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免疫グロブリンA腎症

(IgA腎症;ビュルガー病)

執筆者:

Navin Jaipaul

, MD, MHS, Loma Linda University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 1月
本ページのリソース

IgA腎症は,糸球体にIgA免疫複合体が沈着する病態であり,臨床的には緩徐に進行する血尿およびタンパク尿のほか,しばしば腎機能不全を生じる。診断は尿検査と腎生検に基づく。予後は一般に良好である。治療選択肢としては,ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,コルチコステロイド,免疫抑制薬,ω-3多価不飽和脂肪酸(魚油)などがある。

IgA腎症は腎炎症候群であり,糸球体へのIgA免疫複合体の沈着を特徴とする慢性糸球体腎炎 慢性糸球体腎炎 腎炎症候群は,血尿および様々な程度のタンパク尿を認め,かつ尿沈渣の鏡検で通常は変形赤血球を,さらにしばしば赤血球円柱を認める場合として定義される。しばしば,浮腫,高血圧,血清クレアチニン値上昇,乏尿のうち1つ以上の要素が認められる。原因は原発性および続発性のいずれもある。診断は,病歴,身体診察,ときには腎生検に基づく。治療および予後は原因によって異なる。 (糸球体疾患の概要も参照のこと。)... さらに読む の一病型である。世界的に最も頻度の高い病型の糸球体腎炎である。いずれの年齢層でも起こり,発症のピークは10代から20代であり,発生率は女性より男性で2~6倍高く,黒人と比較して白人およびアジア系に多い。IgA腎沈着の有病率は米国で5%,南欧とオーストラリアで10~20%,アジアで30~40%と推定される。しかしながら,IgA沈着がみられる人々の一部は臨床的な疾患を発症しない。

原因は不明であるが,以下のような複数の機序が存在する可能性がエビデンスから示唆されている:

  • IgA1産生の増加

  • IgA1グリコシル化の欠陥によるメサンギウム細胞への結合の増加

  • IgA1クリアランスの低下

  • 粘膜免疫系の欠陥

  • メサンギウム細胞の増殖を促進するサイトカインの過剰産生

家族内集積性もまた認められ,少なくとも一部の症例における遺伝因子が示唆される。

腎機能は初期においては正常であるが,症候性腎疾患が発生する場合がある。少数の患者で急性腎障害 急性腎障害(AKI) 急性腎障害は,数日間から数週間で腎機能が急速に低下する病態であり,これにより,尿量減少の有無にかかわらず,血中に窒素化合物が蓄積する(高窒素血症)。原因は重度の外傷,疾患,または手術による腎臓の灌流低下である場合が多いが,ときに急速進行性の内因性の腎疾患に起因する場合もある。症状としては,食欲不振,悪心,嘔吐などがある。無治療の場合,痙攣... さらに読む 慢性腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 慢性腎臓病 重度の高血圧 高血圧緊急症 高血圧緊急症は,標的臓器(主に脳,心血管系,および腎臓)障害の徴候を示す重症高血圧である。診断は血圧測定,心電図,尿検査,血清BUNおよびクレアチニンの測定による。治療法は,静注薬(例,クレビジピン[clevidipine],フェノルドパム[fenoldopam],ニトログリセリン,ニトロプルシド,ニカルジピン,ラベタロール,エスモロール,ヒドララジン)を用いた迅速な降圧である。... さらに読む ネフローゼ症候群 ネフローゼ症候群の概要 ネフローゼ症候群では,糸球体疾患が原因で尿タンパク排泄量が3g/日を超え,これに浮腫および低アルブミン血症が伴う。小児でより多くみられ,原発性および続発性いずれの原因もある。診断は随時尿検体の尿タンパク/クレアチニン比測定または24時間蓄尿での尿タンパクの測定により,原因は病歴,身体診察,血清学的検査,腎生検に基づき診断される。予後および治療は原因によって異なる。 (糸球体疾患の概要も参照のこと。)... さらに読む が認められる。

症状と徴候

最も頻度の高い臨床像は,持続性もしくは再発性の肉眼的血尿または軽度のタンパク尿を伴う無症候性の顕微鏡的血尿である。側腹部痛および微熱が急性エピソードに伴うことがある。その他の症状は通常顕著ではない。

