細線維性糸球体腎炎とイムノタクトイド糸球体症は関連疾患と考える専門家もいる。これらの疾患は腎生検の約0.6%で発見され,男女差なく発生し,これまで10歳以上の患者で報告されている。診断時の平均年齢は約45歳である。機序は不明であるが,免疫グロブリン,特にIgGのκおよびλ軽鎖ならびに補体(C3)の沈着から,免疫系の機能障害が示唆される。患者はがん,異常タンパク血症,クリオグロブリン血症,形質細胞疾患,C型肝炎, 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは,自己免疫を原因とする慢性,多臓器性,炎症性の疾患であり,主に若年女性に起こる。一般的な症状としては,関節痛および関節炎,レイノー症候群,頬部などの発疹,胸膜炎または心膜炎,腎障害,中枢神経系障害,血球減少などがある。診断には,臨床的および血清学的な基準が必要である。重症で進行中の活動性疾患の治療には,コルチコステロイドおよび免疫抑制薬を必要とする。 全症例のうち,70~90%が女性(通常妊娠可能年齢)に起こる。... さらに読む を併発する場合があり,あるいは全身性疾患の所見を伴わない原発性腎疾患を有することもある。特にイムノタクトイド糸球体腎炎は,一般的に 慢性リンパ性白血病 慢性リンパ性白血病(CLL) 慢性リンパ性白血病(CLL)は,表現型的に成熟した悪性Bリンパ球が進行性に蓄積していくことを特徴とする。本疾患の原発部位としては,末梢血,骨髄,脾臓,およびリンパ節がある。症状および徴候は,認められない場合もあるが,リンパ節腫脹,脾腫,肝腫大,疲労,発熱,盗汗,意図しない体重減少,早期満腹感などが認められる場合もある。診断は末梢血でのフローサイトメトリーおよび細胞表面マーカー検査による。治療は症状が現れるまで待機し,一般に化学療法と免疫... さらに読む および B細胞リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫は,網内系およびリンパ系から発生する不均一な一群の腫瘍である。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別される( ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の比較の表を参照)。 リンパ腫はかつて, 白血病とは全く異なる疾患と考えられていた。しかし現在では,細胞マーカーとそれらのマーカーを評価するツールについて理解が深まったことで,これら... さらに読む と関連している。
全ての患者でタンパク尿が認められ,60%超でネフローゼレベルのタンパク尿である。顕微鏡的血尿が患者の約60%, 高血圧 高血圧 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む が約70%で認められる。診察時に腎機能不全を有する患者は50%をわずかに上回る。
診断
腎生検
診断は臨床検査値によって示唆され,腎生検によって確定される。 ネフローゼ症候群 ネフローゼ症候群の概要 ネフローゼ症候群では,糸球体疾患が原因で尿タンパク排泄量が3g/日を超え,これに浮腫および低アルブミン血症が伴う。小児でより多くみられ,原発性および続発性いずれの原因もある。診断は随時尿検体の尿タンパク/クレアチニン比測定または24時間蓄尿での尿タンパクの測定により,原因は病歴,身体診察,血清学的検査,腎生検に基づき診断される。予後および治療は原因によって異なる。 ( 糸球体疾患の概要も参照のこと。)... さらに読む が認められる場合は,他のネフローゼ症候群の症例と同様の検査を施行する。
尿検査では通常, 腎炎症候群 腎炎症候群の概要 腎炎症候群は,血尿および様々な程度のタンパク尿を認め,かつ尿沈渣の鏡検で通常は変形赤血球を,さらにしばしば赤血球円柱を認める場合として定義される。しばしば,浮腫,高血圧,血清クレアチニン値上昇,乏尿のうち1つ以上の要素が認められる。原因は原発性および続発性のいずれもある。診断は,病歴,身体診察,ときには 腎生検に基づく。治療および予後は原因によって異なる。 ( 糸球体疾患の概要も参照のこと。)... さらに読む とネフローゼ症候群の特徴が認められる。
通常,血清C3およびC4が測定され,ときに低下している。
生検検体の光学顕微鏡検査では,無定形の好酸性沈着物と軽度のメサンギウム細胞増殖によりメサンギウム領域の拡大を認める。様々な他の変化が光学顕微鏡検査で認められる可能性がある(例,半月体形成,膜性増殖性パターン)。コンゴレッド染色では,アミロイドは陰性である。免疫染色では,沈着物の領域にIgGおよびC3,ときにκおよびλ軽鎖が示される。
電子顕微鏡検査では,細胞外の伸長した非分岐性のミクロフィブリルまたは微小管で構成された糸球体沈着物を認める。細線維性糸球体腎炎では,ミクロフィブリルおよび微小管の直径は20~30nmである。イムノタクトイド糸球体腎炎では,ミクロフィブリルおよび微小管の直径は30~50nmである。それに対し,アミロイドーシスでは原線維は8~12nmである。
細線維性糸球体腎炎からイムノタクトイドの鑑別は,一部の専門家は沈着物中の微小管(より小型のミクロフィブリルではなく)構造の存在によって行い,他の専門家は関連する全身性疾患がイムノタクトイド糸球体腎炎では存在することによって行う。例えば,リンパ増殖性疾患,単クローン性免疫グロブリン血症,クリオグロブリン血症,または 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは,自己免疫を原因とする慢性,多臓器性,炎症性の疾患であり,主に若年女性に起こる。一般的な症状としては,関節痛および関節炎,レイノー症候群,頬部などの発疹,胸膜炎または心膜炎,腎障害,中枢神経系障害,血球減少などがある。診断には,臨床的および血清学的な基準が必要である。重症で進行中の活動性疾患の治療には,コルチコステロイドおよび免疫抑制薬を必要とする。 全症例のうち,70~90%が女性(通常妊娠可能年齢)に起こる。... さらに読む は,イムノタクトイド糸球体腎炎を示唆する。
予後
病態は通常,腎機能不全とともに緩徐に進行し,患者の50%で2~4年以内に 末期腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む に進行する。より急速な低下の予測因子は, 高血圧 高血圧 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む
,ネフローゼレベルのタンパク尿,および診察時の腎機能不全の存在である。
治療
エビデンスはないものの,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB),免疫抑制薬および/またはコルチコステロイドを考慮する
特異的な治療法を裏付けるエビデンスはないものの,タンパク尿を低下させるためACE阻害薬およびARBを使用することができる。免疫抑制薬は,症例報告のエビデンスに基づいて使用されているものの,中心的な治療法ではなく,血清補体価が低下している場合はコルチコステロイドの方がより効果が大きくなる可能性がある。本疾患は移植後に再発する場合がある。