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安定期COPDの治療

執筆者:

Robert A. Wise

, MD, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 11月
本ページのリソース

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の管理には,COPDの慢性安定期の治療および増悪時の治療がある。

慢性安定期COPDの治療は,以下の手段により増悪を予防し,肺および身体の機能を改善することを目標とする。

COPDの外科的治療は,選択された患者にのみ適応となる。

禁煙

禁煙は,極めて困難であるが極めて重要である;FEV1低下を遅らせるものの停止させることはない(禁煙した患者における肺機能の変化の図を参照)が,長期的な生存率を改善する。以下の複数の対策を同時に行うことが最も効果的である:

  • 禁煙開始日を決める

  • 行動変容法

  • グループセッション

  • ニコチン代替療法(ガム,経皮パッチ,吸入器,トローチ,または鼻腔スプレー)

  • バレニクリンまたはブプロピオン

  • 医師による励まし

ブプロピオンと ニコチン代替療法の併用,またはバレニクリン単独使用などの最も効果的な介入でも,1年経過時点で > 50%の禁煙率は示されていない。

禁煙した患者と喫煙を継続する患者における肺機能の変化(FEV1の予測値に対する割合)の比較

最初の1年では,禁煙した患者の肺機能は改善し,喫煙を継続する患者の肺機能は低下した。その後,喫煙を続ける患者の低下率は禁煙した患者の2倍であった。喫煙習慣に変化が起こった時期にかかわらず,喫煙を再開した患者の肺機能は低下し,禁煙を持続した患者の肺機能は改善した。Based on data from Scanlon PD et al: Smoking cessation and lung function in mild-to-moderate chronic obstructive pulmonary disease; the Lung Health Study. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 161:381–390, 2000.

禁煙した患者と喫煙を継続する患者における肺機能の変化(FEV1の予測値に対する割合)の比較

薬物療法

推奨される薬物療法はCOPDの分類および治療の表に要約されている。

COPDの管理では吸入気管支拡張薬が中心となり,具体的な薬剤としては以下のものがある:

  • β作動薬

  • 抗コリン薬(抗ムスカリン薬)

これらの2つの薬剤の効果は同等である。軽症患者(A群―COPDの分類および治療の表を参照)では,症状のあるときのみ治療する。中等症または重症(B,C,またはD群―を参照)の患者は,肺機能改善および運動耐容量増強のため,これら2種類の内1種類または両種の薬剤を定期的に服用すべきである。

抗コリン薬,吸入コルチコステロイド,または長時間作用型β作動薬の使用により,増悪頻度を減らすことができる。しかしながら,気管支拡張薬の定期的な使用が肺機能の悪化を遅延させることを示す信憑性のあるエビデンスはない。短時間作用型β作動薬,長時間作用型β作動薬,抗コリン薬,およびβ作動薬と抗コリン薬の併用療法のうち,どれを初期治療として選択するかは,しばしば患者の好みや症状に,コストや利便性を考え合わせて決める問題である。

慢性安定期の在宅治療には,ネブライザーによる投与より定量噴霧式吸入器またはドライパウダー吸入器による投与が好まれる;在宅でのネブライザーは,不完全な洗浄および乾燥により汚染されやすい。それゆえ,ネブライザーの使用は,定量噴霧式吸入器の作動に合わせて吸入できない患者およびドライパウダー吸入器の使用に十分な吸気流量が得られない患者に限るべきである。

定量噴霧式吸入器を使用する際は,機能的残気量位まで呼出し,エアロゾルをゆっくり全肺気量位まで吸入し,3~4秒間息を止めた後,呼出するよう患者に指導すべきである。スペーサーは,薬物を末梢気道まで確実に最適供給するのに役立ち,またこれにより吸入器に合わせて吸入する必要性が減る。一部のスペーサーは,患者の吸入が速すぎる場合,警告を発する。新しい定量噴霧式吸入器を使う場合,または最近使っていなかった吸入器を使う場合は,使用前に2~3回分噴霧する必要がある(製造業者によって,どこまでを「最近使っていなかった」とみなすか若干異なる[3~14日まで幅がある])。

