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前立腺炎

執筆者:

Gerald L. Andriole

, MD, Barnes-Jewish Hospital, Washington University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2016年 8月
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前立腺炎とは,主に刺激性または閉塞性の泌尿器症状と会陰部痛の組合せとして出現する多様な疾患群を指す。一部の症例は前立腺の細菌感染が原因であり,より頻度の高い他の一群の症例では,非感染性の炎症因子,尿生殖隔膜筋の攣縮,またはその両方に起因するが,まだ十分に解明されていない。診断は臨床的に行い,前立腺マッサージの前後に採取した尿検体の鏡検および培養も併用する。原因が細菌性の場合,治療は抗菌薬による。原因が非細菌性の場合,治療は温坐浴,筋弛緩薬,抗炎症薬,または抗不安薬による。

病因

前立腺炎は細菌性の可能性,またはより一般的には非細菌性の可能性がある。しかしながら,細菌性と非細菌性の原因の鑑別は,特に慢性前立腺炎では困難なことがある。

細菌性前立腺炎には,急性と慢性の両方があり,通常は典型的な尿路病原体(例,Klebsiella属,Proteus属,大腸菌[Escherichia coli])に,ときにクラミジア(Chlamydia)に起因する。これらの病原体がどのように前立腺に侵入し感染するかは不明である。慢性感染症は,抗菌薬で根絶されなかった細菌が潜伏して引き起こしている場合がある。

非細菌性前立腺炎は炎症性または非炎症性の可能性がある。その機序は不明であるが,尿道括約筋の不完全な弛緩および非協調的排尿が関連していると考えられる。その結果もたらされた尿路圧の上昇により,前立腺への尿の逆流(炎症反応を誘発する),または骨盤内の自律神経活動の亢進による非炎症性の慢性痛が生じると考えられる。

分類

前立腺炎は4つのカテゴリーに分類される( 前立腺炎のNIHコンセンサス分類)。このカテゴリーは臨床所見および2回の尿検体における感染および炎症の徴候の有無により鑑別される。最初の検体は中間尿である。その後,指による前立腺マッサージを施行した直後に患者に排尿させ,その最初の10mLの尿を2番目の検体とする。感染は尿培養の細菌増殖で確定され,炎症は尿中に白血球が認められることで確定される。炎症を伴わない前立腺炎に対する前立腺痛(prostatodynia)という用語の使用は推奨されない。

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前立腺炎のNIHコンセンサス分類

番号

分類

特徴

尿所見

マッサージ前

マッサージ後

I

急性細菌性前立腺炎

尿路感染症の急性症状

白血球

+/

+

細菌

+/

+

II

慢性細菌性前立腺炎

同一菌による再発性尿路感染症

白血球

+/

+

細菌

+/

+

III

慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群

主な症状として疼痛,排尿症状,および性機能障害

IIIa

炎症性

白血球

+

細菌

IIIb

非炎症性*

白血球

細菌

IV

無症候性炎症性前立腺炎

他の病態のための泌尿器学的評価(例,前立腺生検,精液検査)中に偶然発見

白血球

+

細菌

*以前は前立腺痛と呼ばれていた。

+/= 陽性の場合あり; += 陽性; = 陰性。

Data from Krieger JN, Nyberg L, Nickel JC: NIH consensus definition and classification of prostatitis. JAMA 282:236–237, 1999.

症状と徴候

症状はカテゴリーにより異なるが,典型的にはある程度の尿路の刺激または閉塞および疼痛がある。刺激症状は,頻尿および尿意切迫,閉塞,残尿感,排尿直後の再度の排尿,または夜間頻尿として現れる。疼痛は典型的には会陰部であるが,陰茎の先端,腰部,精巣に感じることがある。一部の患者は射精痛を訴える。

急性細菌性前立腺炎はしばしば発熱,悪寒,倦怠感,筋肉痛などの全身症状を起こす。前立腺には激しい圧痛があり,局所的またはびまん性に腫脹,軟化,硬結,あるいはその組合せを呈する。全身性敗血症症候群が起こることがあり,頻脈,頻呼吸,ときに低血圧を特徴とする。

慢性細菌性前立腺炎は感染の再発エピソードとして生じ,毎回の発生時に完全寛解がみられる場合と,そうでない場合がある。症状と徴候は急性前立腺炎と比較して軽度の傾向がある。

慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群は,典型的には主要症状として疼痛を呈し,しばしば射精痛を含む。不快感が有意となる可能性があり,しばしば生活の質が著しく損なわれる。尿路の刺激または閉塞の症状も認めることがある。診察では前立腺が圧痛を呈することがあるが,通常は軟化および腫脹のいずれも認められない。臨床的には,慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の炎症性型と非炎症性型は類似する。

