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肺性心

執筆者:

Sanjiv J. Shah

, MD, Northwestern University Feinberg School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 3月
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肺性心とは,肺動脈性肺高血圧症を引き起こす肺疾患に続発して右室拡大が生じる病態である。続いて右室不全へと至る。所見には,末梢浮腫,頸静脈怒張,肝腫大,胸骨近傍の挙上などがある。診断は臨床的に行い,心エコー検査による。治療は原因に対して行う。

肺性心は肺またはその血管系の障害により生じるもので,左室不全,先天性心疾患(例,心室中隔欠損症),または後天性弁膜症に続発した右室拡大は肺性心とは呼ばない。肺性心は通常慢性に経過するが,急性かつ可逆的となることもある。原発性肺高血圧症(すなわち,肺疾患や心疾患を原因としないもの)については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

病態生理

肺疾患はいくつかの機序により肺高血圧症を引き起こす:

  • 毛細血管床の喪失(例,COPDにおける水疱性変化や肺塞栓症における血栓症に起因するもの)

  • 低酸素症,高炭酸ガス血症,またはその両方に起因する血管収縮

  • 肺胞内圧の上昇(例,COPD,機械的人工換気下)

  • 細動脈の中膜肥厚(他の機序に起因する肺高血圧に対する反応であることが多い)

肺高血圧は右室の後負荷を増大させるため,拡張末期圧および中心静脈圧の上昇や心室の肥大および拡大など,左室不全の場合と同様の一連の事象が発生する。低酸素症により誘発される赤血球増多を原因とする血液粘稠度の上昇により,右室に対する要求が増大する可能性がある。まれに,機能障害を来した心室中隔が左室側に膨隆すると,右室不全の影響が左室にも及び,充満が妨げられる結果,拡張機能障害を来すことがある。

病因

急性肺性心の原因となりうる病態は少ない。慢性肺性心はCOPDにより発生するのが通常であるが,比較的まれな原因もいくつか存在する(Professional.see table 肺性心の原因)。COPD患者では,急性増悪または肺感染症が右室負荷の引き金となりうる。慢性肺性心では,静脈血栓塞栓症のリスクが上昇する。

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肺性心の原因

経過

状態

急性

広範な肺塞栓症

機械的人工換気に起因する損傷(ARDSの患者で最もよくみられる)

慢性

COPD*

手術または外傷に起因する広範な肺組織の喪失

解消されない慢性の塞栓

肺静脈閉塞症

間質性肺線維症

脊柱後側弯症

肺胞低換気を伴う肥満

呼吸筋を侵す神経筋疾患

特発性肺胞低換気症

*COPDは慢性肺性心の最も一般的な原因である。

ARDS = 急性呼吸窮迫症候群。

症状と徴候

当初の肺性心は無症状であるが,患者には肺の基礎疾患による顕著な症状(例,呼吸困難,労作時の疲労)がみられるのが通常である。後に右室圧が上昇してくると,身体徴候として収縮期の胸骨左縁の膨隆,II音(S2)肺動脈成分の亢進,三尖弁および肺動脈弁の機能的閉鎖不全による心雑音などがよくみられるようになる。さらに,吸気時に増強する右室奔馬調律(III音[S3]およびIV音[S4]),頸静脈怒張(三尖弁逆流がなければ著明なa波を伴う),肝腫大,および下肢の浮腫も生じうる。

診断

  • 臨床的な疑い

  • 心エコー検査

原因となりうる病態を有する全ての患者で肺性心を疑うべきである。胸部X線では,右室および肺動脈近位部の拡大と遠位部の狭小化を認める。右室肥大の心電図所見(例,右軸偏位,V1誘導のQR波,V1~V3誘導の著明なR波)は肺高血圧の重症度と良好に相関する。しかしながら,COPDでは肺の過膨張およびブラにより心臓の配置が変化するため,身体診察,X線,および心電図検査は感度が比較的低くなることがある。

左室および右室機能を評価するため,心エコー検査または核医学検査を施行する;心エコー検査では右室の収縮期圧を評価できるが,肺疾患のために技術的な制約を受けることが多い;一部の患者では心臓MRIが心腔および機能の評価に役立つことがある。確定診断には右心カテーテル検査が必要になることがある。

治療

  • 原因の治療

治療は困難であるが,その照準は原因(本マニュアルの別の箇所を参照)に合わせ,特に低酸素症の軽減ないし緩和を目標とする。構造的変化が不可逆的になる前に早期の同定と治療が重要である。

末梢浮腫があると,利尿薬の使用が適切と思われることもあるが,利尿薬は左室不全と胸水による負荷も存在する場合にのみ役立つ。肺性心はしばしば前負荷のわずかな減少により悪化するため,利尿薬は有害となる可能性がある。肺血管拡張薬(例,ヒドララジン,カルシウム拮抗薬,一酸化窒素,プロスタサイクリン,ホスホジエステラーゼ阻害薬)は,原発性肺高血圧症では有益であるが,この病態には効果的ではない。エンドセリン受容体遮断薬のボセンタンもまた,原発性肺高血圧症患者には有益となりうるが,肺性心に対する使用はあまり研究されていない。ジゴキシンは左室機能障害を合併する場合にのみ効果的であり,COPD患者はジゴキシンの作用に影響を受けやすいため,注意が必要である。

以前から低酸素症による肺性心に対して瀉血が勧められてきたが,有意な赤血球増多が存在しない限り,血液粘稠度の低下による有益性が酸素運搬能の低下による有害性を上回る可能性は低い。慢性肺性心患者では,抗凝固薬の長期投与により静脈血栓塞栓症のリスクが低下する。

要点

  • 肺性心とは,肺動脈性肺高血圧症を引き起こす肺疾患に続発して右室拡大が生じ,最終的には右室不全を来す病態である。

  • 肺性心それ自体は通常は無症候性であるが,一般的な身体所見としては,収縮期の胸骨左縁の膨隆,II音肺動脈成分の亢進,三尖弁および肺動脈弁の機能的閉鎖不全による心雑音,さらに後には頸静脈怒張,肝腫大,下肢の浮腫などがある。

  • 診断には心エコー検査または核医学検査が必要となるのが通常であり,ときに右心カテーテル法も必要となる。

  • 心臓の構造的変化が不可逆的になる前に,早期に原因を同定して治療することが重要である。

  • 著明な末梢浮腫がみられることがあるが,利尿薬は役に立たず,有害となる可能性もある;肺性心は前負荷のわずかな低下によりしばしば増悪する。

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