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冠動脈バイパス術(CABG)

執筆者:

Michael J. Shea

, MD, Michigan Medicine at the University of Michigan

最終査読/改訂年月 2019年 8月
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冠動脈バイパス術(CABG)では,ステント留置による血行再建が困難な高度狭窄または閉塞を来した固有冠動脈に対して迂回路を作成する。その適応は,経皮的インターベンションの施行例が増えてきたことで変化している。

従来法によるCABG

従来の冠動脈バイパス術では,胸骨正中切開による開胸が必要である。人工心肺を用いて体外循環を確立して心拍動の停止と血液の除去を可能にすることで,最大限の術野の確保と血管吻合の円滑化を図るとともに,心拍動の停止により心筋の酸素需要を大きく減少させる。

回路内での血栓形成を予防するため,体外循環を開始する前に非常に高用量のヘパリンを投与する。続いて大動脈を遮断した後,虚血および再灌流に対する心筋細胞の耐性を高める物質を含有する心停止液(電解質輸液またはより一般的には血液ベースのもの)を注入することで,心臓を停止させる。ときに,虚血に対する耐性を高めるために心停止液と心臓を冷却することもあり,また同様の理由から,人工心肺を介して患者の身体も冷却する。

左前下行枝には,典型的には左内胸動脈を有茎グラフトとして使用する。その他のグラフトとしては,下肢から採取した伏在静脈を使用する。ときに,右内胸動脈または利き手と反対側の橈骨動脈を使用することがある。

血管吻合が完了したら,大動脈の遮断を解除し,酸素化された血液で冠動脈を灌流することにより,一般的には心臓の活動が再開する。ヘパリンによる抗凝固作用は,プロタミンを投与して中和する。心保護のための対策を講じたとしても,心臓を停止する上では代償がないわけではない。再灌流時には,心筋機能障害がよく発生し,徐脈,不整脈(例,心室細動),および心拍出量低下を来す可能性があるが,これらはペーシング,除細動,強心薬などの標準的な処置により治療する。

入院期間は,合併症や併存疾患のために長引かない限り,通常は4~5日である。

冠動脈バイパス術の合併症

従来法によるCABGの合併症および欠点には,主に以下の要因が関係する:

  • 胸骨切開

  • 人工心肺

胸骨正中切開の忍容性は予想以上に高いが,治癒には4~6週間を要する。また,ときに創傷感染から縦隔炎や胸骨骨髄炎が引き起こされ,治療を困難にすることがある。

体外循環は以下のようないくつかの合併症を引き起こす:

  • 出血

  • 臓器機能障害

  • 神経精神医学的影響

  • 脳卒中

体外循環後の出血は,よくみられる問題であり,血液希釈,ヘパリンの使用,バイパスポンプへの曝露に起因する血小板機能障害,播種性血管内凝固症候群,低体温療法など,様々な因子によって惹起される。

人工心肺の使用により惹起された全身性炎症反応(おそらく血液成分がバイパス回路を構成する異物に曝露することが原因とみられる)から臓器機能障害が生じることがあるが,この反応はいかなる器官系(例,肺,腎臓,脳,消化管)に対しても機能障害を引き起こす可能性がある。大動脈のカニューレ挿入,クランプによる遮断,および遮断の解除により塞栓子の放出が誘発される可能性があり,これにより約1.5%の頻度で脳卒中が発生する;約5~10%の頻度で認められる体外循環後の神経精神医学的影響には,微小塞栓が寄与している可能性がある。

上記以外でよくみられるCABGの合併症としては,以下のものがある:

  • 局所的な心筋虚血

  • 全体に及ぶ心筋虚血

  • 不整脈

周術期心筋梗塞は約1%の患者で発生する。心房細動は15~40%の患者で,典型的には術後2~4日目に発生する。β遮断薬(ソタロールを含む)およびアミオダロンは,心臓手術後に心房性不整脈が発生する可能性を低減するようである。非持続性心室頻拍は,患者の最大50%で発生する可能性がある。

死亡率は主に患者の基礎的な健康状態に依存するが,術者と施設の経験(例,年間の手術件数)も重要である。経験豊富な施設であれば,その他に健康上問題のない患者の周術期死亡率は一般的に1%未満から3%である。

簡単な計算式でCABGのリスクを3群(低度,中等度,高度)に分類することができる。改良された心臓手術リスクのウェブ計算ツールがSociety of Thoracic Surgeonsによって公表されている。

代替法によるCABG

新しい手技では,従来の冠動脈バイパス術でみられる合併症を次の方法で抑制することが試みられている:

  • 体外循環の回避(オフポンプCABG)

  • 胸骨正中切開の回避(低侵襲CABG)

  • その両方

オフポンプCABG

心拍動下での血行再建を可能にする手法の採用により,選択された患者では体外循環を回避することができる。様々な機器と方法を用いて心筋の一部を安定化させることで,手術部位を比較的静止した状態で維持する。

オフポンプCABGは傍胸骨または肋間の小切開(低侵襲CABG)により施行されることが一般的であり,ときに内視鏡下,さらにはロボット補助下でも行われるが,従来法の胸骨正中切開により施行することも可能で,その場合はより良好な術野が得られる。

心臓が拍動しているため,体外循環の場合と比較して,心筋はより多くの酸素を必要とする。そのため,血管吻合時に必要になる血流中断に対する組織の感受性が高くなるため,対象の血管に支配される心筋組織では,この血流中断により虚血や梗塞が生じる可能性がある。末梢部の灌流を維持するために,一時的な冠動脈シャントを設置する場合もある。

低侵襲CABG

低侵襲CABGは施行がやや困難であり,複数のグラフトが必要になる場合(特に心臓背面の血管が関与する場合)には適切でないことがある。輸血の必要性,入院期間,および費用は一般的にオフポンプCABGでより少なくなるが,一部の研究では,死亡,心筋梗塞,脳卒中などのより重篤な合併症の発生率は,体外循環によるCABGと同程度であることが示されている。したがって,体外循環の回避による理論的な利点は,完全には現実化されていないと考えられる。

低侵襲CABGは通常オフポンプで施行するが,体外循環を用いて施行する場合もある。その場合,体外循環は動脈系および静脈系の末梢血管に留置した特殊なカテーテルを介して行われ,大動脈は外部のクランプではなく,大動脈カテーテル先端のバルーンによって閉塞させる。この方法では胸骨正中切開の合併症を回避できるものの,その他の点では死亡率も主要な周術期合併症の発生率も従来法と同程度である。

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