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ガス交換の測定

執筆者:

James M. O’Brien, Jr.

, MD, MSc, OhioHealth

最終査読/改訂年月 2014年 4月
本ページのリソース

ガス交換は,肺拡散能,パルスオキシメトリー,および動脈血ガス採取など,複数の方法によって測定される。

肺拡散能

肺拡散能(DLco)とは,肺胞から肺胞上皮および毛細血管内皮を介して赤血球へガスを運搬する能力を測定するものである。DLcoは血液-ガス関門の面積および厚さだけではなく,肺毛細血管内の血液量によっても左右される。肺胞気量および肺胞換気量の分布もまた,測定結果に影響を及ぼす。

DLcoは,患者が少量の一酸化炭素ガス(CO)を吸入し,息を止め,そして呼出した後に,呼気終末のCOを採取することにより測定する。測定したDLcoは肺胞気量(ヘリウム希釈から推定される)および患者のヘマトクリットに応じて調整すべきである。DLcoは,mL/min/mmHgおよび予測値の百分率で表される。

DLcoを低下させる病態

原発性肺高血圧および肺塞栓など,主に肺血管系に影響を及ぼす疾患は,DLcoを低下させる。肺気腫や肺線維症のように肺をびまん性に侵す疾患は,DLcoおよび肺胞換気量(VA)をともに低下させる。過去に肺切除を受けた患者においても,全肺気量が低下しているためDLcoが低下するが,VAに応じて補正すると,DLcoは正常値,またはそれ以上になり,これは残存肺において血管表面積の増大が生じるためである。貧血患者ではDLco値の低下が認められるが,ヘモグロビン補正を行うと正常値となる。

DLcoを上昇させる病態

心不全患者では,DLcoが予測値よりも高くなることがあるが,これはおそらく肺静脈圧と肺動脈圧の上昇により肺微小血管の誘導が増加するためである。DLcoは赤血球増多のある患者においても上昇するが,理由として一部にはヘマトクリットの増加,および粘稠性増加による肺動脈圧上昇に伴って起こる血管床の増大がある。DLcoは肺胞出血を呈する患者で上昇するが,これは肺胞腔内の赤血球もCOに結合できるためである。喘息患者においてもDLcoは上昇する。この上昇は,推定される血管床の増大によるものとされているが,増殖因子によって刺激された血管新生も原因の1つであることを示唆するデータがある。

パルスオキシメトリー

経皮的パルスオキシメトリーとは,指先クリップまたは粘着式プローブ内に配置された発光ダイオードからの光の吸収量に基づき,毛細血管血の酸素飽和度(Spo2)を推定するものである。一般にこの推定値は極めて正確であり,動脈血による酸素飽和度(Spo2)測定値と5%以内の誤差で相関する。皮膚の色素沈着度が高い患者,マニキュアを塗っている患者,および不整脈または低血圧,重度の全身性血管収縮などを有する患者では,シグナルの振幅が減衰する可能性があるため,結果の正確度が下がることがある。またパルスオキシメトリーは,酸化ヘモグロビンまたは還元ヘモグロビンの検出のみが可能であり,その他の型のヘモグロビン(例,一酸化炭素ヘモグロビン,メトヘモグロビン)は検出できず,これらのヘモグロビンは酸化ヘモグロビンとみなされるため,見かけ上Spo2測定値を上昇させる。

動脈血ガス分析

動脈血ガス分析はPao2,Paco2,および動脈血pHの正確な値を得るために行われ,これらの変数を患者の体温で補正すると,HCO3値(静脈血から直接測定することも可能)およびSao2を算出できる。動脈血ガス分析により,一酸化炭素ヘモグロビンおよびメトヘモグロビンの正確な値も測定できる。

通常は橈骨動脈から採血する。動脈穿刺はまれに血栓症や遠位組織の灌流障害を引き起こすため,アレンテストを行って十分な側副循環があることを確認する。この手技では,手が蒼白になるまで橈骨動脈および尺骨動脈を同時に閉塞させて拍動を遮る。その後,橈骨動脈は圧迫したまま,尺骨動脈を解放する。尺骨動脈の解放から7秒以内に手全体が紅潮すれば,尺骨動脈の血流が十分であることが示唆される。

無菌条件下で,ヘパリンを入れたシリンジに装着した22~25Gの注射針を橈骨動脈の拍動が最大の部位のすぐ近位に刺入し,拍動する血流が入ってくるまで遠位側に向かって動脈内に少し針を進める。通常,収縮期血圧はシリンジのプランジャーを押し戻す強さがある。3~5mLの血液採取後に針をすばやく引き抜き,止血を促進するため穿刺部位を強く圧迫する。同時に,白血球による酸素消費およびCO2産生を減らすため,動脈血ガス用検体を氷の上に置いて検査室に送る。

