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職業性喘息

執筆者:

Lee S. Newman

, MD, MA, Colorado School of Public Health

最終査読/改訂年月 2014年 5月

職業性喘息は可逆性の気道閉塞であり,職場における数カ月から数年のアレルゲンへの感作を経て発症する。症状は,呼吸困難,喘鳴,咳嗽であり,ときに上気道のアレルギー症状がみられる。診断は職業歴に基づいて行い,従事している活動,職場におけるアレルゲン,仕事と症状との時間的関連の評価などを行う。アレルゲンの皮膚テストおよび吸入誘発試験は専門施設で行われることがあるが,一般的には不要である。治療は,患者を職場環境から遠ざけること,および必要に応じて抗喘息薬を使用することである。

職業性喘息は,職業曝露によって発症する喘息(または既存の喘息の悪化)である。症状は,職場におけるアレルゲンへの感作により,典型的には数カ月から数年かけて発現する。いったん感作された労働者は,初回反応時のアレルゲン濃度よりはるかに低い濃度にも常に反応する。

職場での吸入曝露により生じるいくつかの他の気道疾患は,職業性喘息および職業により悪化した喘息と鑑別できることもある。

反応性気道機能不全症候群(RADS)は非アレルギー性であり,喘息の既往歴のない個人が刺激性の塵,煙霧,またはガスへ急性に過剰曝露された後,持続性かつ可逆性の気道閉塞を生じるものである。気道炎症は急性曝露した刺激物質を除去した後も持続し,またこの症候群は喘息と鑑別不能である。

反応性上気道症候群では,気道刺激物質に急性曝露または繰り返し曝露された後に,上気道(すなわち鼻,咽頭)の粘膜症状が現れる。

刺激物に関連する声帯機能不全は,喘息に類似し,刺激物質の急激な吸入後に,特に吸気時に声帯の異常な付着および閉鎖が起きるものである。

産業性気管支炎(industrial bronchitis)(刺激物誘発性の慢性気管支炎)では,急性または慢性的な刺激物の吸入後に,気管支炎症により咳嗽を生じる。

閉塞性細気管支炎では,ガス(例,無水アンモニア)を急性に吸入した後に細気管支損傷が起きる。主な形態は増殖型および狭窄型の2つである。狭窄型がより一般的であり,他の形態のびまん性肺損傷と関連がある場合とない場合がある。閉塞性細気管支炎は近年,バターフレーバーの電子レンジ用ポップコーンの製造中にジアセチルへ曝露された労働者における発生が報告されている。いわゆるポップコーン労働者肺は,他のフレーバー製品製造時の曝露でも起こる可能性があり,また,この化学物質に曝露した消費者にも起こりうる。

病因

職業性喘息は,免疫を介した機序,および免疫を介さない機序のいずれによっても引き起こされる。免疫による機序には,職場のアレルゲンに対するIgE介在性および非IgE介在性の過敏症が関与する。職業アレルゲンは何百種類と存在し,低分子化学物質から大きなタンパクまで様々である。例として,穀物粉塵,洗浄剤製造業で使用されるタンパク分解酵素,ベイスギ,イソシアネート,ホルマリン(まれ),抗菌薬(例,アンピシリン,スピラマイシン),エポキシ樹脂,および茶などがある。

免疫を介さない炎症性の機序では,気道上皮および上気道粘膜への直接的な刺激が引き起こされる。

イラクおよびアフガニスタンに配置された米国軍人は喘息(および閉塞性細気管支炎)のリスクが高いことが判明している。可能性のある原因には,屋外のゴミ焼却用の穴および産業火災からの排出物質,砂漠の塵埃,および自動車の排気ガスなどがある。

症状と徴候

症状としては,息切れ,胸部圧迫感,喘鳴,咳嗽などがあり,しばしば,くしゃみ,鼻漏,流涙などの上気道症状を伴う。上気道および結膜症状が,典型的な喘息症状が現れる数カ月または数年前に現れることがある。症状は,特定の塵や蒸気に曝露した後,勤務中に起こることもあるが,職場を離れて数時間経過後に初めて現れることが多く,そのため職業曝露との関連がより不明瞭になる。夜間喘鳴が唯一の症状である場合がある。しばしば症状は休日および休暇中に消失するが,曝露が続くと一時的な増悪および症状緩和を識別しにくくなる。

診断

  • アレルゲンへの職業曝露歴

  • 免疫学的検査

  • ときに吸入誘発試験

診断は,職場のアレルゲンと喘息との関連を明らかにすることによる。アレルゲンへの職業曝露歴を基に本疾患を疑う。職場の原因物質が労働者に影響を与えていることを実証するため,可能性のあるアレルゲンの同定に安全データシート(全ての職場で義務づけられている)が利用でき,また,リストに挙げられた物質は疑わしい抗原の免疫学的検査(例,皮膚プリックテスト,スクラッチテスト,またはパッチテスト)の方向付けに利用できる。疑わしい抗原へ曝露された後に気管支反応性が亢進することもまた,診断を下す際に役立つ。

パール&ピットフォール

  • 労働者が新たに呼吸器症状を呈した場合は,可能性のあるアレルゲンを探すため,職場の安全データシートの精査を考慮する。

診断が困難な症例では,慎重な管理の下,検査室で吸入誘発試験を行い,気道閉塞の原因を確定する。このような検査は,吸入誘発試験に熟練し,ときに起こりうる重症反応をモニタリングおよび治療できる専門施設でのみ行うべきである。肺機能検査または最大呼気流量測定で,仕事中の流量の減少が示されれば,職業曝露が原因であることのさらなる証拠となる。メサコリン吸入試験が気道過敏性の程度の判定に用いられることもある。メサコリン感受性は,職業アレルゲンへの曝露停止後には低下しうる。

特発性喘息との鑑別は,一般に,症状のパターン,職場アレルゲンの証明,アレルゲン曝露と症状および生理学的機能低下との関係に基づいて行う。

治療

治療は特発性喘息と同じであり,吸入気管支拡張薬およびコルチコステロイドなどがある( 喘息 : 薬物療法)。治療にはまた,患者に原因物質への曝露を継続させないことを含めるべきである。

予防

塵の抑制は不可欠である。しかしながら,感作および臨床疾患が全く起こらないようにすることは不可能である。いったん感作されると,職業性喘息がある患者は空気中に浮遊する極めて低濃度のアレルゲンにも反応することがある。患者がアレルゲンが残存する環境に戻った場合,一般に予後はより悪く,呼吸器症状,肺生理機能の異常,および薬剤の必要性がいずれも増加し,さらに増悪の頻度および重症度が増す。症状がある個人については,可能な限り,症状を起こすことがわかっている環境から回避させるべきである。曝露が続けば,症状は持続する傾向にある。早期に診断し曝露を停止すれば,職業性喘息はときに治癒しうる。

要点

  • 職業性喘息は免疫を介さないこともあれば,数カ月から数年の感作の後に発症することもある。

  • 労働者が新しい呼吸器症状を呈した場合は,可能性のあるアレルゲンを探すため,職場の安全データシートの精査を考慮する。

  • 免疫学的検査および吸入誘発試験を考慮する。

  • 喘息と同様の治療を行い,患者をアレルゲンを含む環境から回避させる。

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