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慢性腎臓病

(慢性腎不全;CKD)

執筆者:

Anna Malkina

, MD, University of California, San Francisco

最終査読/改訂年月 2018年 10月
本ページのリソース

慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患に対して行うが,具体的には水・電解質バランスの管理,血圧のコントロール,貧血の治療,様々な種類の透析,腎移植などがある。

米国成人の一般集団におけるCKD(ステージ1~5)の有病率は14.8%と推定されている(NHANES 2011–2014データベース)。

病因

一定以上の腎機能障害を引き起こすあらゆる病態が慢性腎臓病の原因となりうる(慢性腎臓病の主な原因の表を参照)。

米国における最も一般的な原因を有病率の順に以下に示す:

高血圧と2型糖尿病を併発するメタボリックシンドロームは,腎障害の大きな原因であり,現在増加している。

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慢性腎臓病の主要な原因

原因

慢性尿細管間質性腎症

慢性尿細管間質性腎炎の原因の表を参照のこと。

糸球体症(原発性)

特発性半月体形成性糸球体腎炎

全身性疾患に関連する糸球体症

抗GBM抗体病(グッドパスチャー症候群としても知られる)

混合型クリオグロブリン血症

遺伝性腎症

遺伝性腎炎(アルポート症候群)

高血圧

後腹膜線維症

尿管閉塞(先天性,結石,がん)

腎大血管疾患(腎動脈および静脈の血管障害)

動脈硬化症または線維筋性異形成による腎動脈狭窄

病態生理

慢性腎臓病は,まず腎予備能低下または腎機能不全として報告され,そこから腎不全(末期腎臓病)に進行することがある。初期には,腎組織の機能が失われても顕著な異常はほとんど認められず,これは残存組織の機能が亢進することによるものである(腎臓の機能的適応)。

腎機能が低下すると,水および電解質の恒常性を維持する腎臓の能力が障害される。尿の濃縮能が早期に低下し,続いて過剰なリン,酸,およびカリウムの排泄能が低下する。腎不全が進行すると(GFR 15mL/min/1.73m2以下),尿を効果的に希釈・濃縮する能力が失われ,そのため通常は尿浸透圧が血漿浸透圧(275~295mOsm/kg)に近い約300~320mOsm/kgの範囲で一定となり,尿量が水分摂取量の変化を確実に反映しなくなる。

クレアチニンと尿素

クレアチニンおよび尿素の血漿中濃度(糸球体濾過に高度に依存)は,GFRが低下するにつれて双曲線的に上昇する。これらの変化は早期にはごく軽微である。GFRが15mL/min/1.73m2(正常値は90mL/min/1.73m2以上)未満まで低下すると,クレアチニンおよび尿素の濃度が高くなり,通常は全身症状を伴うようになる(尿毒症)。尿素およびクレアチニンは,尿毒症症状に対する重大な寄与因子ではなく,尿毒症症状を引き起こす他の多くの物質(十分に解明されていないものもある)に対するマーカーである。

ナトリウムと水

GFRが低下しても,尿中のナトリウム排泄率の上昇と口渇に対する正常な反応によって,ナトリウムと水のバランスは良好に維持される。したがって,血漿ナトリウム濃度は典型的には正常となり,食事からの塩分または水分の摂取量が極めて制限されているか過剰でない限り,循環血液量増加はまれである。ナトリウムと水の過剰により心不全を来すことがあり,特に心予備能が低下した患者で可能性が高くなる。

カリウム

分泌が主に遠位ネフロンでの分泌を介して制御されている物質(例,カリウム)では,通常は腎臓の適応により,腎不全が進行するまで,または食事によるカリウム摂取量が過剰になるまで,血漿濃度が正常に維持される。腎不全がそれほど進行していない患者では,カリウム保持性利尿薬ACE阻害薬β遮断薬NSAID,シクロスポリン,タクロリムス,トリメトプリム/スルファメトキサゾール,ペンタミジン,またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬により,血漿カリウム濃度が上昇することがある。

カルシウムとリン

カルシウム,リン,副甲状腺ホルモン(PTH),およびビタミンD代謝の異常のほか,腎性骨異栄養症が起こる可能性もある。腎臓での カルシトリオール(活性型ビタミンDであるホルモンの1,25(OH)2D)の産生低下は低カルシウム血症に寄与する。腎臓でリン排泄が低下する結果,高リン血症を来す。続発性副甲状腺機能亢進症はよくみられ,腎不全患者でカルシウムまたはリン濃度に異常がみられる前に発症することもある。このため,中等度のCKD患者のPTHのモニタリングは,高リン血症の発生前でも推奨されている。

