サルコイドーシス

執筆者:Michael C. Iannuzzi, MD, MBA, Henry Ford Hospital;
Birendra P. Sah, MD, FCCP, Upstate Medical University
レビュー/改訂 2019年 2月
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サルコイドーシスは単一または複数の臓器および組織に生じる非乾酪性肉芽腫を特徴とする炎症性疾患であり,病因は不明である。肺およびリンパ系が侵される頻度が最も高いが,サルコイドーシスはどの臓器にも生じうる。肺症状は,無症状から咳嗽,労作時呼吸困難,および,まれであるが肺または他臓器の機能不全に至るまで様々である。通常はまず肺病変を理由に本疾患が疑われ,胸部X線,生検,および肉芽腫性炎症を引き起こす他の原因を除外することにより,診断が確定される。第1選択の治療はコルチコステロイドである。予後は,病変が限局的である場合良好であるが,より進行した症例では不良である。

サルコイドーシスは20~40歳に生じる頻度が最も高いが,ときに小児およびより高齢の成人にも生じる。世界的にみて有病率が最も高いのは,アフリカ系アメリカ人および北欧人,特にスカンジナビア人である。疾患の現れ方は人種および民族的背景によって大きく異なり,アフリカ系アメリカ人では胸郭外病変がより多くみられる。サルコイドーシスは女性により多い。発生は冬から春先に増加するが,理由は不明である。

Löfgren症候群

Löfgren症候群は,急性多関節炎,結節性紅斑,および肺門リンパ節腫脹の三徴を伴って発生する。発熱,倦怠感,およびぶどう膜炎がしばしばみられ,またときに耳下腺炎がみられる。スカンジナビアおよびアイルランドの女性により多い。Löfgren症候群はしばしば自然に軽快する。患者は通常,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)に反応する。再発率は低い。

Heerfordt症候群

Heerfordt 症候群(ぶどう膜耳下腺熱[uveoparotid fever])は,耳下腺腫脹(サルコイドの浸潤による),ぶどう膜炎,慢性の発熱のほか,より頻度は下がるが顔面神経麻痺として現れる。Heerfordt症候群は自然に軽快することがある。治療はサルコイドーシスに対するものと同様である。

Blau症候群

Blau症候群は,常染色体優性形式で遺伝するサルコイドーシス様疾患で,小児に発生する。Blau症候群が成人で診断されるサルコイドーシスと同じ機序で発生するものであるかどうかは不明である。Blau症候群では,4歳未満の小児で関節炎,発疹,およびぶどう膜炎が生じる。Blau症候群はしばしば自然に軽快する。症状は通常NSAIDで緩和される。

サルコイドーシスの病因

サルコイドーシスは,遺伝的に感受性の高い人における環境曝露に対する炎症反応によるものと考えられている。誘因として考えられているのは以下の通りである:

  • Propionibacterium acnesおよび抗酸菌(結核菌[Mycobacterium tuberculosis]のカタラーゼ-ペルオキシダーゼ[mKatG]タンパク質による可能性がある)

  • カビまたは白カビ,および職場にあるカビ臭い未知の物質

  • 殺虫剤

喫煙はサルコイドーシスの発症と逆相関する。

遺伝的感受性を示唆するエビデンスには以下のものがある:

  • 二卵性双生児に比べ,一卵性双生児において疾患の一致率が高い

  • 第1度または第2度近親者に患者がいる場合,サルコイドーシスの有病率が高い(約3.6~9.6%)

  • サルコイドーシスの患者の同胞では,サルコイドーシスを発症する相対リスクが5倍高い

  • サルコイドーシスに関連する可能性があるヒト白血球抗原(HLA)遺伝子および非HLA遺伝子がいくつか同定されている

サルコイドーシスの病態生理

未知の抗原により,T細胞およびマクロファージの集積,サイトカインおよびケモカインの放出,ならびに応答細胞による肉芽腫形成を特徴とする細胞性免疫応答が誘発される。家族および集団における疾患の集積は,遺伝的素因,共通の曝露,または可能性は低いがヒトからヒトへの伝播を示唆する。

炎症が進行し,サルコイドーシスの病理学的特徴である非乾酪性肉芽腫の形成に至る。肉芽腫は,類上皮細胞および多核巨細胞に分化する単核球およびマクロファージの集積であり,周囲をリンパ球,形質細胞,線維芽細胞,およびコラーゲンに囲まれている。肉芽腫は,肺およびリンパ節に起こる頻度が最も高いが,どの臓器にも起こる可能性があり,重大な機能不全を引き起こしうる。肺の肉芽腫はリンパ管に沿って分布し,ほとんどが細気管支周囲,胸膜下,および小葉周囲領域に認められる。

活性化マクロファージによりビタミンDの活性型への変換が亢進するため,高カルシウム血症が生じることがある。血清カルシウムレベルが正常な患者でも,高カルシウム尿症がみられることがある。腎結石症および腎石灰化症が起こることがあり,ときに慢性腎臓病に至る。

サルコイドーシスの症状と徴候

症状および徴候は,病変の部位およびその程度によって異なり,自然寛解するものから緩徐進行性の慢性経過をたどるものまで様々な経時変化がある。したがって,他の臓器に新たな症状がないか,頻繁に再評価する必要がある。ほとんどの症例はおそらく無症状であるため発見されずにいる。肺疾患は,成人患者の > 90%に起こる。

症状および徴候として,呼吸困難,咳嗽,胸部不快感,および断続性ラ音などがみられることがある。疲労,倦怠感,筋力低下,食欲不振,体重減少,および微熱もよくみられる症状である。サルコイドーシスが不明熱として現れることがある。全身性の場合,様々な症状(サルコイドーシスにおける臓器別病変の表を参照)を引き起こし,人種,性別および年齢によっても多様である。黒人では白人よりも,眼,肝,骨髄,末梢リンパ節,および皮膚(結節性紅斑は例外)の病変が生じる可能性が高い。女性では結節性紅斑,および眼または神経系が侵される可能性がより高い。男性および高齢者は,高カルシウム血症を発症する可能性がより高い。

サルコイドーシスの臨床像
サルコイドーシス(涙嚢炎)
サルコイドーシス(涙嚢炎)
この画像には,サルコイドーシス患者の両側上眼瞼に,涙腺(眼瞼部)の炎症として発症した涙嚢炎が写っている。

© Springer Science+Business Media

サルコイドーシス(皮膚所見)
サルコイドーシス(皮膚所見)
この写真には,サルコイドーシス患者の顔面に生じた紅斑姓局面が写っている。

© Springer Science+Business Media

結節性紅斑
結節性紅斑
結節性紅斑は,脛部に好発する脂肪織炎の一種であり,圧痛を伴う赤色または紫色の触知可能な皮下結節を特徴とする。ほとんどの場合,レンサ球菌感染症,サルコイドーシス,炎症性腸疾患などの全身性疾患を合併する。

Image provided by Thomas Habif, MD.

サルコイドーシス(凍瘡状狼瘡[びまん浸潤型皮膚サルコイドーシス])
サルコイドーシス(凍瘡状狼瘡[びまん浸潤型皮膚サルコイドーシス])
この写真には,サルコイドーシス患者の鼻に生じた紫色の局面が写っている。

© Springer Science+Business Media

サルコイドーシスの患児はBlau症候群(関節炎,発疹,ぶどう膜炎)を呈することもあれば,成人患者により近い症状を呈することもある。この年齢層では,サルコイドーシスは若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチ)と混同されることがある。

表&コラム

サルコイドーシスの診断

  • 胸部画像検査

  • 生検

  • その他の肉芽腫性疾患の除外

サルコイドーシスは,胸部X線で偶然肺門リンパ節腫脹が発見された場合に疑われることが最も多い。両側肺門リンパ節腫脹は最もよくみられる異常である。サルコイドーシスの疑われる患者で胸部X線が未実施であるならば,最初にこの検査を行うべきである。胸部リンパ節腫脹のみの患者では,X線所見(胸部X線によるサルコイドーシスの病期分類の表を参照)から,疾患が自然寛解する可能性を大まかに予測できる傾向にある。しかしながら,胸部X線によるサルコイドーシスの病期診断は誤りを招く可能性がある;例えば,心または神経サルコイドーシスなどの肺外サルコイドーシスは,肺病変がなくても予後不良の徴候である。また,胸部X線所見は肺機能の予測能に乏しく,ゆえに胸部X線所見は肺サルコイドーシスの重症度を正確に示していない可能性がある。

表&コラム

胸部X線所見が正常(0期)でもサルコイドーシスの診断を除外されず,特に心臓または神経病変が疑われる場合は注意が必要である。肺門および縦隔リンパ節腫脹ならびに実質病変の検出には,高分解能CTの方が感度が高い。より進行した病期(II~IV)のCT所見には以下のものがある:

