真菌尿路感染症

執筆者:Talha H. Imam, MD, University of Riverside School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 2月
意見 同じトピックページ はこちら

尿路の真菌感染症は,主に膀胱および腎臓で発生する。

尿路感染症[UTI]に関する序論も参照のこと。)

Candida属真菌が最も頻度の高い起因菌であるが,これはヒトにおける正常な共生微生物である。Candidaの定着は,感染では組織反応が誘発されるという点において,感染とは異なる現象である。全ての侵襲性真菌(例,Cryptococcus neoformansAspergillus属,ケカビ科(Mucoraceae属),Histoplasma capsulatumBlastomyces属,Coccidioides immitis)は,全身性または播種性真菌感染症の一部として腎損に感染することがある。これらは,その存在のみで感染を意味する。

Candida属真菌による下部尿路感染症は,通常は尿路カテーテルが留置された患者において,典型的には抗菌薬療法後に発生するが,カンジダ感染症と細菌感染症の併発もしばしばみられる。C. albicans による前立腺炎は,糖尿病患者でまれにみられ,通常は器具操作の後に発生する。

腎カンジダ症は通常血行性に伝播し,一般的には消化管に由来する。上行感染も起こる可能性があり,主に腎瘻チューブ,その他の恒久的留置機器,ステントを有する患者で発生する。リスクの高い患者には,糖尿病患者および腫瘍,AIDS,化学療法,免疫抑制薬のために易感染状態にある患者が挙げられる。これらの高リスク入院患者におけるカンジダ血症の主要感染源は,血管内留置カテーテルである。腎移植では,留置カテーテル,ステント,抗菌薬,縫合不全,閉塞,および免疫抑制療法が複合的に関与することで,リスクが増大する。

カンジダ感染症の合併症としては,気腫性膀胱炎または腎盂腎炎や,腎盂内,尿管内,または膀胱内の真菌球などが生じうる。感染結石が膀胱内で形成されることがある。下部または上部尿路閉塞も発生しうる。乳頭壊死ならびに腎内および腎周囲の膿瘍が形成されることがある。腎機能はしばしば低下するが,腎後性閉塞を伴わなければ,重度の腎不全はまれである。

症状と徴候

大部分のカンジダ尿症患者は症状を示さない。Candidaが男性で尿道症状(軽度の尿道そう痒感,排尿困難,水様分泌物)を引き起こすことが可能かどうかは不確かである。まれに,女性の排尿困難はカンジダ尿道炎に起因するが,それはカンジダ腟炎により炎症を起こした尿道周囲組織に尿が接触することで生じる。

下部尿路感染症の中でも,Candidaによる膀胱炎は,頻尿,尿意切迫,排尿困難,および恥骨上部痛を起こすことがある。血尿は一般的である。コントロール不十分な糖尿病患者では気腫性膀胱炎に起因する気尿が発生している。真菌球または感染結石が尿道閉塞の症状を引き起こすことがある。

血行性に伝播した腎カンジダ症の患者のほとんどでは,腎に関連する症状を欠いているが,抗菌薬抵抗性の発熱,カンジダ尿,原因不明の腎機能悪化を呈することがある。尿管および腎盂内の真菌球要素は,しばしば血尿および尿路閉塞をもたらす。ときに,乳頭壊死または腎内もしくは腎周囲膿瘍によって疼痛,発熱,高血圧,および血尿が生じる。他の部位(例,中枢神経系,皮膚,眼,肝臓,脾臓)にカンジダ症の症状が出現すことがある。

診断

  • 尿培養

  • 組織反応の証拠(膀胱炎)または腎盂腎炎

尿路感染症(UTI)の素因とUTIを示唆する症状がみられる患者とカンジダ血症がみられる全患者では,Candida属真菌によるUTIを考慮する。尿道炎の症状がみられる男性では,他に考えられる尿道炎の原因を全て除外して初めてCandidaを疑うべきである。

CandidaによるUTIの診断は培養(通常は尿培養)による。カンジダ尿が単なる定着や汚染でなく,真のCandida UTIを反映するレベルは不明である。Candidaの定着を感染と鑑別するには,組織反応の証明が必要である。

膀胱炎は通常,カンジダ尿を呈する高リスク患者において膀胱の炎症または刺激の存在が膿尿によって証明された場合に診断される。膀胱鏡検査と腎臓および膀胱の超音波検査が感染結石および閉塞の検出に役立つことがある。

発熱,カンジダ尿症,真菌球が排出された患者では,腎カンジダ症を考慮する。重度の腎不全は腎後性閉塞を示唆する。尿路の画像検査は,罹患の程度を明らかにする上で役立つことがある。Candidaの血液培養はしばしば陰性となる。

原因不明のカンジダ尿が認められた場合は,尿路の構造的異常を早急に評価すべきである。

治療

  • 症状がみられる患者および高リスク患者のみ

  • フルコナゾール,または耐性菌に対してはアムホテリシンB,ときにフルシトシンを追加

カテーテルへの真菌の定着には治療は不要である。無症候性のカンジダ尿症で治療が必要になることはまれである。カンジダ尿症は以下の場合には治療すべきである:

  • 症状がみられる患者

  • 好中球減少がみられる患者

  • 腎移植を受けた患者

  • 泌尿器科的処置を受けている患者

尿路ステントおよびフォーリーカテーテルは抜去すべきである(可能な場合)。症候性膀胱炎の治療は,フルコナゾール200mg,経口,1日1回による。腎盂腎炎には,フルコナゾール200~400mg,経口,1日1回が望ましい。いずれの場合も治療は2週間とするべきである。フルコナゾールに耐性を示す真菌には,アムホテリシンBが,膀胱炎には0.3~0.6mg/kg,静注,1日1回,2週間で,腎盂腎炎には0.5~0.7mg/kg,静注,1日1回,2週間で推奨される。

治療抵抗性の腎盂腎炎には,腎機能が十分にある場合は,上記のレジメンにフルシトシン25mg/kg,経口,1日4回を追加し,腎機能が十分でない場合は,クレアチニンクリアランスに基づいて用量を変更すべきである(抗真菌薬を参照)。

フルシトシンはalbicans以外のCandida属真菌によるカンジダ尿の根絶に役立つ場合があるが,この化合物を単独で使用した場合,耐性が急速に出現することがある。アムホテリシンBによる膀胱洗浄でカンジダ尿が一時的に解消する場合があるが,膀胱炎または腎盂腎炎に対しては,もはや適応ではない。カンジダ尿症に対して見かけは奏効する局所または全身の抗真菌療法によっても,再発は頻回に認められ,再発の可能性は導尿カテーテルの継続使用によって上昇する。尿路感染症の治療でのボリコナゾールの使用は,臨床経験が乏しい。

要点

  • 真菌性UTIは主に,尿路の閉塞もしくは器具操作,易感染状態(糖尿病を含む),またはその両方がある患者で発生する。

  • 高リスクの患者またはカンジダ血症のある患者でUTIと一致する臨床所見または臨床検査所見が認められる場合は,真菌性UTIを疑う。

  • 患者が泌尿器科的処置を受ける予定があるか,症状または好中球減少がみられるか,腎移植を受けた患者である場合に限り,抗真菌薬による治療を行う。

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS