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中皮腫

執筆者:

Lee S. Newman

, MD, MA, Colorado School of Public Health

最終査読/改訂年月 2018年 3月
本ページのリソース

胸膜中皮腫は,知られている唯一の胸膜の悪性腫瘍であり,ほぼ全例がアスベスト曝露により引き起こされる。診断は病歴,胸部X線またはCT所見,および組織生検に基づく。治療は支持療法であり,手術,化学療法,またはその両方を要する場合もある。

アスベストは天然に産出するケイ酸塩の1つのグループであり,その耐熱性および構造特性により,建設および造船の材料,自動車のブレーキ,ならびに一部の織物での使用に有用であった。疾患の原因となる主なアスベストの種類は,クリソタイル(温石綿―蛇紋石の繊維),クロシドライト(青石綿),アモサイト(茶石綿―角閃石,まっすぐな繊維)の3種である。

アスベスト労働者が生涯の間に胸膜中皮腫を発症するリスクは10%に及び,潜伏期間は平均25~30年である。リスクは喫煙とは無関係である。中皮腫は胸腔の中皮表面から発生して局所的に拡がることもあれば,転移することもあり,転移部位は肺門部および縦隔リンパ節,心膜,横隔膜,腹膜,肝,副腎,または腎臓,ならびにまれではあるが精巣鞘膜などである。

症状と徴候

患者は呼吸困難および胸膜性以外の胸痛を呈することが最も多い。受診時の全身症状はまれである。胸壁およびその他の隣接構造物への浸潤は,重度の疼痛,嗄声,嚥下困難,ホルネル症候群,腕神経叢障害,または腹水の原因となりうる。

診断

  • 胸部X線

  • 胸水細胞診および胸膜生検

  • ときに胸腔鏡下手術(VATS)または開胸

  • 病期診断は胸部CT,縦隔鏡検査,およびMRIにより行い,ときにPETおよび気管支鏡検査を用いることもある。

胸膜型中皮腫が全症例の90%以上を占め(残りの10%には心膜型および腹膜型中皮腫などがある),X線上で肺を取り囲むように見えるびまん性の一側性または両側性胸膜肥厚を呈し,通常,肋骨横隔膜角が鈍化する。胸水が症例の95%にみられ,典型的には一側性,大量,かつ血性である。診断は胸水細胞診または胸膜生検に基づく。胸水中のヒアルロニダーゼの値の上昇は,中皮腫を示唆するが診断に有用ではない。

これらの手技を行っても診断が不明確な場合は,VATSまたは開胸による生検を行う。中皮細胞により血清に放出される可溶型メソテリン関連タンパク質が,疾患発見およびモニタリングのための腫瘍マーカーとなりうるものとして研究されているが,偽陽性率の高さのため有効性が限られる可能性がある。

病期分類は胸部CT,縦隔鏡検査,およびMRIにより行う。MRIおよびCTの感度および特異度は同程度であるが,MRIは胸壁,横隔膜,縦隔構造,脊椎または脊髄への腫瘍の拡大を明らかにするのに役立つ。PETは,胸膜肥厚の良性と悪性の鑑別に対し感度および特異度が高い可能性がある。併存する気管支内の肺癌を除外するために気管支鏡検査を行うべきである。

予後

中皮腫はいまだに治癒不能のがんであり,長期の生存はまれである。胸膜,同側肺,横隔神経,片側横隔膜,および心膜の外科的切除と化学療法または放射線療法の併用が考慮されることもあるが,予後または生存期間を大きく変えることはない。生存期間を大幅に延長する治療法はない。診断時からの生存期間の中央値は9~12カ月であり,部位と細胞の種類に左右される。画像検査と病理組織に基づく病期は,最も強力な予後予測因子である(1)。最も予後が悪い患者は以下を特徴とする:

  • 診断時に75歳以上

  • PS(performance status)不良

  • LDH値 > 500 IU/L

  • 血小板数 > 400,000/μL

  • 胸痛

  • 病理所見が非上皮性

予後に関する参考文献

  • 1.Herndon JE, Green MR, Chahinian AP, et al: Factors predictive of survival among 337 patients with mesothelioma treated between 1984 and 1994 by the Cancer and Leukemia Group B.Chest 113 (3):723–731, 1998.

治療

  • 支持療法

  • 胸水および呼吸困難の緩和のための胸膜癒着術または胸膜切除術

  • オピオイドによる鎮痛およびときに放射線療法

  • 腫瘍縮小および症状の緩和のための化学療法

  • 実験的治療

治療では主に支持療法,ならびに疼痛および呼吸困難の緩和に焦点を置く。

この疾患はびまん性であることから,局所的疼痛および穿刺経路への播種に対する治療を除いて,放射線療法は通常適切ではない。放射線療法は神経根性疼痛の治療にも一般的には用いられない。

胸膜癒着術または胸膜切除術が,胸水による呼吸困難を軽減するために用いられることがある。

十分な鎮痛を得ることは重要であるが,困難である。通常,経皮的および硬膜外留置カテーテル経由の両方でオピオイドを投与する。

胸膜肺全摘術は合併症発生率および死亡率が高いため,肉眼で視認できる腫瘍が片側胸郭に限られており全て除去できる場合には,胸膜切除および肺剥皮術が行われる頻度が高くなっている。ただし,完全切除は通常不可能であり,その場合は化学療法と放射線療法を追加することで生存期間を延長できる(1)。

手術以外の治療法としては,多剤併用化学療法のレジメン(例,ペメトレキセドおよびプラチナ製剤)と放射線療法の併用などがある。化学療法によりほとんどの症例で症状が緩和され,ときに腫瘍が縮小することもある。ペメトレキセドとシスプラチンの多剤併用化学療法は,シスプラチン単独と比べて生存期間を3カ月延長した(2)。この研究では,葉酸とビタミンB12の補給により毒性が低下した。ペメトレキセドとシスプラチンにベバシズマブを追加することで生存期間が延長することが臨床試験で示されている(3)。

現在研究中の治療法としては,免疫療法,遺伝子治療,光線力学療法,胸腔内温熱化学療法などがある。

治療に関する参考文献

  • 1.Nelson DB, Rice DC, Niu J, et al: Long-term survival outcomes of cancer-directed surgery for malignant pleural mesothelioma: Propensity score matching analysis.J Clin Oncol 35 (29):3354–3362, 2017.doi: 10.1200/JCO.2017.73.8401.

  • 2.Vogelzang NJ, Rusthoven JJ, Symanowski J, et al: Phase III study of pemetrexed in combination with cisplatin versus cisplatin alone in patients with malignant pleural mesothelioma.J Clin Oncol 21 (14):2636–2644, 2003.

  • 3.Zalcman G, Mazieres J, Margery J, et al: Bevacizumab for newly diagnosed pleural mesothelioma in the Mesothelioma Avastin Cisplatin Pemetrexed Study (MAPS): A randomised, controlled, open-label, phase 3 trial.Lancet 387 (10026):1405–1414, 2016.doi: 10.1016/S0140-6736(15)01238-6.Epub 2015 Dec 21.

要点

  • 中皮腫はほぼ常にアスベスト関連であり,> 90%の症例で胸膜に生じる。

  • 診断時からの生存期間の中央値は9~12カ月であり,治癒は不可能である。

  • 治療は支持療法が中心となるが,多くの外科的および非外科的治療により生存期間が延長することが示されている。

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