  • 気管支血管束および気管支壁の肥厚

  • 小葉間隔壁の数珠状変化

  • すりガラス陰影

  • 実質にみられる結節,嚢胞,または空洞

  • 牽引性気管支拡張

サルコイドーシスの画像
サルコイドーシス—I期
サルコイドーシス—I期
I期サルコイドーシスにおける,両側肺門リンパ節腫脹。

By permission of the publisher. From Tanoue L, Elias J.In Bone's Atlas of Pulmonary and Critical Care Medicine.Edited by J Crapo. Philadelphia, Current Medicine, 2005.

サルコイドーシス—II期
サルコイドーシス—II期
II期サルコイドーシスにおける,間質陰影を伴う両側肺門リンパ節腫脹。

By permission of the publisher. From Tanoue L, Elias J.In Bone's Atlas of Pulmonary and Critical Care Medicine.Edited by J Crapo. Philadelphia, Current Medicine, 2005.

サルコイドーシス—III期
サルコイドーシス—III期
III期サルコイドーシスにおける,肺門リンパ節腫脹を伴わないびまん性の間質陰影。

By permission of the publisher. From Tanoue L, Elias J.In Bone's Atlas of Pulmonary and Critical Care Medicine.Edited by J Crapo. Philadelphia, Current Medicine, 2005.

サルコイドーシス—IV期
サルコイドーシス—IV期
IV期サルコイドーシスにおける,肺門リンパ節腫脹および上葉の嚢胞性変化を伴う,重症のびまん性線維化。

By permission of the publisher. From:Tanoue L,Elias J.In Bone's Atlas of Pulmonary and Critical Care Medicine.Edited by J Crapo. Philadelphia, Current Medicine, 2005.

画像からサルコイドーシスが示唆される場合,生検で非乾酪性肉芽腫を証明し,肉芽腫性疾患を引き起こすその他の原因を除外することで診断が確定する(サルコイドーシスの鑑別診断の表を参照)。Löfgren症候群では生検による確認を行う必要はない。

したがって診断の際は,以下の評価を行う必要がある:

  • 生検部位を選択する

  • その他の肉芽腫性疾患を引き起こす原因を除外する

  • 疾患の重症度および広がりを評価し,治療適応となるかどうかを決定する

表&コラム

生検部位

適切な生検部位は,身体診察および初期評価から明らかな場合がある;末梢リンパ節,皮膚病変,および結膜は,全て容易にアクセスできる。超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)を用いた縦隔または肺門リンパ節の生検では,約90%の診断率が報告されている。これは通常胸腔内病変のある患者で選択される診断手技である。

EBUS-TBNAで診断がつかない場合,気管支鏡下の経気管支生検を行う場合がある;診断がつかなければ気管支鏡下の経気管支生検を再度試行してもよい。

EBUS-TBNAおよび気管支鏡下の経気管支生検で診断がつかない場合,または患者が気管支鏡に耐えられない場合は,縦隔鏡により縦隔または肺門リンパ節を生検するか,もしくは胸腔鏡(VAT)下肺生検または開胸生検により肺組織を採取する。サルコイドーシスが強く疑われるものの,診察または画像所見から生検部位が明らかにならない場合,心臓,骨,脳などの生検部位の同定にPET(陽電子放出断層撮影)が役に立つ可能性がある。

その他の診断の除外

他の多くの疾患や過程においても肉芽腫性炎症が生じうるため,特に症状およびX線所見が極めて少ない場合には,他の診断の除外が非常に重要である(サルコイドーシスの鑑別診断の表を参照)。生検組織を用い,真菌および抗酸菌の培養を行うべきである。職業性(ケイ酸塩,ベリリウム),環境性(カビの生えた干し草,鳥,およびその他過敏性肺炎の誘因となる抗原),および感染性(結核コクシジオイデス症ヒストプラズマ症)の抗原への曝露歴を調査すべきである。精製ツベルクリン(PPD)検査は,アネルギーを考慮の上,評価の早期に施行すべきである。

疾患重症度の評価

重症度は臓器病変に応じて評価され,例えば肺病変のみの場合は以下の検査が行われる:

