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精巣腫瘍

執筆者:

Viraj A. Master

, MD, PhD, Emory University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2013年 11月
本ページのリソース

精巣腫瘍は陰嚢腫瘤として発生し,通常は無痛性である。診断は超音波検査による。治療は組織型および病期によって異なり,精巣摘除術およびときにリンパ節郭清,放射線療法,化学療法,またはこれらの組合せによる。

精巣腫瘍は15~35歳の男性で最も頻度の高い固形腫瘍であり,年間約8000例が罹患するが,死亡は約400例のみである。発生率は停留精巣を呈する患者で2.5~20倍高い。この過剰リスクは,10歳未満で精巣固定術が施行された場合は低下または消失する。癌は正常に下降した対側精巣にも発生しうる。精巣腫瘍の原因は不明である。

大部分の精巣腫瘍は原始胚細胞から始まる。胚細胞腫瘍はセミノーマ(40%)または非セミノーマ(何らかの非セミノーマ性の成分を含む腫瘍)に分類される。非セミノーマには,奇形腫,胚性癌腫,内胚葉洞腫瘍(卵黄嚢腫瘍),絨毛癌などがある。組織型の混在がよくみられる(例,奇形癌腫は奇形腫と胚性癌腫を含む)。精巣の機能的間質細胞癌はまれである。

腫瘍が限局しているように見える患者でも,潜在性にリンパ節または内臓転移を来している場合がある。例えば,精巣摘除後に治療が行わない場合,非セミノーマ患者のほぼ30%がリンパ節または内臓転移により再発する。転移のリスクは,絨毛癌で最も高く,奇形腫で最も低い。

精巣上体,精巣垂,精索で発生する腫瘍は,通常は良性線維腫,線維腺腫,腺腫様腫瘍,脂肪腫である。ときに肉腫が発生し,最も頻度が高いのは横紋筋肉腫で,主に小児で認められる。

症状と徴候

大部分の患者は陰嚢腫瘤を呈し,無痛性,またはときに鈍くうずく疼痛を伴う。少数の患者では,腫瘍内への出血が急性の局所痛および圧痛をもたらすことがある。多くの患者は軽度の陰嚢外傷後に腫瘤を自分で発見する。

診断

  • 陰嚢腫瘤に対する超音波検査

  • 精巣腫瘤が存在する場合は試験切開

  • 腹部,骨盤,胸部CTならびに組織検査による病期診断

多くの患者は自己検診中に腫瘤を発見する。若年男性には月1回の自己検診を奨励すべきである。

大部分の精巣腫瘤は悪性であるのに対し,大半の精巣外腫瘤は悪性ではないため,陰嚢腫瘤の原発部位と性質を正確に決定しなくてはならないが,これら2種の身体診察中の鑑別は困難なことがある。陰嚢超音波検査により精巣由来を確認できる。精巣腫瘤が確定された場合,血清マーカーのα-フェトプロテインとβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピンを測定し,胸部X線を施行すべきである。その後は鼠径部の試験切開が適応となり,異常な精巣を操作する前には精索を露出しクランプする。

癌と確定された場合は,標準のTNM(tumor, node, metastasis)分類による臨床病期診断を行うため,腹部,骨盤,および胸部CTが必要となる( 精巣腫瘍のAJCC/TNM*病期分類および 精巣腫瘍のTNM分類および血清マーカーの定義)。治療中(通常は根治的高位精巣摘除術)に得られた組織は,重要な病理組織学的情報,特に各組織型の割合および腫瘍内への血管またはリンパ管の進入の有無について情報が得られる。これらの情報により潜在性リンパ節転移および内臓転移のリスクを予測することができる。非セミノーマ患者は,X線および血清マーカーが正常であり,限局性疾患を有しているとみられる場合にも,約30%の再発リスクを有する。セミノーマはこれらの患者の約15%で再発する。

