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無痛性陰嚢腫瘤

執筆者:

Anuja P. Shah

, MD, David Geffen School of Medicine at UCLA

最終査読/改訂年月 2019年 6月
本ページのリソース

無痛性陰嚢腫瘤は,患者自身によって発見される場合が多いが,ルーチンの身体診察で偶然発見される場合もある。

陰嚢痛および陰嚢の疼痛を伴う腫瘤または腫脹は,精巣捻転,精巣垂捻転,精巣上体炎,精巣精巣上体炎,陰嚢膿瘍,外傷,絞扼性鼠径ヘルニア精巣炎,またはフルニエ壊疽が原因である可能性がある。

病因

無痛性陰嚢腫瘤には,いくつかの原因があるが(無痛性陰嚢腫瘤の主な原因の表を参照),最も頻度が高いのは以下のものである:

  • 陰嚢水腫

  • 非還納性鼠径ヘルニア

  • 精索静脈瘤(成人男性の最大20%でみられる)

比較的まれな原因としては,精液瘤,陰嚢血腫,体液過剰などがあり,ときに精巣腫瘍も原因となりうる。精巣腫瘍は無痛性陰嚢腫瘤の原因のうち最も懸念されるものである。前述の他の原因と比較するとまれであるが,40歳未満の男性では最も頻度の高い悪性固形腫瘍であり,治療に対する反応が良好であることから,速やかな発見が重要である。

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無痛性陰嚢腫瘤の主な原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ

陰嚢水腫(交通性)は通常,鼠径ヘルニア患者にみられる

嚢胞性の腫脹

起立時または腹腔内圧の上昇時に大きさが増大する

通常は先天性である

透光性を示す

臨床的評価

診断が不確かな場合は超音波検査

陰嚢水腫(非交通性)

嚢胞性の腫脹

体位または腹腔内圧が変化しても大きさが変わらない

しばしば陰嚢の異常(例,腫瘍,精巣上体炎)が併存する

透光性を示す

臨床的評価

通常は超音波検査

精液瘤

精巣上極の精巣上体近傍に嚢胞性腫瘤を認める

透光性を示す

臨床的評価

診断が不確かな場合は超音波検査

鼠径ヘルニア

起立時または腹腔内圧の上昇時に大きさが増大する

臥位により消失することがある,または還納もしくは圧縮が可能である

腸音が聴取されることがある

腫瘤上に正常な精索構造が認められない

鼠径管内に触知できることがある

臨床的評価

精索静脈瘤

起立時に触知でき(バルサルバ法でより明確になる),袋に入ったミミズのような感触を呈する

通常は左側

起立時に疼痛および緊満感を認めることがある

精巣萎縮を認めることがある

臨床的評価

陰嚢血腫

圧痛を伴う腫脹

危険因子(例,外傷,手術,出血性疾患,抗凝固薬の使用)

通常は超音波検査

体液過剰

びまん性かつ両側性の陰嚢腫大

しばしば下肢の圧痕性浮腫

しばしば原因疾患が明らかである(例,心不全,腹水)

透光性を示す

臨床的評価

診断が不確かな場合は超音波検査

リンパ浮腫(例,フィラリア症によるもの,先天性,特発性,骨盤照射後,がんの発生後[例,前立腺癌,膀胱癌,精巣腫瘍])

びまん性の陰嚢腫脹

しばしば非圧痕性である

臨床的評価

診断が不確かな場合は画像検査(CT/超音波検査)

腫瘤が精巣に付着しているか精巣の一部である

充実性である,または透光性を示さない

うずくような鈍痛または出血に起因する急性痛を伴うことがある

陰嚢の超音波検査

α-フェトプロテイン

β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン

乳酸脱水素酵素

腹部CT

評価

病歴

現病歴の聴取では,症状の持続期間,立位および腹腔内圧上昇が及ぼす影響,ならびに疼痛など関連症状の有無および特徴を評価すべきである。

システムレビュー(review of systems)では,考えられる原因を示唆する症状がないか検討すべきであり,具体的には腹痛,食欲不振,または嘔吐(間欠的絞扼を伴う鼠径ヘルニア);呼吸困難および下肢の腫脹(右心不全);腹部膨隆(腹水);性欲減退,女性化,および不妊症(両側精索静脈瘤を伴う精巣萎縮)などが挙げられる。

既往歴の聴取では,腫瘤を形成する可能性がある既存の疾患(例,右心不全,両側性リンパ浮腫をもたらす腹水),既知の陰嚢疾患(例,精巣腫瘍または精巣上体炎による陰嚢水腫),骨盤内手術または骨盤照射の既往歴,および鼠径ヘルニアを同定すべきである。

身体診察

身体診察には,浮腫を引き起こす可能性がある全身性疾患(例,心不全,腹水)の評価と鼠径部および性器の詳細な診察を含める。

鼠径部および性器の診察は,立位と臥位で行うべきである。鼠径部を視診および触診して,特に還納性の腫瘤がないか確認する。精巣,精巣上体,および精索を触診して,腫脹,腫瘤,および圧痛がないか確認すべきである。注意深く触診すれば,通常は独立した腫瘤の位置をこれらの構造物のいずれかに同定することが可能である。非還納性腫瘤では,嚢胞性か充実性かを判定する上での参考にするため,透光性の有無を確認すべきである。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 非還納性腫瘤により正常の精索構造が不明瞭になっている

  • 腫瘤が精巣の一部であるか,または精巣に付着しており,透光性が認められない

所見の解釈

非還納性腫瘤によって正常の精索構造が不明瞭になっている場合,嵌頓鼠径ヘルニアが示唆される。腫瘤が精巣の一部であるか,または精巣に付着しており,透光性が認められない場合は,精巣腫瘍の可能性がある。

その他の臨床的特徴から重要な手がかりが得られることもある(無痛性陰嚢腫瘤の主な原因の表を参照)。例えば,透光性を示す腫瘤はおそらく嚢胞性である(例,陰嚢水腫,精液瘤)。臥位をとると消失または縮小する腫瘤は,精索静脈瘤,鼠径ヘルニア,または交通性陰嚢水腫を示唆する。陰嚢水腫が存在する場合,他の陰嚢腫瘤を診察で評価することは困難になる。まれに,精索静脈瘤が臥位でも持続したり,右側に認められたりすることがあるが,どちらの所見も下大静脈閉塞を示唆する。

検査

臨床的評価で診断に至る場合もあるが(例,精索静脈瘤,リンパ浮腫鼠径ヘルニア),そうでない場合は,一般的には検査が行われる。以下の場合は超音波検査を施行する:

  • 診断が不確かである

  • 陰嚢水腫が存在する場合,通常(原因の陰嚢病変を診断するため)

  • 腫瘤が透光性を示さない

超音波検査で充実性の精巣腫瘤が確認された場合は,精巣腫瘍を想定した追加検査(精巣腫瘍:診断を参照)として,以下の検査を行う:

  • β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン値(hCG)

  • α-フェトプロテイン値

  • 乳酸脱水素酵素値

  • 腹部CT

治療

治療は原因に対して行う。全ての腫瘤に治療が必要というわけではない。鼠径ヘルニアが疑われる場合は,還納を試みることができる(腹壁ヘルニアを参照)。

要点

  • 非還納性腫瘤によって正常の精索構造が不明瞭になっている場合,嵌頓鼠径ヘルニアが示唆される。

  • 充実性の腫瘤,透光性のない腫瘤,およびこの両方に該当する腫瘤には,精巣腫瘍を想定した評価が必須である。

  • 陰嚢水腫は原因を同定する必要がある。

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