腎性骨異栄養症(副甲状腺機能亢進症, カルシトリオール欠乏症,血清リン値上昇,血清カルシウム低値または正常によってもたらされる骨石灰化の異常)は通常,副甲状腺機能亢進症性骨疾患(線維性骨炎)に起因する骨代謝回転亢進の形態をとるが,無形成骨症(副甲状腺機能抑制の増強を伴う)または骨軟化症に起因する骨代謝回転の低下も関与しうる。 カルシトリオール欠乏症は,骨減少症または骨軟化症の原因となる可能性がある。

pHと重炭酸塩

中等度の代謝性アシドーシス(血漿重炭酸濃度15~20mmol/L)が特徴である。アシドーシスによって,タンパク質の異化に起因する筋萎縮と骨による酸の緩衝に起因する骨量減少が生じ,腎疾患の進行が加速する。

貧血

中等度のCLDと進行したCKD(ステージ3以上)では貧血が特徴的である。CKDの貧血は正色素性正球性であり,Hctは20~30%である(多発性嚢胞腎患者では35~40%)。通常は機能腎の重量低下に起因する エリスロポエチン産生の不足が原因である(Professional.see page 赤血球産生低下の概要)。その他の原因としては,葉酸,およびビタミンB12の欠乏などがある。

症状と徴候

腎予備能が軽度に低下した患者は症状を示さない。軽度から中等度の腎機能不全がみられる患者でさえ,BUNおよびクレアチニン値の上昇があっても,症状は認められないことがある。夜間頻尿がしばしば認められ,これは主に尿を濃縮できないことに起因する。倦怠感,疲労,食欲不振,および集中力の低下は,尿毒症の最初の臨床像となることが多い。

より重度の腎疾患(例,推算糸球体濾過量[eGFR]15mL/min/1.73m2未満)では,神経筋症状がみられる場合があり,具体的には粗大な筋攣縮,感覚性および運動性の末梢神経障害,筋痙攣,反射亢進,レストレスレッグス症候群,痙攣発作(通常は高血圧性または代謝性脳症の結果)などがある。

食欲不振,悪心,嘔吐,体重減少,口内炎,および口腔内の不快な味は,ほぼ一様にみられる。皮膚が黄褐色を呈する場合がある。ときに,汗からの尿素が皮膚上で結晶化することがある(尿素霜)。そう痒は特に不快となることがある。低栄養によって生じる全身的な組織の消耗は,慢性尿毒症の顕著な特徴である。

進行したCKDでは,心膜炎や消化管の潰瘍および出血が生じることがある。進行したCKD患者の80%以上で高血圧がみられ,通常は循環血液量増加と関連している。高血圧または冠動脈疾患に起因する心不全と腎臓でのナトリウム・水貯留により,就下性の浮腫(dependent edema)や呼吸困難が生じる場合がある。

診断

  • 電解質,BUN,クレアチニン,リン,カルシウム,血算

  • 尿検査(尿沈渣検査を含む)

  • 尿タンパクの定量(24時間蓄尿での尿タンパク量または随時尿でのタンパク質対クレアチニン比)

  • 超音波検査

  • ときに腎生検

CKDは通常,血清クレアチニン値が上昇した際に初めて疑われる。最初の段階では,腎不全が急性,慢性,慢性と急性の併発か(すなわち,CKD患者に腎機能をさらに障害する急性疾患が発生している場合)を判定する(急性腎障害の慢性腎臓病との鑑別の表を参照)。腎不全の原因も特定する。ときに腎不全の罹病期間の特定が原因の特定に有用となる場合がある一方,ときに期間より原因を同定することの方が容易で,原因の特定が期間の特定に有用となる場合もある。

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急性腎障害の慢性腎臓病との鑑別

所見

備考

腎機能低下(推算糸球体濾過量[eGFR]60mL/min/1.73m2未満)が3カ月以上持続する

CKDの最も信頼できる所見である

腎超音波検査での小さな腎臓

通常はCKDである

腎超音波検査での正常または腫大した腎臓

AKIまたは何らかのCKD(糖尿病性腎症,急性高血圧性腎硬化症,多発性嚢胞腎骨髄腫,急速進行性糸球体腎炎,浸潤性疾患[例,リンパ腫白血病アミロイドーシス],閉塞)である可能性がある

乏尿,血清クレアチニン値とBUNの連日の上昇

おそらくはAKIまたはAKIとCKDの併発である

貧血を認めない

おそらくはAKIまたは多発性嚢胞腎に起因するCKDである

重度の貧血,高リン血症,および低カルシウム血症

おそらくはCKDであるが,AKIの可能性もある

X線写真上の骨膜下びらん

おそらくはCKDである

慢性の症状または徴候(例,疲労,悪心,そう痒,夜間頻尿,高血圧)

通常はCKDである

AKI = 急性腎障害,CKD = 慢性腎臓病

検査には尿検査(尿沈渣,電解質,尿素窒素,クレアチニン,リン,カルシウム,血算を含む)などがある。ときに,原因を特定するために特異的な血清学的検査が必要となる。急性腎障害とCKDの鑑別に最も有用な情報は,クレアチニン高値または尿検査異常の病歴である。尿検査の所見は基礎疾患の性質によるが,幅広円柱(白血球3個分の直径よりも広い),または特に蝋様円柱(高度の屈折性を示す)は,原因を問わず腎不全が進行すると,しばしば顕著に認められる。

腎超音波検査は通常,閉塞性尿路疾患の評価や,腎臓の大きさに基づく急性腎障害とCKDの鑑別に役立つ。一部の病態以外では(慢性腎臓病の主な原因の表を参照),CKD患者の腎は小さく萎縮し(通常長さ10cm未満),皮質は薄く高エコーである。腎機能が末期腎臓病での機能に近い数値に達すると,正確な診断はますます困難になる。確定診断の方法は腎生検であるが,超音波検査で腎臓の萎縮および線維化が示唆される場合は推奨されず,処置による高いリスクが低い診断率を上回る。

慢性腎臓病の病期

CKDのステージ分類はその重症度を定量化する1つの方法である。CKDはこれまで5ステージに分類されている。

  • ステージ1:GFR正常(90mL/min/1.73m2以上)かつ,持続性アルブミン尿または既知の構造的もしくは遺伝性腎疾患

  • ステージ2:GFR 60~89mL/min/1.73m2

  • ステージ3a:GFR 45~59mL/min/1.73m2

  • ステージ3b:GFR 30~44mL/min/1.73m2

  • ステージ4:GFR 15~29mL/min/1.73m2

  • ステージ5:GFR 15mL/min/1.73m2未満

CKDにおけるGFR(mL/min/1.73m2)は次のCKD-EPI(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)式で算出できる(1): 141 ×(血清クレアチニン)-1.209× 0.993 age。患者が女性の場合は得られた数値に1.018を乗じ,アフリカ系アメリカ人の場合は1.159を乗じる。女性のアフリカ系アメリカ人の場合は1.018 × 1.159(1.1799)を乗じる。この計算式は,高齢であまり動かない患者,極めて肥満した患者,極めてやせた患者では,あまり正確ではない。その代わりとして,クレアチニンクリアランスを推算するCockcroft-Gault式を用いてGFRを推定することも可能であるが,この式はGFRを10~40%大きく見積もる傾向がある。

CKD-EPI式は,MDRD(Modification of Diet in Renal Disease)式やCockcroft-Gault式よりも正確である,特にGFR値がほぼ正常な患者での精度が高い。CKD-EPI式は他の計算式と比較して,慢性腎臓病の偽陽性となることが少なく,予後の予測にも優れている。

診断に関する参考文献

予後

CKDの進行は,大部分の症例でタンパク尿の程度によって予測される。ネフローゼレベルのタンパク尿(尿タンパク > 3g/24時間または尿タンパク/クレアチニン比 > 3)がみられる患者は通常,予後不良であり,腎不全への進行も速い。基礎疾患が活動性でない場合でさえも進行しうる。尿タンパクが1.5g/24時間未満の患者は,進行が生じたとしても通常はるかに緩徐である。高血圧アシドーシス副甲状腺機能亢進症もより急速な進行と関連する。

治療

  • 基礎疾患のコントロール

  • ときにタンパク質,リン,およびカリウムの摂取制限

  • ビタミンDサプリメント

  • 貧血の治療

  • 関与している併存症の治療(例,心不全,糖尿病,腎結石症,前立腺肥大症)

  • 必要に応じた全ての薬剤の用量調節

  • 重度のGFR低下に対して,医学的介入により症候が十分に管理されない場合は透析

  • 炭酸水素ナトリウム値を23mmol/Lに維持

基礎疾患および寄与因子をコントロールする必要がある。特に,糖尿病性腎症患者における高血糖と全ての患者における高血圧をコントロールすることにより,GFRの低下をかなり遅らせることが可能である。