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精巣腫瘍のAJCC/TNM*病期分類

病期

原発腫瘍

所属リンパ節転移

遠隔転移

血清腫瘍マーカー

0期

pTis

N0

M0

S0

I期

pT1~pT4

N0

M0

SX

IA期

pT1

N0

M0

S0

IB期

pT2

N0

M0

S0

pT3

N0

M0

S0

pT4

N0

M0

S0

IS期

pT/pTXは問わない

N0

M0

S1~S3

II期

pT/pTXは問わない

N1~N3

M0

SX

IIA期

pT/pTXは問わない

N1

M0

S0

pT/pTXは問わない

N1

M0

S1

IIB期

pT/pTXは問わない

N2

M0

S0

pT/pTXは問わない

N2

M0

S1

IIC期

pT/pTXは問わない

N3

M0

S0

pT/pTXは問わない

N3

M0

S1

III期

pT/pTXは問わない

Nは問わない

M1

SX

IIIA期

pT/pTXは問わない

Nは問わない

M1a

S0~S1

IIIB期

pT/pTXは問わない

N1~N3

M0

S2

pT/pTXは問わない

Nは問わない

M1a

S2

IIIC期

pT/pTXは問わない

N1~N3

M0

S3

pT/pTXは問わない

Nは問わない

M1a

S3

pT/pTXは問わない

Nは問わない

M1b

Sは問わない

*AJCC/TNMの病期分類の定義については, 精巣腫瘍のTNM分類および血清マーカーの定義を参照のこと。

Adapted from Edge SB, Byrd DR, Compton CC, et al: AJCC Cancer Staging Manual, 7th edition. New York, Springer, 2010.

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精巣腫瘍のTNM分類および血清マーカーの定義

特徴

定義

原発腫瘍

pTX

評価できない

pT0

原発腫瘍(例,精巣の瘢痕)の所見なし

pTis

精細管内胚細胞腫瘍(上皮内癌)

pT1

精巣および精巣上体に限局しており,血管およびリンパ管浸潤はない

白膜には浸潤している可能性があるが,精巣鞘膜には浸潤していない

pT2

精巣および精巣上体に限局しており,血管またはリンパ管浸潤がある;または白膜を越えて進展しており,精巣鞘膜に浸潤している

pT3

血管またはリンパ管浸潤の有無にかかわらず,精索に浸潤している

pT4

血管またはリンパ管浸潤の有無にかかわらず,陰嚢に浸潤している

所属リンパ節転移

NX

評価できない

N0

なし

N1

1つまたは複数のリンパ節に転移を認めるが,いずれも最大径が2cm以下である

N2

最大径が2cm超かつ5cm以下の1つまたは複数のリンパ節に転移を認め,その他の最大径5cm以下のリンパ節転移の有無は問わない

N3

最大径が5cmを超える1つまたは複数のリンパ節に転移を認める

遠隔転移

M0

なし

M1

あり

M1a

所属リンパ節以外のリンパ節または肺への転移を認める

M1b

所属リンパ節以外のリンパ節または肺への転移を除いた遠隔転移を認める

血清マーカー

SX

マーカーが利用不能または未測定である

S0

値が正常範囲内である

S1

LDHアッセイでLDH値 < 1.5 × 正常上限かつhCG値 < 5000mIu/mLかつAFP値 < 1000ng/mL

S2

LDHアッセイでLDH値 = 1.5~10 × 正常上限またはhCG値 = 5000~50,000mIu/mLまたはAFP値 = 1000~10,000ng/mL

S3

LDHアッセイでLDH値 > 10×正常上限またはhCG値 > 50,000mIu/mLまたはAFP値 > 10,000ng/mL

AFP = α-フェトプロテイン;AJCC = American Joint Commission on Cancer;hCG = ヒト絨毛性ゴナドトロピン;p = 病理学的病期;pT = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節(臨床的に評価);M = 遠隔転移;S = 血清腫瘍マーカー。

Data from Edge SB, Byrd DR, Compton CC, et al: AJCC Cancer Staging Manual, 7th edition. New York, Springer, 2010.

