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長期腎代替療法の医学的側面

執筆者:

L. Aimee Hechanova

, MD, Texas Tech University Health Sciences Center, El Paso

最終査読/改訂年月 2019年 8月

長期腎代替療法(RRT)を受ける全ての患者では,合併症として代謝性疾患やその他の疾患を発症する。これらの疾患には,しかるべき注意と補助的治療が必要である。アプローチは患者によって異なるが,典型的には栄養面の調整と複数の代謝異常に対する管理が含まれる(栄養 栄養 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む  栄養 も参照)。

食事

食事は慎重にコントロールすべきである。一般に,血液透析患者は食欲不振になりやすく,理想体重1kg当たり1日35kcal(小児では年齢および活動性に応じて40~70kcal/kg/日)の食事摂取を奨励すべきである。ナトリウムの1日摂取量は2g(88mEq[88mmol]),カリウムは2.3g(60mEq[60mmol]),リン酸塩は800~1000mgまでに制限すべきである。水分摂取は1000~1500mL/日に制限され,透析治療の間の体重増加を測定してモニタリングする。腹膜透析を受ける患者は,腹腔で喪失するタンパク質(8.4 +/- 2.2g/日)を補充するため,タンパク質摂取量1.25~1.5g/kg/日が必要である(これに対し血液透析患者では1.0~1.2g/kg/日)。生存率は(血液透析および腹膜透析のいずれでも),血清アルブミンを3.5g/dL(35g/L)超に維持した患者で最良であり,血清アルブミンはこれらの患者の生存に関する最善の予測因子である。

腎不全の貧血

腎不全で発生する貧血は,遺伝子組換えヒトエリスロポエチンおよび鉄補充で治療すべきである(貧血および凝固障害 貧血および凝固障害 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 貧血および凝固障害 を参照)。経口での鉄吸収には限界があるため,多くの患者には血液透析中に鉄剤の静脈内投与が必要となる。(アナフィラキシーの発生率が高い鉄デキストランよりも,カルボキシマルトース第二鉄,グルコン酸第二鉄ナトリウム,およびスクロース鉄の方が望ましい)。鉄貯蔵は,血清鉄,総鉄結合能,血清フェリチンを用いて評価する。典型的には,鉄貯蔵はエリスロポエチン療法の開始前およびその後は2カ月毎に評価する。エリスロポエチン抵抗性で最も頻度の高い理由は,鉄欠乏症 鉄欠乏症 鉄(Fe)はヘモグロビン,ミオグロビン,および体内の多数の酵素の成分である。主に動物性食品に含まれるヘム鉄は,平均的な食事中の鉄分の85%超を占める非ヘム鉄(例,植物および穀物に含まれる)よりもはるかに吸収がよい。しかし,非ヘム鉄は,動物性タンパク質およびビタミンCと一緒に摂取すると吸収が増大する。 (ミネラル欠乏症および中毒の概要も参照のこと。) 鉄欠乏症は,世界的に最も一般的なミネラル欠乏症の一種である。以下の結果として起こることが... さらに読む である。しかしながら,輸血を複数回受けた透析患者では鉄過剰症 鉄過剰症の概要 一般成人では,1日当たり約1mgの鉄(Fe)が表皮細胞および消化管細胞の剥離により喪失している;閉経前の女性では,さらに平均0.5~1mg/日の鉄が月経により失われる。この鉄の喪失は,米国の一般的食事に含まれる10~20mgの鉄の一部を吸収することによって均衡が保たれている。鉄の吸収は,体内の貯蔵鉄量により調節されており,通常は身体の必要... さらに読む が生じている場合があり,そのような患者には鉄サプリメントを投与すべきではない。

