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門脈大循環性脳症

執筆者:

Steven K. Herrine

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2018年 1月
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門脈大循環性脳症は精神神経症状を生じる症候群である。ほとんどの場合,門脈大循環シャントが形成された患者において,腸管内タンパク質の増加または急性の代謝ストレス(例,消化管出血,感染,電解質異常)の結果として発生する。主に精神神経症状がみられる(例,錯乱,羽ばたき振戦,昏睡)。診断は臨床所見に基づく。治療は通常,原因となっている急性の病態の是正,植物性タンパク質を主要なタンパク質源とする食事,ラクツロースの経口投与,ならびにリファキシミンなどの非吸収性抗菌薬の投与である。

門脈大循環性脳症という用語は,肝性脳症や肝性昏睡より適格に病態生理を表しているが,これら3つの用語はどれも同義的に用いられている。

病因

門脈大循環性脳症は,ウイルス,薬物,または毒性物質による 劇症肝炎 劇症肝炎 劇症肝炎は,肝実質の広範な壊死と肝臓の縮小(急性黄色肝萎縮症)を特徴とし,通常は特定の肝炎ウイルスへの感染後,毒性物質への曝露後,または薬剤性肝障害の発生後にみられる,まれな症候群である。 ( 肝疾患を有する患者の評価と 急性ウイルス性肝炎の概要も参照のこと。) B型肝炎ウイルスはときに劇症肝炎の原因とされるが,B型劇症肝炎症例の最大50%では,D型肝炎ウイルスの同時感染がみられる。A型肝炎ウイルスによる劇症肝炎はまれであるが,肝疾患の... さらに読む で生じることもあるが, 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の予防のほか,ときに門脈下大静脈吻合術または肝移植を行う。... さらに読む の結果として門脈大循環間の側副血行路が広範に生じた 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には,門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む やその他の慢性疾患で発生することの方が一般的である。また,門脈と大静脈の間での外科的吻合(門脈下大静脈吻合術,経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術[TIPS])など,門脈大循環吻合が施行された後にも脳症が生じることがある。

促進因子

慢性肝疾患の患者では,可逆的な原因により急性の脳症が発生しやすくなるのが通常である。最も頻度が高いのは以下のものである:

  • 代謝ストレス(例,感染症,電解質平衡異常[特に低カリウム血症],脱水,利尿薬の使用)

  • 腸管内タンパク質を増加させる状態(例,消化管出血,高タンパク質食)

  • 非特異的な中枢抑制薬(例,アルコール,鎮静薬,鎮痛薬)

病態生理

門脈大循環シャントでは,本来は肝臓で解毒される吸収物質がそのまま第循環に入り,脳に到達して(特に大脳皮質で)毒性を引き起こす。脳に毒性を及ぼす物質は厳密には明らかにされていない。タンパク質の消化産物であるアンモニアが原因物質として重要であるが,その他の因子(例,脳内のベンゾジアゼピン受容体の変化やγ‐アミノ酪酸[GABA]による神経伝達)も関与している可能性がある。通常は芳香族アミノ酸の血清中濃度が高く,分枝鎖アミノ酸の濃度は低いが,これらはおそらく脳症の原因とならない。

症状と徴候

脳症の症状と徴候は進行期に生じる傾向がある( Professional.see table 門脈大循環性脳症の臨床病期 門脈大循環性脳症の臨床病期 門脈大循環性脳症の臨床病期 )。

症状は通常,脳機能が中等度に障害されるまで明らかにならない。構成失行は早期にみられ,患者は簡単な図形(例,星印)さえ再現できなくなる。激越や躁病が起こりうるが,まれである。特徴的な羽ばたき振戦(asterixis)は,患者の腕を前に伸ばして手関節を背屈させると誘発される。神経脱落症状は通常,対称性にみられる。昏睡の神経学的徴候は通常,両側性に生じたびまん性の半球障害を反映する。脳幹機能障害の徴候は進行した昏睡のみで生じ,死亡の数時間前から数日前にみられることが多い。かび臭く甘い口臭(肝性口臭)は,脳症のいずれの病期でも起こりうる。

診断

  • 臨床的評価

  • しばしば心理測定学的評価,アンモニア値,脳波検査,またはこれらの組合せによる補助検査

  • その他の治療可能な疾患の除外

最終的な診断は臨床所見に基づくが,以下の検査が有用となりうる:

