E型肝炎

執筆者:Sonal Kumar, MD, MPH, Weill Cornell Medical College
レビュー/改訂 2020年 12月
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E型肝炎は,糞口感染で伝播するRNAウイルスにより引き起こされる疾患であり,食欲不振,倦怠感,黄疸などウイルス性肝炎の典型的な症状を引き起こす。妊娠中を除き,劇症肝炎や死亡はまれである。診断は抗体検査による。治療は,慢性感染症が慢性化しない限り,支持療法である。

肝炎の原因および急性ウイルス性肝炎の概要も参照のこと。)

E型肝炎ウイルス(HEV)には4つのゲノタイプが存在する。いずれのゲノタイプも急性ウイルス性肝炎を引き起こす可能性がある。

ゲノタイプ1型および2型は通常,水道の糞便汚染に関連した飲用水を介したアウトブレイクや,ヒトからヒトへの糞口感染を引き起こす。アウトブレイクが中国,インド,メキシコ,パキスタン,ペルー,ロシア,中央アフリカ,および北アフリカで発生している。これらのアウトブレイクには,A型肝炎ウイルスの流行に類似した疫学的特徴が認められる。散発例もみられる。米国または西欧でアウトブレイクが発生したことはない。先進諸国で発生する症例のほとんどは発展途上国から帰国した旅行者が発症したものであるが,旅行に関連しない症例も散発的に報告されている。

散発例では,アウトブレイクよりゲノタイプ3型および4型が原因である場合が多い。伝播は食物を介して起き,加熱調理をしていないか不十分な肉の摂取によって生じる可能性があり,実際の症例では豚肉,鹿肉,および甲殻類の摂取との関連が報告されている。

HEVは当初,慢性肝炎,肝硬変,慢性キャリア状態のいずれも引き起こさないと考えられていたが,易感染性患者(臓器移植患者,がん化学療法を受けている患者,HIV感染患者など)に限って,ゲノタイプ3型のE型慢性肝炎が確認されている。

E型肝炎の症状と徴候

食欲不振,倦怠感,悪心,嘔吐,発熱に続いて黄疸が生じるウイルス性肝炎の典型的な臨床像がみられる。

E型肝炎は重症となることがあり,特に妊婦ではその可能性が高く,その場合は劇症肝炎および死亡のリスクが高い。

E型肝炎の診断

  • IgM抗体検査(施行可能な場合)

急性肝炎の初期診断では,ウイルス性肝炎を黄疸がみられる他の疾患と鑑別する必要がある(急性ウイルス性肝炎に対する診断アプローチの簡略図を参照)。急性ウイルス性肝炎が疑われる場合は,以下の検査によってA型,B型,C型肝炎ウイルスのスクリーニングを行う:

  • A型肝炎ウイルスに対するIgM抗体(IgM-HAV抗体)

  • B型肝炎表面抗原(HBs抗原)

  • B型肝炎ウイルスコアに対するIgM抗体(IgM-HBc抗体)

  • C型肝炎ウイルスに対する抗体(HCV抗体)およびC型肝炎ウイルスRNA(HCV RNA)PCR

A型,B型,C型肝炎の検査は陰性であるが,ウイルス性肝炎の典型症状がみられ,患者が最近流行地域に旅行していた場合は,検査が可能であれば,HEVに対するIgM抗体(IgM-HEV抗体)を測定すべきである。

E型肝炎の治療

  • 支持療法

  • E型慢性肝炎には,場合によりリバビリン

E型肝炎も含めて,急性ウイルス性肝炎を軽減できる治療法はない。

予備的な研究から,リバビリンの12週間投与がE型慢性肝炎の治療において抗ウイルス効果を示すことが示唆されている。

アルコールは肝傷害を悪化させることから,飲酒は控えるべきである。一般的に指示される床上安静を含めた食事や活動の制限には,科学的根拠がない。

ウイルス性肝炎は,地域または州の保健局に報告すべきである。

E型肝炎の予防

良好な衛生状態の維持と標準の普遍的予防策(ユニバーサルプリコーション)がE型肝炎の糞口感染の予防に役立つ。煮沸により感染リスクが低下するとみられている。ヒトからヒトへの感染はまれであるため,感染患者の隔離は適応とはならない。

E型肝炎ワクチンは,現時点では中国で使用可能になっているが,米国では使用できない。ワクチンは,男性では症候性感染の予防において約95%の効力があるとみられており,かつ安全である。その他の集団における効力,防御効果の持続期間,および無症候性感染の予防における効力は不明である。

E型肝炎の要点

  • E型肝炎は通常,糞口感染により伝播する。

  • ほとんどの患者は自然に回復するが,妊婦では劇症肝炎および死亡のリスクが高い。

  • ゲノタイプ3型は,易感染性患者では慢性肝炎を引き起こすことがある。

  • 流行地域への旅行者ではE型肝炎を疑い,可能であればIgM-HEV抗体検査を施行する。

  • 支持療法を行うとともに,E型慢性肝炎にはリバビリンの使用を考慮する。

  • 中国ではワクチンが使用可能である。

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