予後

予後は腫瘍の組織型と進展範囲に依存する。5年生存率は,精巣に限局したセミノーマまたは非セミノーマおよび後腹膜腔に少量の転移巣を有する非セミノーマでは95%を超える。広範な腹膜後腔転移を有する患者と肺転移またはその他の内臓転移を有する患者の5年生存率は48%(一部の非セミノーマ)から80%超であり,転移巣の部位,大きさ,および組織型にも依存するが,受診時から進行癌であった患者でも治癒の可能性がある。

治療

  • 根治的高位精巣摘除術

  • セミノーマには放射線療法

  • 非セミノーマには通常,後腹膜リンパ節郭清術

根治的高位精巣摘除術が治療の基本であり,診断に重要な情報を得る上で有用であると同時に,その後の治療計画を立てる上でも役立つ。精巣摘除術の際に,美容整形として精巣プロステーシスを埋め込むこともある。シリコン製プロステーシスは,シリコン乳房インプラントに関する問題のために普及していない。一方,生理食塩水インプラントが開発されている。放射線療法または化学療法が予測される場合,生殖能力の保持を希望する男性には精子バンクを利用できる可能性がある。

放射線療法

セミノーマに対する一側精巣摘除術後の標準治療は放射線療法であり,通常は20~40Gy(結節性の腫瘤がある患者ではより高い線量を選択する)を横隔膜までの傍大動脈領域に照射する。同側腸骨鼠径領域に対する治療は,もはやルーチンには行われていない。臨床病期に応じて,ときに縦隔および左鎖骨上領域も照射する。

リンパ節郭清術

非セミノーマに対しては,多くの専門家が後腹膜リンパ節郭清術を標準治療とみなしている。再発を予測する予後因子がない患者の臨床病期1期の腫瘍では,代替治療法は積極的なサーベイランスである(頻回の血清マーカーの測定,胸部X線,CT)。中等大の後腹膜リンパ節腫瘤を有する患者には,後腹膜リンパ節郭清および化学療法(例,ブレオマイシン,エトポシド,シスプラチン)が必要となる場合があるが,至適な順序は確立されていない。

一部の医療施設では腹腔鏡下でリンパ節郭清術が施行されている。全体としてリンパ節郭清術の最も頻度の高い有害作用は,射精障害である。しかしながら,神経温存郭清が可能であることも多く(特に早期の腫瘍),通常は射精機能を温存できる。

化学療法

5cmを超えるリンパ節腫瘤,横隔膜より上のリンパ節転移,または内臓転移に対しては,プラチナ製剤をベースとする初回併用化学療法とその後の残存腫瘤に対する手術が必要である。一般的に,このような治療により長期にわたる腫瘍制御が得られる。しばしば妊孕性が障害されるが,妊娠した場合の胎児に対するリスクは証明されていない。

サーベイランス

一部の患者ではサーベイランスが適切となるが,安全に行うには厳格なフォローアッププロトコルと患者の優れたアドヒアランスが必要であることから,多くの医師はこの選択肢を推奨しない。再発リスクの低い患者に勧められることが多い。高リスク患者には,通常は後腹膜リンパ節郭清術を施行するか,一部の施設では精巣摘除後に手術の代わりに化学療法を2コース施行している。

再発

非セミノーマの再発は通常,化学療法で治療されるが,リンパ節再発を起こしたが,内臓転移の所見は認められない一部の患者では,後腹膜リンパ節郭清を後から施行することが適切となる場合がある。サーベイランスはセミノーマほどは頻用されておらず,これは2週間の放射線療法による合併症発生率が極めて低く,遠隔期再発の予防率が非常に高いため,治療を回避する理由があまりないことによる。

要点

  • 精巣腫瘍は,15~35歳の男性では最も頻度が高い固形腫瘍であるが,しばしば治癒が可能であり,特にセミノーマでは治癒が可能である。

  • 陰嚢腫瘤を超音波検査で評価し,それが精巣であった場合は,胸部X線とα-フェトプロテインおよびβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピンの測定を行う。

  • 根治的高位精巣摘除術を施行し,通常はこれに放射線療法(セミノーマ)と後腹膜リンパ節郭清術(非セミノーマ)を併用する。

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