高血圧については,一部のガイドラインでは<140/90mmHgの目標血圧が提唱され,American Heart Associationでは130/80が推奨されており,また依然として約110~130/<80mmHgを推奨する研究者もいる。ACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬は,ほとんどの原因のCKD患者,特にタンパク尿を呈する患者でGFR値の低下率を軽減する。ACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬の各単剤と比較して両剤の併用により,タンパク尿は大きく低下するものの,合併症の発生率が上昇し,腎機能の低下は遅延しないことを示唆するエビデンスが増えている。

運動制限は必要ないが,通常は疲労と倦怠感により患者の運動能は制限される。

そう痒は,血清リン値が上昇している場合には,リンの摂取制限とリン吸着剤が奏効することがある。

栄養

腎疾患における厳格なタンパク質制限については議論がある。しかしながら,eGFRが60mL/min/1.73m2未満でネフローゼ症候群のない患者における中等度のタンパク質制限(0.8g/kg/日)は安全であり,大半の患者が容易に耐容できる。一部の専門家は,糖尿病の患者とGFRが25mL/min/1.73m2未満で糖尿病がない患者に対して0.6g/kg/日を推奨している。尿毒症症状の多くは,タンパク質の異化と尿素の産生が減少すれば著明に軽減する。また,CKDの進行が遅くなることもある。エネルギー所要量を満たし,ケトーシスを予防するため,十分な炭水化物と脂肪を摂取させる。0.8g/kg/日未満の食事制限を処方されている患者は,栄養士が綿密なフォローアップを行うべきである。

食事制限により必要なビタミン摂取量が不足することがあるので,患者は水溶性ビタミンを含む総合ビタミン剤を摂取すべきである。ビタミンAおよびEの投与は不要である。ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)またはD3(コレカルシフェロール)は,ルーチンには投与されず,25-OHビタミンDおよびPTHの血中濃度に基づいて使用される。

脂質異常症に対処すべきである。食習慣の改善は,高トリグリセリド血症に対して役立つ場合がある。スタチン系薬剤は高コレステロール血症に効果的である。フィブリン酸誘導体(クロフィブラート,ゲムフィブロジル)は,CKD患者の横紋筋融解症のリスクを,特にスタチン系薬剤と併用した場合に上昇させる可能性があるが,それに対してエゼチミブ(コレステロール吸収を低下させる)は比較的安全であると考えられる。高コレステロール血症の是正は,CKD患者で増大する心血管疾患のリスクを減少させることを目的とする(1)

ミネラルおよび骨疾患

KDIGOによる2017年版の診療ガイドライン(1)に基づき,カルシウム,リン,PTH,25-OHビタミンDの血清中濃度とアルカリホスファターゼ活性をCKDのステージ3aからモニタリングすることが推奨される。モニタリングの頻度は,CKDの重症度,上記異常の程度,および治療的介入の頻度によって異なる。骨生検は腎性骨異栄養症の病型を決定する最も確定的な評価である。

高リン血症は以下により治療すべきである:

  • リンの摂取制限

  • リン吸着剤

eGFRが60mL/min/1.73m2未満の患者では,典型的には食事による摂取量を0.8~1g/日とするリン制限で十分に血清リン濃度を正常化できる。心血管リスクとの関連が報告されている高リン血症を十分にコントロールするために,リン吸着剤(カルシウム含有または非含有)の追加が必要になることがある。高カルシウム血症がある患者,無形成骨症が疑われる患者,および画像検査で血管石灰化の所見がみられた患者では,カルシウム非含有の吸着剤が望ましい。カルシウム含有の吸着剤を処方する場合,eGFRが60mL/min/1.73m2未満の患者では,食事および薬剤から摂取するカルシウム量の合計が2000mg/日を超えてはならない。

ビタミンD欠乏症は,高リン血症および高カルシウム血症がみられない限り,コレカルシフェロール(ビタミンD3)またはエルゴカルシフェロール(ビタミンD2)により治療すべきであり,血清5-OHビタミンD濃度の目標を約30~50ng/mLとする。

透析を受けていないステージ3a~5のCKD患者におけるPTHの至適な値は不明である。しかしながら,高リン血症およびビタミンD欠乏症の治療にもかかわらず,PTH濃度が進行性に上昇しているか著明に(使用したアッセイの正常上限の9倍を超えて)上昇した場合には,活性型ビタミンDアナログ(例,カルシトリオール)が推奨される。典型的な開始量はカルシトリオール0.25μg,経口,週3回であり,PTH濃度をアッセイでの正常上限の2~9倍に維持できるよう用量を調節する。PTH濃度の正常値への補正は,無形成骨症を誘発するリスクがあるため,行わない。

