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タンパク尿

執筆者:

Geetha Maddukuri

, MD, Saint Louis University

レビュー/改訂 2021年 1月
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タンパク尿とは,尿中にタンパク質(通常はアルブミン)が認められることである。タンパク質濃度が高くなると,尿は泡沫状を呈する。多くの腎疾患では,タンパク尿は他の尿異常(例, 血尿 無症候性血尿 血尿とは尿中に赤血球が認められる状態のことであり,具体的には,尿沈渣で強拡大の1視野当たり赤血球が3個以上認められる場合とされる。尿は赤色,血性,またはコーラ色(膀胱内に貯留した血液が酸化した肉眼的血尿)を呈する場合もあれば,肉眼的には無色に見える場合(顕微鏡的血尿)もある。無症候性血尿(isolated hematuria)とは,尿中に赤血球が認められるが,それ以外の尿異常(例,... さらに読む )を伴って発生する。無症候性タンパク尿(isolated proteinuria)とは,他に症状および尿異常を伴わないタンパク尿である。

タンパク尿の病態生理

糸球体基底膜は,比較的大きな分子(例,ほとんどの血漿タンパク質,主にアルブミン)に対して非常に効果的な障壁として機能するが,少量のタンパク質は毛細血管基底膜を通過して糸球体濾液に移行する。こうして濾過されたタンパク質は,一部は分解されて近位尿細管で再吸収されるが,一部は尿中に排泄される。尿タンパク排泄量の正常上限は150mg/日とされており,これは24時間蓄尿で測定するか,随時尿の尿タンパク/クレアチニン比(0.3未満を異常とする)から推定することが可能であり,アルブミン値の正常上限は約30mg/日である。アルブミン排泄量30~300mg/日(20~200µg/分)は中等度アルブミン尿(微量アルブミン尿)とされ,これより高値の場合は,新しい用語体系に基づくと高度アルブミン尿とされる。タンパク尿の機序は以下のように分類できる:

  • 糸球体性

  • 尿細管性

  • 腎前性

  • 機能性

糸球体性タンパク尿は,糸球体疾患に起因するもので,典型的には糸球体透過性の亢進が関与し,この透過性により濾液中に移行する血漿タンパク質の量が増加する(ときに極めて大量となる)。

尿細管性タンパク尿は,近位尿細管でのタンパク質の再吸収を障害する尿細管 間質性疾患 尿細管間質性疾患の概要 尿細管間質性疾患は,尿細管および間質の損傷を共通の特徴とする臨床的に不均一な疾患群である。罹病期間の長い重症例では,腎全体が侵され,糸球体機能障害を来したり,腎不全に至る場合さえある。尿細管間質性疾患の主なカテゴリーは以下の通りである: 急性尿細管壊死 急性または慢性 尿細管間質性腎炎... さらに読む に起因するもので,再吸収障害によりタンパク尿(ほとんどがアルブミンではなく免疫グロブリン軽鎖などの低分子タンパク質に由来する)が生じる。原因疾患には,しばしば他の尿細管機能の異常(例,重炭酸塩喪失,糖尿,アミノ酸尿)が随伴し,ときに糸球体の病態(これもタンパク尿に寄与する)も伴う。

腎前性タンパク尿は,小さな血漿タンパク質(例,多発性骨髄腫で産生される免疫グロブリン軽鎖)の量が近位尿細管の再吸収能を上回ることで発生する。

機能性タンパク尿は,腎血流量の増加(例,運動,発熱,高拍出性心不全に起因)によりネフロンに送達されるタンパク質量が増加する結果,尿中のタンパク質が増加することで発生する(通常は1g/日未満)。機能性タンパク尿は腎血流量が正常に戻れば消失する。

起立性タンパク尿は,主に立位時にタンパク尿が発生する良性の病態である(小児および青年で最もよくみられる)。このため,典型的には睡眠時よりも(立位でいる時間が長い)覚醒時の尿タンパク量が多くなる。予後は非常に良好であり,特別な介入は必要ない。