無症候性炎症性前立腺炎は症状を引き起こさず,他の前立腺疾患の評価で尿中に白血球が認められたことから偶然発見される。

診断

  • 尿検査

  • 前立腺マッサージ,ただし急性細菌性前立腺炎の場合はおそらく除く

I,II,III型前立腺炎の診断は臨床的に疑われる。同様の症状は,尿道炎直腸周囲膿瘍,または尿路感染症でも生じる可能性がある。検査は急性細菌性前立腺炎でのみ診断に有用である。

急性細菌性前立腺炎の典型的な症状と徴候を呈する発熱患者は,通常,中間尿検体中に白血球および細菌を有する。これらの患者では,マッサージ後の尿検体を採取するための前立腺マッサージは必要ないと考えられ,菌血症を誘発する可能性があることから,前立腺マッサージは危険である可能性がある(ただし,危険性はまだ証明されていない)。同じ理由から,直腸診は愛護的に行うべきである。発熱,重度の筋力低下,錯乱,見当識障害,低血圧,または四肢冷感がみられる患者では,血液培養を行うべきである。発熱がない患者の診断には,マッサージ前後の尿検体採取で十分である。

急性または慢性細菌性前立腺炎を呈し,抗菌薬に対して好ましい反応を示さない患者には,前立腺膿瘍,または精嚢の破損および炎症を除外するため,経直腸的超音波検査およびときに膀胱鏡検査が必要になることがある。

II,III,IV型(非急性前立腺炎)疾患の患者に対して考慮することができるさらなる検査としては,膀胱鏡検査および尿細胞診(血尿も認められる場合)ならびに尿流動態測定(神経学的異常または排尿筋括約筋協調不全が疑われる場合)がある。

治療

  • 治療は病因によって著しく異なる

急性細菌性前立腺炎

中毒のない患者は自宅で,抗菌薬,床上安静,鎮痛薬,便軟化剤,水分補給により治療することができる。通常はフルオロキノロン系薬剤による治療(例,シプロフロキサシン500mg,経口,1日2回またはオフロキサシン300mg,経口,1日2回)が効果的であり,培養および感受性試験の結果が出るまでの間に投与することができる。臨床反応が良好であれば,慢性細菌性前立腺炎を予防するため,治療を約30日間継続する。

敗血症が疑われる場合は,入院させて広域抗菌薬(例,アンピシリンとゲンタマイシン)を静脈内投与する。抗菌薬は適切な培養検体を採取してから開始し,起因菌の感受性が判明するまで継続する。臨床的に十分な反応が得られる場合は,解熱が24~48時間続くまで静注療法を続け,その後,経口薬療法を通常4週間継続する。

補助療法としては,NSAIDおよび場合によってはα遮断薬(排尿が不良の場合),また温坐浴などの支持療法がある。まれに前立腺膿瘍を生じることがあり,外科的ドレナージを必要とする。

慢性細菌性前立腺炎

慢性細菌性前立腺炎の治療は,フルオロキノロン系などの経口抗菌薬の6週間以上投与による。治療は培養結果を指針とし,培養結果が曖昧または陰性の患者に対する経験的抗菌薬療法は成功率が低い。その他の治療法としては,抗炎症薬,筋弛緩薬(例,ときに骨盤底筋の攣縮を軽減するためのcyclobenzaprine),αアドレナリン遮断薬,その他の対症療法(温坐浴など)などがある。

慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群

治療は困難で,しばしば効果が得られない。上述の治療法全ての考慮に加えて,これまでに抗不安薬(例,SSRI,ベンゾジアゼピン系薬剤),仙骨神経刺激療法,バイオフィードバック,前立腺マッサージ,および低侵襲の前立腺処置(マイクロ波高温度療法など)が試みられており,その結果は様々である。

無症候性炎症性前立腺炎

無症候性の前立腺炎は治療を必要としない。

要点

  • 前立腺炎は,急性または慢性細菌感染症である可能性または未解明の疾患群である可能性があり,この疾患群は刺激性および閉塞性の泌尿器症状,尿生殖隔膜筋攣縮,会陰部痛を典型的な特徴とする。

  • 慢性細菌性前立腺炎を呈する患者および急性細菌性前立腺炎を呈する非中毒性の患者では,治療はフルオロキノロン系薬剤および対症療法による。

  • 敗血症を示唆する全身症状を呈する急性細菌性前立腺炎患者は入院させ,アンピシリン + ゲンタマイシンなどの広域抗菌薬を投与する。

  • 慢性前立腺炎または慢性骨盤痛症候群を呈する男性には,抗不安薬(例,SSRI,ベンゾジアゼピン系薬剤),仙骨神経刺激療法,バイオフィードバック,前立腺マッサージ,および低侵襲の前立腺処置(例,マイクロ波高温度療法)を考慮する。

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