勃起障害

(インポテンツ;ED)

執筆者:Masaya Jimbo, MD, PhD, Thomas Jefferson University Hospital
Reviewed ByLeonard G. Gomella, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 9月
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勃起障害とは,性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できない状態である。大半の勃起障害は血管,神経,精神,または内分泌疾患に関連したものであり,さらに薬剤使用も原因となりうる。評価は典型的には基礎疾患のスクリーニングとテストステロン濃度の測定である。治療選択肢としては,ホスホジエステラーゼ阻害薬の服用,尿道坐薬,海綿体注射,陰圧式勃起補助具,外科的インプラントなどがある。

男性の性機能および性機能障害の概要も参照のこと。)

勃起障害(ED)とは,性行為を行うのに十分な勃起を達成または持続できない状態である。EDの有病率は加齢とともに上昇し,50歳以上では半数以上の男性にみられる(1)。EDは患者の精神的な健康状態や対人関係を著しく損なう。

参考文献

  1. 1.Mark KO, Arenella K, Girard A, et al: Erectile dysfunction prevalence in the United States: Report from the 2021 National Survey of Sexual Wellbeing.J Sex Medicine 21(4):296-303, 2024.https://doi.org/10.1093/jsxmed/qdae008

勃起障害の病因

勃起障害(ED)には以下の2つの病型がある:

  • 原発性ED:過去に勃起を達成または維持できたことが一度もない場合

  • 続発性ED:以前は勃起可能であった男性が後になって発症する場合

原発性EDはまれであり,ほぼ常に心理的因子または臨床的に明らかな解剖学的異常に起因する。

続発性EDは比較的頻度が高く,全症例の90%以上で器質的な病因が存在する。続発性EDのある多くの男性では,反応性の心理的問題が発生し,問題を複雑化させる(1)。

心理的因子は全てのED症例で考慮する必要がある。原発性EDの心理的原因には,罪悪感,親密性に対する恐怖,抑うつ,不安などがある。続発性EDでは,性的能力に関する不安,ストレス,または抑うつが原因に関連している可能性がある。心因性EDは,特定の場所,時間,またはパートナーなどが関係する状況に応じて生じることがある。

EDの主な器質的原因は生理的なものである:

  • 血管疾患

  • 神経疾患

最も頻度の高い血管性の原因は陰茎海綿体動脈の動脈硬化であり,これは喫煙,内皮機能障害,および糖尿病が原因である場合が多い。動脈硬化と加齢によって動脈血管の拡張能と平滑筋の弛緩能が低下することで,陰茎に流入できる血液の量が制限される(男性の性機能および性機能障害の概要:勃起を参照)。内皮機能障害は,血流を増加させる必要がある場合に血管拡張能を低下させる,小細動脈の内膜の疾患である。内皮機能障害は一酸化窒素濃度の低下が関与しているようであり,喫煙,糖尿病,および/またはテストステロン低値に起因する可能性がある。静脈の閉鎖機能障害により静脈から血液が流出する結果,勃起の維持が不能になる。

持続勃起症は通常,トラゾドンの使用,コカイン使用症,鎌状赤血球症,または勃起障害に対して使用される海綿体注射が関連しているが,陰茎の線維化を引き起こし,陰茎海綿体の線維化と,それによる勃起に必要な陰茎血流の阻害によってEDに至る可能性がある。

神経性の原因には,脳卒中,複雑部分発作,多発性硬化症,末梢神経障害および自律神経性ニューロパチー,脊髄損傷などがある。糖尿病性神経障害と外科的損傷が特に頻度の高い原因である。

骨盤内手術(例,前立腺全摘除術[神経温存手術の場合も含む],根治的膀胱摘除術,直腸癌手術)の合併症もまた頻度の高い原因である。ときに経尿道的前立腺切除術が原因となることがある。その他の原因としては,内分泌疾患(原発性または続発性性腺機能低下症),薬剤,骨盤放射線照射,陰茎の器質的疾患(例,ペロニー病)などがある。長時間にわたる会陰部の圧迫(サイクリング中に生じるものなど)や骨盤または会陰部外傷がEDの原因となることがある。

内分泌障害または加齢に伴うテストステロン欠乏症(性腺機能低下症)があると,性欲の減少とEDが生じることがある。しかしながら,血清テストステロン濃度の正常化により勃起機能が改善することはまれで,これはED患者の大半には神経血管性の原因も存在するためである。

