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常染色体優性多発性嚢胞腎 (ADPKD)

執筆者:

Navin Jaipaul

, MD, MHS, Loma Linda University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 1月
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多発性嚢胞腎(PKD)は腎嚢胞を形成する遺伝性疾患で,両腎の段階的な腫大をもたらし,ときには腎不全に進行する。ほぼ全種類が家族性の遺伝子変異に起因する。症状と徴候は,側腹部痛,腹痛,血尿,高血圧などである。診断はCTまたは超音波検査による。治療は,腎不全に至る前は対症療法,腎不全発生後は透析または移植である。

病因

PKDの遺伝は以下の形式をとる:

  • 常染色体優性

  • 劣性

  • 散発性(まれ)

ADPKD症例の86~96%において,原因はタンパク質ポリシスチン1をコードする16番染色体のPKD1遺伝子の突然変異であり,その他の症例の大半はポリシスチン2をコードする4番染色体のPKD2遺伝子の突然変異に起因する。少数の家族性症例は,いずれの遺伝子座にも無関係である。

病態生理

ポリシスチン1は尿細管上皮細胞の接着と分化を調整する可能性があり,ポリシスチン2はイオンチャネルとして機能する場合があるため,突然変異により水分の分泌が嚢胞をもたらす。尿細管細胞は腎繊毛により尿流速度を感知することができ,これらのタンパク質の突然変異は,腎繊毛の機能を変化させる可能性がある。主要な仮説は,尿細管細胞の増殖と分化は尿流速度に関連しており,そのため繊毛の機能不全が嚢胞化をもたらす可能性があるとするものである。

疾患の早期には,尿細管が拡張し,徐々に糸球体性濾液で満たされる。最終的に,尿細管は機能しているネフロンから分離し,濾液ではなく分泌液によって満たされ,嚢胞を形成する。嚢胞内への出血が発生することがあり,血尿がもたらされる。患者は急性 腎盂腎炎 尿路感染症 (UTI) に関する序論 尿路感染症(UTI)は,腎臓(腎盂腎炎)が侵される上部尿路感染症と,膀胱(膀胱炎),尿道(尿道炎),および前立腺(前立腺炎)が侵される下部尿路感染症に分類される。しかしながら,実際には(特に小児では)感染部位の鑑別が困難または不可能な場合もある。さらに,感染はしばしば1つの領域から別の領域へと拡大する。尿道炎と前立腺炎も尿路が侵される感染... さらに読む ,嚢胞感染, 尿路結石 尿路結石 尿路結石とは,泌尿器系内に存在する固形の粒子のことである。結石は疼痛,悪心,嘔吐,および血尿を引き起こすことがあるほか,続発性の感染から悪寒および発熱がみられることもある。診断は尿検査および放射線学的検査のほか,通常は単純ヘリカルCTに基づく。治療は鎮痛薬,感染に対する抗菌薬療法,および薬剤による排石促進療法のほか,ときに衝撃波砕石術また... さらに読む (患者の20%)のリスクも高い。最終的には不明の機序により血管硬化および間質線維化が発生し,典型的に侵される尿細管は全体の10%未満であるが,約35~45%の患者では60歳までに腎不全が発生する。

腎以外の臨床像がよくみられる:

症状と徴候

常染色体優性多発性嚢胞腎は,早期においては通常無症候性である;患者の半数は症状を示さないまま推移し,腎機能不全も腎不全も一度も発症せず,診断されることもない。症状を呈する患者の大半は,20代末までに症状が出現する。

症状は嚢胞性腫大に起因する軽度の側腹部痛,腹痛,腰痛,感染症状などである。急性痛が発生する場合,通常嚢胞への出血または結石の通過が原因である。急性 腎盂腎炎 尿路感染症 (UTI) に関する序論 尿路感染症(UTI)は,腎臓(腎盂腎炎)が侵される上部尿路感染症と,膀胱(膀胱炎),尿道(尿道炎),および前立腺(前立腺炎)が侵される下部尿路感染症に分類される。しかしながら,実際には(特に小児では)感染部位の鑑別が困難または不可能な場合もある。さらに,感染はしばしば1つの領域から別の領域へと拡大する。尿道炎と前立腺炎も尿路が侵される感染... さらに読む では発熱がよくみられ,嚢胞が後腹膜腔へと破綻することで数週間にわたって持続する発熱がもたらされる可能性がある。 肝嚢胞 肝嚢胞 孤立性肝嚢胞は一般的に,腹部超音波検査またはCTで偶然発見される (1)。こうした嚢胞は通常は無症状で,臨床的な意義はない。まれな疾患である先天性多発性肝嚢胞(congenital polycystic liver)は,一般的には 腎臓の多嚢胞性疾患や他臓器の多嚢胞性疾患に合併する。成人では,進行性かつ結節性の肝腫大(ときに巨大となる)を... さらに読む が腫大または感染した場合,右上腹部痛が生じることがある。