水分と電解質

水分摂取制限は,血清ナトリウム濃度が135mmol/L未満であるか,心不全または重度の浮腫がある場合にのみ必要とされる。

eGFRが60mL/m/1.73m2未満で,高血圧体液量過剰,またはタンパク尿がみられるCKD患者には,2g/日未満のナトリウム摂取制限が推奨される。

カリウム摂取制限は,血清中濃度,eGFR,食習慣,およびカリウム値を高める薬剤(例,ACE,ARB,またはカリウム保持性利尿薬)の使用に基づき個別化される。一般的に,カリウム摂取制限はeGFRが30mL/min/1.73 m2を超える場合は不要である。軽度から中等度の高カリウム血症(5.1~6mmol/L)の治療には,食事制限(代用塩の回避など),代謝性アシドーシスの是正,ならびにカリウムを低下させる利尿薬と陽イオン交換樹脂の使用が必要である。重度の高カリウム血症(6mmol/L超)には緊急治療が必要である。

代謝性アシドーシスは,血清重炭酸濃度を正常値(23mmol/L超)にし,筋萎縮,骨量減少,およびCKDの進行を軽減または遅らせることを目的に治療すべきである。アシドーシスは,炭酸水素ナトリウムやアルカリ性食品(主に果物および野菜)など,経口摂取するアルカリ源によって是正できる。炭酸水素ナトリウムを1~2g,経口,1日2回で投与し,重炭酸濃度が約23mmol/Lに達するか,ナトリウム過剰の所見により治療継続が困難となるまで,用量を漸増する。アルカリ性食品を使用する場合は,果物および野菜にはカリウムが含まれるため,血清カリウム値をモニタリングする。

貧血および凝固障害

貧血は,中等度のCKDと進行したCKD(ステージ3以上)でよくみられる合併症であり,10g/dL未満の場合は遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(例,エポエチン アルファ)などの赤血球造血刺激因子製剤(ESA)で治療する。脳卒中血栓症,死亡など,心血管系合併症のリスクがあるため,この種の薬剤はヘモグロビン値を10~11g/dLに保つ上で必要な最低限の用量で使用する。

赤血球産生が促進され,鉄の利用量が高まるため,鉄貯蔵の補充が必要になり,しばしば非経口鉄剤が必要となる。鉄濃度,鉄結合能,およびフェリチン濃度を綿密に観察すべきである。目標トランスフェリン飽和度(TSAT,血清鉄値を総鉄結合能で除したものに100%を乗じて算出)は20%超とするべきである。透析を受けていない患者の目標フェリチン値は100ng/mL超である。輸血は,貧血が重症(Hb8g/dL未満)または症状をもたらさない限り行うべきではない。

CKD患者の出血傾向が治療を必要とすることはまれである。クリオプレシピテート,赤血球輸血,デスモプレシン0.3~0.4μg/kg(最高20μg)を含有する等張食塩水20mLの静注(20~30分かけて投与),または結合型エストロゲンの投与(2.5~5mg,経口,1日1回)が必要に応じて有用となる。これらの治療の効果は12~48時間持続し,結合型 エストロゲンの効果は数日間持続することがある。

心不全

症候性心不全は以下により治療する:

  • ナトリウム摂取制限

  • ときに透析

フロセミドなどのループ利尿薬は,たとえ腎機能が著明に低下した場合でも通常は効果的であるが,高用量が必要になる場合がある。左室機能が低下している場合は,ACE阻害薬(またはARB)とβ遮断薬(カルベジロールまたはメトプロロール)を使用すべきである。心不全が進行した患者には,アルドステロン拮抗薬が推奨される。ジゴキシンを追加してもよいが,用量は腎機能の程度に基づいて減量しなければならない。

中等度または重度の高血圧は,心機能および腎機能に対する有害な影響を防ぐため,治療すべきである。ナトリウム摂取制限(1.5g/日)に反応しない患者には,利尿薬を投与すべきである。ループ利尿薬(例,フロセミド80~240mg,経口,1日2回)は,高血圧または浮腫がコントロールされない場合,サイアザイド系利尿薬(例,クロルタリドン12.5~100mg,経口,1日1回,ヒドロクロロチアジド25~100mg,経口,1日1回~2回分割投与,メトラゾン2.5~20mg,経口,1日1回)と併用してもよい。腎不全の場合でも,サイアザイド系利尿薬とループ利尿薬の併用は極めて強力であり,過剰利尿を避けるため慎重に用いなければならない。