β作動薬

β作動薬は気管支平滑筋を弛緩させ,粘膜線毛クリアランスを増大させる。サルブタモールエアロゾル,2パフ(90~100μg/パフ)を定量噴霧式吸入器により必要に応じて4~6回/日で吸入する治療が,通常は第1選択とされる。

長時間作用型β作動薬は,夜間症状のある患者または頻回の服薬を不便に感じる患者に望ましい。選択肢として,サルメテロールパウダー,1パフ(50μg)の1日2回吸入,インダカテロール,1パフ(75μg)の1日1回吸入(欧州では150μg1日1回),およびオロダテロール,2パフの1日1回毎日同時刻の吸入などがある。アルフォルモテロール(arformoterol)およびホルモテロールのネブライザー溶液も利用できる。ドライパウダーは,定量噴霧式吸入器との同調がうまくできない患者には,より効果的である。

長時間作用型の薬剤を必要に応じて,または1日2回を超えて使用すると,不整脈のリスクが増大するため,患者に短時間作用型と長時間作用型の薬物の違いについて教育すべきである。

有害作用はどのβ作動薬の使用においても発生し,具体的には振戦,不安,頻脈,および軽度の一時的な低カリウム血症などがある。

抗コリン薬

抗コリン薬(抗ムスカリン薬)は,ムスカリン性受容体(M1,M2,およびM3)の競合的阻害により気管支平滑筋を弛緩させる。

イプラトロピウムは短時間作用型抗コリン薬であり,定量噴霧式吸入器により,2~4パフ(18μg/パフ)を4~6時間毎に投与する。イプラトロピウムは作用の発現が比較的遅いため(30分以内;ピークは1~2時間後),しばしばβ2作動薬が単一吸入剤として一緒に,または必要時のレスキュー薬として別々に処方される。

チオトロピウムは,パウダーの形で吸入する第4級アンモニウム化合物の長時間作用型抗コリン薬である。用量は1パフ(18μg)を1日1回である。アクリジニウム臭化物は,複数回投与できるドライパウダー吸入器として入手可能である。用量は1パフ(400μg/パフ)を1日2回である。ウメクリジニウムはビランテロール(長時間作用型β作動薬)との配合剤としてドライパウダー吸入器で1日1回使用できる。グリコピロニウム(抗コリン薬)はインダカテロールまたはホルモテロール(長時間作用型β作動薬)との配合剤としてドライパウダー吸入器または定量噴霧式吸入器で1日2回使用できる。

全ての抗コリン薬に共通の有害作用としては,瞳孔散大(および急性閉塞隅角緑内障を誘発または悪化させるリスク),尿閉,口腔乾燥などがある。

吸入コルチコステロイド

治療薬にはしばしばコルチコステロイドが含まれる。吸入コルチコステロイドは,気道の炎症を減少させ,β受容体のダウンレギュレーションを元に戻し,ロイコトリエンおよびサイトカインの産生を阻害すると考えられる。吸入コルチコステロイドは喫煙を継続するCOPD患者の肺機能低下の経過を変えることはないが,症状の緩和および短期的な肺機能の改善を一部の患者にもたらし,気管支拡張薬の効果を増強し,そしてCOPDの増悪頻度を減少させる。吸入コルチコステロイドは気管支拡張薬による至適な治療にもかかわらず,繰り返す増悪または症状のある患者に適応となる。用量は薬剤により異なる;例えば,フルチカゾン500~1000μg/日,ベクロメタゾン400~2000μg/日などである。