  • 肺機能検査

肺機能検査結果は,早期ではしばしば正常であるが,進行期では拘束性パターンおよび肺拡散能(DLco)の低下がみられる。気流閉塞(airflow obstruction)もみられ,気管支粘膜の病変を示唆している可能性がある。パルスオキシメトリーは安静時の測定ではしばしば正常であるが,より広範囲にわたる肺病変のある患者では,運動時に酸素飽和度の低下がみられることがある。

肺外疾患のスクリーニングに推奨されているルーチン検査には以下のものが含まれる:

  • 12誘導心電図検査および心エコー検査

  • 細隙灯顕微鏡による眼検査

  • 腎機能および肝機能評価のためのルーチンの血液検査

  • 血清カルシウム値および24時間尿中カルシウム排泄量の測定

心疾患,神経疾患,またはリウマチ性疾患の症状のある患者には,心臓MRI(ときにガドリニウム造影剤を使用),脳または脊髄MRI(ときにガドリニウムを使用),骨シンチグラフィー,および筋電図検査の施行が適切な場合がある。骨およびその他の肺外サルコイドーシスの検出には,PETが最も感度が高いようである。腹部造影CTはルーチンには推奨されないが,肝または脾病変を示す所見(例,腫大,高吸収病変)を得られる可能性がある。

臨床検査は,診断および臓器病変の範囲の確定に補助的な役割を果たす。血算では,貧血,好酸球増多,または白血球減少を示すことがある。高カルシウム血症を検出するため,血清カルシウム値を測定すべきである。血中尿素窒素(BUN),クレアチニン,および肝機能の検査値は,腎および肝サルコイドーシスにおいて上昇することがある。総タンパク質は,高ガンマグロブリン血症のため上昇することがある。赤血球沈降速度の亢進はよくみられるが非特異的である。血清カルシウム値が正常である患者においても,高カルシウム尿症を除外するために,24時間蓄尿による尿検体中のカルシウム測定が推奨される。血清アンジオテンシン変換酵素(ACE)値の上昇もサルコイドーシスを示唆するが,非特異的であり,他の多様な病態(例,甲状腺機能亢進症ゴーシェ病珪肺症,抗酸菌感染症,真菌感染症,過敏性肺炎リンパ腫)でも上昇しうる。しかしながら,患者のコルチコステロイド治療遵守のモニタリングには,アンジオテンシン変換酵素(ACE)の測定が有用となることがある。ACEの値は,使用しているコルチコステロイドが低用量であっても急降下する。

気管支肺胞洗浄(BAL)は,サルコイドーシスの診断が不確かな場合に他の間質性肺疾患を除外する際,および感染症を除外する際に用いられる。気管支肺胞洗浄の所見はかなり多様であるが,適切な臨床状況下で,洗浄液細胞分画中のリンパ球増多(リンパ球 > 10%),CD4+/CD8+> 3.5,またはその両方がみられる場合はサルコイドーシスの診断が示唆される。しかしながら,これらの所見がみられないことはサルコイドーシスを除外するものではない。

全身ガリウムシンチグラフィーは大部分がPETに取って代わられている。ガリウムシンチグラフィーが可能であれば,生検組織で確認できない場合に,診断を支持する有用な所見が得られることがある。縦隔および肺門リンパ節(ラムダ徴候),ならびに涙腺,耳下腺,および唾液腺(パンダ徴候)への対称性の取り込みの増加はサルコイドーシスを強く示唆するパターンである。プレドニゾンを服用している患者においては,スキャン結果陰性は信頼できない。

サルコイドーシスの予後

自然寛解が一般的であるが,疾患の症状および重症度は非常に多様であり,多くの患者が経過中のいずれかの時点でコルチコステロイド投与を必要とする。したがって,再発がないかを確認するための繰り返しのモニタリングが必須である。サルコイドーシスの患者のほぼ3分の2が,最終的に後遺症をほとんど,または全く残さず寛解する。自然寛解する患者の約50%は,診断後3年以内に寛解する;このうち10%未満の患者ではそれから2年後の時点で再発がみられる。2~3年以内に寛解しない患者は,疾患が慢性化する可能性が高い。

サルコイドーシスは最大30%の患者において慢性化すると考えられており,また10~20%で永続的な後遺症が残る。1~5%の患者では致死的であり,典型的には肺線維症による呼吸不全,および頻度はより低いがアスペルギローマによる肺出血が死因となる。しかしながら日本では,不整脈および心不全を引き起こす浸潤性心筋症が最も一般的な死因である。

