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陰嚢痛

執筆者:

Anuja P. Shah

, MD, David Geffen School of Medicine at UCLA

最終査読/改訂年月 2019年 6月
本ページのリソース

陰嚢痛は,新生児から高齢者に至るまで,あらゆる年齢の男性で発生する可能性がある。

病因

陰嚢痛の最も頻度の高い原因としては以下のものがある:

比較的まれな原因がいくつかある(陰嚢痛の主な原因の表を参照)。年齢,症状の発症,およびその他の所見が原因の特定に役立つ可能性がある。

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陰嚢痛の主な原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ

重度の持続的な疼痛が片側性に突然発生する

精巣挙筋反射が消失する

患側の精巣のみ非対称に水平方向を向いて挙上している

典型的には新生児と思春期後の男児に発生するが,成人でも発生しうる

精巣垂捻転(精巣上極に付着している無茎の小胞状構造物)

数日かけて亜急性に疼痛が出現する

精巣上極に疼痛を認める

精巣挙筋反射が認められる

反応性陰嚢水腫の可能性あり,blue dot sign(精巣または精巣上体の皮下に青色または黒色の斑点を認める)

典型的には7~14歳の男児に発生する

カラードプラ超音波検査

精巣上体炎または精巣精巣上体炎,通常は感染性であり,思春期後の男児および高齢男性ではグラム陰性菌に起因し,性的に活動的な男性では性感染症である

感染性でなく,射精管への尿の逆流が原因のこともある

精巣上体のほか,ときに精巣にも急性または亜急性に疼痛が発生する

頻尿排尿困難がみられることがあり,患者が最近,重い物を持ち上げたり,いきんだりしたことがある

精巣挙筋反射が認められる

しばしば陰嚢に硬結,腫脹,発赤を認める

ときに陰茎分泌物を認める

典型的には思春期後の男児と男性に発生する

尿検査および培養

淋菌(Neisseria gonorrhoeae)およびChlamydia trachomatisに対する核酸増幅検査

精管切除後,急性および慢性(精管切除後疼痛症候群)

精管切除術の既往がある

性交時,射精時,またはその両方で疼痛が生じる

労作時に疼痛が生じる

精巣上体に圧痛または緊満を認める

臨床的評価

外傷

性器外傷の明確な既往がある

しばしば腫脹がみられ,精巣内血腫または陰嚢血腫を認めることがある

カラードプラ超音波検査

鼠径ヘルニア(絞扼性)

急性または亜急性の疼痛がみられ,長期にわたる無痛性腫脹の既往がある(すでにヘルニアと診断されている場合も多い)

陰嚢腫瘤,通常は大きく圧縮でき,腸音が聴取されることもある

還納できない

臨床的評価

IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)

触知可能な紫斑(典型的には下肢および殿部),関節痛,関節炎,腹痛,腎疾患がみられる

典型的には3~15歳の男児に発生する

臨床的評価

ときに皮膚病変の生検

発熱,体重減少,腹痛,高血圧,浮腫を認める

触知可能な紫斑や皮下結節などの皮膚病変

急性のこともあれば,慢性のこともある

精巣の虚血および梗塞を引き起こすことがある

40~50歳の男性で最もよくみられる

ときに罹患臓器の生検

関連痛(腹部大動脈瘤尿路結石症,下腰神経または仙椎神経根のインピンジメント,盲腸後虫垂炎,後腹膜腫瘍,ヘルニア縫合後痛)

陰嚢の診察では正常である

原因によっては,ときに腹部圧痛を認める

診察での所見と疑われる原因から方向性を決める

精巣炎(通常はウイルス性である―例,ムンプス,風疹,コクサッキーウイルス,エコーウイルス,またはパルボウイルス感染症)

陰嚢痛,腹痛,悪心,発熱を認める

片側または両側陰嚢に腫脹および発赤を認める

急性期および回復期のウイルス価

フルニエ壊疽(会陰部の壊死性筋膜炎)

