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肝細胞癌

執筆者:

Steven K. Herrine

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2016年 8月
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肝細胞癌(hepatoma)は通常,肝硬変患者に発生し,B型およびC型肝炎ウイルス感染症の有病率が高い地域ではよくみられる。症状と徴候は通常,非特異的である。診断はα-フェトプロテイン(AFP)値と画像検査のほか,ときに肝生検に基づく。高リスク患者には,定期的なAFPの測定および超音波検査によるスクリーニングがときに推奨される。癌が進行した場合の予後は不良であるが,肝臓に限局した小さな腫瘍であれば,アブレーション治療で症状を緩和でき,外科的切除または肝移植ではときに治癒が得られる。

肝細胞癌は最も頻度の高い原発性肝癌であり,米国では2012年の新規症例が23,000例,死亡例が14,000例発生すると推定されている。しかしながら,米国以外,特に東アジアやサハラ以南アフリカではさらに頻度が高く,一般にその発生率は慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染の有病率と相関する(1)

病因

通常,肝細胞癌は肝硬変の合併症である。

HBVの存在は,HBVキャリアにおける肝細胞癌の発生リスクを100倍以上に高めている。HBV-DNAが宿主のゲノムに組み込まれると,たとえ慢性肝炎や肝硬変がなくとも,悪性化が進行する可能性がある。

肝細胞癌を引き起こすその他の疾患としては,C型肝炎ウイルス(HCV)慢性感染症による肝硬変,ヘモクロマトーシスアルコール性肝硬変などがある。他の病態による肝硬変の患者でもリスクが高い。

環境発癌物質が何らかの役割を果たす場合もあり,例えば,亜熱帯地域で肝細胞癌の発生率が高いことには,真菌のアフラトキシンに汚染された食物の摂取が寄与していると考えられている。

症状と徴候

最も一般的には,それまで安定していた肝硬変患者が腹痛,体重減少,右上腹部腫瘤,原因不明の健康状態の悪化などを訴えて受診する。発熱がみられる場合もある。少数の患者では,腫瘍の出血による血性腹水,ショック,または腹膜炎が肝細胞癌の初発症状となる場合もある。ときに,肝臓の摩擦音または血管雑音が聴取される。

ときに,低血糖,赤血球増多,高カルシウム血症,高脂血症など,全身性の代謝性合併症を来す。これらの合併症は臨床的に顕在化することもある。

診断

  • α-フェトプロテイン(AFP)の測定

  • 画像検査(CT,超音波検査,またはMRI)

以下の場合,肝細胞癌を疑う:

  • 肝臓が大きくなったように感じる。

  • 慢性肝疾患が代償不全となったが,原因を説明できない。

  • 他の理由で行われた画像検査において,右上腹部に腫瘤が検出される(特に肝硬変がある場合)。

ただし,スクリーニングプログラムにより,症状が出現する前に多くの肝細胞癌を発見することが可能になっている。

診断はAFPの測定と画像検査に基づく。成人では,AFP値の上昇は肝細胞の脱分化を意味し,肝細胞癌を示唆する場合が最も多く,この癌を有する患者の40~65%がAFP高値(> 400μg/L)を示す。それ以外でのAFP高値は,はるかに頻度の低い腫瘍である精巣の奇形癌を除いて,まれである。これより低値では特異度が低く,肝細胞の再生(例,肝炎)でも認められる。AFP-L3(AFP分画)やdes-γ-carboxyprothrombinなどの他の血液検査が,肝細胞癌の早期発見に使用するためのマーカーとして研究されている。

最初の画像検査は,各施設での選択と設備に応じて造影CT,超音波検査,またはMRIとなる。肝動脈造影は,判断の難しい症例で有用となるほか,アブレーション治療や外科手術を計画している際に血管解剖の概況を把握するために用いることもできる。

画像で特徴的所見を認め,かつAFPが高値であれば,診断は明白である。ときに確定診断に肝生検が必要になり,しばしば超音波またはCTガイド下で行われる。

病期分類

肝細胞癌と診断された場合,その後の評価としては通常,胸部単純CT,血栓症を除外するためのMRIまたは造影CTによる門脈の画像検査(未施行の場合),ときに骨シンチグラフィーなどを行う。

肝細胞癌の病期分類には様々な分類法を用いることができるが,普遍的に使用されているものはない。TNM分類はその1つであり,以下のように定義されている( 肝細胞癌の病期分類*):