吸入コルチコステロイドの高齢者における長期的リスクは証明されていないが,おそらく骨粗鬆症白内障形成,および非致死的な肺炎のリスクの増大などがある。したがって長期使用者には,定期的に眼科および骨密度計測のスクリーニングを受けさせるべきであり,おそらくカルシウム製剤,ビタミンD製剤,およびビスホスホネートを適応に応じて投与すべきである。

慢性安定期の治療においては,長時間作用型β作動薬(例,サルメテロール)および吸入コルチコステロイド(例,フルチカゾン)の併用が,いずれか一方の単剤投与より効果的である。

コルチコステロイドの経口または全身投与は,通常慢性安定期COPDの治療に用いるべきではない。

テオフィリン

テオフィリンは,現在ではより安全で有効性の高い薬物が利用可能であるため,慢性安定期COPDにおいてわずかな役割しか果たしていない。テオフィリンは平滑筋の攣縮を減少させ,粘膜線毛のクリアランスを促進し,右室機能を改善し,また肺血管抵抗および動脈圧を低下させる。その作用機序はあまり解明されていないが,β2作動薬および抗コリン薬の作用機序とは異なるようである。横隔膜機能および運動中の呼吸困難の改善における役割に関しては議論がある。

テオフィリンは,吸入薬に十分に反応せず,テオフィリンの試験的使用で症状改善に効果がみられた患者に使用できる。血清中濃度のモニタリングは,患者が薬物に反応しない場合,毒性症状が出現した場合,またはアドヒアランスが疑わしい場合以外は必要ではない;徐放性経口テオフィリン製剤は,投与回数が少なくて済むため,アドヒアランスを高める。

有害作用の頻度は高く,たとえ血中濃度が低い場合でも不眠および消化管障害などがみられる。上室性および心室性不整脈,ならびに痙攣など,より重篤な有害作用は,血中濃度 > 20mg/Lで起こる傾向がある。

テオフィリンの肝代謝は極めて多様で,遺伝因子,年齢,喫煙,肝機能障害,食事,またマクロライド系およびフルオロキノロン系の抗菌薬ならびに非鎮静性ヒスタミン2受容体拮抗薬などの薬物の影響を受ける。

ホスホジエステラーゼ4阻害薬

ホスホジエステラーゼ4阻害薬はテオフィリンに比べ,肺ホスホジエステラーゼへの特異性が高く,有害作用はより少ない。抗炎症作用があり,弱い気管支拡張作用をもつ。ロフルミラストなどのホスホジエステラーゼ4阻害薬は,COPD患者における増悪を減らす目的で,その他の気管支拡張薬に追加して使用できる。ロフルミラストは250μg,1日1回の経口投与から開始し,忍容性に応じて500μg,1日1回まで増量する。

頻度の高い有害作用としては,悪心,頭痛,体重減少などがあるが,これらの有害作用は継続使用により減弱することがある。

マクロライド系抗菌薬

アジスロマイシンの長期療法は,繰り返すまたは重度の増悪を起こしやすいCOPD患者における増悪予防に効果的な補助療法であり,特に現在喫煙していない患者で効果的である。250mg,1日1回の投与での効力が示されている。エリスロマイシン250mg,1日2回または1日3回の経口投与も効果的であることがわかっている。

酸素療法

長期の酸素療法は,Pao2が慢性的に < 55mmHgのCOPD患者に対して,延命効果がある。24時間持続投与は,12時間の夜間投与レジメンよりも効果がある。酸素投与

  • ヘマトクリットを正常値に近づける

  • 神経心理学的要因を改善する,睡眠を促すなどによる

  • 肺の血行動態異常を改善する

  • 多くの患者で運動耐容能を高める

運動時および安静時の酸素飽和度を測定すべきである。同様に,進行したCOPD患者で,覚醒時には長期酸素療法の基準を満たさない(COPDにおける長期酸素療法の適応の表を参照)が,臨床的評価により日中の低酸素血症がない状態で肺高血圧が示唆される場合には,睡眠検査が考慮されるべきである。睡眠検査で,酸素飽和度が88%以下のエピソードがある場合,夜間酸素を処方することがある。このような治療は肺高血圧の進行を予防するが,生存率に与える効果は分かっていない。酸素飽和度が88%を超える中等度低酸素血症の患者または労作時の酸素飽和度低下(exercise desaturation)がある患者では,酸素投与によって症状が改善する可能性があるが,生存率が改善したり入院が減少したりすることはない(1)。

