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COPDの急性増悪の治療

執筆者:

Robert A. Wise

, MD, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 1月
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慢性閉塞性肺疾患も参照のこと。)

COPDの管理には,慢性安定期の治療および増悪時の治療がある。

急性増悪の治療では,以下を行う:

  • 酸素投与

  • 気管支拡張薬

  • コルチコステロイド

  • 抗菌薬

  • ときに換気補助

喫緊の目的は十分な酸素化および正常に近い血液pHを確実に保つこと,気道閉塞を改善すること,ならびに原因を治療することである。

急性増悪の原因は通常不明であるが,一部は細菌性またはウイルス性の感染による。喫煙,刺激物の吸入曝露,高濃度の大気汚染も寄与する。

軽症の増悪は,自宅で十分なサポートがある患者では,しばしば外来治療が可能である。フレイルな高齢患者,および併存症,呼吸不全の病歴,または動脈血ガスの値に急性の変化がある患者は,経過観察および治療のため入院となる。是正されない中等度から重度の急性低酸素血症,急性の呼吸性アシドーシス,新たな不整脈の出現,または入院治療にもかかわらず悪化する呼吸機能により,生命を脅かす増悪がある場合,ICUに入室させ,呼吸状態を頻繁にモニタリングすべきである。

酸素投与

たとえ慢性的な酸素投与を必要としない患者でも,COPDの増悪中は,ほとんどの場合に酸素投与が必要になる。酸素投与を受けた患者で高炭酸ガス血症が悪化する可能性がある。この悪化は,従来は低酸素による呼吸ドライブの減弱によると考えられてきた。しかしながら,おそらく換気/血流(V/Q)不均衡の増大がより重要な因子である。

酸素投与前は,肺血管が収縮し,肺の最も換気が少ない領域への血流を減らすことで,V/Q不均衡が最小化されている。酸素投与により,この低酸素性肺血管収縮が減弱し,V/Q不均衡の増大が生じる。

またHaldane効果も高炭酸ガス血症の悪化に寄与している可能性があるが,この理論については議論がある。Haldane効果とは,Hbの二酸化炭素への親和性の低下であり,これは血漿中に溶解する二酸化炭素量の増大をもたらす。たとえ高炭酸ガス血症を悪化させる可能性があっても,酸素投与は推奨される;多くのCOPD患者は急性の高炭酸ガス血症のみならず慢性の高炭酸ガス血症があるため,Paco2> 85mmHgにならない限り重度の中枢神経系の抑制の可能性は低い。Pao2の目標値は約60mmHgである;これより高い値にすることのメリットは少なく,むしろ高炭酸ガス血症のリスクを増大させる。

酸素は,厳密な調節および注意深いモニタリングができるよう,ベンチュリーマスクを介して投与する。酸素療法により状態が悪化する患者(例,重度のアシデミアまたは中枢神経系の抑制がある患者)では,換気補助が必要である。

増悪後の退院時に初めて在宅酸素療法が必要になった患者の多くは,30日以内に改善し,酸素が不要となる。したがって,在宅酸素療法の必要性は,退院後60~90日後に再評価されるべきである。

換気補助

非侵襲的陽圧換気(例,フェイスマスクによるプレッシャーサポートまたは二相性陽圧換気)は,完全な機械的人工換気の代替である。非侵襲的換気は,重症増悪の患者(即時の呼吸停止のリスクがなく血行動態が安定している患者で,pH < 7.30と定義される)で,挿管の必要性を減らし,入院期間を短縮し,また死亡率を低下させると考えられる。

より軽症の増悪患者には,非侵襲的換気の有効性はないようである。しかしながら,より軽症の増悪患者でも,動脈血ガスの値が最初の薬物療法または酸素療法にもかかわらず悪化する患者,または完全な機械的人工換気がさし迫って必要にみえるが,気道管理のための挿管または興奮に対する鎮静を必要としない患者には,非侵襲的換気が適応となりうる。重症の呼吸困難,肺過膨張,および呼吸補助筋の使用がみられる患者でも,陽圧換気により症状が緩和することがある。非侵襲的換気を用いても悪化する場合,侵襲的な機械的人工換気が必要となる。

動脈血ガスの値,精神状態の悪化,および呼吸疲労の進行には,気管挿管および機械的人工換気が適応となる。人工呼吸器の設定,管理方法,および合併症については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。人工呼吸器依存の危険因子は,FEV1< 0.5L,動脈血ガス測定でPao2 < 50mmHgまたはPaco2 > 60mmHgの状態で変化しない,重度の運動制限,栄養不良などである。したがって,リスクが高い患者では,外来通院で状態が安定している間に,挿管および機械的人工換気についての患者の希望を話し合い,記録しておくべきである( 事前指示書)。しかしながら,人工呼吸器に依存する可能性を過度に懸念するあまり,急性呼吸不全の管理を遅らせるべきではない;機械的人工換気を必要とする患者の多くは,増悪前の健康状態に戻ることができる。COPDの増悪による急性呼吸不全の患者に対し,経鼻での高流量酸素投与も試行されてきたが,この時点ではまだ実験的な治療とみなされていた。

長期の挿管を要する患者(例,> 2週間)には,快適性を増し,コミュニケーション,食事を容易にするため気管切開術が適応となる。栄養面および心理面のサポートを含む優れた集学的呼吸リハビリテーションプログラムにより,長期間の機械的人工換気管理が必要な患者の多くは,離脱に成功し,以前の機能レベルまで回復できる。急性呼吸不全後に人工呼吸器に依存したままの患者には,専門のプログラムが用意されている。日中は人工呼吸器を外せる患者もいる。自宅で十分なサポートが得られる患者では,家族がトレーニングを受けることで,患者が人工呼吸器をつけて自宅に戻れることもある。

