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肝臓の構造および機能

執筆者:

Danielle Tholey

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

レビュー/改訂 2021年 1月
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肝臓は代謝的に複雑な臓器である。肝細胞(肝実質細胞)は以下の肝代謝機能を担っている:

肝臓の構造の概要

細胞レベルでは,隣り合って平行に走る胆管,門脈,および肝動脈の終枝が門脈三管を形成しており,肝細胞を区画している。肝静脈の終枝は肝小葉の中心部に位置する。血液は門脈三管から肝細胞を通り静脈枝を介して小葉の中心部に注ぎ込むため,小葉の中心部は最も虚血に陥りやすくなっている。

肝臓の構造

肝臓は肝静脈(中心静脈)の終枝を取り囲む小葉から構成される。小葉間には門脈三管がある。個々の門脈三管は胆管,門脈,肝動脈から構成される。

肝臓の構造

ビリルビン代謝の概要

ヘモグロビンが分解されると,ビリルビン(不溶性の老廃物)とその他の胆汁色素が生じる。ビリルビンが排泄されるためには水溶性に変化する必要がある。この変化は生成,血漿輸送,肝臓への取込み,抱合,胆汁排泄という5つの段階を経る。

生成:毎日約250~350mgの非抱合型ビリルビンが生成されており,その70~80%は変性した赤血球の分解産物で,20~30%(early-labeled bilirubin)は主に骨髄や肝臓に存在する他のヘムタンパク質に由来する。ヘモグロビンは鉄とビリベルジンに分解され,ビリベルジンはビリルビンに変換される。

血漿輸送:非抱合型(間接)ビリルビンは水に溶けないため,血漿中の輸送はアルブミンに結合した状態で進行する。この状態では糸球体膜を通過して尿中に出ることはできない。アルブミンとの結合は特定の状況で弱まり(例,アシドーシス),また物質によっては(例,サリチル酸系薬剤,特定の抗菌薬)結合部位が競合する。

肝臓への取込み:肝臓は急速にビリルビンを取り込むが,結合した血清アルブミンは取り込まない。

抱合:肝臓内の非抱合型ビリルビンは抱合され,主にビリルビンジグルクロニド(抱合型[直接]ビリルビン)を形成する。この反応は,ミクロソーム酵素であるグルクロン酸転移酵素によって触媒され,ビリルビンを水溶性に変化させる。

ビリルビン排泄:隣接し合う肝細胞で形成された微小な毛細胆管が次第に集合して,集合胆管,小葉間胆管,より大きな肝管を形成していく。肝門の外では,総肝管は胆嚢由来の胆嚢管と接続して総胆管を形成し,ファーター膨大部で十二指腸に注ぐ。

抱合型ビリルビンは他の胆汁成分とともに毛細胆管へ排泄される。腸管では,細菌によってビリルビンが代謝されてウロビリノーゲンが生成され,その大部分はさらにステルコビリンに代謝され,これが便を褐色に着色する。完全な胆道閉塞があると,便は正常色を失って,薄い灰色(粘土色の便)になる。一部のウロビリノーゲンは再吸収され,肝細胞によって抽出され,胆汁中へ再排泄される(腸肝循環)。少量は尿中に排泄される。

抱合型ビリルビンは尿中へ排泄されるが,非抱合型ビリルビンは排泄されないため,ビリルビン尿は抱合型高ビリルビン血症(例,肝細胞性または胆汁うっ滞性黄疸による)のみでみられる。