弁膜症が症状を引き起こすことはまれであるが,ときに心不全を引き起こして弁置換術が必要となることもある。

未破裂の脳動脈瘤による症状と徴候は,何も認められないこともあれば,頭痛,悪心,嘔吐,および脳神経の障害を呈することもあり,これらの症状がある場合は即時の介入が必要である( Professional.see sidebar 脳内の血管病変 脳内の血管病変 脳内の血管病変 )。

徴候は非特異的で,血尿および高血圧(それぞれ約40~50%の患者で),ならびに20%の患者でネフローゼに達しない範囲のタンパク尿(成人で3.5g/24時間未満)などがある。貧血はその他の種類の 慢性腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 慢性腎臓病 と比較して少なく,おそらくエリスロポエチン産生が保存されているためである。疾患が進行すると,腎臓が著しく腫大して触知できる場合があり,上腹部および側腹部の膨満をもたらす。

診断

  • 超音波検査

  • ときにCTもしくはMRIまたは遺伝子検査

以下がみられる患者では多発性嚢胞腎を疑う:

  • 陽性の家族歴

  • 典型的な症状または徴候

  • 画像検査で偶然検出された嚢胞

診断検査を行う前に,特に患者が症状を呈していない場合は,患者にカウンセリングを受けさせるべきである。例えば,無症状の若年患者については,この年齢では疾患を是正する効果的な治療法が存在せず,診断を下せば患者の気分や生命保険に好ましい条件で加入できる可能性に悪影響が生じる可能性があることから,多くの専門家が検査を行わないことを推奨している。

診断は通常は画像検査により,両腎の全体にわたり強い嚢胞性変化がみられ,さらに典型的には腎腫大がみられ,機能的な組織を置換した嚢胞により虫食い状の様相を呈する。これらの変化は年齢とともに発生し,若年の患者では頻度が低いか,あっても明らかでない。

通常は最初に超音波検査を施行する。超音波検査の結果が確定的ではない場合は,CTまたはMRIを施行するが,これらはともに感度がより高い(特に造影剤を用いて施行した場合)。MRIは嚢胞および腎臓の体積を測定するのに特に有用である。

尿検査,腎機能検査,および血算を施行するが,これらの結果は特異的ではない。

尿検査では,軽度のタンパク尿および顕微鏡的または肉眼的血尿を検出できる。肉眼的血尿は,結石の排出または破裂した嚢胞からの出血に起因する可能性がある。膿尿は細菌感染症がない場合にも一般的であるため,感染の診断は尿検査と合わせて培養の結果および臨床所見(例,排尿困難,発熱,側腹部痛)に基づくべきである。初期においては,BUNおよびクレアチニンは正常またはやや高値であるが,緩徐に上昇し,特に高血圧の存在下では上昇する。まれに,血算で赤血球増多が検出される。

脳動脈瘤の症状を呈する患者は,高分解能CTまたはMRアンギオグラフィーが必要である。しかしながら,ほとんどの専門家は症状のない患者の脳動脈瘤のルーチンなスクリーニングを推奨していない。合理的なアプローチは,ADPKD患者のうち出血性脳卒中または脳動脈瘤の家族歴を有する患者に対するスクリーニングである。

PKD突然変異に関する遺伝子検査は,現在では以下の場合に限り施行されている:

  • PKDが疑われ,既知の家族歴を有していない患者

  • 画像検査の結果が確定的でない患者

  • 若年患者(例,30歳未満,これらの患者では画像検査はしばしば確定的ではない)で,診断を下さなければならない場合(例,腎ドナーの候補)

ADPKD患者の第1度近親者には,遺伝カウンセリングが推奨される。

予後

  • 診断時年齢が低い

  • 男性である

  • 鎌状赤血球形質がみられる

  • PKD1の遺伝子型

  • 腎臓が大きいか急速に増大する

  • 肉眼的血尿を認める

  • 高血圧がみられる

  • 黒人である

  • タンパク尿が増強している

嚢胞および腎体積の測定値は, 慢性腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 慢性腎臓病 および末期腎臓病に進行するリスクを,しばしばルーチンの臨床検査の結果が変化する前に予測する。例えば,嚢胞および腎臓の大きさは,年齢,タンパク尿の程度,血清BUN値またはクレアチニン値よりも,8年間の慢性腎臓病のリスクをより正確に予測する。腎臓の大きさは,進行の最も重要な予測因子である(特に,腎体積が合計1500mLを超えている場合) (1) 予後に関する参考文献 多発性嚢胞腎(PKD)は腎嚢胞を形成する遺伝性疾患で,両腎の段階的な腫大をもたらし,ときには腎不全に進行する。ほぼ全種類が家族性の遺伝子変異に起因する。症状と徴候は,側腹部痛,腹痛,血尿,高血圧などである。診断はCTまたは超音波検査による。治療は,腎不全に至る前は対症療法,腎不全発生後は透析または移植である。 (嚢胞性腎疾患の概要も参照のこと。) PKDの遺伝は以下の形式をとる:... さらに読む 予後に関する参考文献