冠動脈疾患

RRTを必要とする患者の多くは,高血圧,脂質異常症,または糖尿病を有し,喫煙習慣があり,最終的に心血管疾患で死亡するため,冠動脈疾患の危険因子 危険因子 冠動脈疾患では,冠動脈の血流が障害され,そのほとんどがアテロームに起因する。臨床像としては,無症候性心筋虚血,狭心症,急性冠症候群(不安定狭心症,心筋梗塞),心臓突然死などがある。診断は症状,心電図検査,負荷試験,ときに冠動脈造影による。予防法は可逆的な危険因子(例,高コレステロール血症,高血圧,運動不足,肥満,糖尿病,喫煙)の是正である... さらに読む  危険因子 を積極的に管理していく必要がある。持続的腹膜透析は水分の除去に血液透析より効果的である。その結果,高血圧患者は降圧薬の必要性が低下する。血液透析患者の約80%では,高血圧も濾過単独でのコントロールが可能である。残りの20%では,降圧薬 高血圧に対する薬剤 いくつかの薬物クラスが高血圧の初期治療およびその後の管理に効果的である。安定した高血圧に選択される薬物と用法については,Professional.see also page 薬剤を参照のこと。高血圧緊急症の薬物治療については,Professional.see table 高血圧緊急症に対する注射薬を参照のこと。 (高血圧の概要も参照のこと。) 高血圧に使用される利尿薬の主なクラス(Professional... さらに読む が必要になる。脂質異常症の治療 治療 脂質異常症とは,血漿コレステロール,トリグリセリド(TG)値,もしくはその両方が高値であること,またはHDLコレステロールが低値であることであり,動脈硬化発生に寄与する。原因には原発性(遺伝性)と二次性とがある。診断は,総コレステロール,TG,および各リポタンパク質の血漿中濃度測定による。治療は食事の変更,運動,および脂質低下薬である。 (脂質代謝の概要も参照のこと。) 脂質測定値は連続的であるため,脂質濃度の正常値と異常値を区切る自然... さらに読む 治療 糖尿病管理 治療 糖尿病(DM)はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリンお... さらに読む ,および禁煙 禁煙 ほとんどの喫煙者は禁煙したいと願い,それを試みているが,成功率は限られている。効果的な介入としては,禁煙カウンセリングとバレニクリン,ブプロピオン,ニコチン代替製品などの薬剤投与がある。 米国の喫煙者の約70%は,喫煙をやめることを望んでおり,少なくとも1回は禁煙を試みたことがあると言う。ニコチンの離脱症状は,禁煙の重大な障壁となりうる。 (タバコも参照のこと。) 離脱症状はしばしば強力で,多くの喫煙者は,たとえ健康面のリスクを認識して... さらに読む が非常に重要である。

高リン血症

高リン血症 高リン血症 高リン血症とは,血清リン濃度が4.5mg/dL(1.46mmol/L)を上回った状態である。原因には,慢性腎臓病,副甲状腺機能低下症,代謝性または呼吸性のアシドーシスがある。臨床的特徴は随伴する低カルシウム血症によるものと考えられ,テタニーが含まれる。診断は血清リン濃度の測定による。治療には,リンの摂取制限,および炭酸カルシウムなどのリン酸結合性制酸薬の投与がある。 (リン濃度の異常の概要も参照のこと。)... さらに読む は糸球体濾過量(GFR)低下によるリン貯留の結果として発生し,カルシウム(Ca)× リン(PO4)> 50~55の場合には,軟部組織(特に冠動脈および心臓弁)に石灰化が起きるリスクが高まる。また,続発性副甲状腺機能亢進症の発生も促進する。初期治療としてはカルシウム系制酸薬(例,炭酸カルシウム1.25g,経口,1日3回,酢酸カルシウム667~2001mg,経口,食事とともに1日3回)を使用するが,この種の薬剤はリン吸着剤として作用してリン濃度を低下させる。長期投与の合併症として便秘および腹部膨満がある。高カルシウム血症をモニタリングすべきである。

