(閉塞性睡眠時無呼吸症候群 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は,睡眠時に生じ呼吸停止(10秒を超える無呼吸または低呼吸と定義される)を引き起こす部分的または完全な上気道閉塞エピソードから成る。症状としては,日中の過度の眠気,不穏状態,いびき,反復性覚醒,起床時の頭痛などがある。診断は睡眠歴および睡眠ポリグラフ検査に基づく。治療は,持続陽圧呼吸療法(CPAP),口腔内装置,および難治例では手術による。治療を行えば予後は良好である。ほとんどの症例は未診断かつ未治療の... さらに読む も参照のこと。)
小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の有病率は約2%である。この疾患は十分に診断が行われておらず,重篤な続発症に至ることがある。
小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の病因
小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の危険因子としては以下のものがある:
扁桃またはアデノイドの肥大
肥満(現在最多の原因である)
アレルギー性鼻炎(有意な鼻閉を引き起こす)
特定の薬剤(例,鎮静薬,オピオイド)
筋緊張低下または筋緊張亢進を引き起こす疾患(例, ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は21番染色体の異常であり, 知的障害,小頭症,低身長,および特徴的顔貌を引き起こす。診断は身体奇形と発達異常から示唆され,細胞遺伝学的検査によって確定される。管理方針は具体的な臨床像および奇形に応じて異なる。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) 出生児における全体の発生率は約1/700であり,母体年齢が上がるにつれてリスクが徐々に増大する。母体年齢別の出生児におけるリスクは,20歳で1/2000,35歳で1/365,4... さらに読む
, 脳性麻痺 脳性麻痺症候群 脳性麻痺は,出生前の発育異常または周産期もしくは出生後の中枢神経系損傷に起因する,随意運動または姿勢制御の障害を特徴とする非進行性の症候群である。症状は2歳までに出現する。診断は臨床的に行う。治療法としては,理学療法,作業療法,装具,薬物療法またはボツリヌス毒素の注入,整形外科手術,バクロフェンの髄腔内投与,特定の症例における脊髄後根切断... さらに読む , 筋ジストロフィー 遺伝性筋疾患に関する序論 筋ジストロフィーとは,筋肉が正常な構造と機能を維持するのに必要な遺伝子の1つまたは複数の異常を原因とする遺伝性かつ進行性の筋疾患であり,筋生検でジストロフィー変化(例,筋線維の壊死および再生)が認められる。筋ジストロフィーの病型では 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーが最も一般的であり,... さらに読む )
遺伝因子も想定される(例,閉塞性および中枢性無呼吸を伴うことがある先天性中枢性肺胞低換気症候群, プラダー-ウィリー症候群 続発性性腺機能低下症 ,その他の疾患)
症状と徴候
ほとんどの患児では親がいびきに気づくが,たとえ重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群でも,いびきが報告されない場合もある。その他の睡眠症状としては,睡眠をとっても疲れがとれない,夜間の発汗,観察される無呼吸などがありうる。 夜尿 夜間尿失禁(夜尿症) 尿失禁は,日中または夜間の意図しない排尿が月2回以上の頻度で発生する場合と定義される。失禁の時間帯について用語の変更が提唱されている(International Incontinence Societyのウェブサイトを参照): 日中の尿失禁:昼間尿失禁(diurnal incontinence)(または昼間の尿漏れ[diurnal... さらに読む がみられることもある。日中の徴候と症状としては,鼻閉,口呼吸,朝の頭痛,集中困難,多動(眠気の症状としてみられる)などがありうる。覚醒中の眠気は OSAの成人 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は,睡眠時に生じ呼吸停止(10秒を超える無呼吸または低呼吸と定義される)を引き起こす部分的または完全な上気道閉塞エピソードから成る。症状としては,日中の過度の眠気,不穏状態,いびき,反復性覚醒,起床時の頭痛などがある。診断は睡眠歴および睡眠ポリグラフ検査に基づく。治療は,持続陽圧呼吸療法(CPAP),口腔内装置,および難治例では手術による。治療を行えば予後は良好である。ほとんどの症例は未診断かつ未治療の... さらに読む と比べると頻度が低い。
