(肝臓の血管障害の概要も参照のこと。)
中等度または重度の右心不全によって中心静脈圧が上昇し,その圧が下大静脈と肝静脈を介して肝臓にまで伝わる。慢性のうっ血により肝細胞の萎縮,類洞の拡張,小葉中心性の線維化が生じ,重度になると肝硬変(心臓性肝硬変)に進行する。肝細胞死の基礎的な原因は,おそらく類洞血栓症が中心静脈と門脈分枝に拡大する結果,虚血が生じるためと考えられる。
大半の患者は無症状である。しかしながら,中等度のうっ血では右上腹部の不快感(肝被膜の進展による)および圧痛を伴う肝腫大が生じる。重度のうっ血では,巨大な肝腫大と黄疸が生じる。中心静脈圧の上昇が伝播することで腹水が生じることもあり,まれに脾腫に至る。中心静脈圧の上昇が伝播すると,肝頸静脈逆流が生じるが,この点はバッド-キアリ症候群による肝うっ血と異なる。