酸素化

低酸素血症は動脈血におけるPo2の低下であり,低酸素症は組織内のPo2の低下である。動脈血ガス分析は,低酸素血症の存在を正確に評価するもので,これは一般にPao2の値がSao2を90%未満に低下させるに十分な低値であること(すなわち,Pao2< 60 mmHg)と定義される。酸素解離曲線に示されるように,Pao2が十分であっても,ヘモグロビンの異常(例,メトヘモグロビン),体温の上昇,pHの低下,および2,3-ジホスホグリセリン酸の高値が存在すると,HbO2飽和度が低下する( 酸素解離曲線)。

酸素解離曲線

動脈血の酸素飽和度はPo2と相関がある。飽和度50%のPo2(P50)は正常では27mmHgである。水素イオン(H+)濃度の上昇,赤血球2,3-ジホスホグリセリン酸(DPG)の増加,体温の上昇(T),およびPco2の上昇により,解離曲線は右方移動する。H+濃度,DPG,体温,およびPco2の低下により,曲線は左方移動する。曲線の右方移動を特徴とするHbは酸素に対する親和性が低下しており,曲線の左方移動を特徴とするHbは酸素に対する親和性が上昇している。

酸素解離曲線

低酸素血症の原因は,肺胞の酸素分圧(PAo2)とPao2との差と定義される肺胞気-動脈血Po2圧較差[(A-a)Do2]が上昇しているか,正常であるかによって2つに分類できる。PAo2は以下の式で算出される:

equation

ここで,Fio2は吸入酸素濃度(例,室内気で0.21),Patmは外界の気圧(例,海面レベルで760mmHg),PH2Oは水蒸気分圧(例,通常は47mmHg),Paco2は動脈血のCO2分圧の測定値であり,またRは呼吸商を指し,普通の食事をしている患者の安静時では0.8として計算する。

海面レベルの室内気下にいる患者では,Fio2=0.21であり,(A-a)Do2は以下のように簡略化できる:

equation

(A-a)Do2<20であるのが典型的であるが,加齢およびFio2の上昇に従って開大する(理由はそれぞれ;年齢に関連する肺機能低下のため;およびHbはPao2が約150mmHgの時点で飽和度100%となるが,酸素は血液に溶解し,Fio2の上昇に伴って血漿中の酸素含有量が増加し続けるため;である)。正常な(A-a)Do2値は< (2.5 + [Fio2 × 年齢])またはFio2の絶対値を下回る値(例,室内気で < 21,Fio2 30%で < 30)として推定され,さらに上記の影響について補正する。

(A-a)Do 2 の開大を伴う低酸素血症

この病態は以下の原因により引き起こされる:

  • 換気血流(V/Q)比の低下(V/Q不均衡の一種)

  • 右左短絡

  • 重度の拡散障害

V/Q比の低下は,低酸素血症の比較的頻度の高い原因の1つであり,COPDおよび喘息における低酸素血症の一因である。正常な肺においては,肺胞低酸素症に反応しておこる細動脈収縮のため,局所血流量と局所換気量は密接に調和する。病的な状態では,調節不全により,完全な換気時と比べて肺胞単位の血流に供給される酸素量が低下する(V/Q不均衡)。その結果,全身の静脈血は正常なPao2を得られないまま肺毛細血管を通過する。酸素吸入により,Pao2を上昇させてV/Q比の低値による低酸素血症を補正することはできるが,(A-a)Do2の開大は持続する。

右左短絡はV/Q比が極端に低い例である。短絡により,脱酸素化された肺動脈血は換気のある肺の領域を通過することなく左心に到達する。短絡は,肺実質,肺内の動静脈系間の異常な循環,または心臓内部の循環(例,卵円孔開存)を介して生じる。右左短絡による低酸素血症は,酸素投与に反応しない。

拡散障害はごくまれに独立して生じる;通常はV/Q比の低下を伴う。O2は,血液が肺胞ガスと接触するほんのわずかな瞬間にHbを完全に飽和させるため,拡散障害による低酸素血症が起こるのは,心拍出量の増加時(例,運動時),大気圧が低い場合(例,高地),または50%を超える肺実質が破壊されたときに限られる。V/Q比の低下とともに(A-a)Do2が開大するが,Fio2を上げることにより,Pao2を上昇させることができる。拡散障害による低酸素血症は,酸素投与に反応する。

(A-a)Do 2 正常の低酸素血症

この病態は以下の原因によって引き起こされる:

