孤立性肝嚢胞は一般的に,腹部超音波検査またはCTで偶然発見される (1) 参考文献 孤立性肝嚢胞は一般的に,腹部超音波検査またはCTで偶然発見される (1)。それらの嚢胞は通常は症状を引き起こさず,臨床的な意義はない。まれな疾患である先天性多発性肝嚢胞(congenital polycystic liver)は,一般的には 腎臓の多嚢胞性疾患や他臓器の多嚢胞性疾患に合併する。成人では,進行性かつ結節性の肝腫大(ときに巨大... さらに読む 。それらの嚢胞は通常は症状を引き起こさず,臨床的な意義はない。まれな疾患である先天性多発性肝嚢胞(congenital polycystic liver)は,一般的には 腎臓の多嚢胞性疾患 常染色体優性多発性嚢胞腎 (ADPKD) 多発性嚢胞腎(PKD)は腎嚢胞を形成する遺伝性疾患で,両腎の段階的な腫大をもたらし,ときには腎不全に進行する。ほぼ全種類が家族性の遺伝子変異に起因する。症状と徴候は,側腹部痛,腹痛,血尿,高血圧などである。診断はCTまたは超音波検査による。治療は,腎不全に至る前は対症療法,腎不全発生後は透析または移植である。... さらに読む や他臓器の多嚢胞性疾患に合併する。成人では,進行性かつ結節性の肝腫大(ときに巨大となる)を引き起こす。しかしながら,肝細胞の機能は著しく良好に維持されており, 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の... さらに読む の発生はまれである。ときに,非常に大きな嚢胞が他臓器を圧迫して疼痛や症状を引き起こす。このような例では,嚢胞の開窓術やドレナージなどの介入を考慮してもよいが,しばしば嚢胞が再発する。そのため,まれに,重大な症状やQOLの問題により 肝移植 肝移植 肝移植は,実質臓器の移植の中で2番目に多い。( 移植の概要も参照のこと。) 肝移植の適応としては以下のものがある: 肝硬変(米国では移植全体の70%;そのうち60~70%がC型肝炎によるもの) 劇症型の肝壊死(fulminant hepatic necrosis)(約8%) 肝細胞癌(約7%) さらに読む が検討されることもある。
その他の肝嚢胞としては以下のものがある:
カロリ病:肝内胆管の区域性の嚢胞性拡張を特徴とするまれな常染色体劣性遺伝疾患で,成人期に症状が出現することが多く,結石形成, 胆管炎 総胆管結石症および胆管炎 総胆管結石症は,胆管内に結石が存在する病態であり,それらの結石は胆嚢内または胆管内で形成される。結石により胆道仙痛,胆道閉塞,胆石性膵炎,または胆管炎(胆管の感染と炎症)が引き起こされる。胆管炎が発生すると,狭窄,うっ滞,および総胆管結石症につながりうる。診断には通常,磁気共鳴胆道膵管造影または内視鏡的逆行性胆道膵管造影による画像検査が必... さらに読む ,ときに 胆管癌 胆管癌 原発性肝癌は通常, 肝細胞癌である。肝癌の初期の臨床像は非特異的であるのが通常で,これが診断の遅れにつながる。進行期で診断された場合,予後は不良である。 その他の原発性肝癌は,一般的でないかまれである。診断には通常, 肝生検を要する。予後は一般的に不良である。 限局性のがんは切除可能な場合もある。切除または... さらに読む を合併する。
嚢胞腺腫:ときに疼痛や食欲不振を引き起こし,超音波検査で明らかとなるまれな疾患で,治療は嚢胞の切除である。
嚢胞腺癌 嚢胞腺癌 原発性肝癌は通常, 肝細胞癌である。肝癌の初期の臨床像は非特異的であるのが通常で,これが診断の遅れにつながる。進行期で診断された場合,予後は不良である。 その他の原発性肝癌は,一般的でないかまれである。診断には通常, 肝生検を要する。予後は一般的に不良である。 限局性のがんは切除可能な場合もある。切除または... さらに読む :おそらく嚢胞腺腫の悪性化により生じるまれな疾患で,しばしば多小葉性に発生し,治療は肝切除である。
その他の真性嚢胞性腫瘍:この種の腫瘍はまれである。
参考文献
Marrero JA, Ahn J, Rajender Reddy K, et al: ACG clinical guideline: The diagnosis and management of focal liver lesions.Am J Gastroenterol 109(9):1328-1347, 2014. doi: 10.1038/ajg.2014.213.