらも機械的人工換気下の患者では気管内チューブから容易に施行できる。それ以外では,気管支鏡による検体採取は,他の危険因子(例,易感染状態,経験的治療の失敗)を有する患者でのみ行われる。

尿検査はレジオネラ(Legionella)抗原および肺炎球菌抗原に対して,現在広く利用できる。この検査は簡便かつ迅速で,これらの病原体に関しては,喀痰のグラム染色および培養よりも感度および特異度が高い。レジオネラ(Legionella)肺炎のリスク(例,重症,外来での抗菌薬治療の失敗,胸水の存在,アルコール乱用,最近の旅行)がある患者は,尿中レジオネラ(Legionella)抗原検査を受けるべきであり,この抗原は治療開始後長期間尿中に残存するが,検査で検出できるのはL. pneumophilaの血清群1のみ(症例の70%)である。

肺炎球菌抗原検査は,重症の患者;外来での抗菌薬治療が失敗した患者;または胸水,大量のアルコール乱用,重度の肝疾患がある患者,もしくは無脾患者に推奨される。抗菌薬療法開始前に十分な喀痰検体または血液培養が得られなかった患者では,この検査は特に有用である。陽性の結果は抗菌薬療法の調整に利用できるが,抗菌薬に対する感受性を示すものではない。

予後

短期死亡率は疾患の重症度に関連する。外来治療の対象となる患者における死亡率は1%未満である。入院患者における死亡率は8%である。死因には,肺炎そのもの,敗血症症候群への進行,または基礎にある併存疾患の増悪などがある。肺炎による入院患者では,退院後1年間の死亡リスクが上昇する。

死亡率は病原体によってある程度変わる。死亡率はグラム陰性細菌およびCA-MRSAの場合に最も高い。しかしながら,これらの病原体は市中肺炎の原因として比較的頻度が低いため,肺炎球菌(S. pneumoniae)が市中肺炎患者における最多の死因である。Mycoplasmaのような非定型病原体による肺炎は予後良好である。抗菌薬による初期の経験的治療に反応しない患者,および治療レジメンがガイドラインに沿っていない患者で,より死亡率が高い。

治療

  • 治療場所決定のためのリスク層別化

  • 抗菌薬

  • インフルエンザまたは水痘に対し抗ウイルス薬

  • 支持療法

リスク層別化

リスク予測尺度(risk prediction rule)によるリスク層別化は,死亡リスク推定の手段,および入院に関する判断の指標となりうる。これらの予測尺度は,外来で安全に治療しうる患者,および合併症リスクが高いため入院を必要とする患者の同定に使用されている(市中肺炎のリスク層別化の表を参照)。しかしながら,アドヒアランスの可能性や自己ケアの能力,入院を希望しない患者など,トリアージの決定に影響を及ぼす多くの因子が考慮されていないため,これらの尺度は臨床判断に取って代わるものではなく,補足的に利用すべきである。以下の患者は集中治療室(ICU)への入室が必要である:

  • 機械的人工換気を必要とする患者

  • 大量輸液に反応しない低血圧(収縮期血圧 ≤ 90mmHg)がある患者

ICU入室を考慮すべきその他の基準には以下のものがある:

  • 呼吸数 > 30/分

  • Pao2/吸入酸素濃度(Fio2< 250

  • 多葉性の肺炎

  • 拡張期血圧 < 60mmHg

  • 錯乱

  • BUN > 19.6mg/dL (7mmol/L)

Pneumonia Severity Index (PSI)は最もよく研究され妥当性が確認されている予測尺度である。しかしながら,PSIは複雑で,複数の臨床検査を必要とするため,臨床での使用にはCURB-65などのより簡便な尺度が推奨される。このような予測尺度の利用により,比較的軽症である患者の不必要な入院の減少につながっている。

CURB-65では以下の危険因子1つにつき1点加算される:

  • 錯乱(Confusion)