肝疾患の病態生理

肝疾患は,感染症,薬剤,毒素,虚血,および自己免疫疾患などの様々な損傷によって起こる。ときに 術後に肝疾患が発生する 術後の肝機能障害 大手術後には,たとえ肝疾患の病歴がなくとも,ときに軽度の肝機能障害が発生する。この機能障害は通常,肝虚血または麻酔薬の作用(十分に解明されていない)によって生じる。代償能が保たれた肝疾患(例,肝機能が正常な 肝硬変)を有する患者は,通常は手術に十分耐えることができる。ただし,手術によって既存の肝疾患が重症化することもあり,例えばウイルス性... さらに読む こともある。ほとんどの肝疾患は,ある程度の肝細胞傷害および壊死を引き起こし,様々な臨床検査値異常のほか,ときに症状を引き起こす。症状は肝疾患そのものによる場合(例,急性肝炎による 黄疸 黄疸 黄疸とは,高ビリルビン血症によって皮膚および粘膜が黄色化した状態である。ビリルビン値が約2~3mg/dL(34~51μmol/L)になると,肉眼的に黄疸が明らかとなる。 ( 肝臓の構造および機能と 肝疾患を有する患者の評価も参照のこと。) ビリルビンの大半は,ヘモグロビンが非抱合型ビリルビン(と他の物質)に分解される際に生成される。非抱合... さらに読む 黄疸 )と,肝疾患に伴う合併症による場合(例, 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症, 腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は... さらに読む 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の... さらに読む による急性消化管出血)がある。

壊死が生じても,肝臓は自己再生が可能である。たとえ広範囲に及ぶ壊死が起きても,完全に治癒する可能性がある(例,急性ウイルス性肝炎)。しかしながら,小葉全体をまたぐような損傷や顕著ではなくとも持続性の障害では,不完全な再生や 線維化 肝線維化 肝線維化は,損傷部が過度の組織増生を伴って治癒することで,肝臓内に過剰な結合組織が蓄積した状態である。細胞外基質の過剰産生,分解不良,またはその両者が同時にみられる。誘因は慢性傷害であり,特に炎症がみられる場合である。線維化自体は症状を引き起こさないが, 門脈圧亢進症(瘢痕によって肝臓内の血流に異常が生じる)や... さらに読む につながることがある。

一部の疾患は肝胆道系の特定の構造や機能を選択的に障害する(例, 急性ウイルス性肝炎 急性ウイルス性肝炎の概要 急性ウイルス性肝炎は,多様な伝播様式と疫学的性質を有する一群の肝親和性ウイルスによって引き起こされる,肝臓のびまん性炎症である。ウイルス感染による非特異的な前駆症状に続いて,食欲不振,悪心,しばしば発熱または右上腹部痛がみられる。黄疸がしばしばがみられ,典型的には他の症状が消失し始める頃に発生する。ほとんどの症例で自然消失するが,慢性肝炎... さらに読む は主に肝細胞の傷害ないし損傷を特徴とし, 原発性胆汁性胆管炎 原発性胆汁性胆管炎( PBC ) 原発性胆汁性胆管炎(PBC;以前は原発性胆汁性肝硬変として知られていた)は,肝内胆管の進行性の破壊を特徴とし,胆汁うっ滞, 肝硬変,肝不全に至る自己免疫性肝疾患である。初診時には通常は無症状であるが,疲労感がある場合や胆汁うっ滞(例,そう痒,脂肪便)または肝硬変(例, 門脈圧亢進症,腹水)の症状がみられる場合もある。臨床検査では,胆汁うっ... さらに読む は胆汁の分泌障害を,肝硬変は肝線維化とその結果として生じる門脈圧亢進症を特徴とする)。具体的にみられる症状,徴候,臨床検査値異常は,肝胆道系のどこが障害されているかによって異なる(肝胆道疾患の検査 肝臓および胆嚢の臨床検査 臨床検査は一般に以下の目的に効果的である: 肝機能障害の検出 肝損傷の重症度の評価 肝疾患の経過および治療効果のモニタリング 診断の絞り込み さらに読む を参照)。一部の疾患(例,重度の アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患 欧米諸国の大半ではアルコール摂取量が高くなっている。精神疾患の診断・統計マニュアル DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)によると,米国では任意の12カ月という期間で8... さらに読む アルコール性肝疾患 )は肝臓の複数の構造に影響を与えるため,症状,徴候,臨床検査値異常の組合せに特定のパターンがみられる。

高齢者は重度の生理的ストレスから回復する能力が低く,有害物質の蓄積に耐えられないため,重篤な合併症を生じた場合の予後は悪い。

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