航空機利用時に,一部の患者は酸素投与を必要とすることがあるが,これは商業用航空機の機内圧は海面レベルの大気圧より低いためである(しばしば1830~2400m[6000~8000ft]に相当する)。血中炭酸ガス分圧が正常で,海面レベルでPao2 > 68mmHgであるCOPD患者は,一般に機内でのPao2 > 50mmHgであり,酸素投与は必要としない。全てのCOPD患者において,Pao2 が海面レベルで 68mmHgであるか,高炭酸ガス血症,高度な貧血(Hct < 30),または心疾患もしくは脳血管疾患を併発している場合は,長期フライト中に酸素投与を行うべきであり,予約時にその旨を航空会社に伝えるべきである。航空会社は酸素投与の提供が可能であり,ほとんどの会社はフライト前に,最低24時間前の通知,必要性を記載した医師の診断書,および酸素処方箋を必要とする。フェイスマスクしか用意していない航空会社もあるため,患者は自分の鼻カニューレを持参すべきである。患者個人用の液体酸素の持ち込みおよび使用は許可されていないが,現在では多くの航空会社が携帯用のバッテリー駆動の酸素濃縮装置の使用を許可しており,これは到着時にも適切な酸素供給源となる。

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COPDにおける長期酸素療法の適応

少なくとも30日間にわたり至適なレジメンで治療を受けている患者において,PaO2 55mmHgまたはSaO2 88%*の場合

肺性心または赤血球増多(Hct > 55%)がある患者で,PaO2= 55~59mmHgまたはSaO2 89%*の場合

労作時の酸素飽和度低下がある患者において,症状の改善がみられれば,考慮されることがある;しかしながら,生存率や入院率の改善はない。夜間の酸素飽和度低下がある患者で考慮されることもある

*動脈血酸素濃度は安静時の大気呼吸中に測定する。

急性呼吸器疾患から回復中の患者でリストに挙げた基準に該当する場合には,酸素を投与し,60~90日経過後,室内気下で呼吸中に再検査を行うべきである。

Long-Term Oxygen Treatment Trial Research Group: A randomized trial of long-term oxygen for COPD with moderate desaturationも参照のこと。New Engl J Med 375:1617–1627, 2016.

PaO2 = 動脈血酸素分圧;SaO2 = 動脈血酸素飽和度

酸素投与

酸素は鼻カニューレにより,Pao2 が60mmHgを超える(酸素飽和度が90%を超える)のに十分な流量(通常は安静時で3L/分以下)で投与する。酸素は,電動式の酸素濃縮装置,液体酸素装置,または圧縮ガスのシリンダーにより供給される。固定式の濃縮装置は活動性を制限するが,最も安価であるため,大半の時間を在宅で過ごす患者に望ましい。そのような患者には,停電時のバックアップおよび携帯用に,小型の酸素ボンベが必要である。持ち運び可能な濃縮装置は,高流量の酸素を必要としない患者に使用できる。

液体装置は,在宅以外で大半の時間を過ごす患者に望ましい。携帯用の液体酸素のキャニスターは持ち運びが容易で,圧縮ガスの携帯用シリンダーより容量が大きい。大型の圧縮空気シリンダーは最も高価な酸素供給法であり,使用はその他の酸素源が利用できない場合に限るべきである。全ての患者に,酸素使用中の喫煙の危険性を教えなければならない。