  • T:原発腫瘍がいくつあり,どの程度の大きさで,隣接臓器に癌が浸潤しているか

  • N:癌が周囲のリンパ節に転移しているかどうか

  • M:癌が他の臓器に転移しているかどうか

T,N,Mの後ろに数字(0~4)を添えて,重症度を示す。

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肝細胞癌の病期分類*

病期

記号表記

説明

I

T1,N0,M0

腫瘍の数は1つで(大きさは問わない),血管への浸潤はない

II

T2,N0,M0

腫瘍の数は1つで(大きさは問わない),血管への浸潤がある

または

腫瘍が複数あり,大きさは全て5cm未満である

IIIA

T3a,N0,M0

腫瘍が複数あり,少なくとも1つが5cmを超える

IIIB

T3b,N0,M0

腫瘍の数と大きさは問わず,門脈または肝静脈の主要分枝への浸潤がみられる

IIIC

T4,N0,M0

腫瘍の数と大きさは問わず,胆嚢以外の隣接臓器に浸潤しているか,臓側腹膜を越えて浸潤している

IVA

Any T,N1,M0

腫瘍の数と大きさは問わず,周囲のリンパ節(所属リンパ節)への転移がみられる

IVB

Any T,Any N,M1

腫瘍の数と大きさは問わず,遠隔転移がみられる

*Adapted from the American Joint Committee on Cancer (AJCC):AJCC Cancer Staging Manual,ed. 7.New York, Springer, 2010.

その他のスコア分類システムとして,奥田分類やBarcelona-Clinic Liver Cancer病期分類などがある。これらの分類法には,腫瘍の大きさ,局所進展,および転移に加えて,肝疾患の重症度に関する情報が組み込まれている。

腫瘍切除(とおそらくは肝移植)を受ける患者の予後予測にはTNM分類が他の分類法より優れている一方,手術を受けない患者の予後予測にはBarcelona分類の方が優れている可能性がある (詳細な情報については肝細胞癌の病期分類を参照のこと)。

スクリーニング

スクリーニングプログラムを通じて,より多くの肝細胞癌が検出されるようになってきている。肝硬変患者のスクリーニングは合理的である,この措置については議論があり,死亡率の低下は示されていない。一般的なスクリーニング方法の1つは,6~12カ月毎の超音波検査である。長期にわたるB型肝炎の患者には,たとえ肝硬変がなくとも,多くの専門家がスクリーニングを勧めている。

治療

  • 腫瘍が小さく,数が少ない場合は,肝移植

肝細胞癌の治療は,その病期によって異なる(1)

腫瘍が1つで5cm未満または3つ以下で全て3cm以下の場合は,肝移植によって癌以外の疾患で施行される肝移植と同等の良好な予後が期待できる。あるいは,外科的切除を行ってもよいが,通常は再発する。

アブレーション治療(例,肝動脈化学塞栓療法,イットリウム90マイクロスフェアによる塞栓術[選択的内照射療法すなわちSIRT],薬剤溶出性ビーズによる動脈塞栓術,ラジオ波焼灼術)は症状を緩和し,腫瘍の増殖を遅らせるが,これらは肝移植の待機中に用いられる。

腫瘍が大きい(5cmを超える)場合,多発性の場合,門脈浸潤がある場合,または転移性(III期以上)の場合には,予後がはるかに不良となる(例,5年生存率は約5%またはそれ以下)。放射線療法は通常無効である。ソラフェニブは転帰を改善するようである。

治療に関する参考文献

  • Bruix J, Reig M, Sherman M. Evidence-based diagnosis, staging, and treatment of patients with hepatocellular carcinoma. Gastroenterology 50(4):835-853, 2016. doi: 10.1053/j.gastro.2015.12.041.

予防

HBVに対するワクチンの使用は,最終的に肝細胞癌の発生率を低下させ,特に流行地域では効果が大きい。肝硬変(原因は問わない)の発生予防(例,C型慢性肝炎の治療,ヘモクロマトーシスの早期発見,またはアルコール依存症の管理など)にも大きな効果がある。

要点

  • 肝細胞癌は通常,肝硬変の合併症として発生し,世界的にはB型肝炎の有病率が高い地域で最も頻度が高い。

  • 身体診察や画像検査で肝臓の腫大を認めた場合,または慢性肝疾患に原因不明の悪化がみられた場合,本症を考慮する。

  • 肝細胞癌の診断は,AFP値と肝臓の画像検査結果に基づいて行い,胸部単純CT,門脈画像検査,ときに骨シンチグラフィーを用いて病期を診断する。

  • 腫瘍が小さく,少数の場合は,肝移植を考慮する。

  • 予防には,B型肝炎ワクチンの使用と肝硬変を引き起こす病態の管理が含まれる。

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