  • 低換気

  • 吸入気酸素分圧(Pio2)の低下

低換気(肺胞換気の低下)はPAo2の低下およびPaco2の上昇をもたらし,これによりPao2を低下させる。純粋な低換気の症例においては,(A-a)Do2は正常である。低換気の原因には,呼吸の回数および深度の低下(例,神経筋疾患,重度の肥満,もしくは薬剤の過量投与,または代謝性アルカローシスの代償機構による),すでに最大換気の限界にある患者(例,重症COPDの増悪)における死腔換気量の割合の増大などがある。低換気による低酸素血症は,酸素投与に反応する。

Pio2の低下は,低酸素血症のまれな原因として最後に残るものであり,ほとんどの症例が高地でのみ発生する。Fio2が高度によって変化することはないが,外界の気圧は指数関数的に低下し,そのためPio2も低下する。例えば,エベレスト山頂でのPio2はわずか43mmHgである(高度8848 m[29,028 ft])。その際の(A-a)Do2は正常のままである。呼吸運動の低酸素刺激が肺胞換気を増加させ,Paco2値を低下させる。この型の低酸素血症は,酸素投与に反応する。

二酸化炭素

Pco2は正常では35~45mmHgの範囲で維持される。酸素解離曲線に類似したものがCO2にも存在するが,生理的なPaco2の範囲ではほぼ直線状となる。Pco2の異常値は,ほぼ常に換気障害と関連付けられ(代謝異常の代償で生じるものでない限り),常に酸塩基平衡の変化と関連する。

高炭酸ガス血症

高炭酸ガス血症とはPco2> 45 mmHgの状態をいう。高炭酸ガス血症の原因は低換気の原因と同様である( (A-a)Do 2 正常の低酸素血症)。CO2産生を増大させる病態(例,甲状腺機能亢進症,発熱)が,換気量を増やせなくなる病態と併発した場合にも,高炭酸ガス血症が生じる。

低炭酸ガス血症

低炭酸ガス血症とはPco2< 35mmHgの状態をいう。低炭酸ガス血症は常に,肺(例,肺水腫または肺塞栓),心臓(例,心不全),代謝性(例,アシドーシス),薬物誘発性(例,アスピリン,プロゲステロン),中枢神経系(例,感染症,腫瘍,出血,頭蓋内圧亢進)の疾患,または生理的要因(例,疼痛,妊娠)による過換気によって引き起こされる。低炭酸ガス血症は,おそらく酸塩基平衡に与える影響を介して,気管支収縮を直接増大させ,脳虚血および心筋虚血の閾値を低下させると考えられている。

一酸化炭素ヘモグロビン血症

COは,O2に比べて210倍の親和性でHbと結合し,O2の運搬を妨げる。臨床的に毒性を来す一酸化炭素ヘモグロビン値は,排気ガスへの曝露または煙吸入に由来することが最も多いが,喫煙者も検出可能な値を示す。CO中毒の患者( 一酸化炭素中毒)は,倦怠感,頭痛,悪心などの非特異的症状を呈することがある。中毒はしばしば寒い時期に起こることから(可燃性燃料による暖房器具を室内で使用するため),症状がインフルエンザなどのウイルス症候群と混同されることもある。臨床医はCO中毒の可能性に注意し,適応があれば一酸化炭素ヘモグロビン値を測定しなければならない;COHbは静脈血から直接に測定することができ,動脈血検体は不要である。

治療は,100%O2(一酸化炭素ヘモグロビンの半減期を短縮する)の吸入および,ときに高圧室の利用によって行う。

パール&ピットフォール

  • 一酸化炭素ヘモグロビン値は静脈血から直接測定することができる—動脈血検体は不要である。

メトヘモグロビン血症

メトヘモグロビンは,Hb中の二価の鉄イオン(Fe2+)が酸化されて三価(Fe3+)になったものである。メトヘモグロビンはO2を運搬せず,正常な酸素解離曲線を左方に移動させ,それによりO2の組織への放出を制限する。メトヘモグロビン血症は,特定の薬剤(例,ジアフェニルスルホン,局所麻酔薬,硝酸薬,プリマキン,スルホンアミド系),またはより頻度は低いが特定の化学物質(例,アニリン色素,ベンゼン誘導体)によって引き起こされる。メトヘモグロビンは,コ・オキシメトリー(4つの波長の光を放射し,メトヘモグロビン,COHb,Hb,およびHbO2を検出できる)により直接測定するか,またはPaO2測定値から算出した酸素飽和度と直接測定したSaO2の値との差から推定できる。メトヘモグロビン血症の患者は,無症候性のチアノーゼを呈することが非常に多い。重症例では,組織が低酸素に陥いる状態にまでO2運搬量が低下し,その結果,錯乱,狭心症,および筋肉痛などの症状が生じる。治療は原因薬剤または化学物質への曝露を中止するだけで十分であることが多い。まれに,メチレンブルー(還元剤;1%溶液を1~2 mg/kg,ゆっくり静注する)または交換輸血が必要である。

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