重度の疼痛,発熱,重症感(toxic appearance),発赤,水疱性または壊死性病変を認める

ときに触知可能な皮下気腫を認める

ときに最近の腹部手術の既往がある

糖尿病,末梢血管疾患,またはその両方を有する高齢男性でより頻度が高い

臨床的評価

評価

精巣捻転を放置すると,精巣の喪失につながる可能性があるため,迅速な評価,診断,および治療が必要である。

病歴

現病歴の聴取では,疼痛の部位(片側性または両側性),発症(急性または亜急性),および持続期間を明らかにすべきである。重要な随伴症状として,発熱,排尿困難,陰茎分泌物,陰嚢腫瘤の存在などがある。外傷,いきみ,重い物の挙上,性的接触などの先行事象について患者に尋ねるべきである。

システムレビュー(review of systems)では,原因疾患の症状がないか検討すべきであり,具体的には紫斑性発疹,腹痛,および関節痛(IgA血管炎[ヘノッホ-シェーンライン紫斑病]);間欠性の陰嚢腫瘤,鼠径部腫脹,またはその両方(鼠径ヘルニア);発熱および耳下腺腫脹(ムンプス精巣炎);側腹部痛または血尿(腎結石)などが挙げられる。

既往歴の聴取では,関連痛を引き起こす可能性のある既知の疾患(ヘルニア,腹部大動脈瘤,腎結石など)と重篤な疾患の危険因子(糖尿病,末梢血管疾患[フルニエ壊疽]など)を同定すべきである。

身体診察

身体診察はバイタルサインの評価と疼痛の重症度評価から始める。診察では腹部,鼠径部,および性器に焦点を置く。

腹部を診察して,圧痛および腫瘤(膀胱拡張を含む)がないか確認する。側腹部を打診して,肋骨脊柱角に圧痛がないか確認する。

鼠径部および性器の診察は,立位で行うべきである。鼠径部を視診および触診して,リンパ節腫脹,腫脹,または紅斑がないか確認する。陰茎の診察では,潰瘍,尿道分泌物,ならびにピアスおよび刺青(細菌感染症の発生源)に注意すべきである。陰嚢の診察では,非対称性,腫脹,発赤,変色,および精巣の向きと位置(水平か垂直か,高位か低位か)に注意すべきである。両側で精巣挙筋反射を検査すべきである。精巣,精巣上体,および精索を触診して,腫脹および圧痛がないか確認すべきである。腫脹を認めた場合は,嚢胞性か充実性かを判定する上での参考にするため,透光性の有無を確認すべきである。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 疼痛の突然の発症,極めて強い圧痛,高位に転位して水平方向を向いた精巣(精巣捻転)

  • 重度の疼痛,嘔吐,および便秘を伴う鼠径部または陰嚢の非還納性腫瘤(嵌頓ヘルニア)

  • 陰嚢または会陰部の発赤,壊死性または水疱性皮膚病変,および重症感(toxic appearance)(フルニエ壊疽)

  • 疼痛,低血圧,脈拍微弱,蒼白,めまい,および錯乱の突然の発生(腹部大動脈瘤破裂)

所見の解釈

直ちに治療が必要な原因をそれ以外と鑑別することに焦点を置く。臨床所見から重要な手がかりが得られる(陰嚢痛の主な原因の表を参照)。

大動脈破裂とフルニエ壊疽は主に50歳以上の患者で発生する一方,その他の直ちに治療が必要な病態は年齢を問わずに発生する。しかしながら,精巣捻転は新生児と思春期後の男児で最もよくみられ,精巣垂捻転は思春期前の男児(7~14歳)で,精巣上体炎は青年および成人で最もよくみられる。

重度の疼痛の突然の発生は,精巣捻転または腎結石を示唆する。精巣上体炎,嵌頓ヘルニア,または虫垂炎に起因する疼痛は,より緩徐に発症する。精巣垂捻転の患者では,中等度の疼痛が数日かけて発生し,疼痛の部位は上極に限局する。両側性の疼痛は感染(例,精巣炎[特に発熱およびウイルス感染症状を伴う場合])もしくは関連痛を引き起こす病態を示唆する。陰嚢に放散する側腹部痛は腎結石または(55歳以上の男性では)腹部大動脈瘤を示唆する。