肉眼的血尿は,通常発熱を伴う粘膜疾患(上気道,副鼻腔,腸管)の1日後または2日後に始まり,血尿の出現が早いこと(発熱と同時またはその直後)を除けば,急性感染後糸球体腎炎に類似する。これが上気道疾患とともに起こる場合,synpharyngitic hematuriaと呼ばれることもある。

患者の約10%未満で,最初の臨床像は急速進行性糸球体腎炎となる。

診断

  • 尿検査

  • ときに腎生検

診断は以下のいずれかにより示唆される:

  • 肉眼的血尿,特に発熱を伴う粘膜疾患から2日以内または側腹部痛を伴う場合

  • 尿検査により偶然見つかった所見

  • ときに,急速進行性糸球体腎炎

臨床像が中等度から重度である場合,診断は生検により確定される。

尿検査では顕微鏡的血尿が示され,通常は変形赤血球およびときに赤血球円柱を伴う。軽度のタンパク尿(1g/日未満)が典型的で,血尿を伴わない場合があり,ネフローゼ症候群が患者の20%以下で発生する。血清クレアチニン値は通常正常である。

腎生検では,巣状の分節性増殖性病変または壊死性病変を伴う拡大したメサンギウム領域内に,IgAと補体(C3)の顆粒状沈着が蛍光抗体染色法で示される。重要な点として,メサンギウム領域のIgA沈着は非特異的であり,他の多くの疾患でも起こり,具体的にはIgA血管炎 IgA血管炎(IgAV) IgA血管炎(以前はヘノッホ-シェーンライン紫斑病と呼ばれた)は主に小型の血管を侵す血管炎である。小児に最も多く生じる。一般的な症状としては,触知可能な紫斑,関節痛,消化管の症候,糸球体腎炎などがある。小児では診断を臨床的に行うが,成人では通常は生検が必要である。通常,小児では自然治癒し,成人では慢性化する。コルチコステロイドで関節痛および消化管症状を低減できるが,疾患の経過が変わることはない。進行性糸球体腎炎は,高用量コルチコステロイ... さらに読む IgA血管炎(IgAV) ,肝硬変,炎症性腸疾患,セリアック病,乾癬,HIV感染症,肺癌,いくつかの結合組織疾患などがある。

糸球体のIgA沈着はIgA血管炎の主要な特徴であり,生検ではIgA腎症との鑑別が不可能な場合もあることから,IgA血管炎はIgA腎症の全身性の病型ではないかとの疑いがもたれている。しかしながら,IgA血管炎は臨床的にIgA腎症と異なり,通常は血尿,紫斑状の発疹,関節痛,および腹痛を呈する。

その他の血清免疫学的検査は通常は必要ない。補体価は通常正常である。血漿IgA濃度は上昇する場合があり,循環血中にIgAフィブロネクチン複合体が認められるが,これらの所見は診断の助けにならない。

予後

IgA腎症は通常緩徐に進行し,15~20%の患者で10年以内に腎機能不全および高血圧が発生する。末期腎臓病への進行は20年後に患者の25%で起こる。IgA腎症が小児期に診断された場合,予後は通常良好である。しかしながら,持続性の血尿は常に高血圧,タンパク尿および腎機能不全をもたらす。腎機能の進行性増悪の危険因子としては以下のものがある:

  • タンパク尿が1g/日を超える

  • 血清クレアチニン値上昇

  • コントロール不良の高血圧

  • 持続性顕微鏡的血尿

  • 糸球体または間質の広範な線維性変性

  • 生検での半月体

治療

  • しばしば高血圧,血清クレアチニン値1.2mg/dL超,顕性アルブミン尿(尿タンパク300mg/日超)に対するACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬,目標尿タンパクは500mg/日未満