多くの薬剤が原因となりうる(勃起障害を引き起こす可能性のある一般的な薬剤の表を参照)。アルコールは一過性のEDを引き起こすことがある。

病因論に関する参考文献

  1. 1.Allen MS, Wood AM, Sheffield D: The psychology of erectile dysfunction.Current Directions Psychol Sci 32(5), 2023.doi: 10.1177/09637214231192269

勃起障害の診断

  • 臨床的評価

  • うつ病のスクリーニング

  • テストステロン濃度

評価では,薬剤使用歴(処方薬およびハーブ製品を含む),飲酒歴,骨盤内手術および外傷,喫煙,糖尿病,高血圧,ならびに動脈硬化症の病歴と,血管疾患,内分泌疾患,神経疾患,および精神疾患の症状を対象に含めるべきである。パートナーとの相互関係やパートナー側の性機能障害(例,外陰腟萎縮,性交痛,うつ病)の評価を含めて,性的関係の満足度も検討すべきである。

うつ病のスクリーニングが不可欠であり,うつ病は常に顕性とは限らない。ベック抑うつスケール(Beck Depression Scale)または高齢者ではYesavageの高齢者用抑うつスケール(高齢者用抑うつスケール(短縮版)(Geriatric Depression Scale[Short Form])の表を参照)が容易に実施でき,有用となりうる。

診察では,性器に加えて,内分泌疾患,神経疾患,および血管疾患の性器外の徴候に焦点を置く。性器を診察して,形成異常,性腺機能低下症の徴候(例,精巣萎縮),および線維帯または線維性硬結(ペロニー病)がないか確認する。直腸の緊張不良,会陰感覚の低下,球海綿体反射の異常は,神経機能障害を示唆している可能性がある。末梢での脈拍の減少は血管機能障害を示唆する。

健康な若年男性が勃起障害(ED)を突然発症した場合,特に発症が特定の感情的事象と関連するか,特定の条件でのみ機能障害が生じる場合は,心理的原因を疑うべきである。自然な改善を伴うEDの病歴も心理的な起源(心因性ED)を示唆する。心因性EDの男性は通常,夜間および起床時の勃起は正常であるのに対し,器質的EDの男性ではこれらの勃起も異常である場合が多い。

注意すべき点として,血管性のEDはしばしば心血管疾患の最初の徴候であることがある。そのため,新たに血管性のEDを発症した患者は,未診断の血管疾患について評価するために心臓専門医に紹介するべきである。

表&コラム
表&コラム

検査

臨床検査に午前のテストステロン濃度の測定を含めるべきであり,その値が低値または正常低値である場合は,プロラクチンおよび黄体形成ホルモン(LH)を測定すべきである。臨床的な疑いに基づき,不顕性糖尿病,脂質異常症,高プロラクチン血症,甲状腺疾患,およびクッシング症候群の評価を行うべきである。

現在では,陰茎の血管構造を評価するため,プロスタグランジンE1,パパベリン,およびフェントラミンの混合剤などの血管拡張薬を海綿体に注射してからduplex法による超音波検査を行う方法が最も頻用されている。正常値は収縮期最大血流速度 > 25cm/秒,拡張末期血流速度 < 5cm/秒,抵抗指数 > 0.8などである。抵抗指数(resistive index)とは,収縮期最大血流速度と拡張末期血流速度の差を収縮期最大血流速度で割った値である。

まれに,骨盤外傷後に陰茎血行再建術が考慮されている患者の一部では,骨盤動脈造影,海綿体造影,および海綿体内圧測定が施行されることがある。

健康な男性では睡眠に同調した勃起現象が数回生じる。このような勃起現象は,夜間陰茎勃起現象記録装置により測定することで,勃起障害の器質的な病因と心因性の病因を鑑別するのに役立つ可能性がある。

勃起障害の治療

  • 基礎的な原因の治療

  • 薬剤,通常は経口ホスホジエステラーゼ阻害薬(勃起障害に対する経口ホスホジエステラーゼ5阻害薬の表を参照)

  • 陰圧式勃起補助具の使用または自己投与での海綿体注射(ICI)もしくはプロスタグランジンE1の尿道内投与(第2選択の治療法)