結果

腎疾患に起因するタンパク尿は通常,長期間持続する(すなわち複数回の検査で持続して認められる)ため,ネフローゼレベルにある場合には,有意なタンパク質喪失につながる可能性がある。尿中におけるタンパク質の存在は腎臓にとって有害であり,腎障害をもたらす。

タンパク尿の病因

原因は機序により分類することができる。タンパク尿の最も頻度の高い原因は糸球体疾患であり,典型的にはネフローゼ症候群として現れる(多尿の原因 タンパク尿の原因 タンパク尿の原因 の表を参照)。

成人のタンパク尿(およびネフローゼ症候群)で最も一般的な原因は以下のものである:

小児で最も一般的な原因は以下のものである:

タンパク尿の評価

病歴聴取と身体診察

現病歴の聴取により,起床時の眼のむくみや下肢または腹部の腫脹など,体液過剰または低アルブミン血症の症状が明らかになる場合がある。タンパク尿自体によって,尿に強い泡立ちが生じることがある。一方,タンパク尿を呈するが,明らかな体液過剰のない患者では,何の症状も報告しないことがある。

システムレビュー(review of systems)では,赤色または褐色の尿(糸球体腎炎)や骨痛(骨髄腫)など,原因を示唆する症状がないか確認する。最近罹患した重篤疾患(特に発熱を伴うもの),激しい身体活動,既知の腎疾患, 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む ,妊娠, 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症( 異常ヘモグロビン症)は,ほぼ黒人だけに生じる慢性溶血性貧血である。ヘモグロビンS遺伝子がホモ接合性に遺伝することによって生じる。鎌状の赤血球は血管の閉塞を引き起こし,溶血を起こしやすいことから,重度の疼痛発作,臓器虚血,および他の全身性合併症につながる。急性増悪(クリーゼ)が頻繁に起こることがある。感染症,骨髄無形成,または肺病変(急性胸部症候群)を急性発症し,死に至ることがある。貧血がみられ,通常は末梢血塗抹標本で鎌状... さらに読む 鎌状赤血球症 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは,自己免疫を原因とする慢性,多臓器性,炎症性の疾患であり,主に若年女性に起こる。一般的な症状としては,関節痛および関節炎,レイノー症候群,頬部などの発疹,胸膜炎または心膜炎,腎障害,中枢神経系障害,血球減少などがある。診断には,臨床的および血清学的な基準が必要である。重症で進行中の活動性疾患の治療には,コルチコステロイドおよび免疫抑制薬を必要とする。 全症例のうち,70~90%が女性(通常妊娠可能年齢)に起こる。... さらに読む 全身性エリテマトーデス(SLE) (SLE),悪性腫瘍(特に骨髄腫および関連疾患)など,タンパク尿を惹起する可能性がある既存の病態について患者に質問する。

検査

尿試験紙では主にアルブミンが検出される。加熱およびスルホサリチル酸法などの沈殿法では,全てのタンパク質を検出できる。このため,偶然検出される無症候性タンパク尿は通常はアルブミン尿である。尿試験紙検査は微量アルブミン尿の検出感度が比較的低く,そのため尿試験紙検査での陽性所見は通常,顕性タンパク尿を示唆する。また尿試験紙検査では,尿細管性および腎前性タンパク尿の特徴である低分子タンパク質の排泄を検出できる可能性も低い。

尿試験紙検査陽性の患者(タンパク質または他の成分に対して)には,鏡検によるルーチンの尿検査を施行すべきである。尿検査での異常(例,円柱と変形赤血球の存在は糸球体腎炎を示唆し,グルコース,ケトン,またはその両方の存在は糖尿病を示唆する)と病歴および身体所見から示唆された疾患(例,糸球体疾患を示唆する末梢浮腫)には,さらなる精査が必要である。