OSAの合併症には,学習および行動障害, 肺性心 肺性心 肺性心とは,肺動脈性肺高血圧症を引き起こす肺疾患に続発して右室拡大が生じる病態である。続いて右室不全へと至る。所見には,末梢浮腫,頸静脈怒張,肝腫大,胸骨近傍の挙上などがある。診断は臨床的に行い,心エコー検査による。治療は原因に対して行う。 肺性心は肺またはその血管系の障害により生じるもので,左室不全,先天性心疾患(例,心室中隔欠損症),または後天性弁膜症に続発した右室拡大は肺性心とは呼ばない。肺性心は通常慢性に経過するが,急性かつ可逆... さらに読む ,肺高血圧症,および成長障害などがありうる。
検査では異常が判明しないこともあれば,閉塞に寄与する顔面,鼻,または口腔の解剖学的異常,II音の肺動脈成分の亢進,または成長障害などが明らかになることもある。
小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の診断
睡眠ポリグラフ検査にオキシメトリーおよび呼気終末二酸化炭素モニタリングを併用する
いびきまたは危険因子のある小児では閉塞性睡眠時無呼吸症候群が考慮される。OSAの症状がみられれば,睡眠検査室で,オキシメトリーおよび呼気終末二酸化炭素モニタリングを含む終夜 睡眠ポリグラフ検査 検査 を用いて診断検査を行う。睡眠ポリグラフ検査による診断基準(無呼吸低呼吸指数>2/時)は,成人の場合より低く設定されている。自宅で行う睡眠ポリグラフ検査は評価段階にある。
睡眠ポリグラフ検査は閉塞性睡眠時無呼吸症候群の確定診断に役立つ可能性があるが,患児に睡眠ポリグラフ検査の異常を説明できる心疾患および肺疾患がないことも診断の必須要件である。睡眠ポリグラフ検査中における睡眠段階と体位の影響の分析は,上気道閉塞の関与を示すのに役立つ可能性がある。このため,睡眠ポリグラフ検査の結果は初期治療の決定(例,自動調整機能付きのCPAP装置,口腔内装具,外科的器具)に役立つ可能性がある。
臨床判断に基づき,その他の検査によりOSA患者を評価する。その他の検査には,心電図,胸部X線,動脈血ガス測定,および上気道の画像検査などがある。
小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療
アデノイド口蓋扁桃摘出術または先天性小顎症の矯正
集中的な支持療法によるCPAPおよび/または減量
アデノイド口蓋扁桃摘出術は通常,扁桃腺肥大および/またはアデノイド以外は健康な閉塞性睡眠時無呼吸症候群の小児に効果的である。アデノイド切除のみではしばしば効果が不十分である。アデノイド口蓋扁桃摘出術を受ける小児のうち,OSAの小児では非OSAの小児と比べ,周術期の気道閉塞リスクが高い;そのため綿密なモニタリングが重要である。
他の疾患がある小児,呼吸調節を変更する複雑な解剖学的異常もしくは遺伝性疾患がある小児,または心肺合併症がある小児は,小児のOSA管理に精通した医師へのコンサルテーションを行うべきである。アデノイド口蓋扁桃摘出術が効果的となる場合もあれば,いくらか症状を軽減できるだけの場合もある。OSAの原因となっている解剖学的異常に応じて,別の外科的手技が適応となることもある(例, 口蓋垂口蓋咽頭形成術 手術 ,舌または顔面中央部の手術)。
持続陽圧呼吸療法(CPAP)は,矯正手術の適応がない場合とアデノイド口蓋扁桃摘出術の施行後もOSAが続く場合に用いられることがある。
肥満児では減量によりOSAの重症度を下げることができ,その他の健康上の便益があるが,単独療法としてOSAに対する十分な治療となることはまれである。
夜間の酸素投与は,根治的な治療が完了するまでの低酸素血症の予防に役立つ可能性がある。
アレルギー性鼻炎の治療は集中的に行うべきである。コルチコステロイドと抗菌薬は通常は適応とならない。
小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の要点
小児閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の危険因子には,肥満,扁桃肥大またはアデノイド,解剖学的異常(頭蓋顔面異常など),遺伝学的異常,薬剤,筋緊張亢進または筋緊張低下を起こす疾患などがある。
学習および行動障害は深刻な合併症となりうる。
小児OSAの診断は,養育者が確認した症状および睡眠ポリグラフ検査の結果に基づいて行う。
閉塞の解剖学的原因を矯正する(例,アデノイド口蓋扁桃摘出術または小顎症の矯正)。
手術の適応がない,または手術が完全に効果的でない場合は持続陽圧呼吸療法かつ/または減量を考慮する。
より詳細な情報
以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
American Sleep Apnea Association: Provides consumer information, education, and support for patients with sleep apnea