(尿細管間質性疾患の概要 尿細管間質性疾患の概要 尿細管間質性疾患は,尿細管および間質の損傷を共通の特徴とする臨床的に不均一な疾患群である。罹病期間の長い重症例では,腎全体が侵され,糸球体機能障害を来したり,腎不全に至る場合さえある。尿細管間質性疾患の主なカテゴリーは以下の通りである: 急性尿細管壊死 急性または慢性 尿細管間質性腎炎... さらに読む も参照のこと。)
重金属(例,鉛,カドミウム,銅)やその他の毒性物質は, 慢性間質性腎炎 慢性尿細管間質性腎炎 尿細管間質性腎炎は,尿細管と間質の原発性損傷であり,腎機能低下をもたらす。急性型はほとんどの場合,薬物アレルギー反応または感染症が原因である。慢性型は,多種多様な原因により発生し,これには遺伝性または代謝性疾患,閉塞性尿路疾患,環境毒素または特定の薬物およびハーブへの慢性的な曝露が挙げられる。診断は病歴と尿検査によって示唆され,しばしば生検によって確定される。治療と予後は,病因および診断時の疾患の可逆性の可能性によって様々である。... さらに読む の一種を引き起こす可能性がある。
鉛腎症
鉛が近位尿細管細胞に蓄積することで慢性尿細管間質性腎炎が生じる。
短期の鉛曝露は近位尿細管機能障害をもたらし,これには尿酸分泌の低下と高尿酸血症(尿酸は鉛痛風の素因),アミノ酸尿,腎性糖尿などがある。
慢性の鉛曝露(5~30年以上)は,進行性の尿細管萎縮および間質線維化を引き起こし,腎機能不全,高血圧,および痛風を伴う。一方,慢性的な低レベル曝露は尿細管間質性疾患とは独立して腎機能不全および高血圧をもたらす可能性がある。以下のグループはリスクが最も高い:
鉛含有ペンキの粉じんまたはチップに曝露した小児
溶接工
電池工場従業員
高濃度蒸留酒(密造酒)の飲酒者
曝露した小児は成人期に腎症を発症する場合がある。
よくみられる所見としては,無菌の尿沈渣や腎機能不全の程度と不釣り合いな高尿酸血症などがある:
血清クレアチニン値 < 1.5mg/dL(132.6μmol/L)で血清尿酸値 > 9mg/dL(535.4μmol/L)
血清クレアチニン値1.5~2mg/dL(132.6~176.8μmol/L)で血清尿酸値 > 10mg/dL(594.9μmol/L)
血清クレアチニン値 > 2mg/dL(176.8μmol/L)で血清尿酸値 > 12 mg/dL(713.8μmol/L)
診断は通常,全血中鉛濃度の測定による。代わりに,蛍光X線を用いて骨の鉛濃度の上昇を検出することも可能で,これは鉛の累積曝露高値を反映する。
カドミウム腎症
カドミウムに汚染された水,食物,またはタバコによるカドミウム曝露や主に職場でのカドミウム曝露によって腎症が引き起こされることがある。また糸球体症を引き起こす可能性もあるが,通常は無症状である。
カドミウム腎症の早期の臨床像は尿細管機能障害と同様であり,具体的には分子量の小さい尿細管性タンパク尿(例,β2ミクログロブリン),アミノ酸尿症,腎性糖尿などがある。症状と徴候が認められる場合は, 慢性腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む に起因する。腎疾患は用量反応曲線に従う。
以下がみられる場合,カドミウム腎症の可能性が高くなる:
カドミウムの職業曝露の既往
尿中β2ミクログロブリン値の上昇(尿タンパクの尿試験紙検査では検出されなかったがラジオイムノアッセイを用いて検出)
尿中カドミウム濃度の上昇(7μg/gクレアチニン超)
治療はカドミウム曝露の除去による;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)によるキレート化は急性カドミウム中毒における腎毒性を増悪させる可能性があるが,カドミウムの慢性曝露の症例で用いられ成功を収めていることに留意する。尿細管性タンパク尿は通常,不可逆的である。
その他の重金属腎症
腎毒性を有するその他の重金属としては以下のものがある:
銅
金
ウラン
ヒ素
鉄
水銀
ビスマス
クロム
これらの金属はいずれも尿細管壊死と同様に尿細管障害および機能障害(例,尿細管性タンパク尿,アミノ酸尿)を引き起こすが,一部の化合物(水銀,金)では糸球体症が優勢である場合がある。
治療は,さらなる曝露を回避させるとともに,以下の片方または両方を行う:
透析 血液透析 血液透析では,患者の血液をポンプで血液透析器に送り込むが,透析器は中空糸でできた細管の束またはサンドイッチ状に平行に挟んだ半透膜シートで構成される2つの液体コンパートメントを有する。いずれの構造においても,第1のコンパートメントの血液は半透膜の片側に沿ってポンプで送られ,膜を隔てた他方では電解質輸液(透析液)が別個のコンパートメントで血液とは反対方向にポンプで送られる。(その他の腎代替療法[RRT]については,... さらに読む (クロム,ヒ素,ビスマス),しばしばキレート化が無効の場合に,あるいは重度のヒ素中毒に対してキレート化と同時に行う