  • タンパク尿の増強(特にネフローゼレベル)や血清クレアチニン値の上昇を含めた進行性疾患に対するコルチコステロイド

  • 増殖性の傷害または急速進行性糸球体腎炎に対するコルチコステロイドおよびシクロホスファミド

  • 可能な場合は透析ではなく移植

血圧は正常で腎機能にも異常がなく(血清クレアチニン1.2mg/dL未満),軽度のタンパク尿(0.5g/日未満)のみを呈する患者には,通常,アンジオテンシン阻害(ACEiまたはARBによる)およびω-3脂肪酸(魚油)以外の治療は行わない。腎機能不全やより重度のタンパク尿および血尿がみられる患者には,通常は治療を行うが,理想的には有意な腎機能不全が生じる前に開始すべきである。

IgA腎症におけるアンジオテンシン阻害

ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬は,血圧およびタンパク尿を低下させ,糸球体線維症を軽減させるという仮定の下に使用されている。ACE遺伝子がDD遺伝子型を有する患者は疾患の進行リスクが高いと考えられるが,ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬に反応する可能性も高いと考えられる。高血圧患者では,たとえ慢性腎臓病が比較的軽度であっても,ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬が第1選択の降圧薬である。

IgA腎症におけるコルチコステロイドおよび免疫抑制薬

コルチコステロイドは長年使われてきたが,有益性は十分に実証されていない。あるプロトコルでは,メチルプレドニゾロン1g,静注,1日1回,3日間の投与を1,3,5カ月目の最初に行い,加えてプレドニゾンを0.5mg/kg,経口,隔日で6カ月間投与する。別のレジメンでは,プレドニゾンを1mg/kg,経口,1日1回で開始し,6カ月間かけて漸減する。

有害作用のリスクのため,おそらくコルチコステロイドは以下の患者にのみ使用すべきである:

  • 増悪または持続するタンパク尿(1g/日超),特にACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬の最大用量による治療にもかかわらずネフローゼレベルの場合

  • 血清クレアチニン値の上昇

コルチコステロイドおよびシクロホスファミドの静脈内投与と経口プレドニゾンの併用が,増殖性または半月体形成性(急速進行性)腎症などの重度の疾患に対して使用される。ミコフェノール酸モフェチルに関するエビデンスは矛盾しており,第1選択の治療として使用すべきではない。しかしながら,これらの薬剤はいずれも移植患者における再発を予防しない。進行した線維性腎疾患は不可逆的であり,これらの患者では免疫抑制療法は避けるべきである。

その他の治療法

ω3多価不飽和脂肪酸(例,4~12g/日)は魚油サプリメントとして利用可能であり,IgA腎症の治療に用いられてきたが,効力に関するデータは矛盾している。作用機序には炎症性サイトカインの変化が含まれると考えられる。

IgA過剰産生を低下させ,メサンギウム増殖を阻害するためのその他の介入が試みられている。グルテン,乳製品,卵,および肉を排除した食事,扁桃摘出術,ならびに免疫グロブリン投与(1g/kg,静注,2日/月,3カ月間に続いて0.35mL/kg[16.5%溶液],筋注,2週毎,6カ月間)は,いずれも理論的にはIgA産生を減少させる。in vitroでのメサンギウム細胞阻害薬の例をわずかだけ挙げるなら,ヘパリン,ジピリダモール,スタチン系薬剤がある。これらの介入のいずれに関しても,裏付けるデータは限定的か存在せず,ルーチン治療として推奨できるものはない。

腎移植は透析に比べ長期無病生存率が良好であることから望ましい。移植片レシピエントの15%以下で病態が再発する。

要点

  • IgA腎症は糸球体腎炎の原因として世界的に最も頻度が高く,若年成人,白人,アジア人でよくみられる。

  • 原因不明の糸球体腎炎の徴候を示す患者,特に発熱を伴う粘膜疾患から2日以内の発生または側腹部痛を伴う患者では,本症を考慮する。

  • クレアチニン値1.2mg/dL超,またはタンパク尿300mg/日超の患者は,ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬で治療する。

  • 最大用量のACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬を用いた治療にもかかわらず腎機能またはタンパク尿が悪化する(1g/日超)患者に対してのみコルチコステロイドを用いる。

  • 増殖性の傷害または急速進行性糸球体腎炎の患者は,コルチコステロイドおよびシクロホスファミドで治療する。

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