  • 心理測定学的検査では微妙な神経精神医学的異常が判明することがあり,それが早期の脳症の確定に役立つ可能性がある。

  • 通常はアンモニア値を測定する。

  • 脳波検査では通常,軽度の症例でもびまん性の徐波がみられ,感度は高いが,早期の脳症では特異度が高くない。

髄液検査をルーチンに行う必要はなく,通常認められる異常は軽度のタンパク質高値のみである。

類似の臨床像を呈しうる他の可逆的な病態(例,感染症,硬膜下血腫,低血糖,中毒)を除外すべきである。門脈大循環性脳症と確定診断した場合は,促進因子を検索すべきである。

予後

慢性肝疾患では,促進因子を是正することで,永続的な神経学的後遺症を残すことなく脳症は回復する。一部の患者,特に門脈下大静脈吻合術またはTIPSを受けた患者には,継続的な治療が必要であり,まれに不可逆的な錐体外路徴候や痙性不全麻痺が発生する。劇症肝炎に伴う昏睡(4期脳症)は,集中的な治療を行っても最大80%の患者が死亡し,進行した慢性肝不全と門脈大循環性脳症が併発しても,しばしば致死的となる。

治療

  • 原因の治療

  • ラクツロースの経口投与または浣腸による腸管洗浄

  • 野菜を主要なタンパク質源とする食事

  • リファキシミンやネオマイシンなどの非吸収性抗菌薬の経口投与

原因の治療により通常,軽度の症例では回復が得られる。腸管由来の有毒物質を排除することがもう1つの目標であるが,これはいくつかの方法で達成できる。腸管を洗浄するために浣腸または(より多くは)ラクツロースシロップの経口投与(昏睡患者にも経管的に投与可能)を行う。この合成二糖類は浸透圧性下剤である。この二糖類はまた,大腸内pHと便中でのアンモニア産生を低下させる。初回投与では30~45mLを1日3回経口投与し,1日当たり2~3回の軟便が続くように調節すべきである。食事でのタンパク質摂取は,野菜を中心として,1日当たり約1.0mg/kgとすべきである。リファキシミンやネオマイシンなどの非吸収性抗菌薬の経口投与は,肝性脳症に対して効果的である。ネオマイシンは聴器毒性や腎毒性を引き起こしうるアミノグリコシド系薬剤であるため,通常はリファキシミンが望ましい。

鎮静は脳症を悪化させるため,可能な限り避けるべきである。劇症肝炎による昏睡では,合併症の予防および治療とともに,綿密な支持療法と看護を行うことで生存の可能性が高まる。高用量のコルチコステロイド投与や交換輸血,その他循環血中毒素を除去するための複雑な手技を行っても,一般に転帰は改善しない。劇症肝不全のために病状が悪化した患者は,肝移植で救済できる場合がある。

その他の治療法として,レボドパ,ブロモクリプチン,フルマゼニル,安息香酸ナトリウム,分枝鎖アミノ酸の輸液,必須アミノ酸のケトアナログ,プロスタグランジンなどがあるが,いずれも有効性は証明されていない。複雑な血漿濾過装置(人工肝)の効果が有望とされているが,さらなる研究が必要である。

より詳細な情報

American Association for the Study of Liver Diseases: Hepatic Encephalopathy in Chronic Liver Disease 2014 Practice Guideline

要点

  • 門脈大循環性脳症は神経精神医学的な症候群であり,門脈大循環シャントのために本来は肝臓で解毒される吸収物質が脳に到達するために発生する。

  • 臨床像としては,認知および行動障害(例,錯乱,昏睡を含む意識障害)や神経筋障害(例,羽ばたき振戦,運動失調,反射亢進,反射低下)などがみられる。

  • 門脈大循環性脳症は主に臨床所見に基づいて診断するが,通常は血中アンモニア値を測定し,徴候が微妙ないしない場合は,神経心理学的検査を施行する。

  • その他の治療可能な疾患(例,硬膜下血腫,低血糖,中毒)を除外し,脳症の誘因(例,感染,消化管出血,電解質異常)を検索する。

  • 脳症の原因を治療するとともに,腸管洗浄(浣腸またはラクツロースの経口投与による),野菜をタンパク質源とする食事制限,ならびにリファキシミンまたはネオマイシンの経口投与により脳症自体も治療する。

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