カルシウム含有リン吸着剤を服用中に高カルシウム血症を発症した患者に対しては,炭酸セベラマー800~3200mgまたは炭酸ランタン500~1000mg,スクロオキシ水酸化鉄500~1000mg,またはクエン酸第二鉄2~3gの毎食事時の服用が選択肢である。一部の患者(例,急性腎障害 急性腎障害(AKI) 急性腎障害は,数日間から数週間で腎機能が急速に低下する病態であり,これにより,尿量減少の有無にかかわらず,血中に窒素化合物が蓄積する(高窒素血症)。原因は重度の外傷,疾患,または手術による腎臓の灌流低下である場合が多いが,ときに急速進行性の内因性の腎疾患に起因する場合もある。症状としては,食欲不振,悪心,嘔吐などがある。無治療の場合,痙攣... さらに読む で入院し,血清リン濃度が極めて高い患者)では,アルミニウムベースのリン吸着剤の追加が必要となるが,アルミニウム中毒を予防するため,その使用は短期間に制限すべきである(例,必要に応じて1~2週)。

低カルシウム血症および続発性副甲状腺機能亢進症

腎におけるビタミンD産生が損なわれた結果,これらの合併症がしばしば併発する。低カルシウム血症 低カルシウム血症 低カルシウム血症とは,血漿タンパク質濃度が正常範囲内にある場合に血清総カルシウム濃度が8.8mg/dL(2.20mmol/L)未満であること,または血清イオン化カルシウム濃度が4.7mg/dL(1.17mmol/L)未満となった状態である。原因には,副甲状腺機能低下症,ビタミンD欠乏症,および腎疾患がある。症状としては,錯感覚,テタニーのほか,重度であれば痙攣,脳症,心不全などがある。診断には,血清アルブミン値で補正された血清カルシウム... さらに読む の治療は,カルシトリオールの経口(0.25~1.0μg,経口,1日1回)または静脈内(成人では1~3μg/kg,小児では0.01~0.05μg/kg,透析時)投与による。治療により血清リン濃度が上昇する可能性があり,軟部組織石灰化を防ぐため,濃度が正常化されるまで投与を中止すべきである。用量は,副甲状腺ホルモン(PTH)濃度を通常150~300pg/mL(150ng/L)まで抑制するよう調整する(PTHは骨代謝回転を血清カルシウムより良好に反映する)。抑制過剰は骨代謝回転を低下させて無形成骨症をもたらし,これにより骨折のリスクが高まる。ビタミンD誘導体のドキセルカルシフェロール(doxercalciferol)とパリカルシトールは,腸管からのカルシウムとリンの吸収に対する作用はより少ないが,PTH抑制については同程度に有効である。初期に示唆された,これらの薬剤がカルシトリオールと比較して死亡率を低下させる可能性については確認が必要である。

カルシウム受容体作動薬のシナカルセトは,副甲状腺のCa感知受容体のカルシウムに対する感度を高めることから,副甲状腺機能亢進症に適応となる場合があるが,ルーチンの診療における役割はまだ確立されていない。同剤はPTH濃度を最大75%低下させる能力を有することから,これらの患者で副甲状腺摘出術の必要性が減少する可能性がある。

アルミニウム中毒

中毒のリスクはアルミニウム含有透析液(現在ではまれ)およびアルミニウムベースのリン吸着剤に曝露した血液透析患者が有する。臨床像は,骨軟化症および小球性貧血(鉄抵抗性)と,おそらくは透析認知症(記憶障害,統合運動障害,幻覚,しかめ面,ミオクローヌス,痙攣発作,特徴的な脳波所見から成る一連の症候)である。

RRTを受けている患者に骨軟化症,鉄抵抗性小球性貧血,または神経症状(記憶障害,統合運動障害,幻覚,しかめ面,ミオクローヌス,痙攣発作など)が現れた場合は,アルミニウム中毒を考慮すべきである。診断は,デフェロキサミン5mg/kgの静脈内投与前と2日後の血漿アルミニウム濃度の測定による。デフェロキサミンはアルミニウムをキレート化し,組織から放出するため,アルミニウム中毒患者では血中濃度が上昇する。アルミニウム濃度の50μg/L以上の上昇は毒性を示唆する。アルミニウム関連の骨軟化症は,骨の針生検でも診断可能である(アルミニウムに対する特殊染色が必要)。

