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薬物による肝障害

執筆者:

Steven K. Herrine

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2018年 1月
本ページのリソース

多くの薬物(例,スタチン系薬剤)により,無症状の肝酵素値(ALT,AST,アルカリホスファターゼ)の上昇がよく引き起こされる。一方,臨床的に重大な肝障害(例,黄疸,腹痛,そう痒),すなわちタンパク質合成が障害される肝機能障害(例,プロトロンビン時間[PT]延長,低アルブミン血症)はまれである。

参考文献

病態生理

DILIの病態生理は,薬物(またはその他の肝毒性物質)に応じて異なり,その多くは完全には解明されていない。薬剤性肝障害の機序の1つに薬物の細胞タンパク質に対する共有結合があり,その結果として免疫性の障害,細胞代謝経路の阻害,細胞の輸送ポンプの遮断,アポトーシスの誘導,ミトコンドリア機能の阻害などに至る。

一般に,以下の因子はDILIのリスクを増大させると考えられている:

  • 年齢18歳以上

  • 肥満

  • 妊娠

  • 薬剤使用と同時の飲酒

  • 遺伝子多型(認識が高まりつつある)

肝障害のパターン

DILIは,予測可能な場合(通常は曝露後すぐに障害が現れ,用量依存性がある場合)と,予測不能な場合(一定の潜伏期間を経てから障害が発生し,かつ用量依存性がない場合)がある。予測可能なDILI(一般的にはアセトアミノフェン中毒 アセトアミノフェン中毒 アセトアミノフェン中毒は,摂取から数時間以内に胃腸炎,および1~3日後に肝毒性を引き起こしうる。単回急性過剰摂取後の肝毒性の重症度は,血清アセトアミノフェン濃度から予測される。治療は,肝毒性を予防するかまたは最小限に抑えるN-アセチルシステインによる。 (中毒の一般原則も参照のこと。) アセトアミノフェンはOTCで販売されている100種類を超える製品に含まれている。製品には多数の小児用の液剤,錠剤,およびカプセル剤や,多数の鎮咳薬および... さらに読む )は,米国における急性黄疸 黄疸 黄疸とは,高ビリルビン血症によって皮膚および粘膜が黄色化した状態である。ビリルビン値が約2~3mg/dL(34~51μmol/L)になると,肉眼的に黄疸が明らかとなる。 (肝臓の構造および機能と肝疾患を有する患者の評価も参照のこと。) ビリルビンの大半は,ヘモグロビンが非抱合型ビリルビン(と他の物質)に分解される際に生成される。非抱合型ビリルビンは,血中でアルブミンと結合して肝臓に輸送され,肝細胞に取り込まれ,グルクロン酸抱合を受けて水... さらに読む 黄疸 および急性肝不全 急性肝不全 急性肝不全は,薬物および肝炎ウイルスによって引き起こされる場合が最も多い。主な臨床像は,黄疸,凝固障害,および脳症である。診断は臨床的に行う。治療は支持療法が中心であるが,ときに肝移植および/または特異的な治療(例,アセトアミノフェンの毒性に対するN-アセチルシステイン)も行う。 (肝臓の構造および機能と肝疾患を有する患者の評価も参照のこと。) 肝不全には,いくつかの分類法があるが,普遍的に受け入れられているものはない(Professi... さらに読む の一般的な原因となっている。予測不能なDILIが重度の肝疾患の原因となることはまれである。症状のないDILI は過小報告されている可能性がある。

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  • 肝細胞障害型:肝細胞障害型肝毒性は,一般に倦怠感と右上腹部痛として発現し,アミノトランスフェラーゼ値(ALT,AST,または両方)の著明な上昇を伴い,重症例では高ビリルビン血症を続発することがある。この場合の高ビリルビン血症は,肝細胞性黄疸として知られており,Hy's lawによると,死亡率は50%にも及ぶ。肝細胞性肝障害に黄疸,肝合成障害,および脳症が併発した場合,自然回復の可能性は低くなるため,肝移植 肝移植 肝移植は,実質臓器の移植の中で2番目に多い。(移植の概要も参照のこと。) 肝移植の適応としては以下のものがある: 肝硬変(米国では移植全体の70%;そのうち60~70%がC型肝炎によるもの) 劇症型の肝壊死(fulminant hepatic necrosis)(約8%) 肝細胞癌(約7%) さらに読む を考慮すべきである。この種類の肝障害は,アセトアミノフェンやイソニアジドなどの薬物によって発生しうる。