ADPKDは腎癌のリスクを上昇させないが,ADPKD患者に腎癌が発生した場合は両側性である可能性が高くなる。まれに腎癌から死に至る。死因は通常,心疾患(ときに弁膜症),播種性感染,または脳動脈瘤破裂である。

予後に関する参考文献

治療

  • 合併症(例,高血圧,感染,腎不全)の管理

  • 支持療法

厳格な 高血圧のコントロール 治療 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,または原発性アルドステロン症に起因する。高血圧は重症となるか長期間持続しない限... さらに読む 治療 が必須である。典型的にはACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬が使用される。これらの薬剤は,血圧コントロールに加えて,腎瘢痕および腎機能低下に寄与する成長因子であるアンジオテンシンおよびアルドステロンの遮断にも有用である。 UTI 尿路感染症 (UTI) に関する序論 尿路感染症(UTI)は,腎臓(腎盂腎炎)が侵される上部尿路感染症と,膀胱(膀胱炎),尿道(尿道炎),および前立腺(前立腺炎)が侵される下部尿路感染症に分類される。しかしながら,実際には(特に小児では)感染部位の鑑別が困難または不可能な場合もある。さらに,感染はしばしば1つの領域から別の領域へと拡大する。尿道炎と前立腺炎も尿路が侵される感染... さらに読む は迅速に治療すべきである。嚢胞の経皮的吸引は,出血または圧迫に起因する重度の疼痛の軽減に役立つ場合があるが,長期の転帰には影響を及ぼさない。腎摘出は,巨大な腎腫大または再発性UTIによる重度の症状(例,疼痛,血尿)を緩和するための選択肢である。

慢性腎不全となった患者には,血液透析,腹膜透析,または腎移植が必要となる。ADPKDが移植片で再発することはない。ADPKD患者では,透析を行うことで,その他の腎不全患者集団と比べて高いHb値が維持される。

支持療法の1つとして,摂取した水分を安全に排泄できる患者では,水分(特に水)の摂取量を増やすことでバソプレシンの放出をたとえ一部だけでも抑制するという方法がある。

mTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬は,腎体積の増大を遅らせる可能性はあるが,腎機能の低下を遅らせることはないため,この種の薬剤をルーチンに使用するのは一般的でない。

バソプレシン受容体2拮抗薬のトルバプタンは,ADPKD患者で有益となりうる薬剤であるが,その使用はまだ推奨されていない。トルバプタンは腎体積の増大と腎機能の低下を遅らせるとみられているが,自由水利尿を介した有害作用(例,口渇,多飲,多尿)が生じる可能性があり,アドヒアランスの維持を困難にする恐れがある。トルバプタンは重度の肝不全を引き起こすとも報告されており,良好なリスク/ベネフィットバランスを確認するには,まだ長期成績のデータが不十分である。

治療に関する参考文献

  • Cadnapaphornchai MA, George DM, McFann K, et al: Effect of pravastatin on total kidney volume, left ventricular mass index, and microalbuminuria in pediatric autosomal dominant polycystic kidney disease.Clin J Am Soc Nephrol 9(5):889-896, 2014.

要点

  • 常染色体優性多発性嚢胞腎は1000人に約1人の頻度で発生する。

  • 約半数の患者では症状がみられないが,それ以外の患者では背部痛,腹痛,血尿,高血圧などの症状が通常は30歳未満で緩徐に始まり,35~45%の患者は60歳までに腎不全に陥る。

  • 腎以外の臨床像はよくみられ,具体的には脳動脈瘤,冠動脈瘤,心臓弁膜症,肝臓,膵臓,および腸管の嚢胞などがある。

  • PKDの診断は画像検査および臨床所見に基づき,遺伝子検査は,家族歴がない患者,画像検査の結果が確定的でない患者,若年で診断が管理に影響を及ぼす患者にのみ行う。

  • 無症状の患者におけるADPKDのスクリーニングや無症状のADPKD患者における脳動脈瘤のスクリーニングは,ルーチンには実施しない。

  • ADPKD患者の第1度近親者に遺伝カウンセリングを手配する。

  • 高血圧の管理と腎瘢痕または腎機能障害の予防を目的としてACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬を投与するとともに,他の合併症が発生した場合はその治療を行い,トルバプタンの使用を考慮する。

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