  • 他の治療法が無効に終わった場合は,陰茎プロステーシスの外科的移植

  • 適応に応じてセックスセラピー

基礎にある器質的疾患(例,糖尿病プロラクチン産生下垂体腺腫性腺機能低下症ペロニー病)に対する適切な治療が必要である。勃起障害(ED)の発症と時間的関連性が認められる薬剤は中止または切り替えるべきである。うつ病の治療が必要になる場合もある。全例において,患者を(可能であれば常に患者のパートナーも)安心させ教育することが重要である。医師はこの機会を利用して行動変容(例,食習慣の変更および体重の減量)について話し合うべきである。

さらなる治療として,使用が容易で安全性プロファイルが良好であることから,典型的には経口ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬をまず試みる。PDE阻害薬による治療が無効に終わるか,副作用のために忍容性不良となる場合は,他の治療法(陰圧式勃起補助具[VED],プロスタグランジンの尿道内投与,海綿体注射など)を用いてもよい。

勃起障害の軽症例に対しては,低強度衝撃波療法(low-intensity shockwave therapy:Li-SWT)が新たな治療法となっている。理論的には,この治療は海綿体の線維化を制限し,血管新生を刺激することによって効果を発揮する。

心因性EDの男性では,セックスセラピーを治療の中心とすべきである。

勃起障害に対する薬剤

EDに対する第1選択の治療は通常,ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬の服用である。そのほかに用いられる薬剤としては,プロスタグランジンE1の尿道内投与や,パパベリンとフェントラミンの配合剤またはプロスタグランジンE1,パパベリン,フェントラミンの配合剤の海綿体注射などがある。しかしながら,ほぼ全ての患者が経口療法を希望するため,経口薬の禁忌があるか経口投与に耐えられない場合を除き,経口薬が使用される。

経口PDE阻害薬は,陰茎内で多く存在するホスホジエステラーゼの異性体である,cGMP(サイクリックグアノシン一リン酸)特異的なホスホジエステラーゼ5型(PDE5)を選択的に阻害する。この種の薬剤としては,シルデナフィル,バルデナフィル,アバナフィル(avanafil),タダラフィルなどがある(勃起障害に対する経口ホスホジエステラーゼ5阻害薬の表を参照)。これらの薬剤は,cGMPの加水分解を妨げることにより,正常の勃起に不可欠であるcGMP依存的な平滑筋弛緩を促進する。バルデナフィルとタダラフィルは,シルデナフィルと比較して陰茎の血管構造に対する選択性が高いが,臨床的な反応と有害作用はこれらの薬剤間で同様である。比較臨床試験では,これらの薬剤は同等の効力を示している(60~75%)(1)。

表&コラム
表&コラム

いずれのPDE5阻害薬も冠動脈の血管拡張を直接引き起こし,冠動脈疾患の治療に使用される硝酸薬の降圧作用を増強する。硝酸薬とPDE5阻害薬の併用は危険となる可能性があり,禁忌である。硝酸薬を時折使用するのみ(例,まれに起きる狭心症発作に対する使用)の患者では,PDE5阻害薬を使用した場合のリスク,選択,および適切な使用時期について心臓専門医と話し合うべきである。

PDE5阻害薬の有害作用としては,紅潮,視覚異常,難聴,ディスペプシア,頭痛などがある。シルデナフィルとバルデナフィルは色覚異常(青視症)を引き起こす可能性がある。タダラフィルの使用に筋肉痛との関連が報告されている。まれに,非動脈炎性虚血性視神経症(NAION)とPDE5阻害薬の使用が関連づけられた症例が報告されているが,これらの因果関係は確立されていない。いずれのPDE5阻害薬についても,α遮断薬(例,プラゾシン,テラゾシン,ドキサゾシン,タムスロシン)を使用中の患者では血圧低下のリスクがあることから,慎重に投与し,低用量から開始すべきである。α遮断薬を服用した患者は,PDE5阻害薬を使用するまで少なくとも4時間は待つべきである。まれに,PDE5阻害薬は持続勃起症を引き起こす。

アルプロスタジル(プロスタグランジンE1)は,尿道内挿入または海綿体注射により自己投与され,平均で30~60分間持続する勃起を惹起することができる。アルプロスタジルの海綿体注射では,必要に応じて効力を高めるため,パパベリンおよびフェントラミンを配合してもよい。過量投与により,1%以下の患者で持続勃起症が,約10%で性器痛または骨盤痛が引き起こされる可能性がある。医師による診察室での指導とモニタリングが至適かつ安全な使用の実現に役立つが,これには,海綿体の不可逆的線維化や完全なEDのリスクを低減するための迅速な介入を必要とする泌尿器の緊急事態である持続勃起症のリスクを最小化することも含まれる。満足できる勃起を得るという点で,尿道内療法の効果は海綿体注射よりも低い。経口PDE5阻害薬による単剤療法に反応しない一部の患者では,PDE5阻害薬の服用とアルプロスタジルの尿道内投与の併用療法が有用となりうる。