  • 尿毒症(Uremia,BUN ≥ 19mg/dL[6.78mmol/L])

  • 呼吸数(Respiratory rate) > 30回/分

  • 収縮期血圧(Bood pressure) < 90mmHg,または拡張期血圧 ≤ 60mmHg

  • 年齢 ≥ 65

スコアは以下のように用いる:

  • 0または1点:死亡リスク < 3%。通常外来治療が適切である。

  • 2点:死亡リスクは9%。入院を考慮すべきである。

  • ≥ 3点:死亡リスクは15~40%。入院が適応となり,特に4または5点の場合,ICU入室を考慮すべきである。

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市中肺炎のリスク層別化(Pneumonia Severity Index)

因子

点数

患者の人口統計学的特性

  • 男性

年齢(歳)

  • 女性

年齢(歳) 10

介護施設入居者

10

併存疾患

30

肝疾患

20

心不全

10

脳血管疾患

10

腎疾患

10

身体診察

精神状態の変化

20

呼吸数 ≥ 30回/分

20

収縮期血圧 < 90mmHg

20

体温 40℃または < 35℃

15

心拍数 125/分

10

検査結果

動脈血pH < 7.35

30

血中尿素窒素 30mg/dL (11mmol/L)

20

ナトリウム < 130mmol/L

20

グルコース ≥ 250mg/dL(14mmol/L)

10

ヘマトクリット < 30%

10

Pao2< 60mmHgまたは

酸素飽和度 < 90%*

10

胸水

10

点数

死亡率

推奨

70

< 1%

外来治療

71~90

< 5%

外来治療

91~130

5~15%

入院

> 130

> 15%

入院

*低酸素血症を入院の絶対的な適応とする意見が多い。

フレイル,独居,または不安定な環境で生活している患者に対しては,急性期病院または準急性期病院への入院,観察期間,在宅での抗菌薬の静注,または在宅訪問介護を考慮するべきである。

Adapted from Pneumonia: New prediction model proves promising (AHCPR Publication No. 97-R031).

SMART-COPスコアは、換気補助または昇圧剤の投与が必要となるリスクの評価に用いることができる(1)。

抗菌薬

抗菌薬療法は市中肺炎の治療の中心である。適切な治療のためには,可及的速やかに,できれば発症後8時間以内に抗菌薬の経験的投与を開始する。微生物の同定は困難であるため,抗菌薬の経験的投与レジメンの選択は,可能性のある病原体および疾患の重症度に基づいて行う。多くの専門家団体によってコンセンサスガイドラインが開発されており,広く使用されているものの1つを成人における市中肺炎の表で詳述している(Infectious Diseases Society of America Clinical Guideline on Community-Acquired Pneumoniaも参照)。ガイドラインは,地域の感受性のパターン,償還医薬品集,および個々の患者の状況を考慮して利用すべきである。後に病原体が同定されれば,薬剤感受性試験の結果が抗菌薬を変更する上での指針となりうる。

小児患者の治療法は,年齢,ワクチン接種歴,および外来治療か入院治療かによって異なる。外来治療の場合,治療は年齢によって決まる:

  • < 5歳:アモキシシリンまたはアモキシシリン/クラブラン酸が通常選択すべき薬剤である。疫学的に非定型病原体が原因として示唆され,臨床所見が一致していれば,代わりにマクロライド系薬剤(例,アジスロマイシン,クラリスロマイシン)を使用してもよい。臨床的特徴からウイルス性肺炎が強く示唆される場合,抗菌薬を使用しないよう提言している専門家もいる。

  • ≥ 5歳:アモキシシリンまたは(特に非定型病原体が除外できない場合)アモキシシリンとマクロライド系薬剤の併用。アモキシシリン/クラブラン酸は代替手段である。原因が非定型病原体と考えられる場合,代わりにマクロライド系薬剤を単独投与してもよい。