陰嚢および会陰部の診察所見が正常な場合は,関連痛が示唆される。その場合は陰嚢以外の疾患,特に虫垂炎,腎結石,および(55歳以上の男性では)腹部大動脈瘤に注意を向ける必要がある。

陰嚢および会陰部の診察での異常所見から,しばしば原因が示唆される。ときに,精巣上体炎の早期には,圧痛および硬結が精巣上体に限局することがあり,また捻転の早期には,精巣が明らかに高位にあって水平方向を向いており,かつ精巣上体には特に圧痛を認めないことがある。一方で,精巣および精巣上体の両方に腫脹と圧痛がみられる場合も多く,また陰嚢浮腫が生じることで,触診では捻転と精巣上体炎を鑑別できなくなることもある。しかしながら,精巣挙筋反射は捻転では認められず,また性感染症(STD)の所見(例,膿性尿道分泌物)も同様であり,これらの所見が両方認められる場合は精巣上体炎である可能性が高い。

ときに,ヘルニアに起因する陰嚢腫瘤を鼠径管で触知できる場合があるが,それ以外の症例では,ヘルニアと精巣腫脹の鑑別が困難になることがある。

精巣および精巣上体に圧痛がなく,かつ陰嚢に疼痛および発赤がある場合は,感染症(すなわち蜂窩織炎または早期のフルニエ壊疽のいずれか)を疑うべきである。

血管炎性の発疹,腹痛,および関節痛を認める場合は,IgA血管炎結節性多発動脈炎などの全身性血管炎症候群の臨床像と一致する。

検査

通常は検査を行う。

  • 尿検査および培養(全ての患者)

  • STD検査(尿検査陽性,分泌物,排尿困難のいずれかを認める全ての患者)

  • 捻転を除外するためのカラードプラ超音波検査(他に明確な原因がない場合)

  • 所見から示唆される原因に応じて,その他の検査(陰嚢痛の主な原因の表を参照)

尿検査および培養は常に必要である。尿路感染症(UTI)の所見(例,膿尿,細菌尿)は精巣上体炎を示唆する。UTIを示唆する所見を認める患者と尿道分泌物または排尿困難がある患者には,STDの検査とUTIを引き起こす他の細菌に対する検査を行うべきである。

精巣捻転では迅速な診断が極めて重要である。所見から捻転が強く示唆される場合は,検査よりも優先して直ちに外科的探索を行う。所見が明確ではなく,他に明確な急性陰嚢痛の原因が認められない場合は,カラードプラ超音波検査を施行する。ドプラ超音波検査を施行できない場合は,核医学検査を用いてもよいが,感度および特異度はともに低くなる。

治療

治療は原因に対して行うが,具体的な対応には緊急手術(精巣捻転)から床上安静(精巣垂捻転)のみまで幅がある。精巣捻転が認められる場合は,一般に迅速な手術(受診後12時間以内)が必要となる。手術の遅延は,精巣梗塞,長期の精巣障害,または精巣の喪失につながる可能性がある。精巣の捻転を外科的に解除することで,疼痛は直ちに軽快し,同時に両側精巣固定術を施行することにより,捻転の再発を予防する。

急性疼痛の緩和には,モルヒネやその他のオピオイドなどの鎮痛薬が適応となる。細菌性精巣上体炎または精巣炎の症例には抗菌薬が適応となる。

老年医学的重要事項

精巣捻転は高齢男性ではまれであるが,発生すると通常は非典型的な臨床像を呈するため,診断の遅れが生じる。高齢男性では,精巣上体炎,精巣炎,および外傷の方がより頻度が高い。また高齢男性では,ときに鼠径ヘルニア結腸穿孔,または腎仙痛によって陰嚢痛が生じることがある。

要点

  • 急性陰嚢痛を呈する患者(特に小児および青年)では,常に精巣捻転を考慮する;迅速かつ正確な診断が不可欠である。

  • その他に頻度の高い陰嚢痛の原因は,精巣垂捻転および精巣上体炎である。

  • 診断が不確かな場合には,通常はカラードプラ超音波検査を施行する。

  • 陰嚢および会陰部の診察所見が正常な場合は,関連痛が示唆される。

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