補助器具および手技

勃起を達成できるが(例,静脈の閉鎖機能障害のために)維持ができない男性では,勃起の維持を補助する目的で絞扼リングを使用することができ,勃起した陰茎の基部に弾性リングを装着することで,早期の勃起消失を回避することができる。勃起を達成できない男性では,まず陰圧式勃起補助具により陰茎内に血液を吸引してから,陰茎の基部に弾性リングを装着して勃起を維持する方法が可能である。この方法の欠点として,陰茎の挫傷,陰茎先端部の冷感,自然さの欠如などがある。これらの器具は,必要に応じてPDE5阻害薬と併用することも可能である。

低強度衝撃波療法(Li-SWT)は,理論的に海綿体の線維化を制限するとされ,勃起障害の治療法として研究段階にある(2)。

勃起障害に対する手術

EDには手術以外にも多くの治療法が存在するが,それらは中等度から重度のEDには無効であったり,実際的でなかったりすることがある。そのような患者には,陰茎プロステーシス手術が効果的な選択肢となる可能性があり,全てのED治療の中で患者およびパートナーの満足度が最も高くなる(3)。プロステーシスとしては,半剛体のシリコン製ロッドや,食塩水が充填されたマルチコンポーネントの膨張型器具などがある。どちらのモデルの移植にも同じリスクがある(例,全身麻酔に伴うリスク,術後感染の可能性,プロステーシスの侵食または機能不全に関連したリスク)。経験豊富な外科医が執刀する場合,初回の陰茎プロステーシス手術における感染の長期発生率は,研修医が手術に関与した場合を含めても,5%を大きく下回る水準となっている(4)。

プロステーシスの外科的移植の利点は明確であり,勃起が速やかかつ自発的に生じ,患者が装置を収縮させるまで勃起が持続し,カップルが望む頻度で性行為を行うことができる。ただし,陰茎プロステーシス手術を行う前には,この手術の主な短所(侵襲的手術の必要性,その不可逆性,再手術を必要とする機械的故障の可能性,感染や器具の侵食などの術後合併症の可能性)を慎重に考慮すべきである。

治療に関する参考文献

  1. 1.Tsertsvadze A, Fink HA, Yazdi F, et al: Oral phosphodiesterase-5 inhibitors and hormonal treatments for erectile dysfunction: A systematic review and meta-analysis.Ann Intern Med 151(9):650-661, 2009.doi: 10.7326/0003-4819-151-9-200911030-00150

  2. 2.Chung E, Cartmill R: Evaluation of long-term clinical outcomes and patient satisfaction rate following low intensity shock wave therapy in men with erectile dysfunction: A minimum 5-year follow-up on a prospective open-label single-arm clinical study.Sex Med 9(4):100384, 2021.doi: 10.1016/j.esxm.2021.100384.

  3. 3.Bettocchi C, Palumbo F, Spilotros M, et al: Patient and partner satisfaction after AMS inflatable penile prosthesis implant.J Sex Med 7(1 Pt 1):304-309, 2010.doi: 10.1111/j.1743-6109.2009.01499.x

  4. 4.McAbee KE, Pearlman AM, Terlecki RP: Infection following penile prosthesis placement at an academic training center remains low despite involvement of surgeons-in-training.Investig Clin Urol 59(5):342-347, 2018.doi: 10.4111/icu.2018.59.5.342

要点

  • 血管疾患,神経疾患,精神疾患,および内分泌疾患のほか,ときに薬剤の使用によって,満足できる勃起の達成が障害されることがある。

  • ED患者では,全例で内分泌疾患,神経疾患,血管疾患,およびうつ病に関する評価を行う。

  • テストステロン濃度を測定するとともに,臨床所見に基づいて他の検査を考慮する。

  • 基礎疾患を治療し,必要に応じて経口PDE5阻害薬を使用する。

  • 経口PDE5阻害薬が無効に終わるか忍容性不良となった場合は,陰圧式勃起補助具,尿道坐薬,海綿体注射,陰茎プロステーシス手術などが,EDに対する他の治療選択肢となる。

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