肺外サルコイドーシスの患者および黒人では予後がより悪い。寛解は,胸郭外病変を伴わない場合,白人で89%および黒人で76%であり,胸郭外病変を伴う場合は白人で70%および黒人で46%である。

予後良好の徴候には以下のものが含まれる:

  • Löfgren症候群(急性多関節炎,結節性紅斑,および肺門リンパ節腫脹の三徴)

予後不良の徴候には以下のものが含まれる:

  • 慢性ぶどう膜炎

  • 凍瘡状狼瘡(びまん浸潤型皮膚サルコイドーシス)

  • 慢性高カルシウム血症

  • 神経サルコイドーシス

  • 心病変

  • 広範囲にわたる肺病変

治療を受ける患者と無治療の患者との間では長期転帰にはほとんど差異が認められておらず,また治療終了時の再発が一般的である。

サルコイドーシスの治療

  • NSAID

  • コルチコステロイド

  • ときに免疫抑制薬

サルコイドーシスはしばしば自然に消退するため,無症状の患者および症状が軽度の患者では治療を必要としないが,悪化徴候確認のためのモニタリングは続けるべきである。このような患者は,胸部X線検査の反復,肺機能検査(肺拡散能の検査を含む),および胸郭外病変を示唆する指標の確認(例,ルーチンの腎機能および肝機能検査,毎年の細隙灯顕微鏡による眼検査)によってフォローアップできる。フォローアップ検査を行う頻度は疾患の重症度によって決まる。

以下のある患者は,病期にかかわらず治療の必要がある:

  • 症状の悪化

  • 活動制限

  • 肺機能の著明な異常または悪化

  • X線上の懸念される変化(空洞,線維化,集塊性の腫瘤,肺高血圧の徴候)

  • 心,神経系,または眼病変

  • 腎不全または肝不全

  • 中等症から重症の高カルシウム血症

  • 外観を損なう皮膚病変(凍瘡状狼瘡[びまん浸潤型皮膚サルコイドーシス])または関節疾患

筋骨格不快感の治療には非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が用いられる。

コルチコステロイド

症状管理はコルチコステロイドにより開始する。著明な症状または臓器機能の低下の証拠を伴わない胸部画像の異常は治療の適応とならない。標準的プロトコルは,症状および所見の重症度に応じ,プレドニゾン20~40mg/kg,1日1回経口投与である。隔日投与も行われる(例,プレドニゾン40mg,1日おきに1回経口投与)。40mg/日を超える用量の投与を要することはまれであるが,神経疾患を伴う患者では,合併症を減少させるためより高用量の投与を要する場合がある。治療への反応は通常6~12週以内にみられるため,症状および肺機能を6~12週の間に再評価する。慢性かつ潜行性の症例では,治療への反応はより緩徐である。治療への反応の証拠が得られた後,コルチコステロイドは維持量(例,プレドニゾン10~15mg/日)まで漸減し,改善がみられれば最低6~9カ月間継続する。

至適治療期間は不明である。尚早な漸減は再発を招くことがある。治療に反応しない,または反応がはっきりしない場合,薬剤を漸減し中止する。ほとんどの患者でコルチコステロイドは最終的に中止できるが,最大50%に再発がみられるため,通常3~6カ月毎にモニタリングを行うべきである。症状や徴候が再発した場合は,コルチコステロイドによる治療を再開すべきである。低用量のコルチコステロイドでもACE産生が抑制されるため,アンジオテンシン変換酵素(ACE)が高値の患者では,コルチコステロイド治療遵守を評価するための繰り返しの血清ACE測定が有用であることがある。

吸入コルチコステロイドは,気管支内病変または気道過敏性を伴う患者の咳嗽を緩和しうる。

局所コルチコステロイドは,皮膚,副鼻腔,および眼疾患に有用なことがある。

プレドニゾン換算で1日20mgを超えるコルチコステロイドを1カ月以上服用しているか,免疫抑制薬を服用している患者では,Pneumocystis jirovecii肺炎の予防を考慮すべきである。

アレンドロン酸または別のビスホスホネートは,コルチコステロイド誘発性骨粗鬆症の予防に対する第1選択治療となりうる。カルシウムまたはビタミンDのサプリメントは,サルコイド肉芽腫による活性型ビタミンD(1, 25ジヒドロキシビタミンD)の内因性産生を高め,高カルシウム血症をもたらすリスクがある。こうしたサプリメントを開始する前に,血清中および24時間尿中カルシウム測定値が正常でなければならない。