ときに心不全をコントロールするため透析が必要になることがある。細胞外液の減量によっても血圧がコントロールされない場合は,通常の降圧薬を追加する。このような治療により高窒素血症が増強することがあるが,これが心不全および/または高血圧を十分にコントロールする上で必要になる場合がある。

薬物

腎不全患者では,薬物の腎排泄がしばしば障害されている。用量の調整が必要となる一般的な薬剤としては,ペニシリン系,セファロスポリン系,アミノグリコシド系,フルオロキノロン系,バンコマイシン,ジゴキシンなどがある。血液透析は一部の薬剤の血清中濃度を低下させるため,透析後に補充すべきである。これらの極めて脆弱な患者に薬剤を処方する前に,腎不全患者への薬剤投与に関する基準を参照することが強く推奨される(2-4)

大半の専門家は,CKD患者ではNSAIDの使用を控えるよう推奨しており,その理由はNSAIDにより腎機能の悪化,高血圧の増悪,および電解質異常の誘発が生じうるためである。

一部の薬物は,eGFRが60mL/min/1.73m2未満の慢性腎臓病患者では完全に使用を控えるべきである。具体的にはニトロフラントインやフェナゾピリジンなどがある。MRIの造影剤であるガドリニウムは,一部の患者で腎性全身性線維症との関連が報告されており,患者の推算GFR値が30mL/min/1.73m2未満の場合はリスクが特に高いため,そのような患者では可能な限りガドリニウムの使用を控えるべきである。

透析

透析は通常,以下のいずれかが生じた時点で開始される:

  • 尿毒症症状(例,食欲不振,悪心,嘔吐,体重減少,心膜炎,胸膜炎)

  • 薬剤と生活習慣の是正では体液過剰,高カリウム血症,またはアシドーシスのコントロールが困難

これらの状態は,典型的には推算GFR値が糖尿病のない患者で10mL/min以下,糖尿病患者で15mL/min以下まで低下した場合に発生するため,推算GFR値がこれらの値に近い患者は,上記の徴候および症状を早期に検出できるよう,綿密にモニタリングすべきである。透析は予測が最善であり,それにより準備を整えることができ,血液透析カテーテルの緊急挿入を回避できる。このような準備は通常,CKDステージ4の早期から中期の段階から開始し,そうすることで患者の教育,透析の種類の選択,および動静脈瘻の作製または腹膜透析カテーテルの留置のための時間を確保することができる。(透析の準備については,Professional.see page 血液透析。)

パール&ピットフォール

  • CKDステージ4の早期から中期で透析導入,腎移植,または緩和ケアの準備を開始して,患者教育と治療法の選択,加えて関連するあらゆる準備処置に十分な時間を確保できるようにする。

移植

生体腎ドナーがいる場合は,たとえ透析開始前でも,早期に腎移植を施行することで,より良好な長期予後が得られる。移植適応はあるが生体腎ドナーがいない患者は,米国の多くの地域で待機期間が数年を超える可能性があるため,地域の移植センターの待機リストに早期に登録すべきである。

治療に関する参考文献

要点

  • 米国における慢性腎臓病(CKD)の一般的な原因は,糖尿病性腎症(最も一般的),高血圧性腎硬化症,糸球体症,およびメタボリックシンドロームである。

  • CKDによる影響としては,低カルシウム血症,高リン血症,代謝性アシドーシス,貧血,続発性副甲状腺機能亢進症,腎性骨異栄養症などがある。

  • 急性腎障害からCKDの鑑別は,病歴,臨床所見,ルーチンの臨床検査,超音波検査に基づく。

  • 基礎疾患(例,糖尿病)および血圧値(通常はACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬による)をコントロールする。

  • ビタミンDサプリメントおよび/または炭酸水素ナトリウムを投与し,必要に応じてカリウムおよびリンの摂取を制限する。

  • 心不全,貧血,その他の合併症を治療する。

  • 進行したCKD患者には治療選択肢(透析,腎移植,または緩和ケア)について早期に患者教育を行い,計画に十分な時間を確保できるようにする。

  • eGFRの低下が重度の患者には,薬剤と生活習慣の是正で症候が十分にコントロールできない場合,透析を開始する。

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