尿検査がその他の点では正常の場合,さらなる検査は,尿タンパクに関する再検査の結果が出るまで延期することができる。タンパク尿がすでに消失している場合,特に激しい運動,発熱,または心不全の増悪が最近みられた患者では,機能性タンパク尿である可能性が高い。持続性タンパク尿は糸球体疾患の徴候であり,さらなる検査と腎臓専門医への紹介が必要である。追加の検査としては,血算,血清電解質,血中尿素窒素,クレアチニン,およびグルコースの測定,糸球体濾過量の算出(腎機能の評価 腎機能の評価 腎疾患患者では,症候が非特異的である場合や,重症化するまで症候が認められない場合,その両方に該当する場合がある。認められる所見は,局所的な所見(例,腎臓の炎症または腫瘤を反映する),腎機能障害の全身的影響に起因する所見,または尿への影響(例,尿自体の変化,尿産生の変化)に分けられる。(... さらに読む 腎機能の評価 を参照),尿タンパクの定量(24時間測定または随時尿の尿タンパク/クレアチニン比),腎臓の大きさの評価(超音波検査またはCTによる)などがある。糸球体症患者の大半では,タンパク尿はネフローゼレベル(3.5g/日を上回るか,尿タンパク/クレアチニン比が3.5を超え,通常は24時間尿タンパクと相関する)にある。

通常は糸球体疾患の原因を特定するために他の検査も施行され,具体的には脂質プロファイル,補体値,クリオグロブリン,C型およびB型肝炎の血清学的検査,抗核抗体検査,尿および血清タンパク質の電気泳動,HIV検査, 梅毒 梅毒 梅毒は,スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)によって引き起こされる疾患で,臨床的に3つの病期に区別され,それらの間には無症状の潜伏期がみられることを特徴とする。一般的な臨床像としては,陰部潰瘍,皮膚病変,髄膜炎,大動脈疾患,神経症候群などがある。診断は血清学的検査のほか,梅毒の病期に基づいて選択される補助的検査による。第1選択の薬剤はペニシリンである。... さらに読む 梅毒 に対する迅速血漿レアギン試験などがある。これらの非侵襲的検査で診断がつかない場合(しばしばある)は, 腎生検 腎生検 尿路の生検は,訓練を受けた専門医(腎臓専門医,泌尿器科医,またはIVR専門医)が行う必要がある。 診断を目的とする生検の適応としては,原因不明の 腎炎または ネフローゼ症候群や 急性腎障害などがある。ときに,治療効果の判定を目的として生検が施行されることもある。相対的禁忌には,出血性素因やコントロール不良の 高血圧などがある。ベンゾジアゼピン系薬剤による軽度の術前鎮静が必要になる場合がある。合併症はまれであるが,輸血や放射線学的または外... さらに読む が必要である。原因不明のタンパク尿および腎不全は,特に高齢患者の場合,骨髄異形成疾患(例, 多発性骨髄腫 多発性骨髄腫 多発性骨髄腫は,形質細胞の悪性腫瘍で,単クローン性免疫グロブリンを産生し,隣接する骨組織に浸潤し,それを破壊する。一般的な臨床像としては,骨痛および/または骨折を引き起こす溶骨性骨病変,腎機能不全,高カルシウム血症,貧血,繰り返す感染症などがある。典型的には,Mタンパク質(ときに尿中にみられ,血清中に認められない場合があるが,まれに全く認められない場合もある)および/または軽鎖タンパク尿,および骨髄中の過剰な形質細胞の証明が診断に必要で... さらに読む 多発性骨髄腫 )または アミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは,異常凝集したタンパク質から成る不溶性線維の細胞外蓄積を特徴とする多様な疾患群である。これらのタンパク質は局所に蓄積してほとんど症状を引き起こさない場合もあるが,全身の複数の臓器に蓄積して,重度の多臓器不全をもたらすこともある。アミロイドーシスは原発性の場合と,種々の感染症,炎症,または悪性疾患に続発する場合とがある。 さらに読む アミロイドーシス が原因である可能性がある。

30歳未満の患者では,起立性タンパク尿を考慮すべきである。診断には2回の採尿が必要であり,1回目は午前7時から午後11時までの間(日中検体)に,2回目は午後11時から午前7時までの間(夜間検体)に採取する。尿タンパク量が日中検体で正常上限を超え(または尿タンパク/クレアチニン比が0.3を上回る),かつ夜間検体で超えなければ,診断確定となる。

タンパク尿の治療

治療は原因に対して行う。

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