小児の入院治療では,抗菌薬療法のスペクトルは広くなる傾向があり,患児のワクチン接種歴に依存する:

  • ワクチン接種(肺炎球菌(S. pneumoniae)およびb型インフルエンザ菌(H. influenzae)に対する)が完了している場合:アンピシリンまたはベンジルペニシリン(代替手段としてセフトリアキソンまたはセフォタキシム)。MRSAが疑われる場合,バンコマイシンまたはクリンダマイシンを追加する。非定型病原体が除外できない場合,マクロライド系薬剤を追加する。

  • ワクチン接種が完了していない場合:セフトリアキソンまたはセフォタキシム(代替手段としてレボフロキサシン)。MRSAが疑われる場合,バンコマイシンまたはクリンダマイシンを追加する。非定型病原体が除外できない場合,マクロライド系薬剤を追加する。

経験的治療により,90%の細菌性肺炎の患者は改善する。改善は,咳嗽および呼吸困難の減少,解熱,胸痛の緩和,および白血球数の減少によって示される。改善しない場合,以下を疑うべきである:

  • まれな微生物

  • 治療に使用された抗菌薬への耐性

  • 膿胸

  • 第2の病原体の同時感染または重複感染

  • 閉塞性の気管支内病変

  • 免疫抑制

  • 播種を伴う転移性の感染巣(肺炎球菌感染症の場合)

  • 治療の不遵守(外来治療の場合)

どの状態も証明できなければ,治療の失敗は不十分な宿主の防御機能による可能性が高い。治療が失敗した場合,呼吸器疾患および/または感染症専門医へのコンサルテーションが適応となる。

抗ウイルス療法は,特定のウイルス性肺炎に適応となる場合がある。小児,成人ともRSウイルス性肺炎に対しルーチンにリバビリンが使用されることはないが,24カ月未満で特にリスクが高い患児に使用される場合がある。

インフルエンザ感染症を発症した患者において,オセルタミビル75mgの1日2回経口投与,またはザナミビル10mgの1日2回吸入を発症から48時間以内に開始し5日間継続投与することで,症状の持続時間および重症度が低減する。インフルエンザ感染症が確認された入院患者においては,発症後48時間経過してもこれらの治療が有益であることを複数の観察研究が示唆している。

アシクロビル(成人では5~10mg/kgを8時間毎に静注,小児では250~500mg/体表面積m2を8時間毎に静注)が,水痘ウイルスによる肺感染に対して推奨される。純粋なウイルス性肺炎も存在するものの,細菌の重複感染が多く,肺炎球菌(S. pneumoniae),インフルエンザ菌(H. influenzae),および黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対する抗菌薬が必要となる。

35歳以上の患者には,治療の6週後にフォローアップのためX線撮影を施行すべきである;6週間以上経過した時点で浸潤影が持続する場合には,結核または可能性として悪性の気管内病変が基礎にある疑いが生じる。

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成人における市中肺炎

患者集団

可能性の高い微生物

経験的治療

I. 外来患者―修飾因子なし

肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae),肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae),肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae),インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae),呼吸器系ウイルス,その他の微生物(例,Legionella属,結核菌(Mycobacterium tuberculosis),地域特有の真菌)

マクロライド系薬剤(アジスロマイシン500mgを1日1回経口,その後250mgを1日1回;クラリスロマイシン250~500mgを1日2回経口;または徐放性クラリスロマイシン1gを1日1回)

または

ドキシサイクリン100mgを1日2回経口(マクロライド系薬剤にアレルギーがある場合)

II. 外来患者―修飾因子あり

肺炎球菌(S. pneumoniae)(抗菌薬耐性型を含む),肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae),肺炎クラミジア(C. pneumoniae),混合感染(細菌 + 非定型病原体またはウイルス),インフルエンザ菌(H. influenzae),グラム陰性腸内菌,呼吸器系ウイルス,その他の微生物(例,Moraxella catarrhalis,Legionella属,嫌気性菌[誤嚥],結核菌(M. tuberculosis),地方特有の真菌)