パール&ピットフォール

  • 人工呼吸器に依存する可能性を過度に懸念するあまり,急性呼吸不全の管理を遅らせるべきではない;機械的人工換気を必要とする患者の多くは,増悪前の健康状態に戻ることができる。

薬物療法

β作動薬および抗コリン薬の投与(コルチコステロイドを併用することがある)は,気道閉塞を改善するために,酸素療法(酸素の投与方法は問わない)と同時に開始されるべきである。メチルキサンチン類は,かつてはCOPDの急性増悪の治療に必須と考えられていたが,毒性が便益を上回るため,もはや使用されていない。

β作動薬

短時間作用型β作動薬は急性増悪に対する薬物療法の基本である。最も広く使用されている薬物はサルブタモールで,2.5mgをネブライザーにより,または2~4パフ(100μg/パフ)を定量噴霧式吸入器により,2~6時間毎に投与する。定量噴霧式吸入器を用いた吸入は,速やかに気管支を拡張する;ネブライザーによる投与が,定量噴霧式吸入器で等量を正しく投与した場合より効果的であることを示すデータはない。治療に反応しない重度の気管支攣縮の症例では,ネブライザーによる連続治療が行われることがある。

抗コリン薬

抗コリン薬であるイプラトロピウムはCOPDの急性増悪に効果があり,β作動薬と同時にまたは交互に投与すべきである。投与量は0.25~0.5mgをネブライザーにより,または2~4吸入(1パフ毎に17~18μg)を定量噴霧式吸入器により,4~6時間毎に投与する。イプラトロピウムは一般に,通常の推奨用量のβ作動薬を服用した場合と同様の気管支拡張効果をもたらす。

長時間作用型抗コリン薬の急性増悪の治療における役割は明らかにされていない。

コルチコステロイド

コルチコステロイドは,軽症の増悪以外の全ての増悪に対し即座に開始すべきである。選択肢としては,プレドニゾン(30~60mg,経口にて1日1回を5日間継続後,7~14日かけて漸減)およびメチルプレドニゾロン(60~500mg,静注にて1日1回を3日間継続後,7~14日かけて漸減)などがある。代替として,プレドニゾン40mgの5日間投与は同等の効果があると考えられる。これらの薬物は急性効果においては同等である;しかし,吸入コルチコステロイドは急性増悪の治療には役に立たない。

抗菌薬

膿性痰のある患者の増悪には,抗菌薬が推奨される。喀痰の色の変化,または胸部X線の非特異的異常がみられた場合,経験的に抗菌薬を投与する医師もいる。常在ではない細菌または耐性菌が疑われない限り(例,入院患者,施設入所患者,または免疫抑制患者),ルーチンの培養およびグラム染色は,治療前に必要ではない。口腔内細菌叢に対する薬剤が適応となる。効果的で安価な抗菌薬の例には,以下のようなものがある:

  • トリメトプリム/スルファメトキサゾール160mg/800mg,経口,1日2回

  • アモキシシリン250~500mg,経口,1日3回

  • テトラサイクリン系250mg,経口,1日4回

  • ドキシサイクリン50~100mg,経口,1日2回

これらの抗菌薬は7~14日間投与される。薬物の選択は,地域の細菌感受性パターンおよび患者の病歴により決定される。

患者が重篤である,または臨床所見から感染微生物の薬剤耐性が示唆される場合,よりスペクトルの広い第2選択薬が用いられる。これらの薬剤には,アモキシシリン/クラブラン酸250~500mgを経口で1日3回,フルオロキノロン系(例,シプロフロキサシン,レボフロキサシン),第2世代セファロスポリン系(例,セフロキシム,セファクロル),および広域スペクトルのマクロライド系(アジスロマイシン,クラリスロマイシン)などがある。これらの薬物は,インフルエンザ菌(H. influenzae)およびM. catarrhalisのβ-ラクタマーゼ産生菌株に対し効果的であるが,大半の患者では第1選択薬より効果的であることは証明されていない。

喀痰の性状が膿性のものへと変化することを増悪が差し迫っている徴候として認識し,10~14日間の抗菌薬による治療を開始するよう患者に指導することもある。抗菌薬の長期予防投与は,気管支拡張症または感染したブラなどの,肺の構造的変化が基礎にある患者にのみ推奨される。頻回の増悪がある患者では,マクロライド系薬剤の長期投与により増悪頻度が減少するが,有害作用がみられることもある。

他の薬物

鎮咳薬のデキストロメトルファンおよびベンゾナテートはほとんど役に立たない。

オピオイド(例,コデイン,ヒドロコドン,オキシコドン)は,湿性咳嗽を抑制し,精神状態を障害し,また便秘の原因となる可能性があることを考慮した上で,症状緩和(例,重度の咳嗽発作,疼痛)のために慎重に使用すべきである。

終末期ケア

極めて重症の疾患がある場合,運動は不適切であり,エネルギー消費を最小限に抑えるように日常生活動作を調整する。例えば,自宅の1階で生活する,1回当たりの食事の量を減らし回数をその分増やす,靴ひもを結ぶ必要のある靴は避けるなどの調整が可能である。機械的人工換気を行うか否か,緩和的鎮静の使用,および患者の判断能力が失われた際に代理で医学的決断を行う者の指名など,終末期ケアについて話し合うべきである。

要点

  • ほとんどの患者は,増悪時に酸素投与を必要とする。

  • 短時間作用型吸入β作動薬は急性増悪に対する薬物療法の基本である。

  • 急性増悪および膿性の喀痰があれば,抗菌薬を使用する。

  • 末期のCOPD患者については,機械的人工換気および緩和的鎮静の使用に関する希望を含め,終末期ケアに事前に取り組む。

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