様々な酸素節約装置により患者の酸素使用量を削減でき,これはリザーバーシステムの使用,または吸気中にのみ酸素を送る方法のいずれでも可能である。これらの装置による安静時低酸素血症の是正効果は連続供給装置と同程度であると考えられる。しかし,運動に伴う低酸素血症に対しては,間欠的な供給装置は連続供給装置ほど効果的ではない可能性がある。

予防接種

COPD患者は全て,インフルエンザワクチンの接種を毎年受けるべきである。患者がワクチン接種を受けられない,または蔓延しているインフルエンザ株が例年のワクチン製剤に含まれていない場合で,インフルエンザ感染者との濃厚な接触があれば,ノイラミニダーゼ阻害薬(オセルタミビルまたはザナミビル)による予防的治療が行われる。ノイラミニダーゼ阻害薬による治療は,インフルエンザ様症状の最初の徴候がみられた時点で開始すべきである。あるいは,発症から48時間以内で合併症のない12歳以上のインフルエンザ患者に対しては,エンドヌクレアーゼ阻害薬であるバロキサビル マルボキシルが検討されることがある。

肺炎球菌多糖体ワクチンおよび肺炎球菌結合型ワクチンは,高齢者における市中肺炎および侵襲性肺炎球菌感染症の軽減に効果的であるため接種すべきである。

栄養

COPD患者には,体重減少および栄養障害のリスクがあるが,これは日常行動にかかるエネルギーコストがより高く,呼吸困難のためカロリー需要に対して摂取量が不足し,さらに,TNF-αなどの炎症性サイトカインの異化作用が生じているためである。また,全身の筋力および酸素の効率的な利用が損なわれている。栄養状態が悪い患者ほど予後が悪くなるため,十分なカロリー摂取ができるバランスのとれた食事を運動とともに奨励し,低栄養および筋萎縮の予防または改善を目指すのが賢明である。

過剰な体重増加は避けるべきであり,肥満患者は,徐々に体脂肪を減らすよう努力すべきである。

栄養補充のみを行った研究では,肺機能または運動耐容量の改善は示されていない。COPDにおける低栄養の回復,ならびに機能状態および予後の改善に関して,食欲増進薬,タンパク質同化ステロイド,成長ホルモン補充,およびTNF阻害薬の試験結果は期待に沿うものではない。

呼吸リハビリテーション

呼吸リハビリテーションプログラムは,身体機能の改善に対する薬物療法の補助療法としての役割をもつため,多くの病院や医療機関は,正式な集学的リハビリテーションプログラムを勧めている。呼吸リハビリテーションには運動,教育,および行動療法が含まれる。治療は患者ごとに個別化されるべきであり,患者および家族にはCOPDおよび治療法について教育し,患者には可能な限り自己管理に責任をもつよう指導する。

リハビリテーションの便益は,独立性が高まり,QOLや運動耐容量が改善されることである。呼吸リハビリテーションは,通常肺機能を改善することはない。しかし,リハビリテーションプログラムを治療にうまく組み込むことで,重症COPD患者が生理学的な制限に順応し,一方で改善に対する現実的な期待をもてるようになる。重症患者は,便益を得るために最低3カ月のリハビリテーションが必要であり,維持プログラムを継続して行うべきである。

運動プログラムは,家庭,病院,または施設環境で役立つことがある。段階的運動は,呼吸不全による活動低下または長期入院に起因する骨格筋のデコンディショニングを改善しうる。呼吸筋に特化したトレーニングは,有酸素運動による全身状態の調整ほど役に立たない。

典型的なトレーニングプログラムは,トレッドミルでのゆっくりした歩行またはエルゴメーターでの無負荷の自転車運動を数分間続けることから始める。運動時間および運動負荷は,呼吸困難が抑えられた状態で患者が20~30分続けて運動できるようになるまで,4~6週かけて徐々に増やしていく。最重症COPDの患者は,一般に時速1.6~3.2kmで30分間歩く運動レジメンを達成できる。維持運動は,健康水準維持のために週3~4回行うべきである。酸素飽和度をモニタリングし,必要に応じて酸素投与を行う。

上肢のレジスタンストレーニングによって,日常作業(例,入浴,更衣,家の清掃)が行いやすくなる。運動で通常得られる便益は,下肢の力,持久力,および最大酸素消費量の適度の増加である。

患者には,日常生活動作の中でエネルギーを節約する方法や,活動のペースを調整する方法を教えるべきである。性行為の難しさについて話し合うべきで,性的満足を得る上でエネルギーを節約する手技の使用について助言すべきである。

手術

重症COPDの治療の外科的な選択肢としては,以下のものがある:

  • 肺容量減少手術

  • 肺移植

肺容量減少手術

肺容量減少手術では,機能していない気腫領域を切除する。この手術は,主に上肺に重症の肺気腫があり,呼吸リハビリテーション後も運動耐容量のベースラインが低い患者において,肺機能,運動耐容能,およびQOLを改善する。肺容量減少手術後,最初の90日間は死亡率が増加するが,5年生存率は高くなる。

動脈血ガスへの影響は様々で予測不能であるが,術前に酸素療法を要した患者の多くは,術後も引き続き酸素療法が必要である。改善度合は肺移植の場合より低い。改善の機序は,肺の弾性収縮力の増強,および横隔膜機能の改善によると考えられている。

手術による死亡率は約5%である。肺容量減少手術に最適な対象は,FEV1が予測値の20~40%,DLCOが予測値の > 20%で,運動耐容量が著しく障害されており,CT上で上肺優位の不均一な肺病変を認め,Paco2< 50mmHg,かつ重度の肺高血圧および冠動脈疾患が存在しない患者である。

まれに,機能している肺を圧迫する極めて大きなブラが患者にみられる。これらの患者は,ブラの外科的切除で治療可能であり,結果として症状の軽減および肺機能の改善が得られる。一般に,切除が最も有益であるのは,一側胸郭の3分の1を超えるブラがあり,FEV1が予測正常値の約半分の患者である。肺機能の改善は,切除されたブラにより圧迫されていた正常または障害の軽い肺組織の量に関連する。一連の胸部X線およびCTは,患者の身体機能状態が,機能しうる肺がブラに圧迫されているためなのか,気腫が全体に及んでいるためなのかを判定する上で,最も有用な手段である。著明なDLCOの低下(予測値の < 40%)は,気腫が広範囲であることを示し,外科的切除による治療効果がより低いことを示唆する。

肺移植

肺移植は片肺または両肺に行うことができる。周術期の合併症発生率は,片肺移植でより低い傾向にあるが,両肺移植を行うと生存期間が延長することを示すエビデンスがある。移植の対象は,65歳未満であり,気管支拡張薬による治療後もFEV1が予測値の < 25%の患者または重症の肺高血圧の患者である。手術により生存期間が必ずしも延長するとは限らないため,肺移植の目的はQOLの改善にある。肺気腫に対する肺移植後の5年生存率は45~60%である。生涯にわたる免疫抑制が必要であり,これには日和見感染のリスクが伴う。

気管支バルブ

一部の施設では,肺気腫化している領域に側副換気がない選択された患者に対し,その標的領域を無気肺化する気管支バルブが利用できる。一部の患者では,肺容量減少手術の代わりに気管支バルブの留置が行われている。

治療に関する参考文献

要点

  • 主に短時間作用型β作動薬により慢性閉塞性肺疾患の症状を急速に緩和させ,吸入コルチコステロイド,長時間作用型β作動薬,長時間作用型抗コリン薬,またはこれらの併用により増悪を減少させる。

  • 多様な手段(例,行動変容,支援団体,ニコチン代替,薬物療法)で禁煙を奨励する。

  • 支持療法(例,栄養,呼吸リハビリテーション,自主的運動)を最大限に活用する。

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