β-ラクタム系(セフポドキシム200mgを12時間毎に経口;セフロキシム500mgを12時間毎に経口;アモキシシリン1gを8時間毎に経口;アモキシシリン/クラブラン酸875/125mgを12時間毎に経口)

に加えて

マクロライド系薬剤の経口投与

または

抗肺炎球菌フルオロキノロン系薬剤の経口または静注(単独;例,モキシフロキサシン[400mgを24時間毎に経口/静注],ゲミフロキサシン[gemifloxacin][320mgを24時間毎に経口/静注],レボフロキサシン[750mgを24時間毎に経口/静注])

III. 入院患者―集中治療室(ICU)以外

肺炎球菌(S. pneumoniae),インフルエンザ菌(H. influenzae),肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae),肺炎クラミジア(C. pneumoniae),混合感染(細菌 + 非定型病原体またはウイルス),呼吸器系ウイルス,Legionella属,その他の微生物(例,結核菌(M. tuberculosis),地域特有の真菌,Pneumocystis jirovecii

アジスロマイシン500mgを24時間毎に静注

に加えて

β-ラクタム系静注(セフォタキシム1~2gを8~12時間毎;セフトリアキソン1gを24時間毎)

または

抗肺炎球菌フルオロキノロン系薬剤の経口または静注(単独)

IVA. ICU患者―Pseudomonasに対する危険因子なし

肺炎球菌(S. pneumoniae)(抗菌薬耐性型を含む),Legionella属,インフルエンザ菌(H. influenzae),グラム陰性腸内菌,黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus),肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae),呼吸器系ウイルス,その他の微生物(例,肺炎クラミジア(C. pneumoniae),結核菌(M. tuberculosis),風土病性真菌)

β-ラクタム系静注(セフォタキシム1~2gを8~12時間毎に静注;セフトリアキソン1gを24時間毎に静注)

に加えて

抗肺炎球菌フルオロキノロン系薬剤の静注

または

アジスロマイシン500mgを24時間毎に静注

IVB. ICU患者―Pseudomonasに対する危険因子あり

IVAと同じ病原体(上述)に加えてPseudomonas

抗シュードモナスβ-ラクタム系 またはアズトレオナム(β-ラクタム系にアレルギーがあるまたは耐えられない場合)1~2gを8時間毎

に加えて

シプロフロキサシン400mgを12時間毎に静注,またはレボフロキサシン750mgを24時間毎に経口もしくは静注,のいずれか

代替手段として:

抗シュードモナスβ-ラクタム系薬剤

に加えて

アミノグリコシド系薬剤

に加えて

シプロフロキサシン400mgを12時間毎に静注,またはレボフロキサシン750mgを24時間毎に経口もしくは静注,のいずれか

*免疫抑制状態,インフルエンザ,誤嚥性肺炎の患者にはこのガイドラインは適用されない。

修飾因子:

  • 抗菌薬耐性菌のリスクが増大: 年齢 > 65歳,アルコール依存症,3カ月以内の抗菌薬の使用,託児所の小児との接触,複数の併存疾患。

  • グラム陰性腸内菌のリスクが増大:3カ月以内の抗菌薬の使用,心肺疾患(慢性閉塞性肺疾患[COPD]および心不全を含む),複数の併存疾患。

  • 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のリスクが増大:過去1カ月における7日以上の広域抗菌薬の使用,コルチコステロイドの使用,低栄養,肺の構造的疾患。

抗シュードモナスβ-ラクタム系薬剤 = セフェピム1~2gを12時間毎に静注,イミペネム500mgを6時間毎に静注,メロペネム500mg~1gを8時間毎に静注,ピペラシリン/タゾバクタム3.375gを4時間毎に静注。

Data from Mandell A, Wunderink R, Azueto A, et al: Infectious Disease Society of America and American Thoracic Society Guidelines for the management of adults with community-acquired pneumonia. Clinical Infectious Diseases 44:S27–S72, 2007.