  • 胆汁うっ滞型:胆汁うっ滞型肝毒性は,血清アルカリホスファターゼ値の著明な上昇を伴うそう痒および黄疸を特徴とする。通常,この種類の肝障害は肝細胞障害性の重度の症候群より軽度であるが,回復に時間を要する場合がある。この種類の肝障害を引き起こすことが知られている物質には,アモキシシリン/クラブラン酸,クロルプロマジンなどがある。まれに,胆汁うっ滞型肝毒性から慢性肝疾患や胆管消失症候群(肝内胆管の進行性崩壊)に至ることがある。

  • 混合型:これらの臨床症候群では,アミノトランスフェラーゼ値とアルカリホスファターゼ値のどちらにも明らかな優位性が認められない。症状も混在することがある。この種類の肝障害はフェニトインなどの薬物によって発生しうる。

診断

  • 臨床検査値異常の特徴的パターンの同定

  • 他の原因の除外

臨床像は多岐にわたり,無症状の場合から,非特異的症状(例,倦怠感,悪心,食欲不振)のみの場合,さらには黄疸,肝合成障害,脳症を生じる場合もある。DILIの早期発見により予後は改善される。

確定診断を可能にする検査法はないため,肝疾患の他の原因,特にウイルス性,胆汁性,アルコール性,自己免疫性,代謝性を除外しなければならない。薬物の再投与は,診断の根拠を高められる可能性はあるが,避けるべきである。DILIが疑われる症例は, MedWatch(FDAの薬物有害反応モニタリングプログラム)に報告すべきである。

パール&ピットフォール

  • 肝障害の原因と疑われる薬剤を再投与しないこと。

治療

  • 早期の投薬中止

管理としては被疑薬の中止が重要であり,早期に中止できれば,通常は回復に向かう。重症例,特に肝細胞性黄疸や肝機能障害がみられる患者では,肝移植 肝移植 肝移植は,実質臓器の移植の中で2番目に多い。(移植の概要も参照のこと。) 肝移植の適応としては以下のものがある: 肝硬変(米国では移植全体の70%;そのうち60~70%がC型肝炎によるもの) 劇症型の肝壊死(fulminant hepatic necrosis)(約8%) 肝細胞癌(約7%) さらに読む が必要になる可能性もあるため,専門医へのコンサルテーションが必要である。DILIに対する解毒剤が使用できるのは,ごく限られた肝毒性物質のみであるが,そのような解毒剤としては,アセトアミノフェンの毒性に対するN-アセチルシステイン,タマゴテングタケの毒性に対するシリマリンまたはペニシリンなどがある。

予防

DILIを回避するための努力は薬剤の開発段階から始められるが,小規模な前臨床試験で安全と思われても,広く使用されるようになった後の最終的な安全性が保証されるわけではない。今日では,FDAにより市販後調査がますます強く義務づけられるようになっているが,この調査により肝毒性を起こす可能性のある薬剤に注意を向けることが可能になる。

米国National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK)は,処方薬,OTC薬,および代替医療(ハーブ製品や栄養補助食品 栄養補助食品の概要 栄養補助食品は広く入手可能であり,比較的安価であり,医療従事者への相談なく購入できることなどから,全ての補完代替療法の中で最もよく用いられている。 米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)による栄養補助食品の法的規制は医薬品とは異なる。FDAは品質管理および優良な製造工程を規制するが,有効成分の... さらに読む など)が原因で発生した肝障害の重症例について情報収集と解析を行うために, LiverToxデータベースを構築した。これは,薬剤やサプリメントに関連した既知の肝毒性に関して容易にアクセス可能で正確な情報を提供する,検索可能なデータベースである。

肝酵素値のルーチンのモニタリング結果によると,肝毒性の発生率低下は示されていない。ファーマコゲノミクスを応用することで,個々の患者に合わせた薬剤使用が可能となり,感受性の高い患者に生じうる毒性を回避できる可能性がある。

要点

  • 薬剤による異常としては,臨床的に明らかな肝傷害や肝機能不全よりも,症状を伴わない肝機能検査値の異常の方がはるかに多くみられる。

  • 薬剤性肝障害(DILI)の危険因子としては,年齢18歳以上,肥満,妊娠,現在の飲酒,特定の遺伝子多型などがある。

  • DILIは,予測可能で用量依存性がある場合と,予測不能で用量依存性のない場合がある。

  • DILIには,肝細胞障害型,胆汁うっ滞型(通常は肝細胞障害型より重篤でない),および混合型がある。

  • 診断を確定するためには,肝疾患の他の原因,特にウイルス性,胆汁性,アルコール性,自己免疫性,代謝性の原因を除外する。

  • 肝障害の原因と疑われる薬剤を患者に再投与しないこと。

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