治療はアルミニウムベースの吸着剤の回避に加え,デフェロキサミンの静脈内または腹腔内投与による。

パール&ピットフォール

  • RRTを受けている患者で骨軟化症,鉄抵抗性小球性貧血,または神経症状がみられる場合は,アルミニウム中毒を考慮する。

骨疾患

腎性骨異栄養症は骨石灰化の異常である。複数の原因があり,具体的にはビタミンD欠乏症 ビタミンD欠乏症および依存症 日光への曝露が不十分であると,ビタミンD欠乏症が起こりやすくなる。欠乏症により,骨石灰化が障害され,小児ではくる病,成人では骨軟化症が引き起こされ,また骨粗鬆症の一因となる可能性がある。診断では,血清25(OH)D(D2およびD3)の測定を行う。治療としては通常,ビタミンDを経口投与し,必要に応じてカルシウムおよびリンを補給する。しばしば予防が可能である。まれに,遺伝性疾患によりビタミンDの代謝障害(依存症)が起こる。... さらに読む 血清リン値上昇 高リン血症 高リン血症とは,血清リン濃度が4.5mg/dL(1.46mmol/L)を上回った状態である。原因には,慢性腎臓病,副甲状腺機能低下症,代謝性または呼吸性のアシドーシスがある。臨床的特徴は随伴する低カルシウム血症によるものと考えられ,テタニーが含まれる。診断は血清リン濃度の測定による。治療には,リンの摂取制限,および炭酸カルシウムなどのリン酸結合性制酸薬の投与がある。 (リン濃度の異常の概要も参照のこと。)... さらに読む ,続発性副甲状腺機能亢進症,慢性代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシスは重炭酸イオン(HCO3−)の一次性の減少で,通常は二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の低下を伴う;pHは著明に低下するか,またはわずかに正常範囲を下回る。代謝性アシドーシスは,血清中の未測定陰イオンの有無に基づいて高アニオンギャップまたはアニオンギャップ正常に分類される。原因には,ケトン体および乳酸の蓄積,腎不全,薬物または毒素の摂取(高アニオンギャップ),消化管または腎からのHCO3−喪失(アニオンギャップ正常)な... さらに読む ,アルミニウム中毒などがある。治療は原因に向けられる。

ビタミン欠乏症

ビタミン欠乏症は,透析に関連した水溶性ビタミン(例,B,C,葉酸)の喪失に起因し,総合ビタミン剤の連日服用で補充可能である。

カルシフィラキシス

カルシフィラキシスは,全身性に動脈石灰化が生じるまれな疾患であり,体幹,殿部,および下肢局所の脂肪および皮膚に虚血および壊死が引き起こされる。原因は不明であるが,副甲状腺機能亢進症,ビタミンD補充,カルシウム及びリン(PO4)濃度の上昇が一因であると考えられている。臨床的には疼痛を伴い紫色を帯びた紫斑性の局面および小結節が生じ,それらが潰瘍化して,痂皮を形成し,感染を起こす。しばしば致死的である。治療は通常,支持療法である。透析終了時にチオ硫酸ナトリウムを週3回静脈内投与するとともにカルシウム × PO4の血清値の積を低下させるための積極的な努力によって顕著な改善がもたらされた症例がいくつか報告されている。

便秘

便秘 便秘 便秘は,排便が困難,排便回数が少ない,便が硬い,残便感がある状態である。(小児の便秘も参照のこと。) 排便ほど変化に富み,外部の影響を受けやすい身体機能はない。排便習慣は人によって大幅に異なり,年齢,生理機能,食事,社会的および文化的影響を受ける。何の根拠もなく排便習慣のことばかり考えている人もいる。欧米では,正常な排便回数は2~3回/日から2~3回/週である。 多くの人が,毎日排便がなければならないと誤解し,排便回数がそれよりも少なけ... さらに読む は,長期RRTにおける軽度ではあるが煩わしい側面であり,腸管の拡張がもたらされるため,腹膜透析でカテーテルドレナージが妨げられる場合がある。多くの患者は,浸透圧性下剤(例,ソルビトール)または膨張性下剤(例,サイリウム)を必要とする。マグネシウム(例,水酸化マグネシウム)またはリン(例,Fleet enema)を含有する緩下薬の使用は避けるべきである。

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