支持療法

支持療法には,補液,解熱薬,鎮痛薬,および低酸素血症の患者に対する酸素投与などがある。血栓性疾患に対する予防および早期離床は,肺炎による入院患者の転帰を改善する。喫煙者には禁煙カウンセリングも行うべきである。

診断に関する参考文献

  • 1.Charles PG, Wolfe R, Whitby M, et al: SMART-COP: A tool for predicting the need for intensive respiratory or vasopressor support in community-acquired pneumonia.Clin Infect Dis 47(3):375-384, 2008.doi: 10.1086/589754

医療ケア関連肺炎

医療ケア関連肺炎という肺炎のカテゴリーは,院内肺炎のための2016 Infectious Diseases Society of America guidelinesで肺炎の別のカテゴリーとして削除された。医療ケア関連肺炎は,介護施設またはその他の長期療養施設の居住者,透析センターや点滴センターへの通院者など,医療施設と最近接触があった市中患者に発生する。このカテゴリーは,抗菌薬耐性菌のリスクが高い患者を特定するために設定された。しかし,2016年のIDSAのガイドラインによると,医療ケア関連肺炎患者の多くで,抗菌薬耐性菌のリスクは高くないというエビデンスが増えていることが判明した。むしろ,これらの患者における抗菌薬耐性菌のリスクは,市中肺炎の患者で検証された危険因子に基づくと考えられる。

予防

市中肺炎の中にはワクチン接種で予防できるものがある。肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)は,2カ月から2歳の小児および特定の併存病態(易感染状態など)がある19歳以上の成人に推奨される。肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)は,65歳以上の全ての成人,および肺炎球菌感染の危険因子がある2歳以上の全ての患者(基礎に心疾患,肺疾患,または免疫系の疾患がある患者および喫煙者を含めるが,これらに限定しない)に投与する(成人に対するワクチン接種のガイドラインの表を参照)。両方の肺炎球菌ワクチンの全適応を示したリストはCDCのウェブサイトで閲覧可能である。CDCのウェブサイトには,b型インフルエンザ菌(H. influenzae)(Hib)ワクチン(< 2歳の患者の場合),水痘ワクチン(< 18カ月の患者およびその後の追加接種の場合),ならびにインフルエンザワクチン( ≥ 6カ月の全員,特に重篤なインフルエンザ関連合併症を発症するリスクがある場合は毎年)など,その他のワクチンに対する推奨も記載されている。リスクの高い集団には,65歳以上の人,特定の慢性疾患(糖尿病,喘息,心疾患など)がある人,妊婦,および幼児などが含まれる(小児期の予防接種スケジュールも参照)。

インフルエンザワクチンの接種を受けていない高リスク患者およびインフルエンザ患者との家庭内接触者には,オセルタミビル75mgを1日1回またはザナミビル10mgを1日1回,2週間にわたり経口で投与できる。曝露から48時間以内にこれらの抗ウイルス薬を開始すれば,インフルエンザを予防できる可能性がある(ただしオセルタミビルについては耐性が報告されている)。

禁煙により肺炎の発生リスクを低減できる。

要点

  • 市中肺炎は米国および世界における主要な死因である。

  • よくみられる症候には,咳嗽,発熱,悪寒,疲労,呼吸困難,振戦,喀痰産生,および胸膜性胸痛などがある。

  • 軽度または中等度リスクの肺炎患者では,基礎の病原体を同定する検査を行わずに,抗菌薬の経験的投与により治療する。

  • リスク評価用のツールを用いて複数の危険因子があるとされた患者は入院させる。

  • 肺塞栓症などの別の診断を考慮するべきであり,肺炎様症状および徴候が非典型的であれば特に注意が必要である。

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