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腎性尿崩症

執筆者:

L. Aimee Hechanova

, MD, Texas Tech University Health Sciences Center, El Paso

最終査読/改訂年月 2019年 1月

腎性尿崩症(NDI)では,バソプレシン(ADH)に対する尿細管の反応障害により尿濃縮ができず,大量の希釈尿の排泄がもたらされる。遺伝性に発生する場合と,腎臓の濃縮能を障害する病態に続発する場合がある。症状と徴候は,多尿および脱水のほか,高ナトリウム血症に関連するものがみられる。診断は,摂水制限後および外因性バソプレシン投与後の尿浸透圧変化の測定に基づく。治療は,十分な水分摂取,サイアザイド系利尿薬,NSAID,および低塩低タンパク質食で構成される。

(Professional.See also page 中枢性尿崩症。)

NDIは, バソプレシンに反応して尿を濃縮できないことを特徴とする。中枢性尿崩症は バソプレシンの欠損を特徴とする。いずれの病型の尿崩症も,完全または部分的な場合がある。

病因

NDIは以下の可能性がある:

  • 遺伝性

  • 後天性

遺伝性NDI

最も頻度の高い遺伝性NDIはX連鎖性であり,ヘテロ接合体の女性における浸透率は一定でなく, アルギニン バソプレシン(AVP)受容体2遺伝子に影響を及ぼす。ヘテロ接合体の女性では,全く症状がみられない場合もあれば,様々な程度の多尿および多飲がみられる場合もあり,男性と同等の重症度になることもある。

まれな症例では,NDIはアクアポリン2遺伝子に影響を及ぼす常染色体劣性または常染色体優性変異に起因し,男性および女性のいずれにも影響を及ぼす可能性がある。

後天性NDI

後天性NDIは疾患(多くは尿細管間質性疾患)または薬剤によって髄質または遠位ネフロンが損傷し,尿濃縮能が損なわれる結果,腎が バソプレシンに対して非感受性の様相を呈することで起こりうる。そのような疾患としては以下のものがある:

後天性NDIは特発性の場合もある。軽度の後天性NDIは,高齢もしくは重症の患者または急性もしくは慢性の腎機能不全を有する患者のいずれにも起こりうる。

さらに,特定の臨床症候群はNDIと類似する可能性がある:

  • 胎盤は,妊娠の後半期にはバソプレシナーゼを分泌することができる(妊娠尿崩症と呼ばれる症候群)。

  • 下垂体手術後に,一部の患者は バソプレシンではなく効力のないADH前駆体を分泌する。

症状と徴候

大量の希釈尿の生成(3~20L/日)が特徴である。患者は典型的に良好な口渇反応を有し,血清ナトリウム値はほぼ正常を維持する。しかしながら,適切な水分摂取が難しい環境にあるか,口渇を訴えることができない患者(例,乳児,認知症の高齢患者)は,典型的に極度の脱水のために高ナトリウム血症を発症する。高ナトリウム血症は神経症状を引き起こす場合があり,具体的には神経筋の興奮性亢進,錯乱,痙攣発作,昏睡などがある。

診断

  • 24時間尿量および浸透圧

  • 血清電解質

  • 水制限試験

多尿を呈する全ての患者でNDIが疑われる。乳児では,多尿が養育者によって気づかれる場合があり,それ以外の場合には脱水が最初の症状となることがある。

最初の検査には尿量および浸透圧に関する24時間蓄尿(水分制限はしない)および血清電解質がある。

NDI患者は1日の尿量が50mL/kgを上回る(多尿)。尿浸透圧が300mOsm/kg[300mmol/L]未満の場合(水利尿として知られる),中枢性尿崩症またはNDIの可能性が高い。NDIでは,尿浸透圧は循環血液量減少の臨床徴候にもかかわらず典型的には200mOsm/kg(200mmol/L)未満である(正常では尿浸透圧は循環血液量減少を呈する患者では高い)。浸透圧が300mOsm/kg(300mmol/L)を超える場合,溶質利尿の可能性が高い。糖尿および溶質利尿のその他の原因が除外されなければならない。

血清ナトリウム値は,水分を十分に摂取している患者では軽度に上昇するが(142~145mEq/Lまたは142~145mmol/L),水分摂取が不十分な患者では劇的に上昇することがある。

水制限試験

診断は最大尿濃縮能と外因性 バソプレシンに対する反応を評価する水制限試験によって確定される。

試験中は,尿量と尿浸透圧を1時間毎に測定し,血清浸透圧を2時間毎に測定する。3~6時間の摂水制限後,NDI患者の尿の最大浸透圧は異常低値を示す(300mOsm/kgまたは300mmol/L未満)。中枢性尿崩症( バソプレシンの欠如)からNDIの鑑別は,外因性 バソプレシン(水性バソプレシン5単位,皮下,またはデスモプレシン10μg,鼻腔内)を投与し,尿浸透圧を測定することで可能である。中枢性尿崩症患者では,外因性 バソプレシンの投与後2時間にわたり尿浸透圧が50~100%(部分型中枢性尿崩症では15~45%)上昇する。NDI患者では通常,尿浸透圧の上昇は最小限のみである(50mOsm/kg[50mmol/L]未満,部分的NDI患者では最大45%)。

予後

遺伝性NDIの乳児に対する治療が早期に開始されなかった場合には,恒久的な知的障害を伴う脳損傷が起こりうる。治療を行った場合も,患児の身体発育はおそらく頻回の脱水のためにしばしば遅滞する。NDIの合併症は,尿管拡張以外は,いずれも十分な水分摂取により予防が可能である。

治療

  • 十分な水分摂取

  • 塩分およびタンパク質の食事制限

  • 原因の是正

  • ときにサイアザイド系利尿薬,NSAID,アミロライド(amiloride

治療は,十分な水分摂取の確保,低塩低タンパク質食,および原因の是正または可能性の高い腎毒性物質の中止で構成される。随意の水分摂取が可能な患者においては,重篤な続発症はまれである。

これらの処置にもかかわらず症状が持続する場合は,尿量を低下させるため薬剤を投与することができる。サイアザイド系利尿薬(例,ヒドロクロロチアジド,25mg,経口,1日1回または1日2回)は,集合管の バソプレシン感受性部位への水の送達を低下させることで,逆説的に尿量を減少させることができる。NSAID(例,インドメタシン)またはアミロライド(amiloride)も有用な可能性がある。

要点

  • NDI患者は バソプレシンに対する尿細管の反応が障害されているため,尿を濃縮できない。

  • 典型的には大量の希釈尿の排泄がみられ,適切な口渇反応を呈し,血清ナトリウム値はほぼ正常である。

  • 多尿または家族歴を有する乳児では,遺伝性NDIを考慮して予防可能な神経学的後遺症を最小限にとどめる。

  • 24時間尿量および浸透圧ならびに血清電解質を測定する。

  • 診断は水制限試験によって確定する。

  • 十分な水分摂取を確保し,食事での塩分およびタンパク質の摂取を制限し,必要に応じてサイアザイド系利尿薬またはアミロライド(amiloride)を使用する。

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