パール&ピットフォール

  • 著明な症状または臓器機能の低下の証拠を伴わない胸部画像の異常はコルチコステロイドによる治療の適応とならない。

免疫抑制薬

免疫抑制薬は,しばしば難治性の症例においてより高い効果が得られる。例えば,免疫抑制薬は以下の場合に使用されている:

  • 患者がプレドニゾンに耐えられない

  • サルコイドーシスが中等度から高用量のプレドニゾンに難治性である

  • 3カ月経過後もプレドニゾンの用量を10~15mg,1日1回未満に減量できない

他の免疫抑制薬を追加する前に,臨床的改善がみられない理由としてアドヒアランス不良,併存疾患,末期線維症など,可能性のある理由を検討すべきである。 

メトトレキサートは最もよく使用される免疫抑制薬である。メトトレキサート10~15mg/週の試験的投与を6カ月にわたり行うべきである。最初はメトトレキサートおよびコルチコステロイドを併用投与する;6~8週間かけてコルチコステロイドの用量を漸減でき,多くの場合は中止できる。しかしながらメトトレキサートに対する最大の反応を得るには,6~12カ月かかることがある。そのような場合は,プレドニゾンはより緩徐に漸減しなければならない。繰り返しの血算および肝酵素検査は,初期には1~2週毎,その後用量が安定すれば,4~6週毎に行う。メトトレキサートで治療中の患者には,葉酸(1mg,1日1回経口投与)が推奨される。

他の免疫抑制薬として,アザチオプリン,ミコフェノール酸モフェチル,シクロホスファミド,レフルノミド,ヒドロキシクロロキン,およびインフリキシマブなどがある。腫瘍壊死因子阻害薬であるインフリキシマブは,慢性でステロイド依存性の肺サルコイドーシス,難治性の凍瘡状狼瘡(びまん浸潤型皮膚サルコイドーシス),および神経サルコイドーシスの治療に効果的である可能性がある。3~5mg/kgの静脈内投与を1回,2週間後に1回,その後1回/月のペースで行う。最大の反応を得るには3~6カ月かかる可能性がある。

ヒドロキシクロロキン400mg,1日1回または200mg,1日2回の経口投与は,高カルシウム血症,関節痛,皮膚サルコイドーシス,もしくは不快なまたは外観を損なう末梢リンパ節腫脹の治療に有効な可能性がある。ヒドロキシクロロキンによる眼毒性のモニタリングを行うため,投与開始前と,投与中6~12カ月毎に眼科的評価を行うべきである。

免疫抑制薬中止後の再発はよくみられる。

治療に関する他の留意事項

心病変による心ブロックまたは心室性不整脈を有する患者には,薬物療法と並行して,植込み型除細動器およびペースメーカーの植込みを行うべきである。

肺線維化を継続的に予防する薬はまだ存在しない。

サルコイドーシス関連の肺動脈高血圧症の治療は,利尿薬および酸素投与による支持療法である。現在のところ肺血管拡張薬を用いた治療の便益は証明されていない(1)。

臓器移植は,肺,心,または肝の末期病変に対する選択肢の1つであるが,移植臓器において疾患が再発することがある。

治療に関する参考文献

  1. 1.Vizza CD, Jansa P, Teal S, et al: Sildenafil dosed concomitantly with bosentan for adult pulmonary arterial hypertension in a randomized controlled trial.BMC Cardiovasc Disord17(1):239, 2017.doi: 10.1186/s12872-017-0674-3.

サルコイドーシスの要点

  • 全身性または肺外病変がサルコイドーシスでよくみられるが,成人患者では > 90%が肺病変を有する。

  • 胸部の画像撮影を行うが,診断は生検によって確定し,通常,縦隔または肺門リンパ節の超音波気管支鏡ガイド下針生検を行う。

  • 肺機能検査および運動時パルスオキシメトリーにより,肺病変の重症度を評価する。

  • 肺外病変の検査として,心電図,細隙灯顕微鏡による眼検査,腎および肝機能検査,ならびに血清および尿中カルシウム濃度測定を行う。

  • 適応のある場合(例,症状が重症,高カルシウム血症,臓器機能低下の進行,心または神経病変)は,コルチコステロイドの全身投与により治療する。

  • 患者が中用量のコルチコステロイドに耐えられない場合,サルコイドーシスがコルチコステロイド耐性である場合,または長期間のコルチコステロイド投与が必要になる場合は,免疫抑制薬により治療する。

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